子連れ離婚を考える際、色々な不安が頭をよぎりますが、その中でも経済的な不安が特に大きいことと思います。今回は、母子家庭(シングルマザー)であっても、経済的に困らないための3つのポイントとして、①もらえる手当を把握して収入を増やす、②減免制度や割引制度を利用して支出を減らす、③高収入の仕事に就く、の3点についてお伝えしたいと思います。
母子家庭(シングルマザー)がもらえる手当
児童扶養手当(母子手当)
受給対象者
母子手当と呼ばれることが多い児童扶養手当ですが、父子家庭も受給できます。また、両親がいない子どもを養育している祖父母や未婚のシングルマザーも対象に含まれます。受給対象は、0歳〜18歳に到達した後の最初の3月31日までの間の年齢の子どもです。
受給額
実は、児童扶養手当は、とても複雑な計算のもと算出されています。そのため、養育費のように、算定表に当てはめればすぐ金額が分かるというものでもありません。
また、平成29年4月からは、物価スライド制になり、物価が上がれば受給額も上がり、物価が下がれば受給額も下がる仕組みになっています。そのため、収入別受給額を明確に表にするのが難しいのですが、あくまで「目安」として2020年度の表を作成しましたので、ご参考ください。
児童数 | 全額支給 | 一部支給 |
---|---|---|
児童1人のとき | 4万3160円 | 1万180~4万3150円 |
児童2人のとき | 1万190円を加算 | 5100~1万180円を加算 |
児童3人以上のとき | 3人目以降1人につき 6110円を加算 |
3060~6100円を加算 |
注意点や特徴
意外に少ない人数加算額
先ほどの表を見ていただくと、子どもの人数が増えた場合の加算額が非常に少ないことが分かります。確かに、住居費や光熱費などは、子どもが一人増えたからといって2倍になるものではありません。しかし、洋服や学用品、学費や給食費といった費用は人数の分だけ増えていきます。どこかに遊びに行った際も、入場料や外食代が子どもの数だけかかります。
そのため、子どもの人数が多い人は、児童扶養手当だけでは焼け石に水といった状況が想像されます。
同居祖父母の収入は合算ではなく制限対象
よく、実家の親と同居していると児童扶養手当を受給できないと思っている人がいますが、そうでもありません。確かに、祖父母の収入も考慮されますが、同居親族の収入がすべて合算されるのではなく、それぞれの収入が受給制限の対象になるということです。
そのため、実家の両親が年金暮らしで大した収入もない、という状況であれば、同居していても児童扶養手当を受給できる可能性が十分にあります。
児童手当
児童手当は、ひとり親家庭に限らず、中学生までの子どもがいる親に支給される手当です。児童扶養手当との名前の区別がややこしいのですが、「ひとり親に限らない」という点が特徴的です。
対象
中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している人
受給金額
平成29年4月現在の受給金額は以下のとおりです。
支給対象の子供の年齢 | 支給額(月額/1人当たり) |
0歳から3歳まで | 15,000円 |
3歳から小学校卒業前 | 10,000円(第1子、第2子)、15,000円(第3子以降) |
中学生 | 10,000円 |
注意点や特徴
所得制限がある
児童扶養手当と同様、所得制限があります。現在は、夫婦どちらかの収入が960万円を超えていると受給対象とはなりません。また、月額の金額が示されますが、毎月受給できるわけではありません。毎年2月、6月、10月が受給月です。
過去に遡っての受給不可
過去に遡っての受給はできませんので、子どもが生まれたらすぐに手続きをしましょう。また、別居により住所の変更が市区町村をまたぐ場合も新たに手続きが必要です。
児童育成手当
児童育成手当は、各市町村で受給の制限が異なるのですが、以下に東京都の例をご紹介します。
支給対象
児童扶養手当と同様、18歳になった最初の3月31日までの児童を養育している人で、母子家庭の他にも、父または母が死亡した場合や未婚の場合なども対象に含まれます。
支給額
児童1人につき、月額13,500円
所得制限なし
児童扶養手当や児童手当と大きく異なるのが、収入制限がない点です。どんなに親の収入が高い場合も一律13,500円が支給されるのが大きな特徴です。
高等職業訓練促進給付金
ひとり親家庭の方が看護師や介護福祉士等の資格取得のため、養成機関で修業する場合に、修業期間中の生活の負担軽減のために支給されるのが高等職業訓練促進給付金です。
対象者
