養育費が支払われないとき、様々な対応が考えられますが、一番手軽にできるのが「自分で請求する」という方法です。
ただ、請求の仕方を間違えると、感情を拗らせたり、相手の反感を買ってしまい、最終的に「養育費の円滑な支払い」という目的が達成できなくなってしまいます。
このコラムでは、養育費を督促する場合の注意ポイントと文例をご紹介します。

養育費の基本について知りたい方はまずこちらを読んでみてください。
養育費取決めの手順ー実現したい4つのことー
なぜ、まずは自分で催促する必要があるのか
口約束の場合、公正証書を作成した場合、調停で合意した場合など、どんな決め方をしたとしても、まずは自分で振込の催促をしてみましょう。
催促の方法は、催促したことや金額が残るよう、メールやLINEで行うのがポイントです。
離婚した相手に催促の連絡をするのは気が向かないという方もいると思いますが、突然、裁判所から何らかの督促の連絡が来るというのはとてもびっくりしますし、不愉快にもなります。
目的は、相手を驚かせたり、不愉快にさせることではなく、継続的な支払いを促すことです。ですので、まずは、穏やかな雰囲気で請求してみましょう。
催促時の6つのポイント
ビジネスマナーをお手本に
元配偶者と連絡を取る際、どんなスタンスを取ればいいのか分からないという方がおられます。
そんなとき、「仕事の取引先の相手だと思ってください」とお伝えしています。
離婚後の父母間のコミュニケーションはビジネスライクにするのが一番です。
ビジネスメールは「いつもお世話になっております。」から始まります。
それが何か相手のミスにクレームをつけるためのメールだったとしても同様です。
養育費の催促の際も、ついつい怒りや不満を記載したくなりますが、まずは、「いつも養育費を振り込んでいただき、ありがとうございます。」から始めてみましょう。
未払分を明確に
日頃から入金が遅れがちだったり、未払い分を通常の支払いに上乗せで支払ったりしている場合、意外と相手は何月分の支払いができていないのか、把握していないことがあります。
そのため、通帳のコピーを添付するなどし、何月から何月分の養育費が未払いであるかを明確に記載しましょう。
振込がなくて困っている現状
養育費の支払いがないことで、生活にどのように影響があり、いかに困っているかも伝えましょう。
なくてもいいものではなく、かけがえのない養育費であることを理解してもらうことで、支払いの意義を感じてもらうことができます。
相手の事情への理解
ケースバイケースですが、相手にも何か支払えない事情が予想される場合があります。
例えば、親の介護が必要になったとか、仕事がうまくいっていないなどの理由です。
そのような場合、相手の事情も理解した上で、それでも大切な養育費を支払ってもらいたいことを伝えましょう。
未払分をいつまでに支払ってほしいのか
期限を切らない限り、ずるずると支払いが遅れます。
そのため、〇月〇日までに入金をお願いします、と記載しましょう。加えて、その期限に理由が付けられるのであれば、〇〇の支払が必要なため、などと付け加えるのも有効です。

期限までに支払いがなかった場合の手段
例えば、裁判所に申し立てるもしくは強制執行の手続きを取るなど、期限までに支払いがなかった場合に予定しているアクションについても記載しておくことをお勧めします。
そうすることで、相手が危機感を持ってくれることもありますし、本気度も伝わります。
その代わり、そのように記載したら、必ず実行することが必要です。
催促の文例
いつも養育費の振込みありがとうございます。毎回、大切に使わせてもらっています。
ただ、3月分と4月分の振込みがなく、不安に思っています。〇〇さんも住宅ローンやお義母さまの介護費用で大変だと思いますが、娘にとって、〇〇さんからいただく養育費は、とても大切な教育費になっています。
3月と4月の養育費については、塾の月謝の支払いがある5月15日までに入金していただけないでしょうか。もし、この日までに入金していただけない場合、家庭裁判所での手続きも検討しています。あまり大ごとにはしたくないので、よろしくお願いします。
避けたい文例
養育費の支払いがないのですが、どういうことでしょうか。至急支払ってください。もし支払ってくれないときは法的措置をとります。
このような文面が好ましくないポイントは、以下のとおりです。
①いつから不払いか明記されていない
②責め口調もしくは上から口調
③「至急」とのみ書いていて期限が明記されていない
④感謝の気持ちや相手の状況を慮る文面がない
繰り返しになりますが、請求の目的は、相手に文句を言ったり相手を言い負かすためではありません。あくまで、スムーズな支払いを促すのが目的です。是非、感情に負けず、理性的な文面を心掛けてください。
また、やはり自分では難しい、でも弁護士に依頼して裁判所で争いたい訳でもないという方は、民間調停の制度であるADRがお勧めです。ぜひ、以下のページよりADRをご検討ください。