養育費

養育費取決めの手順ー実現したい4つのことー

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離婚した夫婦に未成年の子どもがいた場合、別居親が同居親に子どもの生活費として支払うのが養育費です。

今回は、これから養育費を決めるみなさんに、その手順や考え方、そして幸せになるために実現してほしいことをお伝えしたいと思います。

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養育費とは

養育費は生活保持義務

養育費は、子どもに最低限の生活をさせればよいのではなく、自分と同程度の生活をさせる義務、すなわち「生活保持義務」であるとされています。ちなみに、成人した子どもが親に対して負う扶養義務は、生活扶助義務であり、自分に余裕がある範囲で援助をすればよいことになっていますので、養育費の支払い義務の方がより重いことが分かります。

以下は、家裁が示した考え方です。ご興味のある方は詳細をお読み下さい。

子が義務者と同居していると仮定すれば、子のために費消されていたはずの生活費がいくらであるのかを計算し、これを義務者・権利者の収入の割合で按分し、義務者が支払うべき養育費の額を定めます。ここでの大きな特徴は、実際の生活形態とは異なり、収入のより多い親(義務者)と子が同居している状態をいわば仮定し、この生活費を計算するという考え方を採用していることです。これは、「生活保持義務」の考え方に由来するものです。

養育費は心の栄養でもある

養育費の問題は、本来的な意味を忘れてしまうと、金額闘争になりがちです。しかし、養育費は子どもの生活費としての役割だけではありません。離れて暮らす親の「応援しているよ」というメッセージでもあります。

子どもは、毎月決まった金額が振り込まれていることで、離れて暮らす親が自分に関心を寄せてくれていることや大切に思ってくれていることを感じ取ります。そして、そのように感じられることが、自己肯定感の高まりや自尊心にもつながっていくのです。

養育費額の決め方

実際に子どもにかかっている費用をベースに考える

現在、実際にお子さんにかかっている費用をベースに考える方法があります。お子さんに実際にかかった費用をベースに話し合いますので、お互いの納得度が高いという利点があります。

また、お子さんの年齢が高く、進学塾や私立の学校に通っていたりすると、教育費が高額になっています。そのような場合、高額の養育費を請求しなければ生活が成り立ちませんが、実費ベースだと、支払う側にとっても高額な請求に納得しやすかったりします。

しかし、お子さんが小さく、特に費用があまりかかっていない場合、どんなに相手の収入が高くても、あまり養育費がもらえないことになります。そして、その後、教育費が高額になったとき、再度決めなおす必要も出てきてしまいます。

現在の生活費をベースに考える

現在、家族の生活費として月々渡している金額をベースに考える場合もあります。この場合、子どもの養育費というよりは、現在の生活レベルをあまり変えないようにという意味合いがあり、例えば、養育費を支払う側が離婚を求めているような場合に提案されたりします。

もらう側にしてみれば、通常の養育費よりも高額な場合が多いので、その点はありがたいところです。ただ、お子さんが小さい場合、多少多めにもらっていても、将来の教育費を考えると全然足りない、という場合もあります。

一括払い

養育費は、月々〇万円という決め方をするのが基本です。なぜなら、そういった決め方が養育費の趣旨に合致するからです。

しかし、双方の合意があれば、一括払いとすることもできます。例えば、自営業者でかなり資産があり一括払いが可能な資力がある一方、将来の安定性はないような場合です。

このような場合、一括で支払ってもらうかわりに、毎月支払う場合の総額より減額するというパターンが多いようです。 こうすれば、支払う方としても、支払総額が減るメリットがあり、受け取る側としても、将来支払いが滞る危険性を回避できるという安心感があります。

ただ、「お父さん(お母さん)は毎月子どものために養育費を支払っているんだ。」と子どもに理解してもらうためには月払いの方がいいのかもしれません。また、贈与税への心配もあります。そのため、一括払いはあくまで例外の方法だと言えます。

推奨:算定表の金額+特別出費(教育費や医療費)

毎月の養育費は算定表に基づいて決めるけれども、高額な教育費や医療費については、別途取り決めるという方法がお勧めです。なぜなら、算定表の金額の中にも教育費が含まれていますが、公立高校程度の学費を想定した教育費となっており、私立の学校や大学の費用は、算定表の金額に含まれていないからです。

