面会交流

離婚後(別居中)の面会交流、決め方に関する基礎知識と具体例

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面会交流は、別居や離婚によって離れて暮らす親子の交流のことを指します。実の親子が会うだけのことなのですが、実際に別居や離婚となると、一体何をどんな風に決めればいいのか、将来もめないためにはどうしたらいいのか、と不安になるものです。

そのため、このコラムでは、面会交流の法律的な意味合いや子どもにとってのメリット、そして、具体的な取決めの内容や取決めの方法についてお伝えします。

また、最後には、具体的なお勧めの面会交流の方法についても書いていますので、是非ご参考ください。

面会交流の基礎知識

面会交流は子どもの権利

民法上に規定あり

面会交流は、民法第766条に以下のように記載があります。

父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

面会交流は「やっても、やらなくてもいいもの」ではなく、法律で定められた大切な子どもの権利ということが言えます。

子どもの不利益になる面会交流は認められない

面会交流は、子どものための権利ですが、もちろん、別居親からも求めることができます。しかし、注目したいのは、上述の民法第766条第1項最後の記載です。ここには、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と書かれています。

そのため、親がいくら求めても、子どもの不利益になるような面会交流は認められず、第一義的には子どものための面会交流ということができます。

面会交流は成人する18歳まで

一般的に、面会交流は親の監護が及んでいる間とされていますので、成人する18歳までということになります。

しかし、実際は、小学校高学年にもなれば、「親が決めた通りの面会交流」を実施する親子は減ってきます。そして、中学校・高校と経ていくうちに、回数や時間を細かく決めた面会交流を行うのではなく、お互いに気が向いたときに誘ったり、何か用事があるときに連絡を取ったりという自然な関係になっていきます。

面会交流による子どもの3大メリット

親から愛されていることの確認

子どもは片方の親と別々に住むことによって、少なからず寂しさや喪失感を味わいます。また、中には、一方の親に「見捨てられた」と感じる子どももいます。

しかし、面会交流によって別居親に定期的に会うことができていれば、親が自分を気にかけてくれていることや自分を愛していることを感じられます。

アイデンティティの確立

子どもは、成長の過程で「自分探し」をします。自分が何者かを考え、「自分はこれでいい!」にたどり着くのが自己肯定感です。

しかし、片方の親と会えていない場合、自分探しがとん挫してしまいます。自分の基礎となっている親の半分が不明だからです。

そのため、アイデンティティを確立し、自己肯定感を育てるためにも、面会交流は大切だと言われています。

親離れ(健全な成長)の促進

面会交流は親とのつながりを維持することですから、親離れの促進というと、何だか逆方向な感じがするかもしれません。

しかし、考え方や性格が違う二人の親と接することで、双方の意見や感情に巻き込まれず、どちらの親からも適度に距離を置き、思春期の課題である親離れが可能になると言われています。

面会交流の意義については、以下の書籍もご参考ください。

 

面会交流の決め方(内容編)

取決めの基本姿勢

原則は「ざっくり」と

本来、面会交流は子どもの状況を考えつつ柔軟に行うのがベストなので、あまり細かく決めない方がやりやすいものです。

例えば、「月に1回程度、日時や場所は父母が協議して定める。」といった内容にしておけば十分です。

こうしておけば、子どもの体調や行事の有無等を考慮しながら、「最近は行事が多くて疲れ気味だから半日にしておこう。」とか、「夏休みだから丸一日遊んでも大丈夫。」と調節することができます。

もめそうな点だけ詳細に決める

ただ、父母間の葛藤が大きい場合、大まかに決めただけではもめることがあります。そのため、問題が多いにもかかわらず、ざっくりとした決め方しかしていないと、結局会えなくなってしまったということになりかねません。

例えば、どこで面会交流をするかでもめることが予想される場合、

  • 面会場所は交互に決める
  • 面会場所は〇〇が決める

といった具合です。

また、日程調整の際、いつもどちらかの返答が遅く、なかなか面会日が決められなくて困る、ということが予想されるのであれば、

日程調整は、前月の〇日までに、〇〇が△△に候補の日程を伝えることとし、△△は3日以内に返信する

と決めることもできます。

何だか細かくて窮屈な感じがしますが、もめてしまって、結局会えなくなって寂しいのは子どもです。

そのため、決め方の基本方針としては、ざっくりとした大枠を決めた上で、もめそうなところだけを詳細に定める、という方法がお勧めです。

親が決めるのが原則

「子どもが会いたいと言ったら会わせる。」、「会う頻度や時間は子どもに決めさせる」という人がいます。しかし、同居親の影響を受けずに自分の意見を言えるのか、また、頻度や時間に関しての認知が十分に発達しているのか、といったような問題もあります。

