離婚と子ども

離婚が子どもに及ぼす悪影響とその軽減方法

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子どもがいる夫婦が離婚する際、「親が離婚するせいで、子どもに悪い影響があったらどうしよう」と心配になる方も多いと思います。

子どものことを考えてあげられず、親の勝手で離婚するのもよくないですが、だからといって、夫婦仲が壊れているのに、子どものためにと親が我慢するのがいいとも限りません。

今回のコラムでは、親が離婚することによって、子どもにどんな変化や影響があるのか、またその影響が悪い影響だとすると、どのように防ぐことができるのかについてお伝えしたいと思います。

情報収集の方法

親の離婚の子どもへの影響について、どのように調べればいいのでしょうか。まずは、情報収集の方法についてお伝えします。

法務省によるアンケート調査

これまで、日本では離婚に関する研究や調査が遅れていましたが、令和3年4月、法務省による大型のウェブアンケート調査が実施されました。このアンケート調査は、未成年時に親の離婚を経験した人1000人を対象としたもので、結果は以下よりご覧いただけます。

未成年時に親の別居・離婚を経験した子に対する調査(簡易版)

この調査では、次のようなことが分かります。

  • 親の不仲をどう感じていたか
  • 親の離婚(別居)によって、どのような不調を感じたか
  • 悩みを誰に相談したか
  • 親の別居を知ったときの心情は
  • 親に自分の気持ちを言えたか
  • 別居親とどの程度の頻度で会いたかったか

その他にも親から説明があったかどうかや、その説明の真偽についてなど、有用な情報が詰まっています。是非、ご一読いただければと思います。

FPIC(公益社団法人家庭問題情報センター)

FPICは、家庭裁判所調査官のOBを中心とする団体で、夫婦問題のみではなく、家庭問題全般を扱う団体です。そして、以下の研究は、親の離婚を経験した96人の子どもにインタビューした結果をまとめたものです。分かりやすい内容ですので、興味のある方はご一読ください。「はっ」とさせられる子どもの声に出会うことと思います。

社団法人家庭問題情報センター(FPIC)の研究 
出版物の購入について

専門家の論文を読む

他には、専門家の著書や論文を読むという方法があります。離婚が子どもに与える影響について研究している専門家を以下にご紹介します。

  • 野口康彦
  • 小田切紀子
  • 棚瀬一代
  • 直原康光
  • 二宮周平
  • 野沢慎司
  • 青木聡

少し専門的な内容もありますが、是非、webで色々と検索してみてくだい。各先生方の研究の概要や、大学生が先生方の研究結果を利用した論文を書いたものを見つけることができると思います。また、アマゾンで上記先生方の著書も購入可能です。

具体的な悪影響の例

上述のような研究結果やアンケート調査、または書籍等をじっくりと読んでいただければと思いますが、なかなかそういった時間が取れない方のご参考に、以下に「親の離婚が子どもに及ぼす悪影響」の代表例をお伝えしたいと思います。

経済的困窮

世帯分離による生活レベルの低下

別居や離婚によって、ひとつの家庭が二つに分離されます。そのため、単純にスケールメリットを失うことになり、当たり前に生活レベルの低下を招きます。

シングルマザーの低収入問題

日本では、子どものいる夫婦が離婚した場合、8、9割方、母親が親権者になります。今の日本の社会では、大抵の場合、結婚や出産によってキャリアが中断したり、収入が減少するのは母親の立場の女性です。

そのため、様々な公的手当や養育費があったとしても、そもそもの収入が低いため、ひとり親家庭の貧困化を招いているという現実があります。

養育費の中断

大切な生活の糧である養育費について、最後まで継続的に支払ってもらえるのは3割に満たないという統計結果があります。養育費だけでは生活が困難なことがほとんどですが、一方で、養育費が生活費の一部として組み込まれている人も多くいます。そのため、養育費が中断してしまうことは、生活の困窮に直結します。

経済的困窮が子どもに及ぼす悪影響

生活レベルが下がること自体は、必ずしも子どもにとってマイナスの要素になるとは限りません。しかし、頑張っていた習い事が続けられなかったり、学校を辞めざるを得ないような状況があれば、それは子どもにとって辛い体験であると言わざるを得ません。

また、「親の離婚のせいで貧しくなった」、「父親が養育費を支払わないから〇〇を辞めなければならない」と子どもが認識してしまうと、子ども自身が親の離婚を負の体験としてしか受け止められなくなってしまいます。

自己肯定感の低下

別居親の無関心

別居親と面会交流が実現できなかったり、養育費が振り込まれなかったりすると、子どもは別居親から「見捨てられた」と感じます。そうすると、子どもは、両方の親から大切にされているという感覚を持てなくなり、「私(ぼく)なんて・・。」という自己肯定感の低下につながります。

