離婚一般

財産分与時に居住用不動産で失敗しないための3つの視点

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離婚の際、財産分与をする人が多いと思います。財産と言っても、その対象は、預貯金や不動産だけでなく、株式や証券、積立型の保険や自動車、高価な宝石や家具など多岐にわたります。もちろん、プラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も分与対象になります。婚姻期間が長ければ長いほど、分与対象の財産が多ければ多いほど、財産分与が複雑になります。

今日は、その中でも、オーバーローンになる居住用不動産の分与について考えてみます。

   1 考えておくべき3つの視点 

1-1 夫が住むか妻が住むか、それとも売却か賃貸か

所有している不動産をどうするか、まずは、4つの選択肢があります。夫が住むのか妻が住むのか、もしくは2人とも住まずに売却するのか、どちらかが所有するが居住せずに賃貸に出すかという選択です。お子さんがいる場合、だれが親権者になるのかということや、居住年数の長短、売却益の有無やほかの分与対象の財産との兼ね合いがあります。例えば、子どもの親権者とならなかった方の親ががらんとした大きな一軒家に住み続けるのは経済的にも心情的にもしんどいかもしれません。また、再婚が予想される年齢の場合、新しい配偶者との兼ね合いもあります。逆に、子どもを抱えた母親が継続して住む場合、子どもの環境変化を最小限に抑えられるというメリットがある反面、住宅やローンの名義が父親になっていたりすると、権利義務関係が複雑になってしまったりします。

1-2 オーバーローン状態かどうか

不動産を売却した場合、残ローンを返したとしても利益が残るかどうかも考えておく必要があります。例えば、郊外の一軒家などば、まだまだ築浅であっても、買い手がなかなかつかず、値崩れしてしまったりします。オーバーローン(残ローンの方が売却益より多い)の場合、他の財産との兼ね合いもありますが、「住み続ける」という選択をする人もいます。

いずれにしても、不動産の査定が必要になってきます。本格的に不動産鑑定士に依頼すると、費用や時間がかかってしまいますので、大手不動産会社に売却した場合の査定を依頼し、何社かの平均をとるというやり方が一番効率がいいように思います。

1-3 不動産と住宅ローンの名義はだれか

不動産と住宅ローンの名義が誰になっているかも問題です。不動産の名義について、「全部、夫の名義になっているので財産分与の対象にはならないのでしょうか。」と質問されることがあります。基本的に、財産分与の対象となる財産は、婚姻後から別居時(離婚時)までに夫婦で生み出した財産ということになりますので、誰の名義になっているかは関係ありません。ただ、頭金を夫の実家が支払ったとか、夫の独身時代の貯蓄で賄ったという事情があれば、その部分については共有財産とはいえないことになります。

また、不動産や住宅ローンの名義の書換を考える場合、先に銀行に問い合わせが必要です。会社員である夫から専業主婦である妻へのローン名義の書換などは、いくら当事者同士が合意していても、銀行が了解しないことが多いからです。

   2 居住用不動産の分け方いろいろ

2-1 婚姻期間が短く、不動産を売却したいけれどオーバーローンの場合

夫:35歳 商社マン
妻:34歳 会社員

夫婦は5年前に結婚。子どもはいない。お互いに蓄えがあったことから、結婚してすぐに頭金を出し合ってマンションを購入。名義は半々、住宅ローンはペアローンとした。

性格の不一致から離婚を考えるようになったが、居住用不動産の扱いに悩むこととなった。購入当時より景気が悪くなっていることもあり、オーバーローンが予想されたからである。ただ、夫婦ともに、心機一転のため転居を希望しており、住み続けたいとは思っていなかった。