そのため、子どもの意見はあくまで参考に聞く程度とし、最終的には親が責任を持って決めましょう。

決めるべき基本の4つの事項

頻度(回数)

月〇回程度とおおよその回数を決めておきましょう。好きなだけ会ってもいいという人もいますし、回数を特に決めなくてもうまくいく場合もあります。ただ、双方の認識が大きくずれていることもありますし、頻回な面会交流を行うことで、子どもに負担がかかることもあります。

そのため、少なくとも目安の回数は認識を一致させておくことをお勧めします。

時間帯

特に、子どもの年齢が小さい場合、時間帯の設定に工夫が必要です。別居親が子どものお世話に慣れていて、自宅で丸一日預かることも可能であればいいのですが、それが難しい場合、子どものお昼寝の時間帯を外したり、外出の時間が長すぎて疲れすぎないような工夫が必要です。

また、学齢期の子どもの場合、習い事や友達との約束など、子ども自身の予定が多くなってきます。そのため、そういった予定とのバランスもみながら、子どもが困らない時間を設定しましょう。

面会の場所(内容)

面会交流の内容としてイメージされるのは「遊び」だと思います。ただ、後述しますが、遊びだけの面会交流は、長続きしにくい側面があります(ネタ切れにもなります。)。

そのため、習い事の送迎や学校行事に参加するという面会交流もいいですし、何か特別なことをしなくても、自宅でゆっくり過ごし、一緒にスーパーに買い物に行き、食事を作って一緒に食べる、といった面会交流でもいいのです。

こういった各種面会交流を織り交ぜながら、ごく自然な親子関係を築くことが目標です。そのため、面会交流の場所や内容をあらかじめ固定で決めておくという方法は馴染みません。ただ、面会交流の話合いをする中で、内容や場所について双方の認識を共有し、ずれのない状態にしておくことが大切です。

協議の方法

そして、見落としがちなのが協議の方法についての合意です。面会交流は、どんなに細かく決めても、父母間のやり取りが発生します。

例えば、子どもが急に体調不良になった場合、相手に連絡をしてリスケしなければなりません。もしくは、道路が渋滞して到着の時間が遅れるという連絡が必要になることもあります。

また、毎月第〇土曜日といったような決め方をしていない限り、日程調整が必要になります。

しかし、離婚する(離婚した元)夫婦が連絡を取り合うことは意外にハードルが高く、ストレスの元になったり、面会交流が破綻する原因になったりします。

そのため、どのタイミングでどちらから連絡をするのかといったようなことを決めておくことをお勧めします。

また、別居親が同居親に頻繁に連絡を取ってしまい、それがもめごとの種になることもあります。そんな場合は、連絡手段を一つに絞り(LINEやSメールなどではなく、パソコンのメールに限定する等)、連絡の内容についても限定するという方法もあります。

どうしてもお互いの連絡がうまくいかないという場合は、面会交流支援団体の連絡調整型の支援を利用することもできます。

面会交流支援団体については以下のコラムをご参照ください。
面会交流支援団体の選び方

もめそうなら決めておいた方がいい3つの事項

キャンセルになった場合の約束

よく問題となるのが面会交流がキャンセルになった場合の取決めについてです。

子どものことですので、体調を崩したり、けがをしたり、学校行事が入ったり、色々な事情で決めたとおりの日時に面会交流が行えない場合が出てきます。

本来は、子どもの福祉を優先し、「今週は難しいから来週にしようか。」などと臨機応変に対応できるといいのですが、別居親としては、ついつい「ほんとうに都合が悪いのかな。会わせたくないだけなのでは?」と疑いたくなってしまうものです。

また、会わせたくない気持ちがキャンセルにつながる同居親もいます。

こういうもめごとを避けるために「キャンセルをした場合は〇〇」といった約束事を加えておくこともできます。この場合の〇〇は、「違約金〇万円」といったような記載ではなく、キャンセルをした方が代替日や代替の方法を提示するといったものです。