家庭裁判所で取り決める際も、月々の養育費〇万円と決めた上で、高額な学費や事故や大病をした場合の医療を「特別出費事項」として、そういったものが発生した際は双方で協議して負担割合を定めるという条項を加えます。

ただ、この条項は、「双方で協議する」ということしか記載していないので、問題の持ち越しのようなものです。

また、おそらく発生しない可能性が高い高額医療費と、大学進学の際の学費を同列に扱うことにも問題があります。

そのため、既に私立学校に通っているとか、近い将来大学に進学するというような場合、学費はお互いの収入比で按分するなどと決めておくといいでしょう。この決め方だと、互いの納得が得やすく、また、再度の決めなおしも必要ありません。

養育費算定表の使い方

以上のように、双方の合意があれば、養育費はどのように決めることも可能なのですが、当センターでは、算定表の金額に高額な学費や医療費といった特別出費の条項を加えることをお勧めしています。以下では、その際利用する養育費算定表の使い方について説明します。

養育費算定表とは

養育費算定表(外部リンク)は、広く全国の裁判所で使用されており、「養育費算定表」と検索すると、裁判所のウェブサイトが一番に挙がってきます。そのサイトをクリックしていただくと、以下のように、表1~表15までが掲載されているので、子どもの人数と年齢により複数ある表から使用する表を選択します。

その選択した表に父母双方の年収(税込)をあてはめることで、養育費の金額が分かるようになっています。例えば、以下を例にしますと、縦軸が支払う側(義務者)の収入、横軸が受け取る側(権利者)の収入になり、交わるところが養育費の目安ということになりますので、会社員の義務者の年収が600万円、パートをしている権利者の年収を100万円とすると、養育費は6~8万円となり、その幅の中でも下の方に位置しますので、6万円が相当ということになります。

 

あてはめる収入の求め方

算定表を利用する前段階で、お互いの収入を確定する必要があります。基本的には、最新の源泉徴収票(会社員の方)や確定申告書及び決算書(自営業の方や複数の収入がある方等)で足ります。

しかし、収入幅の大きい職業や、収入の増減が確実に想定される場合などは、その事情を主張することもできます(後述)。逆に、収入を減らすために転職したり、養育費を支払いたくないために辞職したとしても「稼働能力あり」として本来得られるべき収入で計算される場合もあります。

また、専業主婦であっても、子どもがある程度の大きさになっている場合、「パートに出ればこのぐらいは稼げるでしょ。」ということで年間100万円程度の収入を見込まれることもあります。

自営業者の収入認定については以下をご参照ください。
養育費のおける自営業や副業の収入認定

主張できる特別な事情

先ほど、年収(税込)を算定表に当てはめると述べましたが、特別な事情がある場合はその限りではありません。では、どのような事情が特別な事情に当たるのでしょうか。一番最新の源泉徴収票もしくは確定申告書の金額とは異なる金額を主張できる場合について、よくある主張を以下に記載しみす。

年収が下がる予定という主張

以下のように、一番最新の源泉徴収票の金額より、来年以降の収入が下がるという主張があります。

・業績が悪化。来年は賞与なしの見込み
・去年は海外駐在のため収入が高かった。既に帰国しているため、来年以降は〇百万円下がる
・子会社に転籍になったので給与が下がる見込み

このような主張に対しては、どのように考えるべきでしょうか。

そもそも養育費は、双方の収入の大幅な増減による増額や減額が予定されています。そのため、大幅に収入が減るおそれがあるのであれば、実際に減ったときに減額の話合いをするというのが原則です。

しかし、既に減給されていて、減給された数か月分の給与明細の提出が可能だったり、駐在や転職で明らかに収入減が見込まれる場合、予想される年収を基本に話合いをすることも可能です。

必要に応じて支払う

月々の養育費の支払額は低くして、必要があった場合に言ってくれれば追加で支払う、という人がいます。

養育費の支払い自体は前向きに考えてくれているのだけれど、自分の采配で行いたいというタイプの人に多い主張です。

しかし、残念ながらこの主張は通りません。なぜなら、算定表の考え方は、必要になったときに支払うのではなく、毎月一定金額を支払い、その一定金額の中でやりくりする、とい考え方だからです。

また、毎回請求するという形は受け取る側にストレスがかかることもあり、もめる原因になりかねません。

養育費をもらう側の収入も上がるのでは?

