モラハラ

DV(モラハラ)から逃げるための心の持ち方と離婚協議の方法

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「私、夫が怖いんです」、「妻が怖くて帰宅恐怖症です」といったご相談があります。ただ、「怖い」と言いながらも、その環境から抜け出すことができない人もいます。今回のコラムでは、DVやモラハラ被害から抜け出すために自分自身の気持ちを整理し、具体的に離婚協議を進めていく際のポイントをお伝えします。

何が怖い?

一口に「怖い」と言いますが、何に恐怖を抱いているのか、それは人それぞれです。

例えば、ことあるごとに夫に「お前はバカか!」と怒鳴られ、怖い思いをしていた妻がいたとします。この妻は、一体何が怖いのでしょうか。

単純に大きな声を出されるのが怖いのかもしれませんし、人間性を否定されるのが怖いのかもしれません。

その怒鳴り声が隣近所に聞こえてしまうのが怖いのかもしれませんし、子どもに悪影響を及ぼすのを恐れているのかもしれません。そもそも、いつ爆発するか分からない夫の存在そのものが怖いのかもしれません。

このように「何が怖いのか」を突き詰めて考えていくことで、自分は何が辛いのか、それを取り除くためには、相手にどう伝えればいいのか、そういったことが明確になるのではないでしょうか。

相手から嫌われるのが怖い

意外とDVやモラハラケースでありがちなのが「相手から嫌われたくない」という気持ちです。

DVサイクルという言葉がありますが、DV加害者は巧みに相手の気持ちを操ります。怖い思いをさせた後は、誠心誠意謝り、優しい言葉もかけます。そんな繰り返しの中で、相手のことが「好き」だと錯覚してしまい、嫌われたくない、嫌われたらどうしようという気持ちになります。

もちろん、普通の恋愛関係や夫婦関係の中にもこの気持ちは存在します。逆に、「嫌われたくない」という気持ちが少しもなければ、良い関係は気付けません。

しかし、DV被害者の「嫌われたくない」気持ちは、ひどいことをされているにもかかわらず、それでも相手にすがってしまうという不健全な依存関係に起因しています。

バカにされるのが怖い

「お前はバカか」、「お前はバカだからこんなこともできない」等、日常的に「バカ」という言葉を聞かされている人がいます。

また、「バカ」という言葉は使わなかったとしても、何につけても上から目線で馬鹿にしたような口調で話されることもあります。

こういう経験が続くと、「本来の自分はそうでないはず」という気持ちが薄らいできて、「自分は本当にバカなのでは」という気持ちにさえなってきます。

バカにされるととても滲めで辛い気持ちになります。ですので、何も言われないために自分も何も言わない、言われたことだけをするという関係性に陥っていきます。

相手に迷惑をかけられるのが怖い

大抵の場合、DVは家庭内だけで発生します。しかし、DVの矛先は自分だけであったとしても、周囲の人を巻き込む危険性があることがあります。

例えば、「逃げれば、お前の実家に迷惑がかかることになるぞ」と脅されたりすることがあります。また、何か相手の気にいらないことをすると、夜通し説教をされ、翌日の仕事に支障をきたすこともあります。

〇〇されるくらいなら、現状に甘んじておくしかないと考える人も少なくありません。

相手から無視されるのが怖い

「無視」は想像以上の力をもっています。無視をすることで、相手の気持ちをコントールできてしまうくらいです。

別に相手に好かれたいとか、仲良くしたいと思っていなかったとしても、日常生活の中で「無視」をされてしまうと、針のむしろのように感じる人もいますし、「空気」のように扱われることに耐えきれない人もいます。

相手に怒鳴れるのが怖い

DV被害者には一番多い心情かもしれませんが、怒鳴られたり、暴力を振るわれるのが怖いという気持ちです。

これは説明の必要はないと思いますが、暴言・暴力は人の気持ちを萎縮させ、正しい判断力を奪っていきます。

相手といると自分を失いそうで怖い

これもDV被害者によくある心情です。本来の自分はこんな「バカだ」「どうしようもないくずだ」と言われるような人間でもないし、暴力を振るわれてもいい人間ではないという気持ちがあります。

