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モラハラ夫(妻)との離婚の進め方(典型事例紹介)

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カウンセリングに来られる方の中には、夫や妻のモラハラに辛い思いを募らせながらも、離婚に踏み切れず、迷っている方がたくさんおられます。その迷いの理由は様々ですが、よく聞かれるのが「モラハラ夫(妻)との離婚協議の進め方が分からない」といった声です。

例えば、離婚を切り出したとき、モラハラ夫(妻)はどんな風に受け止め、何と答えるのか。また、夫(妻)が離婚に応じてくれなかったとして、相手はどんな風に出てくるのか。

究極のところ、離婚を進めてみなければ、相手の出方は分からないわけですが、その分からなさは、相手の気持ちが「読めない」、「予想できない」ことが原因だったりします。

そのため、そんな方のために、モラハラ夫やモラハラ妻との離婚の経過について、モラハラ当事者の気持ちに焦点を当て、典型事例をご紹介したいと思います。

モラハラ夫(妻)との離婚について、具体的なハウツーを知りたい方は以下のコラムをご覧ください。

モラハラ妻にないがしろにされてきた夫が離婚を考えるとき
モラハラ夫と離婚したいあなたに

最後までモラハラが治らなかった夫との離婚協議

家事・育児をバカにしていたモラハラ夫

Aさんは専業主婦の妻と5歳になる長女と3人家族です。Aさんは会社員、妻は長女の世話と家事が仕事です。ただ、Aさんは、家事や育児を「仕事」と捉えたことは一度もなく、妻は仕事をせず、家で子どもと過ごしているだけ、という感覚でいました。

そんなAさんですから、もちろん妻の育児や家事に対する感謝の気持ちはなく、逆に外でお金を稼いでこないことをバカにしていました。二言目には「おまえはバカだな。」とか「外で稼げないバカ主婦は」という言い方をしていました。

自分のモラハラに気付かないふりをした後悔

今から思うと、数々のモラハラ的言動がありました。例えば、妻が体調不良で朝起きてこなかったとします。そうすると、仕事に行く夫の朝食も作らず、いつまでも寝ているのはどういうことか、朝寝坊ばかりだと子どもの教育にもよくない、外で稼いでいるわけでもないのに家でも何もしないのか、と責め立てます。

つらそうな様子で起きてきた妻を心配する一言もなく、ひたすらイライラした様子を見せるだけです。挙句の果ては、ママ友パパ友との集まりの際に、「うちの嫁は専業主婦のくせに朝食も作ってくれないんだよね~。」と笑い話にしたりしていました。今思うと、そのときの妻の顔は悔しさや恥ずかしさで歪んでいたように思います。

しかも、自分でも「俺のやってることっていわゆるモラハラなのかも」と気付き始めていました。しかし、自分が間違っいるとか、妻が正しいと思ったことはなく、突き詰めて考えることはありませんでした。

別居されても反省なし

そんなとき、突然、妻から離婚を前提に別居をしたいと言われました。理由は、夫の高圧的な言動に耐えられないとのことでした。かなり驚いたのは事実ですが、心のどこかでいつもの優越感が存在し、妻はちょっと反抗したいだけなのかもしれないと考えていました。

いつも妻の言動をコントロールしてきましたから、今度もできると思っていました。妻がどう思っているかとか、妻がどうしたいかということではなく、自分がどうしたいかだけを考えていましたので、自分が離婚したくない以上、離婚に至るわけがないという根拠のない自信がありました。

妻の別居希望に対し、「外で働いてくる夫の世話を放棄して出ていくなら、妻としての役割を果たしていないことになる。そうであるならば、自分も夫としての役割を果たすつもりはないから、生活費は一切渡さない。」と答えました。

こう言っておけば、引き留める形にはならず、自分も格好がつくし、妻が生活費なしの別居を選ぶとは思わなかったのです。

しかし、妻は、自分と子どもの身の回りのものだけを持って、妻の実家に帰っていきました。

モラハラ夫の謝罪は謝罪になっていない

妻と長女が出て行ってからというもの、夫の生活は一変しました。最初の一週間ほどは、自分の気持ちに気付かないようにしていました。部屋が広くなったとか、静かになってよかったと言い聞かせていました。

