別居(婚姻費用)

子連れ別居時のルール作りと失敗事例の紹介

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一足飛びに離婚を選択するのではなく、まずは別居で冷却期間をおくことを選択するご夫婦もいます。また、一方はすぐにでも離婚することを望んでいるけれど、もう一方は反対している場合、望むと望まざるとにかかわらず、当面の間、別居が継続するご夫婦もいます。

そんな別居期間を問題なく過ごすために決めておきたいことを以下にご紹介します。

別居の際に決めておきたい3つのこと

別居期間(再協議時期)

中には、何十年と別居を継続する夫婦もいますが、大抵は「今は結論が出せないので、一時的に別居する」という形を取っています。そういった場合、再協議時期を設定し、どの時点で今後の夫婦関係について話し合うのかを明確にしておく必要があります。

そうすることで、同居も離婚もしないまま、どちらにも動けず別居がだらだらと続いてしまうという事態を避けることができます。

婚姻費用

別居中であっても、籍が入っている以上は配偶者や子に対して扶養義務が発生します。婚姻費用の金額や支払期日を決めておくことで、別居中の生活費に困ったり、振込みがないとやきもきすることが減ります。

支払う側も、五月雨に金銭の要求がきたり、それが原因でもめることを避けることができます。

想定される別居期間や婚姻費用の金額にもよりますが、比較的長期の別居が見込まれ、また婚姻費用も高額になる場合は、強制執行ができる形で文書に残しておいた方が安心ですので、公正証書の作成もしくはADR合意書の作成を検討しましょう。

面会交流

別居の紛争の裏には、監護者や親権で争っているケースが少なくありませんが、この場合、面会交流の取り決めが問題となってきます。

どちらも子どもと一緒に暮らしたいと思っている夫婦であれば、いかにお互いが納得し、かつ子どもにも負担のない面会交流の方法を考えるかが課題となります。

子どもが幼く、近隣での別居であれば、共同養育的な面会交流が可能が、別居先が遠方であったり、子どもが忙しかったりすると、両方の親の家を行き来するにも限界があります。そのため、夏休みや冬休みの長期休暇には週単位の面会交流を設定するなど、臨機応変な協議が求められます。

面会交流については、こちらもご参照ください
離婚後(別居中)の面会交流、決め方に関する基礎知識と具体例

別居協議に失敗した事例

このように、別居の際に話し合いを行っておくことが理想ですが、別居自体に合意ができていない場合、一方の了解を得ずに別居せざるを得ない状況になります。

そうなると、夫婦双方、そして子どもに大きな負担がかかってしまいます。

以下では、そんな事例をご紹介します。

夫 :一般的なサラリーマン
妻 :専業主婦
長女:6歳(小学校1年生)

妻は、夫からのモラハラに耐えかね、離婚を前提に別居したいと切り出した。

夫は、妻から突然離婚を突きつけられ驚いたが、「別れたくない」と懇願するわけにもいかず、「生活はどうするのだ」、「出ていくなら子どもを置いていけ」と事実上離婚に反対した。

夫は、自分ひとりで長女を育てる自信はないものの、「子連れ別居を許可→妻を長女の親権者と指定して離婚→自分は養育費だけ支払わされる」という流れに納得できずにいた。

妻は、子どもを置いていくのは現実的ではないし、実家に帰っても、好きなときに子どもに会ってもらってかまわないと伝えたが、夫は聞く耳を持たなかった。

妻としては、これ以上夫との生活を続けることが困難であったため、夫に内緒で別居を準備するしかなかった。

この後、この夫婦はどのような道のりをたどることになるのでしょうか。

子どもに会えなくなった夫

自宅に帰ったらもぬけの殻

ある日、夫が会社から帰宅すると、自宅は玄関もリビングも真っ暗。胸騒ぎがして家の中を探してみると、妻と子どものものがごっそりとなくなっている。妻に電話をしてもつながらない。

夫は、暗くてがらんとした自宅で呆然とするしかなかった。

こんなドラマのような話が現実の世界にも数多く発生しています。

そして、その時の衝撃は、とても大きいものです。当日はもちろんのこと、翌日からもじわじわと寂しさや虚しさ、焦りや不安、怒りや恐怖、色々な負の感情にさいなまれます。誰もいない自宅に帰れば、否が応にも一人になった現実を思い知らされるのです。

弁護士への相談

次にどういう行動を取るかは人それぞれですが、まずは、弁護士に相談に行く人も少なくありません。

夫は、妻と子どもが家を出たその日から、ネットで検索を始めたが、「男でも親権を取れる」、「共同養育」、「連れ去りは罪」といった情報から、「結局は妻が親権者」、「専業主婦には勝てない」などの情報が入り乱れ、頭が混乱するばかりであった。

そこで、弁護士の法律相談に行ったところ、すぐにでも家庭裁判所に申し立てるべきだと言われり、専業主婦に親権を争っても無駄と言われたり、弁護士によって違うことを言うので何が本当か分からなくなってしまった。

何か手を打った方がいいのは分かっていたが、弁護士に依頼すると急に何十万円ものお金がかかることや、どの弁護士に依頼すればよいか分からず、迷っているうちに数日が過ぎた。