離婚は自分のせいだと思いこむ

親が離婚した原因は自分にあると考える子どもが以外と多いことがわかっています。例えば、育児方針や教育方針で両親がもめることがあると思います。また、塾や学費など、教育費で言い争うこともあるでしょう。そういう場面を見た子どもは「自分のことで両親がけんかをしている。自分のせいで親は離婚するんだ」と自己嫌悪に陥ってしまいます。

自己肯定感の低下が及ぼす将来の影

自己肯定感の低下は、将来、色々な形で問題化します。友達にいじめられたときや配偶者からDVを受けたときなど、不当な扱いを受けているのに「どうせ自分なんて」と受け入れてしまったりすることがあります。自分を大切にできず、自傷行為をしたり、犯罪被害者になってしまうこともあります。

また、自分に自信が持てず、不登校や引きこもりなど、無気力な生活に陥ってしまうこともあります。

対象喪失

対象喪失とは「近親者の死や失恋をはじめとする、愛情・依存の対象の死や別離」をいいます。親が離婚する際、子どもが経験する対象喪失は、どのような影響を与えるのでしょうか。

2つの対象喪失

子どもにとって、親の離婚は2つの対象喪失を意味します。一つは、一方の親と別々に住むようになることです。

そして、同居親との関係においても、同居親が収入確保のために長時間労働を強いられたり、精神的にまいってしまったりして、子どもに手をかけてやれない状況が出てくることがあります。

そうなると、子どもにとっては、片親ではなく、一緒に住んでいる親まで失ったように感じてしまうのです。

離婚による対象喪失が及ぼす悪影響

対象喪失自体は、「大好きなおばあちゃんが亡くなった」など、親の離婚に限らず体験しうるライフイベントです。しかし、親の離婚による離別は、また少し違った意味があります。

例えば、片親との死別の場合、残された親と傷付きや悩みを共有し、共に語り合い回復への道を模索することができます。

しかし、離婚により片親を喪失した場合、もう片方の親は「せいせいした。」と思っており、子どもと喪失体験を共有できないこともありますし、親が自分自身のことで精一杯で、子どもの悩みにまで気が回らない場合もあります。

本来、離別によって感じる悲しみや負の感情は、時間の経過や周囲とのかかわりによって癒され、回復していくものです。しかし、離婚の場合、周囲(特に同居親)の状況によって、対象喪失の悲しみから回復しづらいことがあります。

その他

その他にも、自発的に親離れをする前に強制的に親から離さることによる発達上の問題や、反抗期に反抗する対象がいないことによる思春期の問題、転居を伴う場合の、住環境や学校環境の変化などの問題があります。このほかにも挙げられるものがあるかと思いますが、とにかく離婚が子どもに及ぼす影響は多岐にわたることがご理解いただけたと思います。

悪影響を最小限にする方法

次に、このようなマイナスの状況が子どもに及ぼす悪影響を最小限に抑える方法について考えてみます。

貧困による悪影響を防ぐ

養育費の確保

現在、養育費の支払い率が低いことが社会的な問題となっていますが、残念なことに、そもそも養育費を取り決めずに離婚している人が約半数いるのが現状です。まずは、養育費の取決め、そして取り決めたらきちんと払う、もしくは払ってもらう努力をする、といったことを心がけましょう。

養育費取決めの手順
養育費が支払われない場合の完全マニュアル!
離婚公正証書における養育費の記載事項

同居親の収入確保

子育てをしながら働くことは容易ではありません。そのため、母親の一人親家庭は、平均収入が200万円前後であるという調査結果が出ています。

しかし、収入アップのためにダブルワークをして、昼はスーパーでパート、夜はコンビニでバイトといった風に、子どもに寂しい思いをさせてしまう働き方をするわけにもいきません。

そのため、限られた時間の中でそれなりの収入を得る必要があり、そのためには、資格取得など、計画的なスキルアップが欠かせません。現在、資格取得のために学校に通う際の学費や、その間の生活費の支援をしてくれる制度も充実していますので、是非自治体の窓口に問い合わせをしてみてください。

離婚後の仕事探しー結婚したいたときより輝こうー

公的支援の活用

資格取得やスキルアップには時間がかかります。また、離婚後すぐには収入を確保できない場合もあります。そのため、収入が上がるまでの間、公的支援を存分に活用し、生活をつないでいくことも考えられます。

現在、国だけではなく、各自治体で様々なひとり親支援事業が実施されています。是非、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。

収入と幸せは比例しない

上述のような努力をしても、十分な収入にならないこともあります。しかし、大切なことは、今ある収入でいかに前向きに生活できるかです。

例えば、300万円の年収では、豪華な暮らしをさせてあげることはできません。私立の学校や大学の授業料を支払うことも困難です。しかし、子どもと一緒に楽しく家計をやりくりする努力をしたり、奨学金をもらうなど、どうしたら希望の進路を実現できるかを一緒に考えたりできれば、それは子どもにとって、けして悪影響ではありません。