ひとり親家庭の父または母であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養する方。また、児童扶養手当受給者もしくは同程度の所得水準であること等も条件となります。
支給額
非課税世帯は月額10万円、課税世帯は月額7万5千円が生活費として支給されます。また、課程修了までの期間の最後の12か月については、非課税世帯が月額14万円、課税世帯が11万円に増額となります。
支給期間
修業期間の全期間にわたって支給されますが、上限が4年に設定されています。また、高等職業訓練修了支援給付金といって、履修終了後、非課税世帯は5万円、課税世帯は2万5千円を受給できます。
以上が、国の制度として利用できる手当金(児童育成手当については自治体によって多少の差異があります)について説明しましたが、他にも、多くの自治体で様々な手当や助成金を実施していますので、以下でご紹介します。
住宅手当
母子家庭の住宅手当とは、母子(父子)家庭で20歳未満の子どもを養育している場合で、家族で居住するための住宅を借りて、月額1万円を越える家賃を払っている人を対象としている制度です。
この制度は、自治体によって導入している自治体とそうでない自治体があります。また、支給の条件や金額も若干の際がありますので、まずはお住まいの自治体に問い合わせが必要です。
支給対象者
支給条件は市区町村によって異なりますが、主に以下のようなものです。
- 母子(父子)家庭で二十歳未満の子を養育している
- 民間アパートに居住し、かつ申請先の住所地に住民票がある
- 申請先の住所地に6ヶ月以上住んでいる
- 扶養義務者の前年度の所得が、児童扶養手当の所得制限限度額に満たない など
支給される金額
支給される金額は市区町村によって異なりますが、5千円〜1万円程度が多いようです(中には1万5千円程度の自治体もあるようです)。
医療費助成
母子(父子)家庭を対象に、親や子どもが病院で診察を受けた際の自己負担分を居住する市区町村が助成する制度です。
助成条件や助成割合は自治体によって異なりますが、保険診療の場合、自己負担額の全額が助成されることが多いようです。また、子どもだけではなく、親の医療費も対象になるのが特徴です。
離婚後は心身の調子を崩しやすかったりします。また、慢性の病気や歯の治療など、一定の期間通院が必要な疾病についても意外と医療費の合計額が高額になっていることがありますので、この医療費助成はお金の心配をせずに病院にかかれるありがたい制度と言えます。
減免制度や割引制度
ここまでは、手当や助成など、入ってくるお金を増やすための知識をお伝えしました。ここからは、出ていくお金を減らすための各種減免制度や割引制度をご紹介します。
ひとり親控除
納税者が母子父子にかかわらずひとり親であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。
ひとり親控除の控除額は35万円ですが、これは所得税が35万円低くなるということではなく、課税対象の所得から35万円を引くことができる、ということです。
例えば、所得税が5%の方ですと、0,05×35万円=1万7500円分、所得税が低くなるということになります(復興特別税は考慮していません)。
また、所得制限もあり、所得の合計が500万円以下の方に限ります。
国民健康保険や国民年金の免除
収入がかなり低い場合(ざっくりした目安として年収100万円以下の場合)、国民健康保険や国民年金の軽減や免除を受けることができます。
双方ともに、収入が少ない人にとっては負担感の大きい金額ですので、軽減や免除の措置を受けられるとかなり生活が楽になるかと思います。
ただ、こちらの減免は所得制限がかなり低いですので、多くの人が受けられる制度というわけではありません。
公共交通機関(電車やバス)の割引制度
児童育成手当を受給しているケースに対して、各自治体が設定している公共交通機関の割引制度があります。市区町村によって異なりますが、JR通勤定期乗車券は3割引と設定している自治体が多いようです。
また、児童扶養手当を受けている世帯に対して、都営交通(都電・都バス・都営地下鉄・日暮里・舎人ライナー)の全区間の無料乗車券が発行される制度などもあります。
あまり公共交通機関を利用しないという方には影響がないかもしれませんが、通勤距離が長い方や、子どもの送迎等で頻繁に電車やバスに乗られる方にとっては、ちりも積もれば大きな金額になる割引制度かもしれません。
その他
その他にも、上下水道料金の減免や粗大ごみの処理費の割引、また保育料の減免など、自治体によって様々な減免制度がありますので、一度自治体に問い合わせてみましょう。ひとつひとつは小さな金額かもしれませんが、その小さな金額が集まって、月額にすると数万円という大きな金額になっていたりします。