でも、最初の週末がやってきたとき、虚無感のピークに襲われました。朝起きて、仕事に行く必要もなく、リビングのソファーに座りました。もちろん、朝食も出てきませんし、そばでうろうろ遊んでいる長女もいません。とりあえずテレビをつけてみましたが、いつも長女が見ていたアニメが放送されていて、よけいに辛くなりました。

部屋は荒れ、汚れた洗濯物も山のようでしたが、何一つやる気になりません。その日は、夜までどうやって時間を過ごしたか記憶にないくらいです。翌日は、さすがに家事をやりましたが、掃除も洗濯も上手にできませんでした。

しかし、この期に及んでも、自分の非を認めることができず、自分をこんな目に合わせた妻への不満や怒りの気持ちが収まりませんでした。その結果、妻に宛てて以下のようなメールを送りました。

君と〇〇がいなくなってから数週間がたちました。寂しさがじわじわと感じられ、なぜ自分がこんな目に合わなければいけないのか、残念な気持ちです。

君は僕の「高圧的な言動に耐えかねた」ということでしたね。確かに、僕の言葉が乱暴なこともあったと思いますが、自分は外で一生懸命働いているので許されるだろうという気持ちがありましたし、あなたも分かってくれていると思っていました。

僕にも悪いところがありましたが、突然に離婚を前提に別居を切り出す君もどうかと思います。そもそも、子どものためにもよくないのではないでしょうか。一度、戻ってきてきちんと話し合いましょう。

このときは、帰ってきてほしい一心で書きました。しかし、妻からはメールで一言、「あなたのメールを読んで、あなたは変わらないと確信しました。いつまでも、自分のことばかりですね。」と返ってきただけでした。

確かに、自分の気持ちばかりで、妻のしんどかった気持ちや、別居や離婚を切り出さざるを得なかった追い詰められた状況に思い至っていませんでした。

モラハラ夫は婚姻費用を出し渋る

その後、妻から婚姻費用の請求がありました。法律上、支払わなければいけないのは知っていましたが、自分が望んでいない別居のためにお金を支払うのは納得ができませんでした。

しかし、妻から婚姻費用請求の調停を申し立てられてしまい、家庭裁判所で算定表をもとに金額が決められました。

結局、支払わなければならないのであれば、家裁で争う時間が無駄だったし、夫婦間の感情も更に悪化し、最初から支払っておけばよかったと後悔が残りました。ただ、分かってはいても、途中で負けを認めることができなかったのです。

面会交流でも負けたくないモラハラ夫

妻の気持ちは変わらず、結局離婚に至りました。長女の親権は妻がとりましたが、定期的に会わせてもらう約束をしました。

長女との関係性は悪くなかったと思いますが、仕事が忙しく、頻繁に遊んでやることはできていませんでした。子どもの世話をしたり、遊んでやるのは妻の役割で、自分は子育てにおいては補助的な役割だと思っていたからです。しかし、面会交流を始めてから、そのことを後悔することになりました。

長女と単独で遊んだ経験が少なすぎて、どうやって遊んでやれば喜ぶのかが分かりません。せっかくの面会交流なのに、時間がもたず、時計をちらちら見てしまうくらいです。娘も明らかにつまらなさそうでした。

長女は、成長するにつれて、面会交流を嫌がるようになってきました。自分でも、楽しませてやれていないことは分かっていましたが、自分から折れることや譲歩することができず、意地になって取り決めた通りの面会交流の回数を求めていたところ、今度は、面会交流の回数を減らすための調停を申し立てられてしまいました。

結論:モラハラ夫は変わらない

この事例のモラハラ夫の心情を辿ってみると、最後までモラハラ気質が変わらないことが分かります。自分でも「この言動はよくない」と分かっていても、それを認めたり謝罪したり、その言動を変えることができないのです。

モラハラ夫との離婚を考える際は、相手が変わってくれることや譲歩してくれることを期待せず、自分だけの意思で完結できることや、法律にのっとった解決を目指すのがいいでしょう。

夫をないがしろにしたモラハラ妻

Bさんは、年下で気の優しい夫と5歳のかわいい息子との3人家族です。Bさんは専業主婦、夫は中小企業の営業マンでした。

そんなBさんと夫との関係は、子どもができてから、完全に冷めきっていました。もともと、気の強いBさんは、夫に強い口調や態度で応じることが多かったのですが、子どもができてからというもの、さらに拍車がかかりました。

