DV

DV夫と離婚協議する際の2大ポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

今回は、DV夫との離婚協議におけるポイントをお伝えします。

DVの特徴

DV夫との離婚協議を円滑に行うため、まずはDVの特徴を押さえておきたいと思います。

DV被害者とDV加害者の距離の近さ

DVの恐ろしいところは、被害者と加害者が心理的にも物理的にも近いということです。離れている時間が長ければ、もしくは距離的にも離れていれば、DV被害者は冷静になって考えたり逃げ出したりできます。

しかし、DV加害者はその隙を与えません。例えば、妻の外出を厳しく管理したり、仕事もさせなかったりします。これは、束縛でもあるのですが、妻に一人になってじっくり考える時間を与えないためです。この心身ともに密着した関係の中で、DVが発生します。

徐々にエスカレートする

DVは、いきなりすごい暴力を振るわれることは少なく、「どなる→物を投げる→ちょっとした暴力→激しい暴力」といった具合に段階を追ってひどくなります(もちろん、突然ひどい暴力を振るわれることもあります)。

暴力を振るわれる方も、いきなり激しい暴力を振るわれれば驚いて逃げ出すことができるかもしれませんが、ちょっとずつ、そして断続的に暴力を振るわれると、「あれ、何かおかしいな」「いや、ちょっと機嫌が悪かっただけ」「まさか、自分がDV被害にあうわけがないし・・。」と逃げるタイミングを失ってしまいます。

繰り返される(学習的無力感)

DVは、何度も何度も繰り返されます。これにより、被害者は「学習的無力感」と呼ばれる状態になっていくのです。

先ほど、DV夫は妻を管理・束縛しがちであると書きましたが、もちろん、全く逃げる隙がないわけではありません。夫が寝ている間、仕事に行っている間、お風呂に入っている間など、本当に逃げようと思えばそのチャンスはいくらでもあります。

しかし、学習的無力感に陥ってしまっていると、「どうせまた連れ戻される」、「この人から逃れられるわけがない」などと自分は何もできないという気持ちになってしまうのです。

DVサイクル

「DVサイクル」とは、「蓄積期→爆発期→ハネムーン期(安定期)」の3つを繰り返すことをいいます。 例えば、「最近、何をやっても怒鳴られる。不機嫌みたい。」→「友達と飲みに行きたいと言ったらキレて暴力を振るわれた。」→「その結果怪我をしたら病院に連れて行ってくれて、もう絶対しないと謝ってくれた。」という具合に、DV夫が不満をため込む時期、その不満を爆発させる時期、そして謝罪をしたり優しくしたりする時期を繰り返すのです。

これが繰り返されるたびに妻は「今度こそ、夫は変わってくれるのではないか」と期待してしまいます。

外面がいい

DVは家庭内の密室で行われます。そのため、DV夫に限って、外ではいい人だと思われていたりして、妻は理解されない辛さを味わうことになります。

DV夫と離婚協議を行う際の2つのポイント

距離を置く

物理的に距離を置く(別居)

さきほど、学習的無力感について書きましたが、DV夫と一緒にいる限り、「私も悪いところがあるし・・・」、「別居しても生活していけないし・・・。」と前向きな考えが浮かんできません。本来のその人らしさや思考能力も奪われてしまいます。

そのため、どんな形であれ、まずは物理的に距離を置くために別居をすることが必要です。

心理的距離を置く

せっかく物理的に距離を置いても、LINEや電話を通じて気持ちが遠隔操作されてしまうことがあります。DV夫は、巧みに文面で妻を操ることが可能です。黙って出て行ったことを怒ったり、これまでのことを反省して謝ったり、そしてもうしないから戻ってきてほしいという言葉に「もう一度だけ信じてみようか」と戻ってしまうことになるのです。

第三者を間に入れる

DV夫との離婚協議は、夫婦ふたりだけではなく、間に第三者を入れて協議することがお勧めです。DV加害者とDV被害者の力関係は明らかで、対等な話合いが望めないのはもちろんのこと、DV夫は外部の人にはいい顔をしたりするので、第三者を挟むことで、まともな話合いが期待できます。

例えば、別居の婚姻費用の請求について、妻が直接夫に請求したとしても、「自分から出ていったくせに何を言ってるんだ。おまえにはびた一文払わん。」と一蹴されてしまうのがおちですが、実は、そう言いつつも、法律上は支払義務があることを理解していたり、算定表の存在も知っていたりします。

知っていながらも妻との関係性の中では、自分の言うことが全てであり、妻のために自分の意に染まないことするのは考えられないのです。

しかし、専門的知識を有する第三者が間に入ることで、夫婦間の力関係がリセットされ、夫から理性的で道理の通った回答を引き出すことが可能です。以下では、間に入れる第三者として3つの機関や専門家をご紹介します。

家庭裁判所に申し立てる

別居後、婚姻費用を請求する調停や離婚調停を家庭裁判所に申し立てることが考えられます。家裁に申し立てるメリットは、権威ある家裁が間に入ることで、夫の理性的な一面を引き出せることです。

ただ、家裁での解決は時間がかかることと、調停委員の当たりはずれが大きく、なかなか自分の気持ちを分かってもらえなかったり、相手との調整がうまくいかなかったりというデメリットがあります。

弁護士に依頼する

DV被害を受けると、心身ともに疲れ果て、相手と交渉する気力や体力が残っていないことがあります。そんなとき、専門性の高い弁護士が自分の代理として相手との交渉を一手に引き受けてくれるととても心強いものです。

一方で、妻が弁護士に依頼した場合、夫も弁護士に依頼する可能性が高く、「そちらがその気ならこちらも」と紛争性が高まるのがデメリットです。また、弁護士費用が高額な点もデメリットの一つと言えます。

ADR(民間調停)機関を利用する

ADRは民間の調停機関です。土日や平日の利用が可能だったり、オンライン調停が可能だという利便性に加え、早期解決が望める点がメリットです。

一方で、相手方に参加を義務付けたり、双方が合意に至れなかった場合にADRの機関が判決をするということができません。

そのため、夫婦二人では話合いができないけれど、家裁で争いたいわけではないという方にお勧めです。

離婚の新しい方法、ADR活用術
ADR調停(仲裁) よくある質問集

このように、DV夫との離婚協議は、心身ともに距離を置くことと、第三者を入れた協議がポイントです。自明のことのように思えますが、案外、この点が実行できず「相手と離婚ができない」と悩んでいる方が多いように思います。別居や離婚に向けて、具体的にどう進めればよいか分からないという方は、是非離婚カウンセリングをご利用いただければと思います。

離婚カウンセリングのお申込みはこちらから

ADRのお申込みはこちらから

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る