ただ、先ほど書いたように、あまり細かく決めると窮屈です。同居親は極力決められた日時を守り、やむを得ずに変更やキャンセルになった場合、別居親は柔軟に対応する、といったことで乗り切れるのがベストなのではないでしょうか。イメージとしては、「月に1回程度=年に10回程度なら許容」といった感じでしょうか。

同行者について

面会交流の基本は子どもと別居親の交流です。そのため、第三者が同行・同席することは想定されていません。

しかし、祖父母や親せきとのかかわりは、子どもにとっても大切な経験であり、たくさんの大人から愛され、関心を寄せられていることを実感する機会になります。そのため、大きな問題がないのであれば、祖父母や親せきとの面会交流もお勧めです。

一方で、別居親の交際相手を連れてくるのはどうでしょうか。もちろん、段取りを踏んで、子どもが混乱しない形で新しいパートナーを紹介することはあっていいと思いますが、慎重に進める必要があります。

そのため、同行者の問題が発生しそうな場合、一定のルールを決めておくこともできます。

過去に起こった問題行為を制限するルール

実際に面会交流を進めていくと、色々な問題が発生します。

  • 別居親の実家に連れて帰った際、祖父母が同居親の悪口を言った
  • 待ち合わせ時間に大幅に遅れた
  • 同居親の許可なく、高額なプレゼントを渡した
  • 子どもの写真を撮ってSNSにアップした

このように、過去に起こった問題行動が繰り返される場合、それを禁止するようなルール作りが有効です。

ただ、同居親にとってみれば、「〇〇かもしれない」という懸念は数え切れず、全てを未然に防ぐことは不可能です。

そのため、過去に発生したことがある問題で、今後も繰り返されそうなものに限るのがポイントです。

面会交流の決め方(協議方法編)

面会交流は、「子どもが楽しめる面会交流」を軸に父母で話し合うのが基本ですが、養育費における算定表のような基準がないため、合意できないこともあります。

そのような場合の協議方法を3つご紹介します。

家庭裁判所を利用する

当事者間で協議ができない場合、家庭裁判所の面会交流調停を利用することができます。メリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット

子どもの意見を専門家に聞いてもらえる

家裁には、家庭裁判所調査官という専門家がいます。そのため、子どもの本音が知りたい場合に「子の意向(心情)の調査」を依頼することができます。

試行的面会交流ができる

特に親権で争っている場合など、連れ去りが心配なので、離婚が成立するまで会わせたくないと言われることがあります。

また、長期間会っていないため、まずはお試しで会ってみて子どもの反応を見たいという場合もあります。

こんな場合に活用できるのが家裁での試行的面会交流です。裁判所内で行われますので、同居親も安心ですし、別居親としても最終的に合意するまで子どもに会えないという事態を回避することができます。

第三者が入ることで話が前に進む

当事者二人ではなかなか進まなかったことが裁判所という第三者が間に入ることで協議が前に進むことがあります。

例えば、理由もなく同居親が面会交流を拒否していたり、別居親が「毎日会いたい」などと無茶を言っていたとしても、調停委員や裁判官が間に入って「法律的には」という説明をしてくれます。

安価

弁護士に依頼せず、自分で面会交流調停を行った場合、費用はわずか数千円です(相手方は無料です。)。その後は、何回話し合っても、成立でも不成立でも費用はかかりません。

デメリット

時間がかかる

家裁の調停は、1か月に1回程度です(夏休みや年末を挟む場合は次の期日が2か月先ということもあります。)。そのため、なかなか最終合意に至れないというのがデメリットです。

また、先ほどメリットとしてあげた「無料」も実は諸刃の刃な側面があり、何回話し合っても無料だからこそ、協議が長引いてしまうともいえます。

紛争性が高まる

調停を申し立てられた側である相手方は、「訴えられた」という感情を持ちがちです。また、家裁の調停は別席調停のため、お互いが調停委員を味方につけようと、「相手がいかに悪く、自分がいかに正しいか」をアピールするようなやり取りになります。