どちらも住みたいとは思っていない、しかし売却しても損が出る、という状況で二人が選択したのは、夫が取得した上で投資用マンションとして所有するという方法であった。夫は収入も高かったことから、単独ローンへの書換が可能であった。また、景気は下がっていたが、賃料にはさほど影響が及んでいなかったため、毎月のローンを上回る家賃収入が見込めたからである。夫としては、住宅ローンを支払ってもなお余剰が生まれるため、不動産を分与されることに何ら不満はなかった。妻としても、早くすっきりして次に進みたいという気持ちや不動産の運用が面倒だという気持ちもあったため、現金での分与を望んでいた。

通常、オーバーローンになる不動産はゼロカウントもしくはマイナスカウントになると弁護士から言われたが、夫としても、確実に収益が見込める不動産を取得した上、現金の分与まで求めるつもりはなく、不動産を夫が、預貯金を妻が取得する形で決着がついた。

2-2 母親が子どもと継続居住する場合

夫:53歳 会社員
妻:50歳 専業主婦
長男:15歳
二男:10歳

夫婦は、結婚20年目を迎える。長い間、家庭内別居状態であったが、子どもの後押しもあり、離婚することになった。これまで家族が住んできた一軒家は、すでにほとんどローンを支払い終えており、売却してもオーバーローンにはならなさそうであった。しかし、築20年近く、2人の男の子を育てあげた家のいたみは相当で、売却してもいくらにもならない状況であった。一方、預貯金に関しては、頑張って住宅ローンを返済してきたことも影響し、200万円程度が残っているだけだった。

妻は、子どもの生活環境を変えたくないと考えていた。また、転居したとしても、子どもがそれぞれ個室を持てるような賃貸物件に住む経済力はなかった。そのため、不動産を妻が取得し、200万円程度の預貯金を夫が取得することとなった。不動産の名義は何とか夫から妻に書換が可能であったが、住宅ローンは妻が専業主婦であるため書換が難しそうであった。そのため、ローン完済までの2年間は、養育費の代わりに夫が住宅ローンを支払うこととなった。

2-3 夫が継続居住する場合

夫:40歳 会社員
妻:40歳 パート

夫婦は結婚10年目。夫の浮気から離婚に至った。財産は居住しているマンションと預貯金1,000万円である。所有不動産と住宅ローンの名義は夫である。夫婦ともに住み慣れたマンションに継続して住み続けることを希望していた。

しかし、妻が居住したとしても、夫から妻にローンの名義を書き換えることはできない。そのため、名目上は夫がローンを支払うが、毎月妻から夫に家賃を支払う形を取る必要があった。しかし、妻としては、この先何十年も夫と金銭的なかかわりを持つのが嫌だったこと、家賃を支払っても、いつローンの不払いが発生するか分からないことなどを考えると、継続居住を諦めるしかなかった。一方、売却したとしても、オーバーローンになる予定だったため、夫が継続居住することとなった。

本来であれば、オーバーローン物件はマイナスもしくはゼロカウントであるため、預貯金1,000万円を500万円ずつ、もしくは夫の方が不動産のマイナス分多く分与されることになる。しかし、妻としては、住み続けたいと思っていたマンションを諦めることになり、また、同程度のレベルのマンションの家賃より安いローン返済額で住み続けることができる夫への嫉妬もあった。夫としても、その気持ちが理解できたため、預貯金を多めに妻に分与することで決着がついた。

   3 まとめ

以上のように、それぞれの事情によって、個別的な判断が必要になるのが不動産の分与です。弁護士に依頼するほどのことはないけれど、不動産の分与で迷う場合は、法律相談を受けることをお勧めします。すでに不動産の査定を終え、オーバーローンになりそうかどうか、夫婦のどちらが取得を希望しているか、ほかの分与対象財産は何かなどを具体的に把握した上で相談をすれば、30分の相談時間でもかなりの成果が上がると思います。

また、法律的な要素だけではなく、子どものことや、夫婦不和に陥った家に住み続けるしんどさ、再婚の可能性といった心情面についても考えておく必要があるでしょう。一円でも多く財産を取得するのが目的ではなく、離婚後の生活を心身ともに健やかに送るための財産分与を目指してほしいと思います。

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