離婚カウンセリング

夫(妻)が怖いときの離婚協議の工夫

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離婚や別居のご相談を伺っていると「私、夫が怖くて、自分一人では何も話せません。」、「妻が怖くて、家に帰りたくないんです。」という言葉をよくお聞きします。結婚するときは怖くなかったはずなのに、いつの間にか相手が怖くなってしまう、そんなご夫婦は実はとても多いのです。そして、その結果として離婚に至ることもあるわけですが、「怖い」相手との離婚協議となると、「何をどう進めてよいか分からない」という方もおられることと思います。今回は、「夫(妻)が怖い」をテーマに、その克服のヒントやその先にある離婚協議の工夫について考えていきたいと思います。

何が怖い?

一口に「怖い」と言いますが、何に恐怖を抱いているのか、それは人それぞれです。

相手から嫌われるのが怖い
相手からバカにされるのが怖い
相手に迷惑をかける(かけられる)のが怖い
相手から無視されるのが怖い
相手に怒鳴れるのが怖い
相手といると自分を失いそうで怖い
相手と離れて孤独になるのが怖い

果たして、自分は相手との関係において、何に恐怖を感じているのか。それを明らかにすると自分が大切にしていることや相手にわかってほしいことが見えてくるはずです。

例えば、ことあるごとに夫に「お前はバカか!」と怒鳴られ、怖い思いをしていた妻がいたとします。この妻は、一体何が怖いのでしょうか。単純に大きな声を出されるのが怖いのかもしれませんし、人間性を否定されるのが怖いのかもしれません。その怒鳴り声が隣近所に聞こえてしまうのが怖いのかもしれませんし、子どもに悪影響を及ぼすのを恐れているのかもしれません。そもそも、いつ爆発するか分からない夫の存在そのものが怖いのかもしれません。このように「何が怖いのか」を突き詰めて考えていくことで、自分は何が辛いのか、それを取り除くためには、相手にどう伝えればいいのか、そういったことが明確になるのではないでしょうか。

『怖い』のに行動を起こせないのはなぜ

相手のことが怖いのに、別居や離婚といった「逃れるための対策」を取れないまま、長年我慢している人もいます。なぜ行動を起こせないのでしょうか。その理由の一つに「バイアス(無意識の思い込み)」があり、そのバイアスが人に行動を起こすことを恐れさせます。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、未知なものや未体験なことを嫌い、現状維持を好む心理作用を指します。例えば、モラハラ夫への恐怖を感じていたとしても、「子どものためにも現状の生活を変えるべきではない。自分さえ我慢すれば・・・」といったような状況があります。もしかしたら、「子どものため」と言いつつ、自分自身が新しい生活に踏み出すのが怖いのかもしれません。また、専業主婦にとっては、経済的な不安や再び社会に出て働くという変化も現状を変えることへの恐れにつながります。

何をアドバイスしても、「でも~」と何かダメな理由を探し、一歩を踏み出せない人はこのバイアスがかかっているかもしれません。

正常性バイアス

今起こっている異常事態を否定し、正常であるかのようにふるまうことを正常性バイアスといいます。予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)のことを指します。

昨今の豪雨災害などで話題になることがありますが、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、“脳”の防御作用(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、危険にさらされるのです。

また、何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、そのようなストレスを回避するため、自然と脳が働き、心の平安を守る作用が備わっています。この典型がDV被害者やモラハラ被害者です。お話をうかがっていると、相手からひどい言葉をかけられたり、病院での治療が必要なほどの怪我をさせられているのに、その様子を「何でもない」ように淡々と話す人がいます。毎日、毎日、夫婦という密な関係の中、「おまえはバカだ」と言われたり、「あなたはほんとうに役立たずよね」と言われ続けると、だんだんと感覚が麻痺してきます(もしくは麻痺しないとやっていられないという状況になります)。それに加えて、そんなひどい現状を受け入れきれず、「大したことはない」、「夫婦なら、このくらいのことは当たり前」、と正常性のバイアスがかかるのです。 

集団同調バイアス

みんなと同じでないと不安、集団に合わせる、自分だけ違う行動をとりにくい、という状況を集団同調バイアスといいます。この集団同調バイアスも災害の文脈で語られることが多い概念ですが、夫婦生活にも当てはまることがあります。

例えば、「周りのママ友はみんな夫婦円満で幸せそう、私だけシングルになるなんて考えられない」、「うちの会社では、離婚しているやつなんていないから・・。」と自分だけが周囲と違うことに不安になるのです。

