妻向け離婚情報

多くの後悔や失敗があっても離婚は正解だと感じたAさん(事例紹介)

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Aさんは、離婚が成立した後、元夫から支払われる養育費が滞った時点で当センターにご相談にこられました。

Aさんは無計画に離婚を進めたことでたくさんの後悔や失敗があると話されました。Aさんのお話は学びに満ちています。少し長いですがぜひお読みください(本コラムはご本人の許可を得て掲載していますが、個人を特定できないよう変更を加えています。)

夫:48歳 経営コンサルタント(自営)
妻(Aさん):42歳 専業主婦
長男:10歳 
長女:8歳

浮気を衝動的に扱った後悔

妻は、夫に宿泊の出張が増えたことや、土日の外出が多いことが気になっていました。

そのため、いけないと思いながらも入浴中の夫の携帯電話を確認したところ、知らない女性との男女関係を想像させるようなメールが残されていました。

妻はショックのあまり、「家族を裏切って浮気をするなんてひどい!」と、後先考えずに夫に詰め寄りました。すると夫は、あっさりと浮気を認め、「悪かった。」と謝りました。

夫は、「君が相手と別れろというなら別れる。でも、好きな気持ちは変えられない」と悪びれずに言うのです。

妻は大変悩みました。

これまで信頼してきた夫に裏切られたと思うと、このまま一緒に生活するのは不可能なように思われました。

しかし、一方で、専業主婦である自分に2人の子どもが育てられるのかという経済的な不安が大きく、妻はどうすればいいか分からなくなってしまいました。

知らない方が楽だったとも思いましたが、知ってしまった以上、なかったことにもできずに苦しみました。

配偶者の浮気の証拠を掴んだとき、一番傷付くのは自分です。そのため、不貞の探索行動は覚悟を決めてから行う必要があります。

また、望まなくても証拠を見つけてしまうこともあります。そんなときも、それを本人に伝えるのか、伝えるとしてどんな風に伝えるのか、そういったことも考えておく必要があります。

例えば、怪しげな証拠が見つかったけれど、離婚する選択肢がないのであれば、「もし、やましいことがあるなら、すぐにやめてほしい」と逃げ道を作った伝え方もできます。

夫(妻)の不貞が本当だとしたら、修復を目指すのか、それとも離婚してほしいのか。離婚するとして、証拠が絶対的に必要なのか、そういったことを考えてから次の行動に移るようにしましょう。

早期に相談に行かなかった後悔

妻は、夫の浮気が発覚した後、生きる気力を奪われたような気がしました。毎日が苦しく、何をしても楽しいと感じることができませんでした。食欲もなくなり、寝付けない夜が増えました。

しかし、実家の両親には心配をかけたくないので相談はできません。ママ友にも子どもたちへの影響を考えると相談できません。

専業主婦ですので、気楽に愚痴をこぼせる同僚もいません。弁護士の法律相談に行こうかとも思いましたが、一体何を相談したいのかも分からず、行かずじまいでした。

子どもたちのお世話にも支障をきたすようになり、すがるような気持ちで心療内科を受診したところ、うつ病と診断されました。

妻は、将来への不安は消えませんでしたが、自分がこうなってしまった以上、夫と一緒に暮らすという選択肢はありませんでした。

こんなに自分が壊れてしまう前に、もっと誰かに相談していれば、何か違う選択肢があったのではないかと後悔しました。

夫婦不和の問題は、生活の根幹を揺るがす一大事で、とてもストレスフルです。一方、限界まで誰にも相談できなかったという人も少なくありません。早期の相談であればあるほど、選択肢が増えます。

ぜひ、早期の段階で専門家に相談しましょう。

別居先を確保しておかなかった後悔

妻は、離婚協議を同居のまま進めることが想像できず、別居を決意しました。しかし、夫は自宅を自営のコンサルタント事務所として登記しており、妻が子どもを連れて出ていくしかありません。

一方、妻の実家は手狭で戻ることができません。子どもたちが転校・転園しなくてすむようにと近隣への転居を考えましたが、高級住宅街に位置する自宅の付近は家賃が高すぎます。

専業主婦だとなかなか部屋も貸してもらえません。

結局、妻は、子どもの学区を離れ、比較的家賃が安い地域に1DKのアパートを借りることになりました。

多くの場合、離婚の前に別居をします。というのも、同居のまま離婚協議を進めるのがとてもしんどいからです。

また、修復の可能性も含め、夫婦の関係性を見つめなおしたり、お互いが冷静になるためにも、別居が必要なのです。

しかし、意外と転居先がなくて困ることがあります。近くに実家があり、子どもの生活環境を変えずに別居できる状況であれば問題ないのですが、実家に同居のスペースがなかったり、遠く離れていたりすると実家は頼れません。

