これまで同居していた家族が別々に住む際、当たり前ですが大きな生活の変化を伴います。円満に別居し、円満に別居生活を送るために決めておいた方がいいことを8つの項目に分けてお伝えします。
別居の希望を相手に伝えるかどうか
先ほど、別居の際には諸々について協議をしておきましょうとお伝えしましたが、そもそも、別居意思を相手に伝えないことには協議は成立しません。
しかし、相手に別居を伝えることで、転居までの同居期間が気まずく感じられたり、別居を阻止されるといった懸念もあります。
そのため、当センターのカウンセリングの中でも「別居する際、相手に事前に伝えた方がいいでしょうか」という相談がとても多いのです。
この質問に対する回答は難しいのですが、原則的には、事前に伝えた上での別居をお勧めしています。なぜなら、突然相手に出ていかれる衝撃は想像を絶しますし、その後の話合いにも悪影響です。
また、別居の際には諸々の決めておくことがありますが、事前にそれらを決めておけるメリットも大きいと言えます。
しかし、例外的に、事前に伝えることで身に危険が及ぶ場合や、多大な精神的苦痛が予想される場合もありますので、無理はしないようにしましょう(詳しくは以下をご参照ください。)。
別居時に決めておきたい8つのこと
相手に別居意思(離婚意思)を伝えるとして、その際に協議しておきたい8つのことを以下でご紹介します。
別居のタイミング
子どもがいない夫婦の場合、別居のタイミングでもめることはあまりありません。別居先が見つかり次第、転居することが可能です。しかし、子どもがいるとそうはいきません。子ども自身が転居する場合はもちろんですが、一方の親が出ていき、子どもは自宅に残る場合であっても、子どもにとっては大きな環境の変化と言えます。
中には、家庭内のことが気になって学校で上の空だったり、部活動や習い事など、夢中だったことに無気力になってしまう子どももいます。
そのため、時間に余裕があり、ゆったりと過ごせる夏休みや冬休みといった長期休暇中に別居することをお勧めします。
もちろん、DVなど急を要する場合はこの限りではありませんし、子どもに負担が大きい時期であっても、親のメンタルが同居に耐えきれない場合もあります。
別居時期に「絶対」はありませんが、よく考えて家族にとってよい時期を選びましょう。
どちらが家を出ていくのか
別居後(離婚後)の生活も見据え、どちらが家を出ていくのが最善か、よく話し合って決めておきましょう。何となく、自宅に残った方が得策のような気がして、相手に出て行ってもらいたいと考える人もいますが、そうとは限りません。
例えば、家族で住むことを前提として借りた部屋だとすると、別居後も割高な家賃を払い続けることができるでしょうか。
また、別居によってワンオペ育児になるのであれば、実家の近くに転居した方がいい場合もありますし、嫌な思い出のある家には住みたくないという人もいます。
そうは言っても、やはり子どもの生活環境を極力変えたくない、転校させたくないという場合は子どもが自宅に残れるよう話し合いましょう。
また、自分は希望していないのに、相手から別居を求められたという方も同様です。確かに、別居のニーズがない自分が家を出ていくことに納得できないかもしれません。しかし、その場合、結局は相手が(もしくは子どももつれて)家を出ていく結果になってしまうのです。
1人の大人をその人の意思に反して引き留めておくことはできません。一方のどちらかが別居を強く望む場合、誠実に話し合う姿勢が大切です。
子どもはどちらと住むのか
別居(離婚)の際、どちらが子どもと住むのかについて、きちんと話し合っておきましょう。
一般的には、これまで子どもを主に世話してきた方の親(主たる監護者)と暮らすことが子どもの安定した生活につながると考えられます。
また、同居中も協力しながら育児をしていたような共働き夫婦の場合、別居をしても双方の親が子どもに密にかかわれるよう、近くに住むなどしてサポートしあうことも可能です。
どちらの親が子どもと住むのかを決める際、「親自身がどうしたいか」という視点ではなく、子どもの生活のためにはそれぞれの親がどうサポートするのがよいか、という視点で考えましょう。
別居後(離婚後)の生活費はどうするのか(婚姻費用)
別居中の生活費のことを婚姻費用といいます。別居をしていても、まだ婚姻関係が続いている場合、相手の配偶者や子どもに対して扶養義務が発生します。また、離婚後は、子どもの養育費が発生します。
相手の意に反して家を出たので、生活費の請求はできないのではないかと心配される方もおられますが、決してそうではありません。
婚姻費用も養育費も算定表という目安がありますので、きちんと話し合って事前に決めておきましょう。詳しくは、以下をご参照ください。
別居の際、何を持っていくのか
別居(離婚)の際、衣類や書類など、それぞれの個人の所有物を持ち出すことは問題ありませんが、家族で使用していた家電や家財道具は勝手に持ち出さず、どちらが何を取るのか、きちんと話し合っておきましょう。
また、離婚前に別居する際は、可能であれば、後から取りに行かなくてもいいよう、完全な転居を目指しましょう。別居後、離婚協議が始まると、気まずかったり、家に入ることを拒否されたりして、なかなか必要なものが回収できないということがよくあります。
特に、子どもの持ち物は注意が必要です。学用品など、ないと困るものや再購入すると金額が大きくなってしまうもの(制服など)は忘れずに持っていきましょう。別居後、親権で争ってしまった場合、子どもはいずれ帰ってくるのだからと荷物を引き渡してくれないこともあります。
転居費用は誰が負担するか