そうしたところ、家裁から書面が届き、妻が弁護士をつけて離婚調停を申し立てたことが分かった。

夫は、もう迷っている余地はないと焦り、着手金30万円を支払って、最初に相談にいった弁護士に依頼した。夫の弁護士は、家裁に「子の引渡し」、「監護者の指定」などの保全処分と審判を申し立てた。

家庭裁判所での話し合い

家裁での協議が始まったものの、夫が監護者になれる見込みは低かった。

夫としては、まずは、子どもに会わせてほしいと主張したが、妻からは、連れ去りの危険性などを理由に、「監護者もしくは親権者が決まるまでは会わせない」との回答が返ってきた。

夫は、妻から別居の相談をされた際、どうしてもっと冷静に話し合いに応じなかったのかを悔やんだ。

あの時点で弁護士に相談に行くなり、専門家の意見を聞いていれば、自分には親権者としては勝ち目がないことを受け入れつつ、納得のいく面会交流で交渉するなど、子どもと会いながら協議ができたのではないか、そんな考えが頭を離れなかった。

長引く手続きに疲弊した妻と長女

一方、家を出て行った妻と長女の生活はどうなったでしょうか。

専業主婦の家探しは困難

妻は、まず、別居先の家探しで困難にぶつかった。

実家に帰ってはすぐに居場所がばれてしまう。そのため、賃貸アパートを探すため不動産会社に片っ端から電話をしたり、ネットで物件を探した。

しかし、不動産会社からのダイレクトメールで夫にばれやしないか、メールをこっそりを見られてはいないかと、気が気ではなかった。

まだ6歳の長女が秘密を守れるとも思えないため、長女にも内緒でことを進めなければならないのも想像以上に大変だった。

しかも、収入のない専業主婦が借りれる部屋はほとんどなく、また、そもそも敷金礼金の費用を捻出することができない。

困りはてて行政に相談したところ、女性シェルターを紹介された。

DVとシェルターの安易な組み合わせ

「シェルター」という言葉からイメージされるのは、ルールが多い窮屈な共同生活。妻は、当初、乗り気ではなかった。また、モラハラ夫ではあるものの、シェルターにかくまってもらうほどの緊急性もないような気がした。

しかし、どうしても行く先がないため、試しに施設に見学に行ってみた。そうしたところ、イメージとは大きく違い、普通のワンルームマンションの一室をあてがわれることが分かった。

堅苦しいルールもないし、思った以上に普通で快適な生活ができそうである。また、相談員は、「モラハラは立派な精神的DVです」と繰り返し、迷う妻の背中を押した。

突然別居が子どもに与える影響

別居決行当日。打ち合わせ通り、支援員と一緒に学校に行き、目を丸くする長女をタクシーに乗せて施設に直行、タクシーの中で、戸惑う長女に説明をした。

長女は、父から母に対するモラハラ的言動を見ていたため、「パパと一緒にいると、しんどくなってしまうの」という母の説明に納得した。

しかし、長女は、学校の友達ときちんとお別れができなかったこと、新しい住居や学校に慣れなければならないこと、父親とも離れること、それらのことが突然に起こったことなど、変化の波に押しつぶされそうであった。

明るかった長女の表情は暗くなり、学校にも行きたがらなかった。食欲もなく、好きだったアニメやアイドルのテレビ番組も見なくなった。眠れないと訴えることが増え、涙を流すこともあった。

小さい心が悲鳴を上げているのである。

妻は、夫から離れて気持ちが楽になったものの、長女のそんな姿を見て胸が痛かった。

最近のシェルターは、住環境もよく、携帯電話も自由に使えるなど、以前のイメージよりも格段に住みやすいところも増えました。

しかし、突然に目まぐるしい変化の波に巻き込まれる子どもの負担は、やはり大きいと言わざるを得ません。

母子ともに負担になる家裁での協議

妻は、シェルターで紹介された弁護士に依頼することにし、家裁に離婚調停を申し立てた。依頼した弁護士からは、専業主婦が親権で負けるわけはないと言われていたが、やはり不安が付きまとった。

また、執拗に面会交流を求められ、最終的には、家裁調査官による調査のため、長女を裁判所に連れて行くことになった。

妻は、思った以上に大げさなことになっていると感じ、家裁での手続きに疲れ果ててしまった。早くことが落ち着いて、長女が自由に父親に会えるようにしてやりたかったが、シェルターに入り、弁護士にも依頼する中で、離婚問題が自分のハンドリングできる範疇を超えてしまったような気がした。

まとめ

ご紹介した事例では、父母が無用に争った結果、夫婦だけではなく子どももしんどくなってしまっています。

どちらか一方が別居を望んだとき、強制的にそれを阻止することはできません。いつかは家を出て行ってしまうリスクが伴うのです。

そうなった場合に発生し得る負担を避けるため、なるべく夫婦双方が妥協し、きちんとルールを決めた上で別居をしてほしいと思います。

夫婦では話し合いがうまくいかない、そんな場合はADRによる調停をご利用ください。
ADRによる仲裁
離婚の新しい方法、ADRによる調停活用例

カウンセリングは以下のページよりお申込みが可能です。ことが深刻になる前に、ぜひお気軽にご相談ください。
離婚カウンセリング

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