離婚を切り出されても自分のモラハラを認めない妻

夫はがんばって働いてくれていましたが、あまり収入は高い方ではありませんでした。また、物事を丁寧に処理するため、要領の悪さが目立つこともありました。

そのため、毎日のように「あなたは何をやってもダメだ」、「こんな稼ぎじゃ子どもを養えない」などと夫に文句を言っていました。また、何か気に入らないことがあると、深夜でも何時間でも話合いという名目の説教をしました。

いつも夫は、黙って聞いているか、「あんまりきついことを言うなよ」とちょっとバツが悪そうにつぶやくだけだったのですが、ある日、「もう我慢ができないので離婚してください」という内容の手紙を残し、いなくなってしまいました。

その手紙には、帰宅恐怖症になったことや毎日妻のモラハラに苦しめられたことが書かれていました。その手紙を読んでも、自分の言動をモラハラ呼ばわりされることに納得が行かず、突然出ていかれたことに理解ができませんでした。

モラハラ被害者の気持ちを理解しない妻

夫の突然の行動に気が動転してしまいましたし、夫が離婚したがっていることを受け入れることはできませんでした。さらには、直接話もしていないのに、離婚という大切なことを決めるわけにはいかないと思いました。

そのため、出て行った夫に対し、何度もLINEやメールを送り、なぜ離婚したいのか、直接会って話合いがしたいと伝え続けました。

夫は、ほとんど返信をくれませんでしたが、何度かは「離婚したい理由は以前の手紙に書きました。」とか「あなたのきつい言動に耐えられなくなりました」といった返事がありました。また、これ以上連絡をしてこないでほしいとか、連絡がある度に体調が悪くなると送られてきたこともありました。

ただ、連絡をしないとこのまま離婚になるのではという不安や、「逃げている夫はずるい」という気持ちが消えず、どうしても責めるようなメールや、足りない生活費を請求するようなメールを送り続けていました。

そうしたところ、夫の代理人という弁護士から連絡があり、夫はうつ病で休職中であることや、今後は夫ではなく代理人弁護士を通じて離婚協議を進めてほしい旨を伝えられました。

物事が急展開したことや、夫がうつ病になったことが大変ショックでした。自分の気持ちばかりが前に出て、夫がどんな気持ちで家を出たのか、今どんな状況なのか、そういったことに全く考えが及んでおらず、夫を追い詰めてしまったことを後悔しました。

ただ、心のどこかで、うつ病になったのは夫自身の弱さのせいだという気持ちがありました。また、夫につらくあたっていたのは自分が悪いが、そうせざるを得なかった原因は夫にあるようにも思え、結局のところ、自分が悪かったと反省することはありませんでした。

自分が専業主婦なのも悪いのは「夫」

夫がうつ病で休職したとなると、金銭的な援助をこれ以上期待することはできません。しかし、仕事を辞めてから随分と長い年月が経過しているので、今更フルタイムで働く自身がありません。

夫に対し、「収入が低い」とか「要領が悪い」と文句ばかり言っていましたが、自分は夫よりもっともっと稼ぐ力もないし、仕事への自信もないことに愕然としました。

夫が家を出るその日まで、このままの生活が続くことを一ミリも疑っていませんでした。こんなことになるのなら、仕事を辞めなければよかったと後悔しても時すでに遅しです。

ただ、そうは言っても、働かなかった自分が悪いというより、そんな自分に急に離婚を切り出す相手を非難する気持ちの方が強かったのです。

結論:モラハラ妻は被害的

モラハラ夫は多少の自覚があったり、自覚はなかったとしても相手と対等な関係にあると考えていることが多かったりします。

ただ、モラハラ妻は、経済的には弱者であることも多く、自分はモラハラ加害者どころか、被害者意識のある人が少なくありません。

そんな相手と正面からやり取りを続けていても、自分が疲弊してしまうだけです。弁護士、裁判所、ADRなど、第三者を入れて協議を進めるようにしましょう。

離婚協議でも嫌がらせを続けたモラハラ夫

妻の言葉を曲解したモラハラ夫

Cさんは、妻と妻の両親、小学6年生の長男と小学3年生の二男と6人暮らしでした。子育てが一段落したCさんは、今度は自分に時間を使いたいと考え、社内の昇格試験を受けるなど、キャリアアップに積極的でした。一方、Cさんの妻も大手企業の総合職として働くキャリアウーマンでしたが、子育てのために時短勤務をしていました。妻の両親は、同居の上、長男二男の育児を手助けしてくれていました。子どもたちと関わる時間は、妻の両親が一番長かったと思います。

