離婚一般

専業主婦を待つ離婚の現実

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離婚テラスの離婚カウンセリングに来られる方の中には専業主婦の方も多くおられます。そして、離婚をしたい側だったり、離婚を言い渡されて困っている側だったりするのですが、よく聞かれるのが、「離婚後の生活のイメージが湧かない」という言葉です。しかし、離婚後のイメージができないまま、衝動的に離婚をしてしまっては後悔するばかりです。とは言っても、具体的には何を考えておけばいいのでしょうか。今日は、「少なくともこれだけは考えておいてほうがいい!」ということを具体的にお伝えしていきたいと思います。

   1 働くことについて

1-1 「働かない」という選択肢はない

もちろん、お子さんがまだ小さかったり、親御さんの介護があったり、はたまたご自身に病気があったりと、働けない事情をお持ちの方もいると思います。しかし、そのような方を除いて、基本的には、離婚後は「働くものだ」との覚悟が必要です。

確かに、仕事を辞めて家庭に入ってから既に何年も経っているとか、そもそも一度も正社員として働いたことがないといった理由から、働く自分が想像できないという方もおられると思います。また、これまで家庭のために家事・育児に専念してきたのに、今更キャリアを再開しろと言われてもできない、という不満もあるかもしれません。しかし、離婚後の生活に仕事は欠かせず、事前の準備が求められます。

1-2 養育費はあてにならない

離婚後にもらえるお金と言えば、養育費があります。しかし、残念ながら、養育費の継続的・安定的な支払いは期待できません(統計によると、継続的に養育費を受け取っているのは全体の20パーセントに過ぎません)。また、児童手当などの公的手当についても、政策によって金額が増減し、必ずしも安定的に決まった金額を得られるとは限りません。仕事だって、いつクビになるか分からないとか、いつ契約を切られるか分からないという不安があると思います。そういった不安定なものをいくつか組み合わせつつ、安定した生活を作り上げていくしかないのです。

1-3 いつから働くかという問題

離婚前から就労を開始するかどうかは人それぞれですが、一番ベストなのは、離婚の1年前くらいから働き始めておくことです。確かに、いきなり働き始めたりすると、配偶者に訝しがられたりするかもしれません。しかし、離婚前後の大変な時期に「仕事」という新しいファクターを入れるのはとても大変です。できれば前もって就労の習慣ができていればいいと思います。

逆に、離婚後、少し落ち着いてから働き始めるというのもありだと思います。その間は、財産分与や独身当時の蓄えでしのぐしかありませんが、生活の安定という側面では親にとっても子どもにとっても適切な時期だと思います。ただ、その場合も、就職活動をしてみたはいいが、まったく働き口がない、ということにならないように、事前に職安に足を運ぶなどして、リサーチや準備をしておくことが大切です。

1-4 おまけ

ちなみに、養育費を算定するにあたって、お子さんの年齢がある程度大きくなっていれば、専業主婦であっても「このくらいの収入はパートでも得られるはず」ということで、100万円程度の年収を見込まれることもあります。やはり、離婚後は仕事をするもの、がある程度オーソドックスなのだと思います。

   2 離婚後の家計を考える

家計管理の方法は各家族によってそれぞれですが、夫婦のうち一方しか全体像を把握していないということがよくあります。これは、男性だからとか、女性だからといった性別に関係なく、給料をすべて家計用の口座に振り込み、自分は小遣いだけをもらっているという男性もいれば、毎月決まった金額のお金を渡され、そこから家計をやりくりしているので、夫の給料さえ知らないという女性もいます。

このように、家計の一部にしかかかわってこなかった人たちにとって、家計全体を見渡し、収入と支出、将来に向けての貯蓄などを計画的にコントロールするのは、とても難しかったりします。