そのため、穏便に話し合いたいと思っていたとしても、裁判所というイメージや協議の構造から紛争性が高まることがあります。

弁護士に依頼する

メリット

専門性が高い

弁護士の特徴は、何と言っても専門性が高いことです。法律の専門家に任せられるという安心感があります。

自分の味方として代理してくれる

裁判所は間に立つ公平中立な立場ですが、弁護士は依頼主の味方です。そのため、専門知識が豊富な弁護士に全面的に協議を任せられることは、気持ちが弱っている人や自分で相手と交渉する自身がない人にはお勧めです。

デメリット

費用が高い

面会交流についてのみの依頼だったとしても、成功報酬と合わせると50~100万円は必要になります。

紛争性が高まる

一方が弁護士に依頼したとすると、相手も弁護士に依頼する確率が高くなります。そうすると、「弁護士対弁護士」の争いになってしまい、親と子の自然な面会交流とは程遠くなってしまいます。

ADR(民間調停)を利用する

協議の方法の3つ目として、ADRによる調停を紹介します。ADRは、ADR法に基づき法務省が運営している制度ですが、それぞれの機関は民間が運営していますので、家裁調停の民間バージョンといえます。

ADRに関する詳しいコラムは以下をご参照ください。

離婚の新しい方法、ADR調停活用例
ADR調停、よくある質問
ADR調停のお申込みページ

メリット

利便性が高い

ADRは、民間の機関ならではの利便性があります。例えば、土日や平日の夜間でも調停ができたり、オンラインでも調停が可能です。

また、家裁のように1か月に1度と決められているわけではありませんので、希望があれば、1週間に1度話し合うことも可能です。そのため、結果として早期解決が可能です(法務省の統計によりますと、ADR機関全体の平均審議期間は約3か月となっています。)

穏やかな話合いが期待できる

面会交流は、家裁で決めたとしても、直接的に強制執行することはできず、結局のところ同居親が実施に向けて協力的でなければ絵に描いた餅にすぎません。

この点、ADRは家裁の手前の制度で、「二人では合意できないけれど、家裁で争うほうどのことはしたくない」という方に最適ですので、ADRで紛争性が高まる前に協議できるのは大きなメリットと言えます。

デメリット

費用がかかる

弁護士費用に比べると格安ですが、どこのADR機関も申込みから合意までにかかる費用を合計すると数万円~10万円程度かかるところが多いようです。

そのため、家裁の面会交流調停を自分でやることに比べると、多少費用がかかってしまいます。

審判ができない

家裁の離婚調停は、協議しても合意できなかった場合、審判という手続きに移行し、裁判官が決めるというフェーズに入っていきます。

しかし、ADRは民間の調停機関ですので、審判という制度がありません。そのため、当事者同士では合意できないけれど、裁判官に命じられれば「絵に描いた餅」ではなく、ちゃんと実施できそうであれば、家裁の方がおすすめです。

お勧め面会交流5選+α(直接交流編)

面会交流で大切のは、回数や時間だけではなく、「会って何をするか。」です。

「面会交流=遊ぶ」というイメージがあるかもしれませんが、それだけではありません。子どもの養育を分担するようなイメージを持っていただくと、面会交流の幅が広がります。

以下では、お勧めの面会交流のパターンについていくつかご紹介します。

週末を別居親の家で過ごす(宿泊付き)

「乙(同居親)は甲(別居親)が丙(子)と面会することを認める。面会の日時・場所等は、甲乙間で協議して定めるものとするが、宿泊付き(甲宅を含む)の面会も可とする。」

別居親の新生活を見せられる

別居親が家を出る形で別居している場合、子どもは別居親の生活に興味を持っています。また、「寂しい思いをしていないかな」と心配している子どももいます。そのため、別居親の新しい生活空間で寝泊まりができることは、そんな子どもの好奇心や心配を満たしてあげることに繋がります。

子どもの癒しにつながる

別居親の自宅が以前子どもが住んでいた家だとすると、子どもにとっては慣れ親しんだ懐かしい場所ということにあります。自分の部屋でゆっくり過ごせたり、時には、近所の友人も交えて自宅で遊んだりできると親の離婚による寂しさが多少なりとも癒されます。

長時間の交流が可能

外に遊びにいく形の面会交流だと、特に小さいお子さんの場合、長時間の交流が難しくなってしまいます。この点、自宅での面会交流は、自宅で過ごしますので、子どもが疲れすぎることもなく、日常の一部分として別居親との交流を楽しむことができます。

