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失敗事例から学ぶ、子連れ別居のルール作り

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お子さんがいるご夫婦にとって、別居時にどちらが子ども連れていくか(もしくは自宅に残すか)、とても大きな問題となります。

なぜなら、「別居時の監護者≒離婚後の親権者」という構造があるからです。

そのため、親権の争いが予想される場合、別居時に既に親権争いの前哨戦が始まってしまうのです。

だからといって、安易にその争いを避けて無断で別居を強行したり、いたずらに別居の協議に応じなかったりすると、その後に待っているのは悲劇です。

今回は、子連れで別居する際のルールの大切さについてお伝えしたいと思います。

    1 別居に合意してくれない夫

まずは、うまく別居の話合いができなかった夫婦の例をご紹介したいと思います。

夫 :一般的なサラリーマン
妻 :専業主婦
長女:6歳(小学校1年生)

妻は、夫からのモラハラに耐えかね、夫に離婚を切り出した。

夫は、妻から突然離婚を突きつけられ、驚いた。しかし、プライドの高い夫は、妻に考え直すよう懇願することができず、「離婚したいなら協議に応じてやる。」と返答した。

妻は、一刻も早く夫から離れたい気持ちが強く、長女を連れて実家に戻りたいと相談した。

しかし、夫は、「出ていくのは勝手だが、子どもは置いていけ」の一点張り。夫としては、自分ひとりで長女を育てる自信はないものの、「子連れ別居を許可→妻を長女の親権者と指定して離婚→自分は養育費だけ支払わされる」という流れに納得できずにいた。

妻としては、これ以上夫との生活を続けることが困難であったため、夫に内緒で別居を準備。

さて、この夫婦、この後どのような道のりをたどることになるのでしょうか。

    2 夫の悲劇

2-1 自宅に帰ったらもぬけの殻

ある日、夫が会社から帰宅すると、自宅は玄関もリビングも真っ暗。胸騒ぎがして家の中を探してみると、妻と子どものものがごっそりとなくなっている。妻に電話をしてもつながらない。

夫は、暗くてがらんとした自宅でボー然とするしかなかった。

こんなドラマのような話が現実の世界にも普通にあります。そして、その時の衝撃は、相当のものです。

当日はもちろんのこと、翌日からもじわじわと寂しさや虚しさ、焦りや不安、怒りや恐怖、色々な負の感情にさいなまれます。誰もいない自宅に帰れば、否が応でも一人になった現実を思い知らされるのです。

2-2 弁護士への相談

次にどういう行動を取るかは人それぞれですが、まずは、弁護士に相談に行く人も少なくありません。

夫は、妻と子どもが家を出たその日から、ネットで検索を始めたが、「男でも親権を取れる」、「共同養育」、「連れ去りは罪」といった情報から、「結局は妻が親権者」、「専業主婦には勝てない」などの情報が入り乱れ、頭が混乱するばかりであった。

そこで、弁護士の無料相談に行ったところ、すぐにでも家庭裁判所に申し立てるべきだと言われた。

急いだ方がいいのは分かっていたが、急に何十万円ものお金がかかることや、どの弁護士さんに依頼すればよいか分からず、迷っているうちに数日が過ぎた。

そうしたところ、家裁から書面が届き、妻が弁護士をつけて離婚調停を申し立ててきたことが分かった。

夫は、もう迷っている余地はないと焦り、着手金30万円を支払って、最初に相談にいった弁護士に依頼。夫の弁護士は、家裁に「子の引渡し」、「監護者の指定」などの保全処分と審判を申し立てた。

2-3 家裁で争うことのしんどさ

家裁での協議が始まったものの、過去の主たる監護者であった妻と争うのは簡単ではなかった。

夫としては、まずは、子どもに会わせてほしいと主張したが、妻からは、連れ去りの危険性などを理由に、「監護者もしくは親権者が決まるまでは会わせない」との回答が返ってきた。

審判や調停は遅々として進まず、子どもと会えない日々が続くだけだった。

夫は、妻から別居の相談をされた際、どうしてもっと冷静に話し合いに応じなかったのかを悔やんだ。

あの時点で弁護士に相談に行くなり、専門家の意見を聞いていれば、自分には親権者としては勝ち目がないことを受け入れつつ、納得のいく面会交流で交渉するなど、子どもと会いながら協議ができたのではないか、そんな考えが頭を離れなかった。