一方で、年収が400万円あったとしても、「お父さんが十分にお金をくれないから〇〇ができない」と子どもに愚痴ったり、仕事のしすぎで子どもに優しく接することができなければ、それは子どもにとって悪影響と言えるでしょう。

このように、収入の多い少ないだけが離婚による悪影響に関係するのではないことを理解していただければと思います。

生活環境を整える

なるべく子どもの生活を変えない

家庭の事情によって難しい場合もありますが、可能な限り、子どもの生活が親の離婚前後で変化しないように心掛けましょう。一番大きな変化は、転居や転校です。また、習い事を辞めなければならないのも、子どもにとってはつらい変化です。

同居親によるケア

離婚後、子どもにとって一番頼れる存在は同居親です。離婚後のごたごたで親自身も大変だと思いますが、じっくり子どもと話す時間を持つようにしましょう。

周囲のサポートを得る

親だけで子どもをケアしなければいけないと考える必要はありません。例えば、学校の先生や保育園の先生に事情を説明し、気を付けてもらうこともできます。また、スクールカウンセラーなどの専門家を頼ることも可能です。

加えて、祖父母の協力を求めたり、ファミリーサポートなどの地域の力を借りるのもいいでしょう。ひとりで抱え込まず、色々な人に頼ってみてください。

親の離婚をきちんと説明する

子どものせいではないことを説明する

上述のように、子どもは、自分のせいで親が離婚するのではと考えがちです。そして、その結果、自己肯定感が下がってしまったり、つらい十字架を背負ってしまうことになります。

そのため、親がなぜ離婚するのか、年齢に応じて感情的にならず事実を端的に説明してあげましょう。

離婚後の生活の変化を説明する

予想される離婚後の生活の変化についてもあらかじめ説明しておくことが大切です。天候や転居はあるのか、離れて暮らすことになる親には会えるのか、習い事はやめなくていいのか、そういったことを説明してあげましょう。

離婚しても子どもへの愛情は変わらないこと

子どもは、親同士が愛し合わなくなると、自分まで愛してもらえないのではと感じます。そのため、夫婦の問題と親子の問題は別であることを説明し、親が離婚したとしても、親の子どもへの愛情は変わらないことを説明してあげましょう。

親同士の葛藤から解放する

円満な面会交流

子どもは、片方の親と別居することを寂しいと感じたり、見捨てられたと思ったりします。そして、その結果、自己肯定感が低くなってしまいます。

そのため、父母間のごたごたを親子関係に持ち込まず、離婚後は面会交流を実施し、子どもが別居親からも愛されていることを実感できるようにしましょう。

互いの悪口を聞かせない

せっかく離婚(別居)し、子どもが夫婦の不和を見なくてすむようになったとしても、お互いの悪口を子どもに聞かせてしまうと元も子もありません。子どもの前で相手の悪口を言ったり、不自然に相手の話題を避けたりするのはやめましょう。

子どもが傷付かない離婚はない

DVや虐待が原因の離婚の場合、子どもにとって、親の離婚は大きなプラス要素になります。また、親のけんかを見なくてすむ、親に笑顔が戻ったなど、いい面もあります。

しかし、多くの場合、親の離婚により、多かれ少なかれ子どもは傷付きます。そうであるならば、やはり、子どものために離婚はしない方がいいのでしょうか。これまで、多くの方が問いかけてこられた質問です。

この質問に決まった正解はなく、それぞれの家族が決断するしかありません。「子どもへの悪影響が心配だから離婚しない。」という選択肢もあると思いますし、「悪影響を最小限にとどめ、子どもにもプラスになる離婚を目指す」という選択もあっていいと思います。

また、各種研究結果からは、「親の離婚そのものが子どもに悪影響なのではなく、離婚によって生じる様々なマイナスな状況を改善できないことが子どもの福祉に悪影響を及ぼす。」ということが分かってきています。つまり、離婚をしたとしても、起こりうる不適切な状況を排除できれば、「離婚=悪影響」というわけではないということです。

是非、自分と子どもの幸せを実現し、家族にとってより良い形を模索していただければと思います。

以下の論考は、家族法制部会で菅原ますみ先生がまとめられたものです。分かりやすく短くまとめられているので、ぜひご参考ください。

父母の離婚が子の生育に及ぼす影響に関する心理学的知見について

当センターでは、離婚カウンセリングを行っています。親の離婚によるお子さんへの影響等がご心配な方は、是非、一度ご相談いただければと思います。
離婚カウンセリング

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