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DVから逃げる-保護命令

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前回の「シェルターってどんなところ?」に続き、DVから逃げる第2弾、今回はDV防止法の中の保護命令についてお伝えします。

1 保護命令とは

被害者の生命又は身体に危害が加えられることを防止するために、裁判所が配偶者又は生活の本拠を共にする交際相手に対し出す命令のことです。

恋人間の暴力には適応されませんが、平成26年の法改正により、「生活の本拠を共にする」という文言が入れられ、同棲している交際相手に対しても適応されるようになりました。

2 保護命令の種類

保護命令には5種類あります。

それぞれの命令がどんなものか、以下で簡単にご説明します。

1、被害者への接近禁止命令

6ヶ月間、被害者の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊してはならないことを命じるものです。

街中でばったり会ってしまったような場合は当てはまりませんが、そこで声をかけたり、度々出会ったりするのは、禁止行為になります。

また、「6カ月経ったら覚えてろよ」などと言われている場合、6カ月たった後、禁止期間延長の申立てをすることができます。

2、被害者への電話等禁止命令

 

被害者への接近禁止命令の期間中、次に挙げる行為の禁止を命ずるものです。

・面会の要求
・行為を監視していると思われるような事項を告げ、又は知り得る状態におくこと
・著しく粗野又は乱暴な言動
・無言電話又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること
・緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること
・汚物、動物の死体その他著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又は知り得る状態に置くこと
・名誉を害する事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
・性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくは知り得る状態に置き、又は性的羞恥心を害する文書図画その他の物を送付し、若しくは知り得る状態に置くこと

実際に付きまとったりしないにしても、意外と多いのが「嫌がらせ」にも似た電話やメールでの接触です。

直接危害を加えられるわけでもないし、メールや電話なんて無視していればいいと思うかもしれません。

しかし、息をつく間もなく次々に送られてくるメール。まるで自分の存在をアピールするかのようなメール。そんなメールを無視したくてもできなくなるのです。

「メールが着信するたびに動悸がする」
「怖くてメールを開けない」
「メールを見ると気持ちが悪くなる」

そのような声をこれまでたくさん聞いてきました。メールの破壊力は、想像以上です。

3、被害者の同居の子への接近禁止命令

被害者への接近禁止命令の期間中、被害者と同居している子の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊してはならないことを命ずるものです。

子が15歳以上の時は子の同意が必要です。

加害者が被害者と同居している子を連れ戻す疑いがあるなどの事情があり、子の身上を監護するために被害者が加害者と面会をせざるを得ない事態が生ずるおそれがある場合に、被害者の生命や身体に対する危険を防止するために発せられます。

とても残念なことですが、被害者に会うためや被害者に嫌がらせをするために、子どもを利用する加害者がいます。

4、被害者の親族への接近禁止命令

被害者への接近禁止命令の期間中、被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有している者の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊してはならないことを命ずるものです。

親族等が被害者の15歳未満の子である場合を除き、親族等の同意があるときに限ります。

加害者が親族等の住居に押しかけて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることから、被害者がその親族等に関して被害者が加害者と面会をせざるを得ない事態が生ずるおそれがある場合に、被害者の生命や身体に対する危険を防止するために発せられます。

5、被害者と共に生活の本拠としている居住からの退去命令

2ヶ月間、被害者と共に生活の本拠としている居住から退去すること及びその住居の付近を徘徊してはならないことを命ずるものです。

被害者と加害者が生活の本拠を共にしている場合に限ります。

 

2~4の命令は単独で行うことはできません。1の命令と同時に、または既に1の命令がされているときにのみ発令されます。

3 保護命令の手続き

では、保護命令の手続きはどのように行うのでしょうか

1 保護命令申立てができるのはどんなとき?