2-1 将来の生活設計の前にまずは現在の家計を把握する

そんな場合、まずは、現在の家計を把握するところから始めましょう。家計を把握する際のポイントは、できれば半年程度は継続的に家計簿をつけるということです。というのも、収入は、ボーナス以外は比較的安定しているものですが、支出は案外複雑だったりします。その月によって、カードの支払い金額が大きく異なっていたということを経験したことがある人もいるのではないでしょうか。冠婚葬祭があったり、季節の変わり目に被服費がかさんだり、また、夏休みや冬休みなどの長期休みには旅行代がかかったりします。そのため、特に何もない6月と、旅行やバーゲンなどに行った8月を比べてみると、支出が大きく異なっていたりします。そのため、できれば、半年程度、継続的に収支を確認してみることをお勧めします。

2-2 離婚したらやめるものを決める

これがとても難しかったりするのですが、半年ほどかけて把握した家計の中から、「これは離婚したらやめる」もしくは「減らす」という項目を選んでいく必要があります。もちろん、離婚しても同程度の収入を維持できる人は問題ありませんが、多くの人は、生活費に回せるお金が激減するのが現実です。

例えば、子どもの習い事だったり、友人とのランチ代だったり、バーゲンでついつい買いすぎてしまう被服費なんかを減らしていくことになります。

「何かを減らす」とか「何かをなくす」というと、何だか悲壮感が漂ってきますが、案外そうでもありません。本当に必要なものって意外と少なかったり、生活には無駄がいっぱいだったりするからです。

例えば、子どもの習い事一つ取ってみてもそうです。周囲に影響されたり、放課後の時間を埋めるため、無駄にたくさんさせてはいませんか?親の離婚のせいで子どもの習い事を減らすとなると、「かわいそう」とか「養育費が足りないせいで」と恨みつらみを言いたくなったりしますが、習い事を一つやめて、できた時間でお友達と遊んだり、家の手伝いをさせたり、家庭学習の時間に充てたりしたっていいのです。スイミングを辞めさせるなら、週末に親子で区民プールに行くという方法もあります。公文を辞めるなら、本屋さんでドリルを買ってくるという方法もあります。

また、「離婚=何でも我慢」というわけでもありません。さきほど、友人とのランチ代を削減のやり玉に挙げましたが、時々は行ってもいいかもしれませんし、お金がかからないように持ち寄りでホームパーティー形式にしてもいいかもしれません。

3-3 養育費と公的手当の見込み

さきほど、養育費と公的手当は当てにならないと書きましたが、そうはいっても、やはり将来の生活設計にはなくてはならないお金であることは間違いありません。

まず、公的手当は、養育費に比べると確実性の高いお金ですが、地域によって手当の内容が異なったり、政策によって受け取れる金額に変化があったりします。そのため、古いか新しいか分からないようなネット情報に頼らず、自分で区役所などの相談窓口に足を運んでみることをお勧めします。市区町村によって窓口の名前は異なりますが、総合案内で「児童手当などの離婚後に受け取れる手当について聞きたいのですが」と言えば、適切な窓口を紹介してもらえると思います。

養育費は、あまりあてにならないと思っておいた方がいいお金ではあります。ただ、場合によっては、公的手当よりもっと大きな金額が予定されているかもしれませんし、私学への進学や高額な習い事を続けるためにはなくてはならないお金です。そのため、算定表などを利用し、ある程度の金額を把握しておくことが大切です。ご相談を受けた方の中には、「現実的に子どもにかかるお金=養育費」だと思っておられる方もいました。そのような人にとってみれば、算定表の金額など信じられないくらい低く、これでどうやって子どもを育てていくのかと途方にくれてしまうことでしょう。まずは、現実の金額を知り、その金額でやっていく覚悟をするのか、それとも我慢して婚姻生活を続けるのか、という選択が必要になってきます。

   4 子どものこと

専業主婦の方が離婚する場合、心配や不安の中心はお金のことだったりします。しかし、お子さんがいる場合、お子さんの心配も忘れてはいけません。専業主婦は子育てのプロですが、離婚前後で子育て環境にも変化が出てきます。