一方で、毎日のように暴言・暴力が繰り返されると、そんな気持ちが揺らいできて、「もしかしたら、私が悪いのかも」というような気持ちになってきたりします。

そういった気持ちのはざまで、自分らしさが失われていく恐怖を感じることがあります。

相手と離れて孤独になるのが怖い

相手のことは特段好きではない、むしろ一緒にいることを苦痛に感じながらも、ひとりになってしまう孤独感よりはましだと感じる人がいます。

DVから逃れられない3つのバイアス

相手のことが怖いのに、別居や離婚といった「逃れるための対策」を取れないまま、長年我慢している人もいます。なぜ行動を起こせないのでしょうか。その理由の一つに「バイアス(無意識の思い込み)」があり、そのバイアスが人に行動を起こすことを妨げます

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、未知なものや未体験なことを嫌い、現状維持を好む心理作用を指します。例えば、モラハラ夫への恐怖を感じていたとしても、「子どものためにも現状の生活を変えるべきではない。自分さえ我慢すれば・・・」といったような状況があります。

もしかしたら、「子どものため」と言いつつ、自分自身が新しい生活に踏み出すのが怖いのかもしれません。また、専業主婦にとっては、経済的な不安や再び社会に出て働くという変化も現状を変えることへの恐れにつながります。

何をアドバイスしても、「でも~」と何かダメな理由を探し、一歩を踏み出せない人はこのバイアスがかかっているかもしれません。

正常性バイアス

今起こっている異常事態を否定し、正常であるかのようにふるまうことを正常性バイアスといいます。予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)のことを指します。

災害などで話題になることがありますが、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、“脳”の防御作用(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、危険にさらされるのです。

また、何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、そのようなストレスを回避するため、自然と脳が働き、心の平安を守る作用が備わっています。この典型がDV被害者やモラハラ被害者です。

お話をうかがっていると、相手からひどい言葉をかけられたり、病院での治療が必要なほどの怪我をさせられているのに、その様子を「何でもない」ように淡々と話す人がいます。毎日、毎日、夫婦という密な関係の中、「おまえはバカだ」と言われたり、「あなたはほんとうに役立たずよね」と言われ続けると、だんだんと感覚が麻痺してきます(もしくは麻痺しないとやっていられないという状況になります)。それに加えて、そんなひどい現状を受け入れきれず、「大したことはない」、「夫婦なら、このくらいのことは当たり前」、と正常性のバイアスがかかるのです。 

集団同調バイアス

みんなと同じでないと不安、集団に合わせる、自分だけ違う行動をとりにくい、という状況を集団同調バイアスといいます。この集団同調バイアスも災害の文脈で語られることが多い概念ですが、夫婦生活にも当てはまることがあります。

例えば、「周りのママ友はみんな夫婦円満で幸せそう。私だけシングルになるなんて考えられない」、「うちの会社では、離婚しているやつなんていないから・・。」と自分だけが周囲と違うことに不安になるのです。

でも、そんな時こそ心を静めて、『~すべき』ではなく、『~したい』に焦点を当てて今『私はどうしたいのか』考えてみてください。

DVから解放されるために出来ること

自分の感情を大切にする

自分の言動を決めるとき、以下の語尾を付けないようにしてみましょう。

  • ~しなければならない
  • ~すべきだ
  • ~した方が良い

上述ような語尾で考えるのではなく、まず「私は~したい」で考えることから始めましょう。

当事者の方々から「〇〇した方がいいでしょうか」と聞かれることがよくあるのですが、その答えはその人の中にあることがほとんどです。自分の感情を大切に、自分のために行動する楽しさを体験してください。

自分に与えられた自由と責任に目を向ける

あなたには断る自由があります。あなたには自分の考えを相手に伝える自由があります。自分の自由に目を向け、認めることが出来るようになると、相手の自由も認められるようになり、二人の関係性が変わります。

