妻からやっていないDVをでっちあげられている夫の立場の方に知っていただきたい情報を以下にお伝えします。
虚偽DVが争われる4つのパターン
虚偽DV、でっち上げDV、ねつ造DV等と様々な呼び名がありますが、ありもしないDVを主張されることがあります。ただ、一言で虚偽DVと言っても、様々なパターンがありますので、以下にご紹介します。
完全にDVそのものが虚偽の場合(完全虚偽型)
「火のない所に煙は立たぬ」と言いますが、一切DVをやっていないのに、戦略的にDV加害者にでっちあげられてしまうことがあります。まったく身に覚えのないことが突然にやってきますので、加害者に仕立てられた側は晴天の霹靂です。
妻の主張
- 夫から日常的に殴る蹴るの暴行を受けていた
- 〇月〇日の日記を見ると『いつものようにお酒を飲んだ夫から殴られた』と書いてあった
- その時、病院に行って診断書も書いてもらっている
- 警察にもDV相談済みである
夫の主張
- 妻を殴ったり蹴ったりしたことは一度もない
- 確かに〇月〇日はお酒を飲んでいたが、外で飲んで帰宅後はすぐに寝た
- 確かに妻は病院に行っていたが、ただ自分で転倒して手を打撲したようだ
- 警察から注意を受けたことは一度もない
こんな風に、夫婦の言い分が真っ向から対決するようなケースもありますが、少数です。
DV被害を誇張する場合(誇張型)
夫婦であれば、多少のいさかいや争いがあって当たり前です。また、望ましいことではありませんが、いさかいの際、大きな声を出してしまったり、物にあたってしまうこともあります。そういった事実について、回数や程度を大きく膨らませ、あたかも継続的にひどいDV行為があったと主張するケースもあります。
妻の主張
- けんかになると毎回大きな声で威圧してくる。録音もある
- 不機嫌になると大きな音を立ててドアを閉める
- 物を投げられる
- 投げたものが当たって怪我をしたこともある
- 毎日夫の顔色をうかがいながら生活をしていた
夫の主張
- 大声を出すような喧嘩は数年に1回だし、妻も大声で怒鳴っている。録音は計画的にされたものだ。妻が大声で怒鳴り、自分を怒らせた結果だが、妻の声は録音されていない
- 大きな音でドアを閉めたことは一度だけ。妻が家庭のお金をホストに使い込んだので、たまりかねて怒ってしまった
- ものを妻に向かっては投げたことはなく、一度イライラが募ってクッションをソファーに投げたことはある
- 毎日不機嫌そうにしていたのは妻だ
「いつも」という表現は正確性を欠くことがあります。特に、精神的DVは受け止め方による部分が大きく、双方の話を聞いてみないと全体像が見えないことがよくあります。
怪我の原因(要因)について争う(原因争い型)
実際に妻が怪我をするという結果は発生しているけれど、その原因について争うケースがあります。
妻の主張
- けんかの最中にワイングラスを割って、その割れたグラスを腕に押し付けられて怪我をした
- 体や頭を壁に押し付けられた
夫の主張
- 妻がパニック障害のため、激しいケンカになると狂ったように自傷行為に及ぶ。自分は止めようとしただけ
- 妻が殴りかかってくるので抑えようとした結果、壁に押し付けてしまった
こういったケースは、妻の怪我といった結果は発生しているけれど、夫の正当防衛の可能性があったり、夫ではなく妻の自傷行為の可能性があるため、判断が難しいところです。
少なくとも、妻が計画的・意図的にDVをでっちあげようとしているケースとは一線を画します。
性的DV・精神的DVに関する争い(認知不一致型)
性的DVや精神的DVについては、個人の感じ方の部分も多いので、主張も様々です。例えば、実際には殴らないけれど、大きな恐怖を与えている場合、精神的DVになることがあります。DVを行っている側はDVだと認識していないけれど、受けている側はDVだと感じており、双方の「認知」がずれている場合がほとんどです。
妻の主張
- 疲れていても、妊娠しているときも、無理に夫婦生活を求められた
- 暴力は振るわないけれど、「逆らったら殺すぞ」と脅された
- 実際には殴らないけど、殴るふりをする
夫の主張
- 妻の合意の下、お互いの心身の状況と相談しながら行っていた。性的DVだと主張されて心底傷ついている。
- 本当に殺すわけはなく、売り言葉に買い言葉で言っているだけ
- 寸止めしていて当たってないのでDVではない
このようなケースは虚偽DVやでっちあげDVではなく、本当のDVです。
妻が虚偽DV・でっちあげDVを主張する理由
では、妻はなぜ嘘をついてまで、夫をDV夫に仕立て上げるのでしょうか。
実は、離婚条件の中でも財産分与や慰謝料のために逆DVをでっちあげる人はさほど多くありません。
なぜなら、DVがあったとしても財産分与には影響を与えませんし、慰謝料についても嘘が発覚するリスクを冒し、様々な策を弄して手間や時間をかけるほど見返りは大きくありません。
では、妻の真意はどこにあるのでしょうか。その理由を考えてみましょう。