また、小学校以上の子どもの場合、学校や塾の宿題など、「週末にやっておかなければならないこと」が結構あります。

外に遊びに行く形の面会交流だと、「やるべきことが終わらせられない」という理由で同居親から面会交流に制限がかかることがあります。この点についても、自宅での面会交流であれば、遊びだけではなく、勉強も組み入れることができます。

本来、子どもは「お泊り」が好きなものですし、一緒に料理をしたり、お風呂に入ったり、寝る前に本を読んでもらったり・・といった親子の当たり前のふれあいを持つことができますので、やはり宿泊がおすすめです。

注意点

しかし、同居親にしてみれば、子どもを別居親の家で過ごさせるというのは、完全に相手のテリトリーに渡すことになり、不安に感じたりもします。また、年齢によっては、同居親と離れて寝ることがストレスになる子もいるでしょう。そのため、父母の紛争の程度や子どもの年齢や性格、同居当時の子どもと別居親との関係性等を考慮し、日帰りにしたり、半日にしたりといった調整が必要です。

別居親の実家で過ごす

「乙(同居親)は甲(別居親)が丙(子)と面会することを認める。面会には、甲の両親も同席を可とする。」

祖父母との交流が可能

別居親の自宅で過ごすのと同じメリットがありますが、祖父母が加わることで子どもの楽しさも倍増します。また、子どもは、祖父母と触れ合うことによって、より多くの大人から関心を持たれ、愛されていることを実感できます。

安心感につながる

別居親が子どもの養育費に不慣れな場合、別居親の両親が面会交流の場に加わることは安心感につながります。例えば、料理ひとつとっても、別居親より別居親の母親の方が健康的でおいしいものを作ってくれるということがよくあります。

注意点

ただ、自分の息子(娘)かわいさに同居親の悪口を言ってしまう祖父母や、祖父母に任せっきりで自分は寝ているような別居親の場合、祖父母宅での面会交流はお勧めできません。

習い事の送迎

「乙(同居親)は甲(別居親)が丙(子)と面会することを認める。面会の日時は原則毎週土曜日とし、当該日に丙の習い事がある場合、甲が送迎する。」

別居親が子どもの成長を感じられる

子どもの年齢が小さい場合、大抵の習い事は送迎だけではなく、親の参観が可能になっています。子どもと一緒に暮らせない別居親にとって、毎週のように子どもの習い事の様子を見られるのは、子どもの成長を感じられる貴重な時間になります。

子どもは頑張っているところを親に見てもらえる

子どもは、離れて暮らす親にいいところを見てもらいたいという気持ちを持っています。日頃、あまりその機会がありませんので、習い事の様子を見てもらうことは子どもにとっても大きな自信につながります。

習い事という親子の共通の話題ができる

実は、面会交流に際し、「子どもとの話題に困る」というお悩みを聞くことがよくあります。子どもの性格にもよりますが、年齢が小さくて自分からの発話が少ない場合や、逆に年齢が上がるにつれて、親と会話することが恥ずかしくなっていく子もいます。

そんな場合、日常の生活を共にしていない別居親にとって、共通の話題や子どもの興味関心がある話題を探すのは至難の業ですが、習い事という共通言語があれば、会話の幅が広がります。

同居親は育児の負担が減少する

子どもの送迎は親の悩みの種だったりします。色々チャレンジさせてあげたいけれど、仕事やほかの兄弟姉妹の予定との兼ね合いで、送迎ができないから習わせてあげられないということもありますし、送迎が親の大きな負担になっている場合もあります。

その点、別居親が面会交流の一環で送迎を担ってくれれば、同居親もとても助かります。

時間や場所の協議が不要となる

相手がなかなか日程を教えてくれない、連絡をしても返信がない、どこで面会するか毎回もめる、といった方にとって、日程調整をしなくていいだけで、ずいぶん面会が楽になります。その点、習い事は日時が決まっていますので、日程調整のストレスが軽減されます。

キャンセルの可能性が低くなる

別居親にとって、「またキャンセルされるのでは」という不安が常に付きまとうものですが、習い事は簡単に休ませることができないので、キャンセルされる可能性が低くなります。