4-1 父親不在という影響

どんなに帰りが遅く、子育てに無関心な父親だったとしても、家族の中に存在するのと、そうでないのとは大きな違いがあります。父親不在の中、どのように子育てをしていくのか、また、父親とはどのような形で関係を継続していくのか、あらかじめ考えておくことが必要です。父親不在の影響は、とくに思春期に大きく出てきます。引きこもりや登校拒否という形で影響があらわれることもありますし、非行や親への反抗という形で出てくることもあります。自分の子育てのしやすさ、子どもの健全な成長のためにも父親とどんな風に面会交流をするのか、あらかじめ考えておきましょう。

4-2 離婚前後の変化を乗り切る

親の離婚は、もちろん子どもにとっても影響が大きいものです。みなさんの中にも、離婚がお子さんに悪影響を及ぼすのではないかと心配な方もおられることでしょう。確かに、苗字が変わったり、転校や転居が必要だったり、子どもにとっても離婚前後で大きな変化が生じます。また、気持ちの上でも、いろいろな負荷が加わります。しかし、離婚に関してちゃんと説明すること、子どもの意見も聞くこと、別居親との関係を継続すること、この3つができていれば、概ね大丈夫です。

お子さんに関することはこちらも参考にしてください。
離婚が子どもに及ぼす悪影響とその軽減方法
面会交流は本当に子どものためになる?!
子どもに離婚を説明する本

4-3 就労の影響

先ほど、離婚後は就労が欠かせないと書きましたが、これは、家事・育児に回せる時間や労力が減ることを意味しています。そのため、専業主婦で子どもを育てていたのと、就労しながら子育てをするのとでは、大きな違いがでてきます。離婚後の子どもの変化としてよく聞かれるのが、「お手伝いをよくするようになった。」ということです。これ自体はけして悪いことではなく、お母さんが大変そうなのを見て、自らお手伝いをするという姿勢は前向きに評価してもよいと思います。しかし、その気持ちが行き過ぎると、子どもらしくない言動が増えたり、親に心配をかけまいと心を閉ざしてしまうおそれがあります。また、親側の事情としても、仕事に忙しかったり、離婚後の空虚感でなかなか子どもに目が回らなかったりします。

そのようなことを踏まえて、育児サービスの利用などを調べておくと役に立つかもしれません。ひとり親家庭なら安価に利用できるサービスもありますので、どんどん他人の力を借りましょう。

   5 専業主婦の落とし穴パターン

父:45歳、外資系企業に勤務
母:43歳、専業主婦
長男:13歳、中2
二男:10歳、小5

夫婦は夫のモラハラ的な言動により破綻。約2年間の家庭内別居を経て離婚。子どもたちも、父の母に対する傲慢な言動や、その結果、もう何年も会話らしい会話がないことを理解していたため、離婚にも賛成であった。

離婚に際し、父は、「子どもたちにかかる費用は自分がもつ」と言い、生活費を始め、学費や塾の費用も支払うつもりであった。

長男は私立中学に通っていたし、二男も同じ中学の入学を目指して塾に通っていた。これからも高額な教育費が見込まれたため、母としては父の気持ちがありがたかったし、これで子どもたちのお金は心配ないと安心していた。

いつもは父から20万円を渡され、そこから母が家計をやりくりしていた。そのため、母としては、自分が働けば、その稼ぎやその他の手当で十分20万円は得られそうだし、父から教育費の援助もあるため、生活に問題はないと思っていた。就労に関しても、母は、長男の出産を機に家庭に入ったが、それまでは正社員で働いた経験もあり、就労には前向きであった。

5-1 家計に対する誤解

まず、家計です。母は、教育費以外のほとんどの家計を20万円から支払っていたと思っていましたが、実は、違っていました。各種保険の掛け金や不動産の固定資産税、旅行や外食費などは父が支払っており、母は本当に基本的な生活費のみを支出しているだけだったのです。