就労収入を増やす
ここまで、手当や助成金によって入ってくるお金を増やす方法と、減免制度の利用によって、出ていくお金を減らす方法についてお伝えしてきましたが、最後に、自分が働いて得る収入を増やす方法についてお伝えしたいと思います。
各種の就労支援
職業紹介
マザーズハローワークや自治体の就労支援相談の窓口では、ひとり親家庭専門の相談窓口があったり、紹介先企業があったりします。例えば、未経験の短時間勤務から始められる企業や、子どもが体調を崩した際の突発休が取りやすい企業などを紹介してくれます。
就労の前の支援
就労支援というと、仕事の紹介をイメージする方が多いと思いますが、様々な方面からの就労支援があります。例えば、就職試験に備え、面接の練習をしてくれたり、履歴書の書き方を教えてくれたりします。また、就労のためのメイク(お化粧)の方法を教えてくれたり、適正検査を使った職業選択へのアドバイスを聞けたりもします。
いきなり就労先の紹介では不安だという方は、まずはこういった準備的な支援を利用してみましょう。
自立支援教育訓練給付金
先ほど、資格取得のための勉強期間中、生活費を一部援助してくれる高等職業訓練促進給付金をご紹介しましたが、そもそも、資格を取得するための学校の費用などを補助してくれる自立支援教育訓練給付金というものがあります。
この給付金は、資格取得のためにかかった経費の60%が支給される制度です(支給の上限は修学年数×20万円、最大80万円)。児童扶養手当受給者が対象となります。
収入を増やすことの意味
各種手当や減免だけでは十分な生活はできない
ここまでお読みいただいた方はお気付きかと思いますが、各種手当や減免の制度の対象資格として、児童扶養手当受給者(もしくはそれと同程度)であることが求められる制度が多数あります。
確かに、児童扶養手当を満額受給できるような収入だとすると、そういった各種手当や減免の制度を賢く利用することで、ひとつひとつの金額は少額だったとしても、ちりも積もれば月に何万円、時には十万円以上の受給につながることもあります。
しかし、そういった制度を全て利用したとしても、児童扶養手当受給対象程度の収入では、子どもを大学に通わせることや、余裕のある生活は難しいと言わざるを得ません。
自分と子どものメンタルへの影響
離婚前後は自分に自信を無くしてしまっている人もいますが、働いて自立できるだけの収入を得るということは、自分の自信につながります。また、そんな風にいきいきと働き、生活を支える親を見ることは、子どもにとってもよい影響があります。
手当でつないで高収入獲得を目指す
ここまで、母子家庭(ひとり親家庭)向けの手当や減免制度をご紹介してきましたが、一番のお勧めは、「手当でつないで高収入を目指す」です。
と言いますのも、離婚直後は、心身ともに疲弊していることが考えられます。そのため、まずは、無理をせず、各種手当や減免制度を利用しながら何とかしのぎます。くれぐれも、家事も育児も仕事もと、生活の全ての責任を負わなければいけない重責や、「離婚しても子どもに不自由させたくない。」という気持ちから、オーバーワークにならないように注意が必要です。
また、子どもにとっても、お母さんの頑張りすぎはマイナスに働きます。先ほど、お母さんが頑張って働く姿は子どもの励みになると書きましたが、子どもは、同時に寂しい思いもしています。親の離婚により、片方の親と一緒に生活できない寂しさを味わうわけですが、同居親が就労のために子どもにかまってやれなくなると、子どもは2重に寂しい思いをすることになります。
一方で、これまでご紹介した手当の中で、月額の支給額が一番大きい項目は何だったかお分かりでしょうか。資格を取るために学校などに通っている間の生活費として支給される高等職業訓練促進給付金です。まさに、これを利用しない手はありません。
少し生活が落ち着いてきたら、次のステップとして、この制度を利用して資格を取得し、高収入が得られる仕事を目指していただければと思います。
今回は、一人親が離婚後に得られる手当などを中心にお伝えしてきました。まだまだ、日本は、ひとり親が子育てしやすい社会ではありません。しかし、離婚前から就労相談を受けたり、受給できる手当などを事前に知っておくことで、離婚後の生活をスムーズにスタートさせることができます。いつもお伝えしていることですが、衝動的で感情的な離婚より、理性的で準備を整えた離婚を目指してほしいと思います。
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