専業主婦だった妻が離婚を機に働くということがあります。また、これまでパートだった方が正社員になる場合もあります。

もちろん、この場合は権利者の収入増の要因になりますので、養育費の減額要素になります。ただ、これも、義務者の収入減と同じく、実際に権利者の収入が増額になってからです。

実際のところ、ひとり親が子どもを抱えて働くのは簡単ではありません。子どもが熱を出したり、学校の行事があったりで、なかなか思ったように勤務時間が稼げないこともあります。

そのため、まずは、原則通り、現状の収入を当てはめ、幸いにして収入が上がれば、そのときに再度協議をするというのが原則です。

金額以外に決めておくべき2つの項目

算定表には含まれない特別出費

算定表上の金額は、子どもの通常の生活費が含まれていますので、食費や被服費の他、教育費や医療費も含まれています。ただ、その通常の枠の外に出るものを「特別出費」と呼び、別途取り決めておくことが可能です。以下で、よくある特別出費を見ていきましょう。

私立学校の学費や大学の学費

算定表上の金額に含まれる教育費は、公立の高校相当程度までです。そのため、私立の学校に通ったり、大学に進学した場合、到底足りません。

そのため、相手も子どもが私立に通うことに同意している(もしくは既に通っている)場合や、双方の学歴が大学卒で、子どもも当然に大学進学が予想されるような場合は、高額な学費に関する分担の仕方を取り決めておくこともできます。

詳細は以下のコラムをご覧ください。
私立学校や大学学費と養育費

高額な医療費

通常の風邪等で通院が必要になった場合の医療費は算定表に含まれますが、大きな怪我や長期の入院治療が必要な病気になってしまった場合、特別出費として分担を求めることができます。この場合、上述の教育費と異なり、そもそも発生する可能性自体が低いですし、どの程度の出費になるのかが皆目分かりません。そのため、負担割合をあらかじめ決めておくことが難しく、そのような事態が発生したら、発生した際に負担割合を協議する、という内容にとどまらざるを得ないでしょう。

養育費の支払終期

18歳まで(成人になるまで)

「18歳まで」とする人の根拠は「養育費は成人まで」という考え方です。ただ、この考え方は根本的に適切ではありません。というのは、養育費の支払いは「未成年」かどうかの基準ではなく、「未成熟子」かどうかが基準になるという点です。

そのため、高卒で仕事に就けば、未成熟子ではありませんし、21歳の大学生であれば、未成熟子として養育費の支払いの対象になります。

20歳まで

20歳までというのは、これまでの成人年齢であったこともあり、現在も裁判所では支払終期を20歳までにすることが多いようです。ただ、前述のように、子どもが大学に進学した場合、20歳以降の養育費については、再度協議しなおす必要が出てきます。大学進学率が6割近い昨今、親の学歴などから考えても子どもが大学に進学する確率が高いようであれば、20歳で区切るのは何とも中途半端です。

22歳まで(大学を卒業するまで)

22歳までと取り決める場合、正しくは「22歳になった後の最初の3月まで」といったような決め方をします。これは、浪人も留年もせず、ストレートで大学に入学・卒業した場合の大学卒業見込みの時期を終期としているものです。この点、もっと分かりやすいように「大学卒業まで」と記載してはどうか、という考え方もあります。ただ、このように決めた場合、義務者にとって酷な結果となることがあります。例えば、子どもが浪人したり留年したりするとどうでしょうか。いつになったら支払が終了するのか分からず、適切ではありません。

ちなみに、法務省では、以下のような見解が示されています。

養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。例えば,子が大学に進学している場合には,大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられます。
 なお,今後,新たに養育費に関する取決めをする場合には,「22歳に達した後の3月まで」といった形で,明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。

また、「22歳に達した後の最初の3月まで」としておいて、高校卒業後に就職した場合や大学を中退した場合は支払義務はその時点までといった内容を付記することで、「無駄に長く払わされるのでは」という不安や不満を払しょくできます。

