逆DV・逆モラハラの実態
逆DV・逆モラハラとは妻から夫に対する暴力やモラハラ行為のことです。そもそもDVやモラハラは男性から女性へと決まっているわけではありませんので、わざわざ「逆」をつけなくてもいいように思われますが、やはり世間のイメージではDV・モラハラと言えば断然「DV夫・モラハラ夫」です。
ですので、妻からの暴力やモラハラ行為であることを強調するために「逆」という言葉を付けているわけです。以下では、妻から夫への逆DV・逆モラハラの実態をお伝えします。
意外と多い逆DV・逆モラハラ
夫が妻からDVやモラハラを受けるのはかなり例外的でレアケースだと思われるかもしれませんが、意外とそうではありません。
以下の統計は、内閣府が行った調査結果ですが、女性は3人に1人は被害体験があると回答したのに対し、男性は約5人に1人が被害体験ありと回答しています。
逆DV・逆モラハラは相談場所が少ない
先ほどと同じ内閣府の統計から、相談件数を見ることができますが、男性の方が圧倒的に相談をしていない人が多いことが分かります。
女性は、約58%の人が相談しているのに対し、男性は約27%です。当センターに相談に来られる男性も「男なのにDV被害を受けているなんて恥ずかしくてどこにも相談できなかった」という方もおられますし、妻の言動が逆DVや逆モラハラにあたることに気付いていなかったという方もおられます。
よくある逆DV・逆モラハラの例
先ほども相談者の声としてご紹介しましたが、自分が逆DV・逆モラハラの被害者であることに気付かない人もいます。自分より体も小さいし、力も弱い妻からまさか自分が被害に遭うなんて、と考えてしまうからです。
しかし、力も弱く、体が小さい妻からでも精神的DVはもちろんのこと、身体的DVも受けることが十分考えられます(先ほど紹介した内閣府の統計においても、一番多いのは身体的DVとなっています。)
きっと、このコラムをお読みのみんさんの中には、「もしかしたらDVかもしれない」と思いつつ、まだ確信が持てずにいる方もおられるかもしれません。以下では、逆DVや逆モラハラにありがちな言動について紹介します。
身体的逆DV
男性より力が弱いと言っても、女性の暴力で男性が怪我をさせられることもあります。例えば、刃物を使ったり、物を投げるという方法があります。
また、男性は、自分が暴力を振るってしまうと即DVになるという認識が強い人もおり、そういう人はやり返すことはおろか、防御すら躊躇することもありますので、それに付け込んだ妻に怪我をさせられることもあります。
身体的な逆DV事例
Aさんの妻は、気に入らないことがあるとすぐにイライラした態度を見せ、言動が乱暴になります。そのイライラが極限に達すると、大きな声で暴言を吐きながら、殴りかかってきます。いつもAさんは怪我をしないように防御していますが、Tシャツを引っ張って破られたり、体をひっかかれてあざになったこともあります。
また、腹が立つとすぐに手元にあるものを投げてきます。以前、テレビを見ている妻に話しかけたところ、虫の居所が悪く、リモコンを投げられました。リモコンはAさんの頭に当たり、Aさんは流血。警察を呼ぶ騒ぎとなりました。
精神的な逆DV・逆モラハラ
精神的な逆DV・逆モラハラも多く、当センターにご相談に来られる逆DVケースの大半が精神的なものです。以下にどんな精神的逆DV・逆モラハラがあるかご紹介します。
収入が少ないことをバカにする
夫の収入が少ないことに対して、毎日のようになじったり、バカにしたりする妻がいます。収入が少ないことだけではなく、「頭が悪いから出世しない」とか「仕事ができないから収入が上がらない」など、夫の能力が低いと主張することでダメージを増幅させる妻もいます。
ちなみに、こういったことは実際の収入額の多少にかかわらず、発生します。収入が1000万円以上あったとしても、妻の攻撃の的になってしまうことがあるのです。
人格否定
相談者の方からよく聞かれるのが「人格を否定される」という言葉です。例えば、「あなたは何をやってもダメ」、「だからあなたは人として信用できない」、「考え方が非常識すぎてついていけない」、「頭がおかしいんじゃないの」など、こういったことを毎日のようにきつい口調で繰り返されていると、何だか本当に自分がだめな人間のように感じられ、辛い気持ちになってしまいます。
長時間の議論を強要する
議論と書きましたが、実際には、自分の意見をとうとうと話し続けるという妻がいます。
Bさんの妻は、気が強いタイプではありますが、決して声を荒げたり暴力を振るうタイプではありませんでした。そのため、Bさんは、まさか自分が妻から逆DVにあうとは思いもしませんでした。