    3 妻の悲劇

3-1 専業主婦の家探しは困難を極める

妻は、まず、別居先の家探しで困難にぶつかった。

実家に帰ったのでは、すぐに居場所がばれてしまう。そのため、まずは、不動産屋に片っ端から電話をしたり、ネットで物件を探した。

しかし、不動産屋からのダイレクトメールで夫にばれやしないか、メールをこっそりを見られてはいないかと、気が気ではなかった。

まだ6歳の長女が秘密を守れるとも思えないため、長女にも内緒でことを進めなければならないのも想像以上に大変だった。

しかも、信用のない専業主婦に部屋を貸してくれる大家さんもおらず、また、そもそも敷金礼金の費用を捻出することができない。

困りはてて行政に相談したところ、女性シェルターを紹介された。

3-2 DVとシェルターの安易な組み合わせ

「シェルター」という言葉からイメージされるのは、あまり清潔でなかったり、ルールが多い共同生活。妻は、当初、乗り気ではなかった。また、モラハラ夫ではあるものの、シェルターにかくまってもらうほどの緊急性もないような気がした。

しかし、どうしても行く先がないため、試しに施設に見学に行ってみた。そうしたところ、イメージとは大きく違い、普通のワンルームマンションの一室をあてがわれることが分かった。

堅苦しいルールもないし、思った以上に普通で快適な生活ができそうである。また、相談員は、「モラハラは立派な精神的DVです」と繰り返し、迷う妻の背中を押した。

3-3 シェルターの落とし穴

別居決行当日。打ち合わせ通り、支援員と一緒に学校に行き、目を丸くする長女をタクシーに乗せて施設に直行。タクシーの中では、戸惑う長女に説明をした。

長女は、父から母に対するモラハラ的言動を見ていたため、「パパと一緒にいると、しんどくなってしまうの」という母の説明に納得した。

しかし、長女は、学校の友達ときちんとお別れができなかったこと、新しい住居や学校に慣れなければならないこと、父親とも離れること、それらのことが突然に起こったことなど、変化の波に押しつぶされそうであった。

明るかった長女の表情は暗くなり、学校にも行きたがらなかった。食欲もなく、好きだったアニメやアイドルのテレビ番組も見なくなった。眠れないと訴えることが増え、涙を流すこともあった。

小さい心が悲鳴を上げているのである。

妻は、そんな長女の姿を見て、後悔の念に襲われるのであった。

最近のシェルターは、住環境もよく、携帯電話も自由に使えるなど、以前のイメージよりも格段に住みやすくなっています。

しかし、突然に目まぐるしい変化の波に巻き込まれる子どもの負担は、やはり大きいと言わざるを得ません。

3-4 楽ではない家裁での協議

妻は、行政から紹介された弁護士に依頼することにし、家裁に離婚調停を申し立てた。依頼した弁護士からは、専業主婦が親権で負けるわけはないと言われていたが、やはり不安が付きまとった。

また、執拗に面会交流を求められ、最終的には、家裁調査官による調査のため、長女を裁判所に連れて行くはめになった。

妻は、思った以上に大げさなことになっていると感じ、家裁での手続きに疲れ果ててしまった。

   4 別居のルール

それでは、別居に際し、どのようなルールを定めておけばいいのでしょうか。

4-1  別居期間(再協議時期)

別居は、一緒に生活できなくなった夫婦にとって、とりあえずの選択として最善ではありますが、あくまで結論の先延ばしにすぎません。

そのため、再協議時期を設定し、別居期間を明確にしておく必要があります。

4-2 婚姻費用

別居中であっても、配偶者や子どもの生活費を援助する必要があります。婚姻費用の金額や支払期日を決めておくことで、兵糧攻めにあったり、いつ振り込まれるのかと、不安な毎日を過ごさずに済みます。

4-3 面会交流

監護者や親権で争っている場合、この面会交流の取り決めが肝になってきます。

どちらも子どもと一緒に暮らしたいと思っている夫婦であれば、いかに不平等感なく、かつ子どもにも負担のない面会交流の方法を考えるかが問題です。

子どもが幼く、近隣での別居であれば、共同養育的な面会交流が可能です。

ただ、別居先の実家が遠方であったり、子どもが忙しかったりすると、両方の親の家を行き来するにも限界があります。

そんな場合、同居親がいかに別居親に自由な面会交流を保証できるかが重要になってきます。

面会交流については、こちらもご参照ください
面会交流は本当に子どものためになる?!
元家裁調査官が提案する面会交流10パターン

    5 まとめ

夫婦が離婚する際、別居は至極普通な選択肢ですが、子どもがいる夫婦の場合、別居自体が難しかったります。

離婚条件の協議を円滑に進めるためにも、なるべく夫婦双方が妥協し、きちんとルールを決めた上で別居をしてほしいと思います。

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