養育費

高所得者の養育費に関する考え方

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養育費といえば「算定表」ですが、あまりに高収入だと、算定表を使えない場合があります。今日は2,000万円以上の高収入を得ている方のための算定方法などについてお伝えします。

養育費の基本については、こちらをどうぞ。

幸せ養育費のすすめ
養育費における本当の「勝ち」とは?

   1 高額所得者の養育費の算定方法

まずは、養育費のおさらいです。

子どもがいる夫婦が離婚する場合、別居親が同居親に子どもの生活費として支払うお金のことを養育費といいます。
子どもの養育費は、実際に子どもを育てていくのにいくらくらいかかるか、という考え方からスタートするのが基本です。
曖昧な感覚で、「このくらいはほしい」と主張しても、生活への不安から、ついつい高額な金額を要求してしまい、別居親から拒否されてしまいます。
また、一緒に生活していなければ見えてこない細かい生活費もあります。そのため、大体で請求しようとすると、「そんなにかかっていないはず。」と言われてしまいかねません。

そのため、詳細な家計簿をつけるような感覚で、2,3か月お子さんにかかったお金をリストアップし、それをもとに計算した金額で話し合うのがいいと思います。

 

しかし、そうはいっても、一方はなるべくたくさんもらいたいし、一方はなるべく少なく抑えたいという気持ちがあります。そのため、話合いではなかなか決まらないこともあります。そんなときに利用するのが「算定表」です。
算定表は、お互いの収入及び子どもの人数や年齢別に養育費が示されている表です。話合いで決まらず、家庭裁判所の調停や審判になった際に裁判所が利用する表ですので、「どうせ調停(審判)になったらこの金額になる。」という基準として利用することができます。実際に調停や審判を行わなくても、大体の結果が予測できることになり、大変役に立つ表ということができます。

ただ、この表を見ていただければわかると思いますが、義務者(養育費を支払う方)の収入が2,000万円までしか載っていません。そのため、義務者がそれ以上の高額所得者の場合、どのように養育費を決めていくかが問題になります。

次は、義務者が2,000万円以上の高所得者だった場合の養育費の算定の方法について、主な3つの考え方についてご紹介します。

1-1 算定表を基にした考え方

まず一つ目の考え方は、算定表に載っていなかったとしても、算定表のもとになっている計算式に当てはめるという考え方です。

算定表は、分かりやすいように表になっていますが、その表を作成するもとになっている計算式があります。その計算式は、義務者や権利者の収入を数値として入れることで、養育費が計算されるようにできています。以下、その計算を見てみましょう。

① まず、基礎収入を計算します。
基礎収入=税込み給与×0.4 → (給与所得者は0.34~0.42をかけます 自営業の場合は、0.47~0.52をかけます)

② 子の生活費を計算します。(15歳~20歳は指数90、それ以下は指数55)
子の生活費=義務者の基礎収入 ×(55 又は90/100+55又は90)

③ 義務者が負担すべき養育費を計算します。
 養育費=子の生活費× (義務者の基礎収入/義務者の基礎収入 + 権利者の基礎収入)                     

この3段階の計算方法で養育費を算出することになりますが、ここで注目したいのは、①の基礎収入を求める計算式です。税込給与にかける数字に幅がある(0.34~0.42)ことに気付くと思います。これは、収入の額によって、公租公課が違ってくるからです。簡単に言うと、給料が高い人の方が税金の割合が高いような仕組みになっているのです。そのため、高額所得者の場合は、税込給与にかけるこの数字を小さくするというやり方で、基礎収入を調節するという方法が一つあります。

1-2 養育費のそもそもの意味にたち返る考え方

また、もう一つの考え方としては、そもそもの養育費の性格に注目する考え方があります。養育費は、子どもの生活費の全て(食費、住居費、学費、娯楽費等)を含みますが、一人の子どもの生活費に何百万円もかるなんてことはないわけです。ですので、実際の生活に即した金額で決めようという考え方もあります。

1-3 2000万円の上限を基準にする考え方

また、2000万円を大きく超えない金額であれば、算定表上の上限の養育費に多少上乗せする形で決まることもあります。

1-4 結局のところ、高額所得者の養育費はどうやって決めるのか

ここまで3つの考え方を紹介しましたが、結局のところ、どうやって計算するのでしょうか。基本的には、②の考え方、つまり、実際の子どもの生活にいくらかかっているのかを主張してもらい、①や③の考え方も考慮しながら話し合いを進めるというパターンが多いように思います。 例えば、高額所得者の傾向として、当たり前に子どもの教育費も高いものです。 習い事だって、数が多いだけではなく、名の知れた先生を自宅によんで レッスンをしてもらったり、高額な英語の通信教育教材を取っていたりします。 生活費も、買い物をするスーパーが高級だったり、すぐタクシーを使ったり するので自然と高額になります。 子連れの海外旅行に頻繁に行く人もいます。ですので、このような生活実態を踏まえて養育費の金額を決めていくことになります。