しかし、Bさんの妻は、何か気に入らないことがあると、話合いという拷問を仕掛けてきます。ある日、友人との集まりで帰りが遅くなったBさんに対し、なぜ遅くなったのか、その間、自分(妻)がどのような思いをしていたか、妻子のある男性がそんな時間まで外で飲んでいることが世間的にどう見えるか、そもそもそんなお金がどこにあるのか、そんな言葉で追い詰めてきます。Bさんは、一言でも反論すると余計に長くなることが分かっているので、黙ったまま下を向いていますが、それでも妻の話は終わりません。
途中でいたたまれなくなって、「明日も仕事だからそろそろ休ませてくれ」と頼みましたが、「聞いているのか」と火に油を注ぐ結果に。気付くと、深夜2時まで4時間にわたって妻の説教を聞き続けたのでした。
過度な束縛や管理
夫に対し、過度に束縛したり管理をする妻がいます。夫が一言「明日は会社の飲み会だから」と言うと、「誰が一緒か、女性はいるのか、どこに飲みに行くのか、何時に帰ってくるのか」といったことを詳細に聞きたがります。
少しでも夫が説明が面倒だという素振りを見せると、夫として妻に配慮が足りないとか、自分だけ息抜きしてずるいなどと文句を言い、最終的には行かせないようにします。
また、携帯電話や手帳をチェックしたり、リビング以外で電話することを禁じたり、ときには、夫の両親との接触を制限するなど、とにかく夫と外部の関係を断ちたがります。
このような妻の言動は、夫への愛情故ではなく、夫を孤立させることで、自分が置かれている立場(DVを受けているという立場)に気付いたり、誰かに相談したり支援を受けることを防ぐことが目的です。
夫の会社や子どもを使って脅す
私は非力だからといって、何か気に入らないことがあると「あなたの会社の上司に相談する」と脅されることもありますし、そんなあなたに子育てを任せられないと子どもとの接触を断たれることもあります。
ある相談者の方は、家族で同居しているにも関わらず、既に2年間にわたって、子どもとまともに話ができていないとのことでした。その方の妻は、子どもが起きている間は夫がリビングに入ってくることを禁止し、子どもに対し、父親は「悪者」であると伝えていました。
子どもを味方につけた逆DV
妻は、子どもを武器に夫に精神的逆DVを行うことがよくあります。例えば、先ほどの収入に関する不満や人格否定を子どもの前で繰り返したり、時には子どもに同意を求めたりします。
さらにひどくなると、「〇〇ちゃんはこんなバカな男の人と結婚しちゃダメよ」などと言い、夫の父親としての立場も危うくします。
こうなると、子どもは母親と一緒になって父親のことをバカにします。夫にしてみれば、妻からも子どもからもバカにされ、生きる気力を奪われるような気持ちになります。
経済的な逆DV・逆モラハラ
働いて稼いでいるにもかかわらず、経済的逆DVの被害者になる夫がいます。
収入に比べて極端に低い小遣いしかもらえず、昼食も満足に食べられず、必要な衣類も買ってもらえない一方で、妻は、子どものためには湯水のようにお金を使っていたりします。
こういった妻は、二言目には「お金が足りない」と述べ、夫の稼ぎが少ないから小遣いが少ないのは仕方がないという態度を取ります。
逆DV・逆モラハラの妻との離婚を考える
離婚を迷う理由
こんな風な辛い目に遭っていたとしても、すぐに離婚を決意できる人はあまり多くありません。みなさんが離婚を決断できずに迷う理由を以下にご紹介します。
子どもが心配
先ほどの内閣府の統計を再度見ていただければと思いますが、男性も女性も子どもが理由で離婚を思いとどまっています。
内容を詳しく見てみますと、子どもをひとり親家庭にしたくなかったとか、子どもにこれ以上余計な不安を抱かせたり心配させたくなかったという理由が上位にきています。
また、ご相談に来られる方の中には、子どもと会えなくなることを心配する方も多くいます。夫にDVする妻だったとしても、子どもはとても大切にしていることもよくありますので、夫が親権を取れる可能性は小さくなります。加えて、面会交流に関しても、妻の意に反して離婚した後、腹いせで会わせてもらえないのではと心配する人も多くいます。
相手には自分が必要
DVはある種の共依存関係だとも言えます。妻からひどい目にあわされていてもなお、妻には自分が必要だと感じ、妻から離れることができません。
共依存は不健全な関係で、お互いを愛しているように見えて、大切なのは自分だけです。相手には自分が必要だと感じる裏には自分が一人になって孤立したくないという気持ちが隠れています。