とにかく早く離婚したい
夫が離婚に反対している場合、夫が有責配偶者でないかぎり、一定期間、別居生活を継続する必要があります。多くの人は夫のことが嫌いであったとしても、別居することでずいぶんと心身が楽になりますので、DVをでっちあげ、夫を有責配偶者にした上で離婚裁判までしてすぐに離婚したいと思わないのが通常です。しかし、以下のような理由がある場合、とにかく早く離婚したいという気持ちになります。
不貞相手がいる
不貞相手と結婚したい、すぐにでも堂々と交際がしたいという場合、別居状態では都合が悪く、離婚を成立させる必要があります。数としては多くありませんが、不貞相手への愛情故に、嘘をついて人を陥れるという行為に及んでしまうのです。
とにかくつながっていたくない
既に別居が完了しているのなら問題がないように思えるケースであっても、相手への嫌悪感が強く、早期に離婚したいという人がいます。例えば、戸籍上つながっているだけでも気分が鬱々とする、同じお墓に入りたくないといった具合です。
その立場になってみないと分からないことですが、一旦そういう気持ちになると、毎日頭から「早く離婚したい」とう考えがぬぐえず、虚偽DVをでっちあげてまで、離婚したいと考えるようになります。
婚姻費用を長くもらいたい
相手のことは嫌いだから一緒には住みたくないけれど、経済的に厳しいため、婚姻費用をなるべく長期間支払ってほしいと考える人がいます。しかし、いくら自分が離婚したくないと言っていても、相手が離婚を希望している場合、別居から2~5年ほど経過すると、裁判離婚が認められてしまいます。
この点、夫が有責配偶者であれば、必要な別居期間が8年~10年程度とぐっと伸びますので、虚偽DVをでっちあげて、有責配偶者に仕立て上げてしまおうと考える妻がいます。
夫を子どもから遠ざけたい
先ほど、虚偽DVをでっちあげる理由として、不貞や婚姻費用を挙げましたが、実は一番多い理由が子ども絡みです。
親権を譲りたくない
夫の子育て関与度が高い場合、まともに親権を争うと夫に負けてしまうリスクがあります。そのリスクを少しでも低減させるために、虚偽DVをでっちあげる妻がいます。
DVは配偶者への暴力であり、DV夫が必ずしも虐待をする親になるとは限りません。しかし、暴力的であることは親権者としてマイナスの要素ですし、暴力が子どもの前で行われている場合、面前DVとなり虐待行為となります。
面会交流をさせたくない
親権同様、DVがあるからといって、子どもとの面会交流が妨げられるわけではありません。しかし、虚偽DVをでっちあげることで住所を秘匿することもできますし、夫婦間で子どもの受渡しができないと主張することもできます。
こういったことを主張することで、面会交流の回数を極力減らしたり、開始時期をなるべく遅くしたいと考えます。
虚偽DVをでっちあげられたときにできること
妻に虚偽DVをでっちあげられてしまった場合、事後的にできることは多くありませんが、以下のような対応が可能です。
妻から出されたDVの証拠に反論する
妻から出されたDV被害を主張するための以下のような証拠に対し、矛盾点や反論をあげていくことが考えられます。
診断書
DV被害の一番分かりやすく効果的な証拠は診断書です。ただ、やってもいないDVの傷ですから、矛盾点があることがあります。例えば、怪我をした日はまったく夫婦の接触がない日だったり、妻が別のことで怪我をした日かもしれません。
怪我の写真
診断書までは取らず、自分が怪我をした際の写真がDV被害の証拠として出されることもあります。その場合、殴られたと主張しているのに、転倒した際の怪我の写真だったりと主張と怪我の様子が異なる場合があります。
DV前後の夫婦関係が分かる資料
虚偽DVのでっちあげの場合、夫婦の日常の生活はいつも通りで、当たり前ですが、DVがうかがえるようなやり取りは皆無です。
そのため、DVの前後の夫婦のメールやLINEのやり取り(仲の良いやり取りや、妻が夫に強く出ているやり取りなど)を提出することで、矛盾を指摘することが可能です。
妻の不貞を調査する
先ほど、妻が虚偽DVをでっちあげる理由のひとつとして不貞を挙げました。嘘をついてまで妻が夫と離婚を急ぎたいのは、既に交際している男性がいる可能性があります。
妻の不貞が判明すれば、DVがなかったことの証明になるわけではありませんが、「不貞相手と再婚したかったからDVをでっちあげた」と主張することが可能です。
君子危うきに近寄らず
残念ながら、本当に何もしていないのに虚偽DVをでっちあげられることを防ぐのは難しいと言えます。しかし、少なくとも疑わしい言動を慎むことが大切です。
例えば、相手に挑発されてもカッとなって怒鳴ったりしてはいけません。妻が暴れたり、襲いかかってきたら、抑え込むのではなく、逃げの一手です。君子危うきに近寄らずの精神が大切です。
虚偽DVは、本当にDVで苦しんでいる被害者がいることを考えても許されるものではありません。