忙しい子どもでも実施しやすい

最近の子どもは習い事を掛け持ちしていて、とても忙しかったりします。そのため、習い事の日を避けて面会交流しようとすると、候補日が激減してしまう人もいますが、習い事の送迎自体を面会交流に組み込めば、こういった事態も避けられます。

注意点

一方、習い事の送迎のみだと親子の交流としては物足りなく感じる人もいます。そのため、「送迎+前後に食事」と工夫をしたり、習い事の後にどこかに遊びに行ったりと、他の面会交流と組み合わせてもいいかもしれません。また、習い事が平日の日中の場合、働いている別居親にはハードルが高くなってしまうというデメリットもあります。

平日の夕食

「乙(同居親)は甲(別居親)が丙(子)と面会することを認める。面会の日時は原則平日の夕刻以降とし、甲は丙と夕食を共にした後、〇時までに乙宅に送り届ける。」

忙しい子どもでも実施が可能

何度も繰り返していますが、最近は塾や習い事で忙しい子どもが多く、休日にゆっくり会おうとすると頻度がぐっと下がってしまうことがあります。また、年齢が高くなってくると、貴重な休日は親より友人と過ごしたいという気持ちも出てくるものです。

そのため、平日の夕飯を一緒に食べるというのも一つの案です。

働く同居親も助かる

同居親が忙しく働いている場合、週に1回でも子どものお迎えから食事までを外で済ましてくれるとしたら、とても助かると思います。

また、子どもが未就学児で父母の家も近い場合、別居親の家で夕食を食べた上、入浴も済ませたところに同居親が迎えに行く(もしくは別居親が送っていく)ということも可能です。そうなれば、同居親としても更に助かりますし、子どもにとっても日常生活に楽しい時間が組み込まれることになるかもしれません。

注意点

ただ、翌日の学校や保育園に支障が出てはいけませんので、年齢にもよりますが、遅くても20時ころには終了するようにしましょう。また、近くに住んでいることや、平日に定時で帰宅することが可能な場合に限りますので、あまり多くの人には当てはまらないかもしれません。

授業参観

「乙(同居親)は甲(別居親)が丙(子)と面会することを認める。また、乙は甲に対し、丙の授業参観の日程を共有することとし、甲が希望した場合は参加を認める。」

両親が別々に参加できることが多い

運動会や音楽会ほどの特別感はありませんが、学校行事の中でも比較的気軽に参加できるのが授業参観です。最近は、学校公開(授業公開)を導入している学校も多く、ある特定の一時間だけを参観するのではなく、公開期間中(1~5日間)のどの授業を見に行ってもいいようになっています。

このような場合、同居親と別居親で違う授業を見ることにすれば、親同士が顔を合わせずに済みます。

子どもへの理解が深まる

別居親にとって、授業参観は子どもとの単独の面会交流では得られ情報が詰まっています。学校というのは、子どもにとって家庭の次に大切な場です。休み時間の様子やお友達と話している様子を見るだけでも、子どもに対する理解が深めることができます。

交流に消極的な子どもにも受け入れやすい

授業参観は、基本的には教室の後ろで見ているだけですので、運動会等に比べて親子の交流が少ないという特徴があります。そのため、面会交流に消極的な子どもや親との交流を恥ずかしく思う思春期子どもにも対応できます。

注意

子どもによっては、離婚をしたことを友達に知られたくないとか、離婚した親が見に来ていると友達からからかわれるのではと心配になる子もいます。そのため、あくまで子どもの気持ちを尊重し、無理強いしないことが大切です。

お勧め面会交流場所(+α)

ショッピングセンターで買い物(&食事&娯楽)

大型ショッピングセンターで買い物や食事をしたり、併設されている映画館で映画を見たり、ゲームセンターでゲームをしたりといったパターンです。とてもお手軽ですし、一つの場所で色々できますので、長時間いても飽きないというメリットもあります。子どもとしては、何か買ってもらえるという楽しみも加わります。

そして、最大のメリットは、ショッピングというのは、食事や遊びと違って親子が真正面から向き合う必要がないのが特徴です。親子関係が微妙だったり、思春期の子どもにとっては、親と面と向かって「学校はどうだ?」なんて聞かれながら食事をするよりも、物を介して「これ、最近流行ってるんだ。」等と会話をする方が断然楽なものです。