上述の統計を見ていただいても、「別れると寂しいと思った」「別れると孤立すると思った」という回答が比較的多くなっています。
こんなことで離婚を決意していいのか(世間体)
男性としては、自分より体も小さくて、力も弱くて、社会的地位も低いはずの妻から受けたDV・モラハラ行為によって離婚を選択してよいものか、という感覚があります。
そもそも、妻の行為が逆DV・逆モラハラに当たるということも思いつかず、単なる嫌がらせや性格のきつい妻という程度の認識しかない男性も多いのです。そのため、離婚を切り出すことは結婚生活をあきらめることであり、それは自分の我慢が足りないのではないか、自分の力不足なのではないか、といった躊躇につながります。
いつかは状況が良くなるのではなないか
逆DVも通常のDVと同様にDVサイクルが見られます。そのため、ずっとDVが続いているのではなく、ときに優しかったり、夫婦としての楽しい時間があったりします。そのうちDVは治るのではないか、という期待もあります。
また、束縛や管理は「愛」と錯覚してしまうこともあり、まだ夫婦としてやっていけるのではという望みを捨てきれないことがあります。
離婚を迷っている段階でできること
相談機関に相談する
逆DV・逆モラハラについて、公的な機関だけでも色々なところに相談が可能です。
- DV相談ナビ(男女共同参画局)
- 配偶者暴力相談支援センター(男女共同参画局)
- インターネット人権相談受付窓口(法務省)
- 市役所や区役所の婦人相談や家庭相談
以上に紹介した相談先は無料ですが、有料の夫婦問題カウンセラーに相談する方法もありますし、身の安全を確保する、いざという場合の相談履歴を作っておくという意味でも警察に相談しておくこともお勧めです。
当センターでも離婚カウンセリングを行っております。是非、おひとりで悩まずご相談ください。
DV被害者のカウンセリングやプログラムを受ける
DV被害者を対象としたプログラムやグループカウンセリングもお勧めです。こういったプログラムはDVに特化していますので、妻の言動のメカニズムを知ることができます。また、こういったプログラムは大抵グループで行われますので、他人の意見を聞くことができたり、みんなで学びを助け合ったりできる点も大きなメリットです。
以下にお勧めのプログラムをご紹介します。
夫婦カウンセリングに通う
人は簡単には変わりませんし、DVやモラハラもそう簡単に治りません。しかし、第三者を入れて話し合うことで、生活における具体的な言動について話し合い、修正していくことは可能です。
また、夫婦カウンセリングを通じて、妻への理解が深まり、「これではやっていけない」と離婚に踏み切るきっかけになる人もいます。
残念ながら、夫婦カウンセリングができる公的な相談窓口はありませんので、ネット検索などで信頼のおけるカウンセリングルームを探してみましょう。(当センターの夫婦カウンセリングはこちらです。)
逆DV・逆モラハラを受けた夫が離婚を決意するとき
そんな迷いの中で、一体何をきっかけに離婚を決意していくのでしょうか。これまでのご相談者のみんさんの声を参考に以下にまとめます。
心身の不調を自覚したとき
例えば、暴言や暴力を継続的に受ける中で、心身が不調に陥ることがあります。
- 妻の声を聴くと動悸がしたり、耳なりがする
- 夜眠れない
- 食欲がなくなり、体重が減る
- 趣味や友達との付き合いを楽しめない
こういった症状を自覚することで、このままでは自分の心身の健康を失ってしまうことに気付き、離婚を決断します。
また、ふとした瞬間に「自分らしさ」を失っていることを自覚した場合も同様です。これまでとは違うネガティブな考え方や何をやっても自信が持てないし楽しめないという自分に気が付き、このままでは自分が自分ではなくなってしまうという危機感を抱くのです。
仕事に支障がでたとき
上述の心身の不調の結果、仕事で大きなミスをしてしまったり、集中できずに仕事が進まないことがあります。
また、妻が会社にまで色々な連絡をしてきた結果、会社での立場も危うくなることがあります。そうすると、このままでは仕事も失ってしまうのではという危機感を抱き、離婚を真剣に考えるようになります。
子どもに悪影響を及ぼしているとき
妻のDV・モラハラが子どもの前で繰り広げられていると、子どもには様々な悪影響があります。母親の真似をして父親に偉そうな態度を取ったり、暴力的な言動が増えたりします。
また、不登校や引きこもりといった不適応に陥る子どももいます。