でも、そんな時こそ心を静めて、『~すべき』ではなく、『~したい』に焦点を当てて今『私はどうしたいのか』考えてみてください。

解放されるために出来ること

自分の感情を大切にする

自分の言動を決める時「~しなければならない」、「~すべきだ」、「~した方が良い」と考えるのではなく、まず「私は~したい」で考えることから始めましょう。当事者の方々から「〇〇した方がいいでしょうか」と聞かれることがよくあるのですが、その答えはその人の中にあることがほとんどです。自分の感情を大切に、自分のために行動する楽しさを体験してください。

自分に与えられた『自由』に目を向ける

あなたには断る自由があります。あなたには自分の考えを相手に伝える自由があります。自分の自由に目を向け、認めることが出来るようになると、相手の自由も認められるようになり、二人の関係性が変わります。

お互いを拘束しあって窮屈に生活するのではなく、それぞれが自由な存在であることを意識してみてはどうでしょうか。

 距離を置いてみる

日常生活の中で、自分の思考を変えたり、自由に目を向けることで恐怖からの解放を試したけれど、残念ながら『怖い』から解放されなかったときは、別居を考えることも一つの方法です。これまで、物理的に恐怖から遠ざかることで、自分を取り戻した方々にたくさん出会いました。一度、心を静めて自分と向かい合う時間を持つことはとても大切です。

離婚協議の工夫

これらのステップを踏んだ結果、あなたが離婚や別居を選択したとして、さて、怖い相手にどう話を進めればいいのでしょうか。いくつかの工夫をお伝えしたいと思います。

 口頭ではなく文字で伝える

「怖い―怖がられる」の関係性の中で、お互いが冷静になって言いたいことを言い合う、というのは難しいものです。そんな場合は、まずは、手紙やメールといった文章の形で伝えるのがいいでしょう。その際、相手を責めたりする言葉よりは、自分がどうして離婚したいのか、どんな条件で離婚したいのか、そういったことを端的に記載するのがポイントです。責める言葉が入っていると、相手はそこにばかり意識が集中し、腹を立てるばかりです。伝えたいことが伝わるよう、相手の立場になって読み返してみるのもいいかもしれません。

話合いの場所を工夫する

2人きりでの話合いが怖いという場合、話合いの場所を工夫することで、少し怖さが和らぐことがあります。例えば、夫が仕事から帰ってくるのを待って、深夜に自宅で二人きりで話し合うとします。相手は疲れて帰ってきますし、翌日の仕事のことを考えてイライラしているかもしれません。そして話合いの場は家庭という密室です。これでは、まともな話合いは期待できません。

お勧めは、ファミレスなどの人目があって明るい雰囲気の場所です。また、事前に、「大切なことを話したいから」などと伝えておくと、相手も心の準備ができていいでしょう。

 間に公平中立な専門家を挟む

二人きりで話ができない場合、親族や共通の知人に間に入ってもらう人もいますが、実は、イマイチです。法的知識がありませんし、どちらかの味方だったりすると、逆に紛争性が高まったりします。そのため、法的知識があって、公平中立な第三者を入れて話し合うことも一案です。

では、公平中立で専門的な第三者はどこにいるのでしょうか。まず、第一に挙げられのが家庭裁判所です。家庭裁判所では、どちらの味方でもない立場で、調停や裁判という形で協議の場を提供してくれます。

ただ、「裁判所まではちょっと・・・。」という方には、ADR(裁判外紛争解決手続)という民間の仲裁機関もあります。

ADR調停、新しい離婚の方法
ADR調停、よくある質問
ADRによる調停(仲裁)

いずれにしても、どちらの味方でもない専門家を挟むことで、冷静な解決が期待できます。

弁護士に依頼する

もし、あなたが心身ともに疲れ切っていて、自分では行動したり決断する元気がない、という場合、弁護士に依頼することも可能です。弁護士は、代理人としてあなたに代わって相手と交渉をしてくれます。依頼のための費用は高額ですが、その分、徹底的にあなたの味方になってくれるという利点があります。

さいごに

今回のコラム執筆のために「こころの科学201「人が怖い」の心理学」を拝読し、以下の記載がとても心に残りました。

「人間は協力し合いながら生きる動物である。人間は人間にとってまさに絶対的な味方、良き存在にあるに違いない。互いに恐れ合うことなど考えられない」と言いたいところだが、協力のためにはルールが必要であり、そのルールが複雑になったことが「人が怖い」の原点にある。

なるほどそうかもしれません。生活のあらゆる場面で複雑を極めている昨今、家庭の中のルールも複雑になり、それが夫婦間の『相手が怖い』につながっているのかもしれません。そんなときは、一旦「シンプル」(「シンプル」の形は人それぞれですが)に戻すのもいいのではないでしょうか。

もし、あなたが「夫(妻)が怖い」という問題を一人で解決できなかったなら、当センターにご相談ください。どのような方法が考えらえるか、一緒に考えていきたいと思います。

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