ただ、買い物は、頻度や金額によっては、もめごとの種になったりします。また、物でつるような面会交流も好ましくありません。あくまでも常識的な感覚が求められます。

博物館や科学館等

堅苦しいと思われる場所かもしれませんが、室内ですので、季節や天候に左右されることもありませんし、お子さんも楽しめる内容のところが多いように思います。また、同居親にとっても、ゲームセンターに連れていかれるよりは、教育的な場所に連れて行ってもらう方がうれしいという側面もあります。

ただ、お子さんのタイプにもよりますので、教育熱心な親の一方的な提案で毎回教育施設にいくのも困ったものです。よく、親は「毎週のように週末は遊びにつれていってやった。」という割には子どもは親との交流をいい思い出として捉えていないことがあります。お子さんの興味に沿った施設を選んだり、単純に遊ぶという面会交流も織り交ぜながら実施しましょう。

児童館

年齢の低いお子さんとの短時間での面会交流が予定されている場合に便利です。児童館にもよりますが、乳幼児用の部屋が用意されているところも多く、のんびりゆったり子どもと触れ合うことができます。

また、子どもの好きそうなおもちゃも揃えられていますので、子どもと遊ぶのに慣れていないお父さんなども楽しく遊んであげられるのではないでしょうか。年齢の低いお子さんは、疲れやすかったり体調を崩しやすかったりしますので、季節や天候によっては、屋外での活動が負担になったりします。面会交流後に体調を崩すことが多くなると、同居親から「もう会わせられない。」と言われかねませんので、1,2歳までのお子さんには特におすすめです。

遊園地等の遊戯施設

ディズニーランドや遊園地、大きなテーマパークに行くというパターンもあります。もちろん子どもはとても楽しいでしょうし、連れて行く親にも特別感があります。しかし、このような施設は入場料が高く、別居親の経済的負担が大きくなります。また、丸一日の面会交流が想定されますので、疲れます。

そのため、お誕生日月などにこのような特別感のある面会交流を混ぜてみるのがおすすめです。同居親からしても、自分が連れていけないようなお金のかかる施設に子どもを連れて行ってもらうのは嬉しいものです。

勉強をみる、スポーツを教える

別居親が父親である場合によく見られるのが、勉強やサッカー・野球といったスポーツを教えてあげるパターンです。これは、子どもと真剣に向きあうこともできるし、習い事の送迎と同様、子どもの成長を感じることができます。

しかし、関わりがごく限られた一部分になってしまうことや親の先生的な側面が強調されるという問題点もあります。ですので、このパターンのみではなく、遊んだり食事をしたりといった交流も混ぜつつ行うのがいいのではないでしょうか。

面会交流時に気を付けたい言動

同居親・別居親共に気を付けたい点

別居親の悪口を言わない

子どもは、父親と母親の両方からできています。どちらか一方の親の悪口を聞かされることは、自分の半分を否定されるような気持ちになります。

また、子どもを大人同士の紛争に巻き込むことにもなります。どんなに腹が立ったとしても、相手の悪口は子どもではなく、別の大人に聞いてもらうようにしましょう。

キャンセルや変更は早めに連絡

円滑な面会交流に欠かせないのがキャンセルや変更時の誠実な態度です。別居親は、楽しみにしていた面会が延期になったり、キャンセルされてしまうのは、何よりもつらかったりします。子どもの予定や体調不良で致し方ない事情だったとしても、「仕方ないでしょう」と開き直った態度ではなく、「申し訳ない」という誠意を見せることと、代替日の提示がポイントです。

別居親も同様です。仕事の都合で急に合えなくなることがあるかもしれませんが、子どもは楽しみに待っていますし、予定を開けて準備をしていた同居親は振り回されているような感覚になります。

そのため、都合が悪くなったら、なるべく早く伝えましょう。

子どもを伝言を頼まない

子どもの年齢が大きくなってくると、ついつい「次の面会は予定が悪いから日にちを変えてほしいって言っておいて」とか、「養育費まだ入ってないけどって催促しておいて」などと子どもを連絡係にしてしまうことがあります。

しかし、伝言を依頼する内容というのは、実は大人もちょっと言うのが気まずいことだったりします。そんな内容を子どもにお願いしてしまうのは酷ですので、責任転嫁せず、大人同士できちんと伝えあいましょう。