そのため、離婚後の生活を始めてから、母は、「どうしてこうまでお金が足りないのか。」と頭を悩ませることになりました。それでなくても、新しい生活が始まる際は、買い揃えなければいけないものがたくさんあったりと、何かと入用です。これまで、20万円で十分足りていた生活費が全然足りません。いつもなら、余ったお金で友達とランチを楽しんだりもしてましたが、そんな余裕はまったくなくなってしまいました。

5-2 再就職の壁

家計がひっ迫していることに焦った母は、すぐに就職活動を始めました。母は銀行の窓口業務の経験があったことから、同じような仕事ができないかと探してもみました。しかし、既に40歳を超えている子持ちの母を採用してくれる銀行はなかなかありませんでした。母としては、まだまだ子どもの世話も必要なことから、残業はできなかったし、休日出勤も避けたい気持ちがあり、ますます採用が遠のいていきました。

結局、銀行のフロアの案内業務ならということで、地域の信金が採用してくれました。しかし、パートなので自給換算の安い給料しかもらえません。その上、ずっと立ち仕事で、40を超えた母にはとてもこたえました。何より辛かったのは、若い子から「仕事のできないおばさん」という目で見られることでした。母は、若いころの仕事のイメージとこんなに違うものかと愕然としました。

5-3 当てにならない養育費

そして、番狂わせだったのは、父が会社を辞めたことです。父は外資系の会社に勤めており、年収がいい代わりに、最後まで会社に残れるのは一握りでしたが案の定、父はその一握りには入れず、事実上の解雇に近い転勤を言い渡されたため、自ら退職という形を取ったのです。父は、すぐに仕事を見つけると言っていたものの、その保証はなく、月々の養育費も滞りがちになりました。ない袖は振れないわけで、強制執行などの手続をとっても仕方がないので、母は途方に暮れるしかありませんでした。

5-4 子どもたちの変化

子どもたちには、「勉強がはかどらない」、「友達関係が難しい」、「部活動の先輩にいじめられた」という年齢相応の悩みの他に、「親の離婚」という悩みが加わりました。

母がお金のやりくりに困っていることや、仕事で大変な思いをしていることは、毎日の様子から子どもたちにも十分に伝わっていましたし、自分たちの学費が家計を圧迫していることも分かっていました。母に申し訳ないという気持ちを抱きつつも、「親の勝手で離婚したくせに」という思いもありました。

きょうだいそれぞれに悩みを抱えつつも、それを余裕のない母に相談することもできませんでした。その結果、兄弟げんかが増え、家の雰囲気は殺伐としました。二人とも、学校の成績が落ち、兄に至っては、学校を休みがちになってしまいました。

   6 まとめ

今回は、専業主婦の方が離婚をする前に「これだけは考えておいた方がよい」と思われることについて触れました。後半は、専業主婦が離婚後に陥りがちな状況をまとめました。もちろん、すべての状況がすべての方に起こるわけではありません。しかし、転ばぬ先の杖はとても大切です。自信を持って離婚を決断できるよう、十分に準備をすることが大切です。

離婚テラスでは、専業主婦の方の離婚カウンセリングも行っております。法律相談では満たされない心の悩みや、生活の不安についてご相談に乗るのはもちろろん、計算機片手に家計簿とにらめっこしながら、離婚後の生活についても一緒に考えます。漠然とした不安を「見える化」し、一緒に解決していけたらと思います。中には、「実は離婚をするつもりはないんだけれど、いつ離婚をしても大丈夫という安心がほしい。」とおっしゃる方もおられます。離婚をするかどうか、するとすればいつするのか、離婚後の生活は大丈夫なのか、そんなお悩みがご相談いただけるのが離婚カウンセリングです。ご興味のある方は是非こちらをご覧ください。

こちらも参考にしていただければと思います。
専業主婦が離婚の前に考えておくべき7つのこと
母子家庭(父子家庭)が受けられる公的手当と就労支援

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