夫が一人でアパートとなどを借りて出てくれることもありますが、離婚や別居に同意していない場合はそれも期待できません。

アパートを借りるにしても、敷金や礼金、保証人の問題などがあり、専業主婦は簡単に借りられなかったりします。子連れ別居の場合はなおさらですが、まずは、生活の基盤である住まいを確保してから離婚を決断しましょう。

働いていなかったことへの後悔

妻は、足りない生活費を補うため、別居後に働くことを考えました。しかし、結婚以来、専業主婦として家にいた妻にとって、いきなり正社員で働くことはいろんな意味でハードルが高すぎます。

妻は、未来永劫夫の収入で生活できると思っていた自分に後悔しました。

専業主婦はもちろん、勤務経験がある人でもキャリアの中断期間が長くなると、再就職は容易ではありません。もちろん、年齢も関係してきます。

離婚をするか否かにかかわらず、配偶者と対等な関係でいるためにも、なるべくキャリアを継続することをお勧めします。

子どもへの不十分な説明を後悔

妻は、別居の理由をどのように子どもたちに伝えるか悩みました。夫の不貞を伝えるのは気が引けましたが、外からみると円満な夫婦だったため、何と説明していいか分からなかったのです。

そのため、「お父さんとお母さんは一緒に住めなくなったから」と曖昧な説明しかしませんでした。子どもはたちは訳が分からないものの、聞いてはいけない雰囲気を感じとり、疑問を抱えたまま、転居や転校に応じるしかありませんでした。

子どもたちは「いつか家に戻れるかもしれない」という気持ちが強く、新しい学校や環境に馴染むのに時間がかかりました。

妻は、少なくても、元の家に戻ることはないことや、離婚の可能性が高いことを伝えておいた方が子どもたちが新しい環境に適応しやすかったのではないかと後悔しました。

養育費の低さに後悔

夫は経営コンサルタントとして年収が1,000万円程度あります。妻としては、夫は高収入の部類に入ると考えており、2人の子どもの養育に困らない程度の養育費が受け取れるだろうと漠然と考えていました。

しかし、現実は甘くありませんでした。確かに相場よりも多い養育費ではありましたが、決して3人の生活を支えるには十分ではありませんでした。

その理由は2つあります。

ひとつは、妻が無収入という点です。当たり前ですが、養育費はあくまで子どもの生活費であり、妻の扶養は入っていません。妻は、自分の生活費は自分で稼がなければいけないのです。

2点目は子らの習い事です。これまで、子どもたちは学習塾や英語塾、サッカーやバレエなど、たくさんの習い事をしていましたので、2人合わせると10万円を軽く超えていました。

妻は、養育費についても下調べをしていなかったことを後悔しました。

現在の養育費は算定表という「目安」にそって決められます。もちろん、双方が合意していれば、どんな金額で決めてもかまわないのですが、一番多いのは、「算定表通りで」という結論です。

相手が自営業だと、思っていた年収と異なることもありますし、簡単に年収を増減させられてしまうこともあります。

会社員だったとしても、実際に必要なだけもらえるわけではないので、算定表上はいくらになっているかということくらいは、事前に調べておく必要があります。

慰謝料の少なさに愕然

夫の浮気が発覚してからというもの、妻は大変しんどい日々を送ってきました。また、何の落ち度もない自分にこんなつらい思いをさせる夫を許せないという気持ちもあり、妻は夫に慰謝料を請求することにしました。

妻は、慰謝料は1,000万円くらい請求できるだろうと予想しました。予想の根拠は年収です。今後何十年も得られるはずだった安定した生活が失われるのですから、夫の1年分の給料くらい、慰謝料としてもらってもよいだろうと思ったのです。

しかし、それを夫に話したところ、「申し訳ないとは思うけれど、相場と思われる100万円程度で合意したい」という返事が返ってきました。

妻は、慰謝料を当面の生活の糧として考えていたため、自分の考えの甘さを後悔することになりました。

不貞を理由とする慰謝料を請求の場合、婚姻期間の長さや不貞の程度(態様)、子の有無や収入等の事情を総合的に判断することになりますが、「年収と同じくらい」という基準はありません。

一般的に慰謝料の相場は50万円~300万円程度と言われることが多いのですが、平均的には100万円前後が多いように思います。

財産分与を誤解していた後悔

夫は、不動産運用なども行っており、自宅不動産のほかに2件の不動産を所有しています。妻は、独身時代の財産が分与対象にならないことは知っていましたが、この2件の不動産は結婚してから購入したものですので、財産分与の対象になると思っていました。