同居親の注意点

子どもが別居親と会ってよいことを態度で示す

子どもは、自分が別居親に会いに行くことを同居親やどう思っているのか、とても気にしています。なぜなら、同居親の嫌がることはしたくないからです。

「相手の顔も見たくない」という自分の気持ちと切り離し、子どもが別居親に会いに行くことを認めてあげましょう。

そのための一番簡単な意思表示は、面会交流に出かける子どもを笑顔で送り出すことです。

面会交流の様子を子どもに根ほり葉ほり聞かない

自分から楽しそうに面会の様子を報告する子どももいますが、中には「あまり聞かないでほしい」と思っている子どももいます。

そんな子どもに対し、「今日はどこに行ったの?」「何を食べたの?」とあれやこれやを詰問調で聞いてしまうと、責められているような気になってしまいます。

もちろん、楽しい雰囲気で聞き、子どもも喜んで話しているようであれば問題ありません。

別居親の注意点

面会交流は子どもの予定に合わせて決める

自分の仕事の都合に合わせた結果、子どもが楽しみにしていたイベントに出かけられなくなったり、お友達の誘いを断らなければならなくなってしまっては、子どもは面会交流を楽しめません。

子どもの予定と自分の予定をバランス良く調整して、両方に無理のない日程を組みましょう。

子どもの話をよく聞く

たまにしか子どもに会えないため、聞きたいことや話したいことがたまっているのは理解できます。しかし、自分の聞きたいことを矢継ぎ早に質問したり、子どもの興味関心にかかわらず、自分の話ばかりをしているようでは、子どもは面会交流を楽しめません。

あまり口数が多くない子どももいますので、最近あった行事や好きなテレビ番組など、子どもが楽しく話せる話題を選んでみましょう。

「一緒に暮らそう」「いつか迎えに行く」などと言わない

本当は親権を取得したかったけれど、致し方なく譲ったような場合、「いつか、きっと・・。」と期待したくなる気持ちになってしまいます。

しかし、そのような発言は子どもを不安にさせますし、同居親が聞けば面会交流を中止したいと考えてしまうかもしれません。

子どもに現在の暮らしぶりを根ほり葉ほり聞かない

「最近、ママ、仕事始めたの?どんな仕事?」「いつも何時に帰ってくるの?」「ごはんとかちゃんと食べさせてもらってる?」「知らない人が家に遊びにきたりしてない?」。

こんな風に根掘り葉掘り聞かれると、子どもは、「探られている」ことを悟り、警戒したり、純粋に面会交流を楽しめなくなってしまいます。

同居親の生活については、子どもから話してきたときのみ聞き役になりましょう。

プレゼントをしたいときは同居親に相談する

プレゼントくらい自由にさせてほしいとか、買ってあげた方が相手も喜ぶだろうと思ってしまいがちですが、実は、プレゼントはもめる原因になることがあります。

同居親としては、しつけや教育上の観点から買い与えてほしくないものがあったりしますし、高額すぎるプレゼントは心の負担になったりします。

そのため、プレゼントに関しては、「誕生日とクリスマスだけにする」とか、「〇〇〇円以上のプレゼントは同居親の許可を得てからにする」といった一定のルールを決めておくことをお勧めします。

自分以外のものが同席する場合は同居親に相談する

別居親の両親が同席したり、友達の親子と一緒に遊んだりするのは、本来は子どもにとってマイナスになるどころか、プラスになることばかりです。

しかし、面会交流の基本は親子の交流です。そのため、自分以外の誰かが同席する場合、念のため同居親に許可を取ってからにしましょう。

面会交流を行うみなさんへのメッセージ

面会交流は、これから離婚しようとする夫婦にとって、頭の痛い問題かもしれません。でも、親のちょっとした心掛けで、親の離婚を経験する子どもの心の負担を軽くすることができます。

是非、お子さんが両方の親を理解し、双方から愛されていると実感できる環境を作っていただければと思います。

当センターでは、面会交流に関するご相談(カウンセリング)やADRによる話合いの仲裁を行っております。ご夫婦お二人だけでは解決できない場合、ぜひ頼っていただければと思います。

■ 離婚カウンセリング

■ ADRによる調停(仲裁・仲介

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