転居のための費用は、転居する側が支払うのが大原則です。しかし、状況に応じて、夫婦の共有財産から支出したり、相手に出してもらったりと色々な方法があり得ます。
引越しの費用に加えて、転居先を確保するための費用(仲介手数料・敷金礼金等)も必要になりますので、きちんと話し合っておきましょう。
また、双方が転居する場合、現在住んでいる家を引き払うための費用も発生します。クリーニングや修繕費用が敷金では足りない場合や、家財の処分が必要な場合です。このような場合も併せて協議しておきましょう。
別居先を知らせるか
子どもがいる夫婦の別居の場合、別居後の面会交流の実施や養育費(婚姻費用)の支払い等、子どもの親としての関係が継続します。そのため、お互いがどこに住んでいるのかを把握しておいた方が都合がよく、原則的には別居先の住所は知らせておきましょう。
ただ、DVや子どもへの虐待があったり、ストーカー行為等の嫌がらせが予想される場合、住所を秘匿する手続き(支援措置)を自治体の戸籍課で取っておくこともできます。
別居後の子育て(面会交流)はどうするか
別居か離婚かにかかわらず、子どもと別々に暮らす親との交流の方法について、取り決めておきましょう。
子どもにとって、これまで一緒に暮らしていた親との別離は悲しいものです。なるべく別居前後の子どもの生活環境が変わらないよう、別居親との面会交流を確保してあげましょう。
また、別居期間中に円滑に面会交流を取り決めておくことで、離婚協議がスムーズに進むこともあります。
例えば、別居期間中に子どもに会えていない場合、別居親は「離婚したら、更に子どもには会わせてもらえなくなるのでは」と考え、離婚そのものに反対したり、親権で争ったりしてしまいます。
離れて暮らしていても、親子の関係は切れないと実感できることが親にとっても子どもにとっても大切です。
協議ができない場合の3つの方法
以上のような協議事項をご紹介しましたが、協議をしても話がまとまらないとか、協議自体に相手が応じてくれないという場合があります。
そういった場合の進め方として、3つご紹介したいと思います。
家庭裁判所に調停を申し立てる
話し合いたい内容によっては、家庭裁判所に調停を申し立てることが可能です。例えば、別居後の生活費については婚姻費用の分担請求の調停を、別居後(離婚後)の親子の交流については面会交流の調停を申し立てることが可能です。
また、別居時期や家財道具の分配等、その他諸々の事項についても離婚調停の中で協議することが可能です。
家裁に申し立てるメリット
公的な第三者が入る
夫婦二人では話が進まなかったり、相手にされないことでも、公的な機関が間に入ることで、協議が前に進むことがあります。
安価
弁護士に依頼せず、自分で調停を申し立てる場合、申立時に数千円かかるのみで、あとは何度話し合っても無料です。
家裁に申し立てるデメリット
長期化が予想される
家裁の調停は、一カ月に一回もしくはそれ以下です。ですので、解決までに半年もしくは1年かかったというようなこともよくあります。離婚問題が長引くのは避けたいという方にはお勧めではありません。
紛争性が高まる
家庭裁判所に申し立てられた相手方としては、何だか犯罪者として扱われたような気がしたり、申立てを宣戦布告のように受け止める人がいます。
また、裁判所で相手を非難するような書面の応酬を繰り返しているうちに、相手への感情が悪化してしまうこともあります。
調停委員のあたりはずれが大きい
調停委員は、基本的に法的知識や調停技法の知識がない一般の方が自薦他薦で選任されます。もちろん、選任後、様々な研修を受けたり、自己研鑽を積まれるわけですが、にわかに蓄積できる知識ではありません。そのため、調停委員に不満を持つ人も少なくないようです。
弁護士に依頼する
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼する何よりのメリットは、法律の専門家に全面的に味方になってもらえるという安心感にあります。
また、自分に代わって相手と交渉してくれるという点においても、心身ともに疲れ切っている人にとってはメリットが大きいと言えるでしょう。
弁護士に依頼するデメリット
デメリットとして一番大きいのは費用面です。案件によって金額が異なりますが、どんなに安くても60万円程度はかかります。
また、弁護士に依頼することで、相手方が戦闘モードになり、弁護士対弁護士の争いになってしまうのも残念な点です。
ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する
ADRは、「夫婦では話合いができないけれど、裁判所まではちょっと・・。」という方に適している話合いの方法で、民間の調停機関です。民間ではありますが、法務大臣の認証を取得している機関であれば、安心して利用することができます。
ADRのメリットは、①早期解決、②土日や平日夜間の利用可・オンライン調停可といった利便性、③民間機関故の手軽さなどが挙げられます。
デメリットとしては、弁護士費用に比べれば格安ですが、家裁の調停に比べると費用がかかる点です。
詳しくは、以下をご参考ください。
まとめ
離婚したい相手との話合いは苦痛を伴いますし、早く離婚したい気持ちが先走って、諸々の協議に消極的になってしまうことがあります。
しかし、少しの手間と時間をかけて決めるべきことを決めておくことで、将来のトラブルを防ぐことができますし、別居後の生活もスムーズにスタートをきれます。
困ったときは、第三者の力を借りつつ、しっかりと協議しておきましょう。
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