自分が夫婦関係を解消しない限り、子どもは妻の暴言や暴力を見続けることになるため、子どものためにも離婚を決断するという人もいます。
逆DV・逆モラハラ妻との離婚
逆DV・逆モラハラを理由に離婚できるか
夫が離婚を決意したとしても、多くの妻は、夫の突然の裏切りが許せない気持ちや生活の不安から、そう簡単には離婚に応じてくれません。
妻が離婚に応じてくれない場合、協議離婚や調停離婚は望めず、離婚裁判をするしかありません。その際、逆DVや逆モラハラが離婚原因に当たるかどうかが問題となります。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
暴力がある場合
妻から夫に対する暴力がある場合、上記の二もしくは五に当たりますので、離婚理由になり得ます。そのため、万が一、訴訟になったときのことを考え、怪我をした写真や病院の診断書を証拠にとっておきましょう。
暴力がない場合
精神的DVや逆モラハラの場合も同じく二もしくは五に該当しうるのですが、その程度や頻度、内容や悪質性などを総合して判断されることになり、証明が難しくなります。例えば、以下のようなものを証拠として残しおくことが考えられます。
実際の離婚の手順
先ほど、逆DVや逆モラハラが離婚理由にあたるかという検討や、そのために残しておくべき証拠について記載しましたが、実は、そんなに重要ではなかったりします。
なぜなら、妻が素直に離婚に応じてくれなかったとしても、すぐに高額な弁護士費用を払って離婚裁判まで進む人はそう多くはないからです。
では、実際にはどのようなステップになるのかを以下にご紹介します。
別居する
逆DV・逆モラハラの場合、別居がひとつ目のゴールだと言っても過言ではありません。もちろん、最終的なゴールは離婚ですが、先ほどお伝えしたように、妻が応じてくれないからといって、すぐに裁判までする人は少数だからです。
以下では、まずは別居が必要な理由をお伝えします。
心身の安全を確保する
同居で離婚協議を進めるのはリスクが高すぎます。激高した妻から心身を傷付けられるかもしれません。身体的なDVはもちろんのこと、精神的DVも同様です。人格否定や暴言、無視したり怒鳴ったりと離婚協議というより一方的に責められることになってしまいます。
気持ちが揺さぶられるのを防ぐ
身体的な逆DVも精神的な逆DVも夫の気持ちを揺さぶったり、コントールすることが得意です。
例えば、離婚したいと切り出した途端、「子どもを見捨てるのね」等と夫の罪悪感を駆り立ててくるかもしれません。また、「今度離婚を口にしたらどうなるか覚えておいて」などと身体的暴力をにおわせるかもしれません。
そうすると、夫は恐怖心や罪悪感などで動けなくなってしまいます。
自分自身を取り戻す
妻と心理的・物理的距離を置くことで、本来の自分が少しずつ戻ってくるような感覚になります。混乱して集中できないとか、大切なことを決められないという心理状態から抜け出すことで、冷静に今後のことを考えることができます。
別居後の諸々の条件を取り決める
別居後、すぐに離婚協議が始まればいいのですが、大抵の場合、DV妻・モラハラ妻は簡単には応じてくれません。時には、応じるような素振りをみせつつも、法外な財産分与や慰謝料を請求し、「この条件をのむなら離婚してあげる」という態度を取ります。
そのため、以下のような別居条件を取り決めておきましょう。
婚姻費用
大抵の場合、夫から妻に支払うことになりますので、夫がわざわざ自分から支払いについて話さなくてもいいように思うかもしれません。
確かに、同居当時は妻が財産管理を行っていたとしても、別居後すぐに給与の振込口座を変更し、算定表に基づく婚姻費用を一方的に振り込むという方法もあります。
しかし、水道光熱費は夫の口座から引き落とされるとか、保険や学資保険、携帯電話や通信費などを夫が支払っているケースも多く、諸々を引くといくばくも残らないということがあります(住まいが賃貸の場合は特にそうです)。
法律上は、それらを差し引いた金額を振り込めば問題はないのですが、逆DV・逆モラハラ被害者である夫がそこまでするのは勇気がいることです。また、子どもがいる場合は、子どもの生活は守らないといけないとの気持ちもあり、簡単ではありません。
そのため、婚姻費用に関する話合いを夫から求めるのもひとつの方法です。
面会交流
突然に別居をするわけですから、その後、子どもと円満に会わせてもらうことは簡単ではありません。
しかし、まだ離婚をしていなかったとしても、面会交流を求めることができますし、親の腹いせに子どもに合わせないという主張が通るわけでもありません。