お互いを拘束しあって窮屈に生活するのではなく、それぞれが自由な存在であることを意識してみてはどうでしょうか。

同時に、自分で自由に選択した結果は自分で責任を取る必要がありますが、この「自分の言動の結果に責任を取る」ということが怖い人が意外と多くいます。

自分の人生が不幸であるのは、自分の夫(妻)が悪いからだと考えるのではなく、不幸から逃げ出すか否かは自分の自由な選択であり、その選択の結果も自分の責任である、という考え方に変えてみましょう。

 距離を置いてみる

日常生活の中で、自分の思考を変えたり、自由に目を向けることで恐怖からの解放を試したけれど、残念ながら『怖い』から解放されなかったときは、別居を考えることも一つの方法です。

これまで、物理的に恐怖から遠ざかることで、自分を取り戻した方々にたくさん出会いました。一度、心を静めて自分と向かい合う時間を持つことはとても大切です。

離婚協議の手順

これらのステップを踏んだ結果、あなたが離婚や別居を選択したとして、さて、怖い相手にどう話を進めればいいのでしょうか。いくつかの工夫をお伝えしたいと思います。

非難する場所を確保しておく

直接的な暴力がない場合でも、離婚や別居意思を伝えることで、相手が豹変したり、危険な目にあうことがあります。

そのため、話を切り出す前に、危険な事態となればすぐに逃げられる場所を確保しておきましょう。

 口頭ではなく文字で伝える

「怖い―怖がられる」の関係性の中で、お互いが冷静になって言いたいことを言い合う、というのは難しいものです。そんな場合は、まずは、手紙やメールといった文章の形で伝えるのがいいでしょう。

その際、相手を責めたりする言葉よりは、自分がどうして離婚したいのか、どんな条件で離婚したいのか、そういったことを端的に記載するのがポイントです。

責める言葉が入っていると、相手はそこにばかり意識が集中し、腹を立てるばかりです。伝えたいことが伝わるよう、相手の立場になって読み返してみるのもいいかもしれません。

話合いの場所を工夫する

2人きりでの話合いが怖いという場合、話合いの場所を工夫することで、少し怖さが和らぐことがあります(暴力の危険性がある場合、まずは身の安全を確保することが第一ですので、直接的な協議は避けてください。)

例えば、夫が仕事から帰ってくるのを待って、深夜に自宅で二人きりで話し合うとします。相手は疲れて帰ってきますし、翌日の仕事のことを考えてイライラしているかもしれません。そして話合いの場は家庭という密室です。これでは、まともな話合いは期待できません。

お勧めは、ファミレスなどの人目があって明るい雰囲気の場所です。また、事前に、「大切なことを話したいから」などと伝えておくと、相手も心の準備ができていいでしょう。

 間に公平中立な専門家を挟む

二人きりで話ができない場合、法的知識があって、公平中立な第三者を入れて話し合うことも一案です。

家庭裁判所の離婚調停

例えば、家庭裁判所の離婚調停です。家庭裁判所では、どちらの味方でもない立場で、調停や裁判という形で協議の場を提供してくれます。

民間の調停機関(ADR)を利用する

ただ、「裁判所まではちょっと・・・。」という方には、ADR(裁判外紛争解決手続)という民間の仲裁機関もあります。

ADR調停、新しい離婚の方法
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ADRによる調停(仲裁)

いずれにしても、どちらの味方でもない専門家を挟むことで、冷静な解決が期待できます。

弁護士に依頼する

もし、あなたが心身ともに疲れ切っていて、自分で行動したり決断する元気がないという場合、弁護士に依頼することも可能です。弁護士は、代理人としてあなたに代わって相手と交渉をしてくれます。依頼のための費用は高額ですが、その分、徹底的にあなたの味方になってくれるという利点があります。

さいごに

もし、あなたが「夫(妻)が怖い」という問題を一人で解決できなかったなら、当センターにご相談ください。どのような方法が考えらえるか、一緒に考えていきたいと思います。

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