離婚一般

夫の子連れ別居(連れ去り)が増えているわけ

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ここのところ、妻ではなく夫が子どもを連れて別居するパターンが増えているように思います。
今日はその理由を考えてみます。

   1 共働きとイクメンの増加

1-1 典型的な夫婦を例に

日本はまだまだ専業主婦が多く、結婚したり子どもが生まれたりして仕事を辞める女性も少なくありません。しかし、離婚に関わる仕事をしていると、「共働き夫婦が増えたなぁ。」と実感することがあります。また、育児を積極的に手伝う男性にも出会うことが多くなりました。
例えば、以下のような夫婦が典型例です。

夫:35歳 都市銀総合職
妻:36歳 メーカー総合職
長男:2歳

夫婦ともに高いキャリアを誇り、妻は出産や育児でキャリアチェンジをするつもりはない。
夫婦ともに仕事を大切に思っているが、育児意識も高く、積極的に子育てに参加。
妻は時差出勤で朝7時には家を出る。夫は朝の子どもの世話と保育園の送りを担当。
妻は午後5時には仕事を終え、保育園にお迎え。
妻が子に夕食を食べさせ終える頃に夫が帰宅。夫が子どもと入浴。
その後、残りの家事と子どもの寝かしつけを日によって交代で行う。
子どもが熱を出せば仕事を休める方が休んで看病。双方の親も大活躍。
時に妻は泊付き出張。夫が時間休を取って対応。

こんな夫婦が不仲になり、離婚話が持ち上がるようになると、別居方法でもめることになります。というのも、妻が専業主婦もしくはパート程度であれば、妻が子どもを連れて「実家に帰らせてもらいます。」というパターンになりますし、子どもを置いて出て行かれても逆に困るという夫が多いものです。これは、このような夫婦の場合、「どちらが子どもを連れて別居するか」でもめることになります。それは、どちらが親権者になるかという問題に直結する大問題なのです。

1-2 夫がイクメンすぎても困る!?

このような夫の特徴は、「できない家事・育児項目がない」ということです。例えば、「寝かしつけはママじゃないとだめ。」「病気のときはママがいないと不安がる。」「ごはんはママしか作れない。」といったこともなく、夫もすべての家事・育児ができるのです。キャリアウーマンを妻に持つ夫は、丸一日子どもの面倒をみる機会も多く、「これはできない。」は許されないのです。
また、担ってきた育児・家事の量も、妻とほとんど変わらないことが多いものです。最近は、ハイキャリアでもワークライフバランスをきちんと考えている男性が多いように思います。
そして、世話をすればするほど子どもはかわいく感じるものです。このような夫が妻の「子どもを連れて実家に帰らせてもらいます。」を許すわけがありません。

1-3 妻ができるのも紛争の一因!?

この例のような妻は、キャリアに対する意識が強く、自分に自信があります。給料も夫に負けないくらいあったりします。妻が年上であることも多く、その場合はこの傾向がもっと強くなります。この点だけを取ると、頼れる妻で決して悪いわけではありません。しかし、離婚の局面になると、この「強さ」が夫婦の紛争を大きくすることがあります。
というのも、このような妻は、離婚後、夫からの援助がなかったとしても、経済的に安定した生活を送ることができます。また、仕事と育児を両立してきたという自負もあります。これまで夫が担っていた家事・育児の部分をベビーシッターに任せればいい、といった程度にしか考えていないことがあります。
また、自尊心やプライドの高さもあだになることがあります。
さらには、これまでの生活や離婚を「失敗」「人生の汚点」と考え、消し去ろうとします。ですので、夫と完全に縁を切ることを望み、離婚後に子どもと夫が面会交流することを嫌ったりします。
「養育費もいらない」「子育ての援助もいらない」「面会交流もさせたくない」という妻の雰囲気を感じ取ると、断然夫は身構えますよね。

1-4 その他の要因

こういう共働き夫婦の場合、祖父母の出番が多いことも特徴です。病気対応や保育園の送迎要員などで祖父母が活躍するパターンが多くなります。そうすると、祖父母にとっても思い入れの強い大切な孫ということになり、紛争当事者が増える原因となります。

   2 離婚への道のり3パターン

2-1 同居のまま離婚協議

離婚協議の間、夫婦のどちらが子どもを監護するかが決まらず、結局同居のまま離婚協議を進めることもあります。しかし、ご想像のとおり、一緒の家に住みながら離婚の話を進めるのは心理的に負担になるものです。また、この後に控えている親権争いのことを考えると、双方が競って子どもの世話をしようとしたりと、いらぬ紛争が起こったりします。

2-2 交代監護をしながら離婚協議

どちらが監護するかは決まらなかったものの、同居はもうできないまでに夫婦が破たんしている場合、別居した上で交代監護という方法を取ることもできます。しかし、いくら近くに住んだとしても、負担がかかるのは子どもです。行ったり来たりすることで体力的に消耗するだけでなく、環境がころころ変わることによるストレスや、双方の親に気を遣わなければならない気疲れの原因となります。

2-3 妻が実力行使に出る

共働きと言えども、やはり妻の方が多めに育児・家事を担っているというケースもよく見られます。また、祖父母の援助にしても、妻の祖父母が手伝っていることが多く、妻の方が別居後の補助も受けやすい環境にあるという理由もあります。そんな場合、夫婦間で話合いがついていなくても、妻がある日子どもを連れて出て行ってしまうことがあります。「いついつ出ていくからね!」と言い渡していることもあれば、夫がある日家に帰ると妻も子どももいなかったというパターンもあり得ます。

   3 最近見られる新しい別居パターン

最近時々あるのが、妻が子どもを連れて別居しようとする動きを察知した夫が先に子どもを連れて別居に踏み切るというパターンです。こういう行動に出る夫の目的は2つあります。1つは本当に親権を狙っての行為です。他方、親権は諦めるつもりですが、できるだけ面会交流を多く確保するため、または、妻が子どもを連れて音信不通になるのを防ぐため、という目的のために子連れ別居を強行する夫もいます。先ほど書いたように、共働きの妻の中には、夫の協力を一切必要としなかったり、一切縁を切ろうとするある意味強い女性がいたりします。夫はその強さを十分に理解していますので、先に手を打つという手段に出るのです。

別居しないままの離婚協議もしんどい、でもどちらが子どもを連れて別居するかも話がつかない、かといって交代監護も子どもに負担がかかる。一体どうすればいいのでしょうか。

残念ながら決まった答えはありません。まずは親権の話合いを先行させ、別居した上でその他の条件を協議する、同居のままお互いの弁護士を通して協議する(本人同士で協議するよりまし)、比較的子どもに負担がかからない交代監護の方法を模索する、などそれぞれの夫婦と子どもにあった方法を見つけるしかないのです。

本来、このようなハイキャリアで子育てに意欲のある夫婦はとても監護能力が高い2人のはずです。無断で連れ去るような強硬手段にでるのではなく、賢明な判断と根気強い話合いで納得のいく結果を導き出してほしいと思います。

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