別居親との面会交流は子どものためになると言われていますが、子ども自身がそれを望んでいない場合があります。今回は、子どもが面会交流を拒否していても実施した方がいいのかどうかや、実施する場合の間接的面会交流の方法ついてお伝えします。
面会交流は本当に子どものためになるのか
子どもは、様々な理由で面会交流を拒否します。一番分かりやすいのが虐待ですが、面前DVや面前モラハラも同様です。大好きな同居親にひどいことを言ったり、ひどいことをする別居親は当然嫌われます。
また、そこまで積極的に嫌っていなかったとしても、ただ友達と過ごす時間を優先したいとか、親と二人で出掛けてもきまずいといった思春期特有の理由もあります。
加えて、別居親のことは好きだけれど、同居親に気を遣っていたり、親の紛争に巻き込まれたくないという理由で拒否する子どももいます。
このように、拒否の理由は様々ですが、そんな場合でも面会交流は必要なのでしょうか。実は、この答えは簡単ではありません。また、正解は一つではなく、拒否の理由や子どもの性格によっても異なってきます。
そのため、今回は、みんさんがご自身のことを考える際にヒントとなる情報として、いくつかの研究をご紹介したいと思います。
面会交流の実施と子どもの適応に関する研究
Wallersteinらの追跡研究
まずは、Wallersteinらの研究があります。この研究は、カリフォルニア州で60の家族を対象に行われた25年間に及ぶ追跡調査です。この調査は、親の離婚を経験した子どものその後の適応状態を調査し、適応が良好であった子どもが「なぜ良好に回復したのか。」ということを探っています。
その理由として、離婚後の家庭の安定性や、両親間の葛藤の大小、そして、別居する親との関係性やその継続性が「良好な回復」に関係すると結論付けています。
一方で、この研究は、5年後、10年後といったように継続して行われており、継続研究の結果として、父母の葛藤が高い場合の面会交流は子どもの負担になることや、同居親の監護能力が何よりも重要な要素であることも指摘しています。
これは、言い換えると、父母の紛争が離婚後も継続しており、子どもと別居親の面会交流が同居親の心身の負担となっている場合、それによって同居親の監護レベルが下がれば、子どもに悪影響が及ぼされるということです。
AmatoとGilbreth(1999)
次に、AmatoとGilbrethによる、63の研究のメタ分析です。これは、多くの研究のメタ分析である点で、ある程度の信頼性を担保していると言えますが、この研究の結果は興味深いことに、離婚後の父親と子どもの交流の頻度と、離婚後の子どもの適応の関連性は弱いと結論付けています。つまり、父親と子どもが会う時間が多ければ多いほど、子どもの適応がよくなるわけではないということになります。
一方で、養育費の支払いや父子の交流の質については、子どもの適応との関連性が強く表れていると述べています。これを端的にまとめると、「会う時間ではなく、その内容が大切である」ことが分かります。また、養育費の支払いとの関連については、養育費の支払いがきちんとなされていれば、離婚後の経済問題が起こりにくく、同居親や子どもの別居親に対する感情が良好になる結果、子どもの適応が良くなる、と考えることができるのではないでしょうか。
AdamsonsとJohnson(2013年)
次に、AdamsonsとJohnsonが2013年に行った研究です。これも、52の研究のメタ分析であることや比較的新しい研究である点で、注目されています。 この研究の結論は交流の質や関与の範囲の広さは子どもの適応の良さと関連するが、交流の頻度や養育費の支払いの有無は関係ないと結論付けています。
これらの研究から言えること
これらの研究結果を見て、みなさんはどのように思われたでしょうか。研究結果に様々な差異はあるものの、父母間の葛藤があまり高くなく、別居親との継続的な面会交流ができていれば、子どもはより良く生きていける、ということが言えそうです。
そうであるならば、現時点では葛藤が高く、直接的な面会交流が難しいとしても、長期的な視野で親子関係の継続を目指したいところです。
子の面会交流の機会を奪ってはいけない