子どもの年齢や親子関係にもよりますが、別居後すぐに面会交流について話し合うことも可能です。
再協議時期
今は離婚に応じてくれなかったとしても、時間の変化により、「条件によっては離婚を考えてもいい」と妻の気持ちが変化することもあります。
また、だらだらと別居期間を長引かせないためにも、再協議時期を決めておく方法もあります。
第三者を入れた協議の方法
別居の際の婚姻費用や面会交流を取り決める際、逆DV・逆モラハラの場合は直接の夫婦間協議は難しく、第三者を挟んだ方法を選択することになります。以下に、第三者を挟んだ離婚協議として、3つご紹介します。(妻が離婚に合意した場合は、同様に離婚協議も可能です。)
家庭裁判所の調停
家庭裁判所の婚姻費用や面会交流に関する調停を申し立てることが考えられます。以下に、メリットとデメリットをお伝えします。
家裁利用のメリット
費用が安価
申立時に数千円かかりますが、その後は何回話し合っても無料です。
話合いが前に進む
これまで、あまり反応してくれなかったり、理不尽な主張ばかりしていた相手であっても、家裁の調停で調停委員が間に入ることで話合いが前に進むことがあります。
デメリット
解決まで時間がかかる
家裁の調停は、解決までの時間が長くかかるのがデメリットです。離婚まで1年かかったというケースも珍しくありません。
紛争性が高まる
家庭裁判所に申し立てられた方は「訴えられた」ような気持ちになったりします。また、裁判所というだけで、「そっちがその気なら」と戦闘モードになる人もいます。その結果、紛争性が高まる恐れがあり、穏便に解決したいという人にはあまり向いていません。
弁護士に依頼する
弁護士という法律の専門家に依頼し、代理人として相手と交渉してもらこともできます。
弁護士に依頼するメリット
専門性の高さ
弁護士の中でも特に離婚案件に特化している弁護士は法的知識のみならず、交渉の方法等についても実体験から蓄積したノウハウや専門性を有しています。
自分の味方をしてもらえる
家庭裁判所は中立の立場として間に入りますが、弁護士に依頼した場合、自分の代理として自分の利益を最大にするために動いてくれます。そのため、気持ちが疲れていて、自分では交渉できそうにないという人には安心感があります。
デメリット
料金が高い
依頼料が数十万円~100万円程度と高額になるのが大きなデメリットです。法テラスを利用することもできますが、生活保護レベルでない限り、分割払いになるのみで無料利用はできません。
紛争性が高まる
家裁利用と同様、弁護士が間に入ることによって紛争性が高まり、かえって相手の怒りを買ってしまう恐れがあります。また、あなたの弁護士から受任通知を受け取った相手は、きっと自分も弁護士に依頼するでしょう。そうなれば、弁護士対弁護士の争いになってしまいます。
民間の調停機関(ADR)を利用する
ADRは、いわゆるADR法に基づいて、法務省が管轄している制度です。管轄は法務省ですが、調停の実施機関自体は民間の機関になりますので、家裁の調停とは様々な点で異なります。
ADRを利用するメリット
利便性が高い
民間ならではの利便性があり、土日や平日の夜間の利用が可能だったり、オンライン調停が可能な機関も増えています。
紛争性が高まりにくい
民間の機関ですので、裁判所や弁護士に比べて、相手の受け止めもソフトな側面があり、紛争性が高まりにくいというメリットもあります。
迅速性
何より大きなメリットは迅速性です。逆DV・逆モラハラの相手との協議は心身ともに疲れますので、1日でも早く解放されたいという気持ちになります。この点、ADRは家裁の調停より解決までの時間が随分と短いのがメリットです(法務省の統計によると約3か月の審議期間となっています。)。
ADRを利用するデメリット
費用がかかる
家裁と異なり、一定の利用料がかかる点がデメリットと言えます。弁護士に依頼する費用の10分の1程度ですむ機関が多いと思いますが、それでもやはり家庭裁判所を利用するより割高ですので、その点はデメリットと言えます。
まとめ
今回は、妻から夫に対するDV・モラハラである逆DV・逆モラハラについて記載しました。最後まで読んでくださった方は、現状の夫婦関係に困難を抱えている方だと思います。是非、このコラムを読むだけでなく、何かひとつでも行動に移してください。そのためにこのコラムがお役に立てたら幸いです。
妻のモラハラ・DVについてはこちらはもご参照ください。
モラハラ妻との離婚の進め方(典型事例紹介)
虚偽DV・冤罪DVの実際
モラハラ妻にないがしろにされてきた夫が離婚を考えるとき