養育費はいつまで?支払終期の3つのストーリー

養育費の取決めの方法

口約束

口約束で養育費を取り決めたとしても、いずれ支払われなくなると思った方がいいでしょう。せっかく金額で合意できているのであれば、離婚公正証書という形で残しておきましょう。

離婚協議書

実は、離婚協議書もあまり口約束と変わりません。紙に残すことによって、金額のみではない詳細な取り決めが可能ですし、協議書をそれぞれが持っておくことによる心理的効果が見込めます。

ただ、支払いが滞ってしまった場合、離婚協議書では強制執行ができません。再度、家庭裁判所にて養育費請求の調停を申し立てる必要があります。その際、離婚協議書を証拠として提出できるのが口約束との違いです。

離婚公正証書

養育費の取決めの方法として、一番お勧めなのが公正証書です。公正証書にて強制執行が可能な文言を入れて取り決めておけば、不払いが発生した場合、家裁の調停を経ずして強制執行の申立てが可能です。

離婚公正証書は、多少の費用と手間がかかりますが、それで得られる安心感や保証の方が更に上回ります。公正証書は、自分で作成することもできますし、行政書士等の専門家に依頼することも可能です。

公正証書をご自分で作成される方は以下を参照ください。
離婚公正証書を自分で作成する人が知っておくべき全体像

作成を専門家に依頼したい方は以下を参照ください。
離婚公正証書作成サポート

家庭裁判所の養育費請求調停

2人では話ができず、任意での合意が難しい場合、家庭裁判所の養育費調停を申し立てることもできます。早急に離婚したい場合など、まずは、離婚届を出した後、裁判所で養育費請求を行うことも可能です。

ADR(裁判外紛争解決手続き)による調停

ADRは、法務大臣による認証制度が確立された民間の調停機関です。

家裁よりも敷居が低く、平日の夕方以降や土日の利用が可能だったり、メールが利用できたりと利便性が高いのも特徴です。

何より、紛争性をむやみに高めないというメリットがありますので、2人ではなかなか話が進まないけれど、なるべく争いたくない、穏便に進めたい、という方にはお勧めです。

ADRについては以下をご参照ください。

ADRによる仲裁
ADR調停よくあるご質問
ADRによる調停ー成立事例集ー

養育費の支払いが滞った場合

残念ながら、約束通りに養育費が支払われないこともあります。そのような場合、家庭裁判所の履行勧告や地方裁判所の強制執行という手続きをとることができます。しかし、そういった手続きをするには、公正証書もしくは家裁の調書や判決が必要となります。そのため、繰り返しになりますが、口約束や離婚協議書ではなく、公正証書以上のものを作成しておきましょう。

詳細はこちらを参考ください
養育費が支払われない場合の完全マニュアル

幸せになるために実現したい4つのこと

養育費の支払いを通じて、以下の4つのことを実現できれば、三者(父母と子ども)にとって、よい取決めと言えると思います。

①子どもがなるべく離婚前と変わらない生活を送れること
②子どもが別居親からの愛情を感じられること
③別居親が養育費を通じて子どもの養育に関わっていると実感できること
④滞ることなく最後まで支払ってもらうこと

そのため、まずは、算定表を基本とした適切な金額を決めた上で、支払いが継続されるよう双方が最低限の礼儀を尽くすことが必要です。

例えば、入金を確認したら「今月もありがとうございます。」等の簡単なメールを送るとか、「今月は〇〇が必要だったので養育費を使わせてもらいました。」等と具体的に伝えるのもいいかもしれません。

一方、支払う側としては、子どもを育てる苦労に敬意を持ち、確実に支払いを継続することが大切です。養育費は子どもの生活を維持する大切なお金です。数日入金が遅れるだけでも相手は不安になります。遅れる事情やいつなら入金できるのかということを事前に伝えましょう。

そして、何より大切なのは、子どもに「お父さん(お母さん)は養育費を支払ってくれている。」ということを伝えることです。それによって、子どもは「親は離婚したけど、自分のことを大切に思ってくれている。」と感じることができます。

当センターでは、養育費をはじめとする離婚条件やお子さんのメンタルケアに関する無料オンライン講座を実施しております。ご都合の合う方は、是非以下のサイトよりお申込みをお願いいたします。
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