   2 高額所得者夫婦の注意点

2-1 高額所得者の落とし穴

これを読んでいる方の中には、「算定表からはみ出るほどの高収入なんて羨ましい・・・。うちは少ししかもらえないのに。」と思っている方がいるかもしれません。しかし、一部の高額所得者には落とし 穴もあります。 まず、自営業高額所得者は、安定的な支払いと言う点では、心配が残 ります。いつ景気が悪くなり倒産してしまうか分かりません。 また、半分フリーランスに近いような外資系証券会社なんかも、終身雇用ではなく、簡単にクビになるので要注意です。養育費が下がったからといって、 一度上げてしまった生活レベルを下げることはとても難しいものです。

2-2 養育費に妻の生活費は入らない

もう一つ注意が必要なのは、養育費はあくまで子どもの生活費であり、妻の生活費は入っていないということです。

例えば、夫が高収入なため、養育費として20万円もらえるとします。しかし、妻が無収入であった場合、妻の生活費は0円です。ここで、少し事例を見てみましょう、

夫:45歳 商社マン
妻:40歳 専業主婦
長男:5歳

夫婦は、7年前にお見合い。妻は、夫が商社マンであり、安定的に高収入を得られそうであったことから、一年の交際を経て結婚を決意しました。

しかし、やはり愛のない婚姻生活はうまくいかず、夫婦は気持ちがすれ違うようになりました。子どもができてからというもの、妻は子どもの教育にお金と時間をかけ、お受験のための塾に月10万円もかけていました。また、自分磨きも怠らず、ヨガやエステに通ったりもした。周囲のママ友も同じような経済状況であったため、ランチといっては昼からシャンパンを飲んだり、五千円はするイタリアンのコースを楽しんだりしました。

妻としては、子どもとの生活を充実させることで、夫への不満足を満たそうとしていたのです。しかし、やはり我慢ができなくなり、夫婦不和の結果離婚に至ってしまいました。妻は、夫の収入の高さから考えれば、少し自分が働けば、子どもの養育に困ることはないだろうと軽く考えていました。

実際、夫の収入が高額であったことから、養育費は25万円という高額な金額になりました。しかし、実際の生活があまりに惨めであることに妻は愕然とすることになります。
確かに子どもに月25万円かけられるのであれば、お受験のための塾代10万円をひいてもまだ15万円残ります。15万円あれば、5歳の子の食費をはじめとする生活費を賄うことに問題はありません。

しかし、妻は、自分の生活費のことを考えていなかったのです。財産分与といっても、エステに交際費用にとふんだんに使ってきたので、いくらも貯金できていませんでした。そもそも、婚姻期間が短く、分与対象となる財産の額が少なかったという事情もあります。また、「少し仕事をすれば」と軽く考えていたのも、認識が甘かったことを思い知らされる結果となります。婚姻当時のプライドが邪魔して、近所のママ友と顔を合わせる可能性のあるスーパーのレジ打ちやレストランのウエイトレスはできそうもありません。かといって、工場で軽作業する根気や忍耐もありません。もちろん、正社員の事務職に応募しても、子持ちで残業のできない妻が採用されることはありません。

妻は、細々と内職をするしかありませんでした。そこで得られる収入は月額5万円程度です。もちろん、養育費は子どものためのお金だと分かっていましたが、子どもの生活費が25万円、自分は5万円というふうに完全に生活をわけることはできません。二人で30万円ということになります。

以前住んでいた地域は家賃が高く、転居するしかありませんでした。また、生活費の三分の一を塾代に使うこともできず、子どもの習い事も減らしました。離婚したこともあり、子どもは受験に失敗しました。エステやヨガも、もういけません。ママ友からのランチの誘いも何かと理由をつけて断り、昨日の夕飯の残りを食べるしかなくなりました。

この事例からも分かるように、いくら養育費が高くても、完全に母子の生活を分離できるわけではなく、全体として生活のレベルは落ちざるを得ないのです。

   3 まとめ

高額所得者の養育費の場合、支払う方も支払ってもらう方も、弁護士に依頼した方がいいように思います。高額所得者は財産内容が複雑である上に、通常の算定表が利用できませんので、過去の審判例等を挙げながら主張をしていかなければならないからです。

また、先の例のように、いくら養育費が高額であっても、母子の生活全体のレベルが維持されるわけではありません。また、高所得者の中には、安定的に高所得なわけではない人たちもいます。

大切なことは、「夫が高収入」→「養育費が高額」→「離婚後も生活が安定」といった風に簡単に考えるのではなく、離婚後の生活を具体的にイメージし、それでも離婚を選ぶかどうかを慎重に考えることだと思います。

逆にいうと、きちんと先を見通せていれば、生活のレベルが多少下がったっていいわけです。先の例でも、彼女が下町に転居し、子どもも地元の公立小学校に通うことになったとします。ママ友の雰囲気も変わり、みんな近くのスーパーでパートをしたり、何とか生活を切り盛りしているレベルです。母子家庭の仲間も周囲にいるかもしれません。妻がそんな環境で一生懸命働き、子どもを育てていくことができれば、愛情のない冷たい家庭で子育てするよりよっぽどいいでしょう。妻としても、充実した毎日が過ごせるかもしれません。

離婚の際に大切なことは、生活レベルの維持ではなく、生活レベルが落ちることを覚悟した上で生活設計ができているかどうか、ということではないでしょうか。

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