しかし、夫からは、次のような返事が返ってきました。

「不動産は、婚姻期間中に買ったものだが、購入代金は、僕の独身時代の蓄えから支払った。なので、この不動産は特有財産で、分与対象にはなりません。」

妻は、慰謝料、養育費に続き、財産分与も思っていたような金額にならないことに愕然としました。

財産分与は2分の1ずつといった基本的な情報はネット検索などで得ることができますが、中途半端に得た知識で進めてしまうと、思ったよりも取得できず、たちまち生活が困窮してしまうことがあります。

こんなことなら離婚しなければよかった、とならないためにも、専門家への相談が欠かせません。

公正証書を作成しなかった後悔

離婚条件がほぼ整い、後はどのような形で離婚条件を残すかという話になりました。

ネットで調べたところ、離婚協議書と離婚公正証書という言葉があがってきましたが、公正証書は、多少の手間やお金がかかるとのことで、離婚協議書を作成することにしました。

夫も「必ず支払うから、そこは心配しなくていいよ」と言ってくれたので、その言葉を信じることにしました。

しかし、数年後、この選択を後悔することになりました。

離婚協議書と離婚公正証書の一番大きな違いは「強制執行ができるかどうか」です。「この人はまじめな人だから。」とか「子どものためのお金だから滞納するはずはないだろう。」という予想は当てになりません。幸いにして予想が当たればいいですが、大切なのは「転ばぬ先の杖」です。

離婚協議書と公正証書の違いについてはこちらをご覧ください。
離婚協議書と離婚公正証書の違い

離婚直後の空虚感

ついに離婚が成立し、ずいぶん気持ちが楽になった妻。日が経つにつれて何だか生活に力が入らなくなってきました。

転居したため、周囲に立ち話をするママ友もいません。改善しつつあったうつ病も悪化し、薬を飲んでもやる気が出ない日が増えてきました。

日中は横になり、子どもがちが帰ってくる夕方になってようやく起きだし、夕飯の準備をするのがやっとです。

離婚協議中は気が張っていて気付かないのですが、離婚して間もなく極度の疲労を感じたり、抜け殻のようになってしまうこともあります。

離婚が決まれば安定した生活が待っているのも本当ですが、こうした「虚無感」や「脱力感」に襲われがちなのも本当です。

ひとり親の予期せぬ大変さ

別居してから既に1年が過ぎ、一人で子ども2人を育てるのにも慣れてきました。そもそも、同居当時から夫は子育てにほとんど協力してくれなかったので、別居してから特に困ったこともありませんでした。

しかし、夜中に子どもが熱を出して救急病院に連れて行かなければならない場合は本当に困りました。また、近所に空き巣が入ったときなども、夜は不安で眠れませんでした。

子どもたちが「あの子はお父さんがいないから。」と後ろ指を刺されないようにと、いつも以上に完璧な母親を目指してしまうのも疲労の原因でした。

家事・育児に協力的でない夫であっても、いざというときには意外と役に立っていたり、家にいるだけで安心感があったりします。

また、「ひとり親家庭だから」という言い訳を自分に許さず、がんばりすぎてしまう人もいます。

想定外の出来事に後悔

夫は、妻の予想通り、きちんと毎月の養育費を支払ってくれていました。しかし、ある時急に振込みが止まりました。

急いで夫に連絡したところ、「再婚しました。子どももできて、当面の間、養育費は待ってください。」とだけ返信が返ってきました。

妻は、一方的なやり方に怒りを感じると共に、生活の糧が急になくなることへの恐怖を感じ、公正証書を作成しておかなかったことを後悔しました。

Aさんが当センターに相談に来てくれたのがこの時期です。養育費の支払いは先が長く、想像もしていなかったことが起こり得ます。

結果として、減額請求が認められるとしても、公正証書を作成しておけば、一方的なやり方を防げたかもしれません。

養育費の支払いが滞った場合についてはこちらも参考にしてください。
養育費が支払われない場合の完全マニュアル

それでも離婚は後悔していない

ここまでAさんが辿ってきた様々な後悔や愕然とした出来事をご紹介しましたが、最終的にAさんが語ったのは、「離婚の仕方は間違っていたと思います。子どもたちのためにも、もっとうまくやれたはずです。ただ、離婚したこと自体は後悔していません。」という言葉でした。

突然の夫の不貞に衝撃を受け、覚悟もできないままに離婚を選択したわけですが、Aさんにとって「不貞をされた」という事実を抱えながら夫婦生活を続けることを思えば、今の生活の方が気持ちが楽だとのことでした。

離婚の下準備は、完璧にしようと思うと前に進めないこともあります。そもそも、相手のいることですので、全てを予定通りに進めることもできません。

しかし、ある程度の下調べや準備をしておくことで、その後の後悔を少なくすることができます。当センターでも離婚カウンセリングを行っておりますので、ぜひ早期にご相談いただければと思います。

離婚カウンセリングの詳細とお申込みは以下をご参照ください。

離婚カウンセリング

 

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