また、色んな研究結果がある一方で、面会交流は子どもの権利であり、その権利を子どもから奪ってはいけないことは明白です。
また、様々な理由で子どもが面会交流を拒否していたとしても、親の働きかけや子どもの成長、そして時間の経過により、子どもの気持ちが変化することも考えられます。
そのため、嫌がる子どもに面会交流を強要する必要はありませんが、将来のためにつないでおく細いパイプとして、間接的面会交流を検討されてはどうでしょうか。
子どもが面会を拒否した場合の間接的面会交流
手紙
別居親から子どもに手紙を書くという方法があります。別居親からのみ手紙を書くこととし、それを読むか読まないか、返事を書くか書かないかは子どもの自由という具合にしておけば、別居親の関心は伝わるけれど、子どもの負担は少なくて済みます。
手紙は、メールやLINEに比べ、今どきの子どもは嫌がると思われがちですが、普段、受け取ることが少ないからこそ、自分宛に届いた手紙は嬉しいものです。
ただ、手紙の内容には注意が必要です。離婚の経緯を説明しようとして同居親の悪口を書いてしまったり、親として何かを伝えたいという気持ちが強くて説教調になってしまっては元も子もありません。近況報告でもいいですし、子どもをほめたり応援する言葉も子どもを勇気付けると思います。
メールやLINE、SNSなどのやりとり
LINE等のSNSは、一番手軽で気負いなくやりとりができるツールです。既読になっているかどうかや返信があるかどうかは気にせず、時々「元気にやってるか」と送るだけでも子どもへの関心は伝わります。
一方で、手軽ゆえに別居親から際限なくメッセージを送り続けたり、といったトラブルにもなりかねません。節度ある利用が肝心です。
プレゼントを渡す
本来、子どもの気持ちは物でつれるものではありませんが、プレゼントをもらえば純粋に嬉しいものです。お誕生日やクリスマスのプレゼント、お正月のお年玉といったものを親からもらうのを楽しみにしているお子さんも多いでしょう。プレゼントのみではなく、メッセージカードも忘れずに!
同居親からの写真や成績表の送付
別居親からしてみれば、面会交流の目的の一つは子どもの成長を確認することです。直接会わずとも、写真や成績表などを同居親から別居親に送ることで、その目的を少しは達成することができます。この方法のいいところは、子どもに何ら負担がないことです。そのため、子どもの拒否が強い場合などには有効です。
電話やオンライン面会
間接と直接の間ぐらいに位置するのが電話で話したり、スカイプやzoomといったオンラインでの面会交流です。同じ空間に存在するわけではないけれど、生のやり取りができますし、声が聞けたり顔が見られたりする点で限りなく直接的な面会交流に近い交流が期待できます。
子どもの拒否が強くない場合で、別居親と二人きりだと不安だけれど、同居親もいる自宅で電話やオンラインなら大丈夫、という場合に有効です。
行事の見学
行事にもよりますが、運動会や学芸会などの大型の行事の場合、参観の仕方によっては、子どもからは別居親の存在が分からなかったりします。
一方で、別居親にとっては、子どもの成長が見られる楽しみな機会となります。そのため、子どもの拒否が強く、間接的であったとしても双方向のやり取りが難しい場合などにお勧めです。
その他
そのほかには、別居親の記憶がほとんどない幼い子どもに、定期的に別居親から送られてくるメッセージビデオを見せるとか、子どもが書いた絵や作文を別居親に送るとか、引きこもりの子どもとオンラインゲームで対戦するとか、これまで様々な方法の間接的面会交流を見てきました。親子の数だけ方法があるようにも思います。
間接交流は親の関心を伝えるパイプ
上に挙げた方法のほかにも、それぞれの親子に合った方法が考えられますが、お子さんが面会交流を拒否していたり、積極的になれないときの間接的面会交流は、親の愛情や関心をやんわりと伝える細いパイプです。
お子さんの負担にならない範囲で、是非、パイプをつないでいただければと思います。
面会交流に関して、父母間の合意が難しい場合、民間調停(ADR)のご利用もご検討ください。
お問合せやご相談のお申込みは以下のフォームよりお願いいたします。