配偶者から身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者が、そのことにより生命又は身体に重大な危害を受ける恐れが大きい時に、裁判所が被害者からの申立てにより発するものです。

〇加害者が生活の本拠を共にする交際相手の場合も同様に発せられます。
〇加害者が離婚した元配偶者の場合も発せられますが、離婚前に身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けていない場合は、認められません。
〇加害者が同居していた元交際相手の場合も発せられますが、関係解消後に被害を受けた場合は、認められません

ちなみに、申立てできるのは、被害者本人のみです。

 2 申立書の作成

保護命令を出してもらうには、まず、申立書を作成します。

申立書には、 以下のようなことを記載します。

1.身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況 
2.配偶者又は生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力により、被害者の生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいという事情 
3.被害者の同居の子への接近禁止命令の申立てをする場合、被害者がその子に関して配偶者又は生活の本拠を共にする交際相手と面会することを余儀なくされることを防止するためその子への接近禁止命令を発令する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情 
4.被害者の親族等への接近禁止命令の申立てをする場合、被害者がその親族等に関して配偶者又は生活の本拠を共にする交際相手と面会することを余儀なくされることを防止するためその親族等への接近禁止命令を発令する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情 
5.配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に1.から4.までの事項について相談したり、援助や保護を求めたことがあれば、 
 イ 配偶者暴力相談支援センター又は警察職員の所属官署の名称
 ロ 相談したり援助、保護を求めた日時、場所
 ハ 相談や求めた援助、保護の内容
 ニ 相談や援助、保護の求めに対して執られた措置の内容 

なお、配偶者暴力支援センターや警察に相談した事実がない場合、必要な内容を書いた書面に公証役場で認証を受け、その書面を提出する方法もあります。

3 添付書類

法律上又は事実上夫婦であることを証明する書類を添付します。

例:戸籍.住民票

4 証拠書類

証拠書類は、裁判所が判断するうえで最も重要なものです。以下を参考にしてください。

〇双方の関係が生活の本拠を共にする交際であることを証明する資料
 例:住民票.生活の本拠における交際時の写真
〇暴力・脅迫を受けたことを証明する資料
 例:診断書.受傷部位の写真.本人や第三者の陳述書
〇加害者から今後身体的な暴力を振るわれて生命身体に重大な危害を受ける恐れが大きいことを証明する資料
 例:本人や第三者の陳述書.電子メールや手紙の写し

この他、保護命令の種類により適切な証拠資料は異なります。裁判所のHPなどでご確認ください。

5 申立書の提出先

・加害者の住所の所在地を管轄する地方裁判所 
・被害者の住所又は居所(一時保護を受けている場合の保護所等)の所在地を管轄する地方裁判所 
・身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫が行われた場所を管轄する地方裁判所 

のいずれかに提出します。 

6 料金

1000円の収入印紙.切手2500円分

7 申立手続きの流れ

申立書の受付
②裁判官による申立人(被害者)との面接
③相手方(加害者)の呼び出し及び申立書写し等の送付
④審尋期日(出頭した相手方から意見を聞く)等の実施
⑤保護命令発令
⑥警察本部及びDVセンターへの通知

①~②はその当日か翌日、②~④は1週間程度で行われ、早ければ即日で発令されます。生命を守るための手続きなので、このように大変スピーディーに行われます。

ただ、書類の不備や証拠書類が不十分だったり、被害を受けた事実はあるが申立てまでにかなりの時間が経過している場合など、申立てが却下される場合もあります。

8 加害者が違反すると

保護命令に違反した者には、一年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

最後に

夫婦不和とうつ病

2001年に成立した「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」はこれまで何回か改正され、法律名が「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に変更され、適用範囲が拡大されて現在に至っています(因みに、平成29年は既済件数2293件のうち発令件数は1826件でした。)。

しかし、現在保護命令が発令されるのは生命の危険がある場合に限られ、精神的なDVに対しては適用されません。DVから守られ、安全な生活を営むためには、まだ改善の必要があるように思います。

また、加害者への支援や男性被害者への支援もほとんど手が届いていませんし、DVから逃れたとして、どうやって生活を立て直していくのかといった課題もあります。

そして、DV加害者と子どもの面会交流という頭の痛い問題もあります。DV被害者にしてみれば、子どもを加害者に会わせることは苦痛以外のなにものでもありません。

しかし、子どもにとっては、いい親かもしれませんし、少なくとも、「いい親の部分」でかかわってくれれば、子どもにとってはプラスになります。

養育費の問題だってあります。

DVは、まず逃れることが大切ですが、その後、前を向いて再スタートをきるためにも、決めるべきことをきちんと決めることが大切です。

顔を合わせたくない、声も聴きたくない、でも決めるべきことは決めたい。そんなときはADR(裁判外紛争解決手続)をご利用ください。

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