最初は、妻も仕事に打ち込むCさんを応援してくれていました。しかし、ある時期を境に、「子育てがほとんどできないくらいなら、少し仕事をセーブしてはどうか。」と言うようになりました。

妻としては、自分の育児負担が重くなっていることも原因でしたが、両親にばかり手助けを求めるのではなく、子どもたちの父親である夫と子育ての楽しさも大変さも共有したいという気持ちからの発言でした。

しかし、Cさんは、そんな妻の気持ちを理解せず、妻が自分のキャリアに嫉妬していると考えるようになりました。そして、「おまえがキャリアップできないのは時短勤務のせいではなく実力だ。俺は俺の力で上がっていくから、足を引っ張らないでくれ」と妻に言い放ちました。

相手から離婚を切り出されても本気だと思わない

それからも、少しずつ妻との関係は悪化し、会話らしい会話もなくなってしまいました。平日の帰宅時間はどんどん遅くなる一方で、子どもたちが寝てから帰宅することもしばしばでした。

何より、二人の関係を悪化させていたのは、夫が妻を見下すような言動を続けていたことです。Cさんは、ことあるごとに、自分の方が能力が高く、家事・育児は誰でもできるので給料が低い方がやるべきなどと主張していました。

そんなとき、妻から「この状況が改善されないなら、離婚したい。」と言われました。仕事を頑張っている自分を認めず、離婚を切り出す妻に腹が立つのと同時に、そうは言っても、本気ではないだろうと高をくくっていました。

しかし、最後通告とも思える妻のこの言葉を真剣に受け止めず、日ごろの言動を変えなかったところ、妻は離婚を決意してしまったのです。

親権を争うという嫌がらせをするモラハラ夫

Cさんは、離婚したとしても、決して親権を譲るつもりはありませんでした。離婚に応じることが納得できず、親権を争うという形で反抗しようとしたのです。

妻には、離婚には同意するけれど、親権は譲れない旨を伝えました。妻は、今の生活状況を考えれば、Cさんに子どもたちを任せられるわけがないと激怒し、真向から対立することになりました。

自分でも勝ち目がないのは分かっていましたが、離婚自体に納得がいっていないこともあり、引き際が分からなくなってしまいました。

妻は、このまま離婚を進めることも考えましたが、「離婚そのものに納得していないからこその親権争い」であることをよく理解していました。

そのため、別居を継続し、婚姻費用を請求するという方法に変えたのです。Cさんは、最初は「離婚はしたくない」という自分の言い分が通ったことに満足していましたが、離婚と何ら変わらない別居生活をしながら、養育費より高い婚姻費用を払い続けるのが馬鹿らしくなってきました。

結果的に、別居から半年経過したころ、Cさんから離婚協議を妻に持ち掛け、ごく一般的な条件で協議離婚が成立しました。

結論:離婚を急がず婚姻費用の請求に切り替える方法もある

モラハラを理由として離婚を求める場合、相手が離婚に乗り気でないと、様々な条件で譲歩を強いられることがあります。そんな場合は、先を急がず、まずは別居で様子を見るという方法もあります。物理的に離れることで気持ちがとても楽になりますので、自分らしさを取り戻すことができます。

モラハラ加害者はプライドが高く、相手のペースにのることを良しとしません。無理をせず、相手の決断を待つのもひとつの方法です。

以上、3組のモラハラ夫婦の離婚について、モラハラ加害者側の気持ちに焦点を当ててご紹介しました。ポイントは、モラハラ気質はそう簡単に変わらない(変われない)ということです。自分ではモラハラを認められないこともありますし、モラハラに気付いたとしても、「それには理由がある」と正当化する人もいます。また、頭では理解していても、どうしても折れたり謝罪したりすることができない人もいます。

そのため、モラハラ夫(妻)との離婚協議は、「分かってくれるはず」「変わってくれるはず」という希望を持たないことが大切です。また、モラハラ加害者とモラハラ被害者の力関係は明らかです。二人だけで協議せず、弁護士・裁判所・ADRといった第三者を介入させるようにしましょう。

当センターでは離婚カウンセリングを行っています。離婚の道案内にご利用ください。
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