海外赴任中の夫婦には、夫婦不和の原因がたくさん潜んでいます。
詳しくはこちらをご覧ください。
海外駐在員が離婚しやすい2大原因と離婚手続
そして、残念ながら、結果的に離婚という結論を出すご夫婦も少なくありません。
しかし、夫婦の双方もしくは一方が海外に住んでいるからこその離婚手続きの煩雑さがあります。
今回は、その煩雑さの原因となりうる日本に住民票がない駐在員(またはその配偶者)の方の離婚について、離婚の種別ごとにご説明したいと思います。
当センターでは、お子さんがおられるご夫婦が離婚される際に知っておいていただきたい情報(お子さんのメンタルケアや基本の離婚条件の取決め方等)を無料オンライン講座にてお知らせしております。該当の方は是非ご参加ください。
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協議離婚
離婚公正証書の作成なし
協議離婚の場合、必要な手続きは離婚届を役所に提出することです。
その際、本籍地に郵送する形であれば、特に添付資料も必要がありませんので、海外からも簡単に手続を済ませられます。
手順
①インターネットで離婚届をダウンロード
②離婚届に夫婦で記入
③証人2名に署名捺印をもらう
④本籍地の役所に郵送
今やインターネットで離婚届をダウンロードできますので、海外にいても離婚届を手に入れることがあります。ただ、離婚届はA3用紙で提出する必要があります。自宅にA3が印刷可能なプリンターを持っておられる方は少ないと思いますので、コンビニのコピーなどを活用してください。また、③の証人についても、周囲は会社関係の人ばかり、ということで日本に比べて頼める人が少ないという問題もあるかと思います。その場合、ご夫婦が記載済みの離婚届を日本のご両親に郵送し、ご両親が証人欄に署名捺印した後に役所に再度郵送してもらう、という方法もあります。
郵送の場合、区役所に出向いていろいろと質問したり、その場で訂正したりということができません。「日本一分かりやすい離婚届の書き方」をご参考いただければと思います。
離婚公正証書を作成
養育費や面会交流、分割払いの慰謝料や財産分与がある場合、口約束や離婚協議書ではなく、離婚公正証書を作成しておく必要があります。
その場合、役所に離婚届を提出するという手続きの前に、公証役場で離婚公正証書を作成する、という手続きが必要になります。
離婚公正証書自体は、弁護士や行政書士に依頼すれば、内容を考えてくれますし、公証役場とのやりとりも担当してもらえます。
しかし、問題は、「離婚公正証書は公証役場にて作成する」という原則があることです。
つまり、ご本人もしくはその代理人が公証役場に出向く必要があるのです。
本人が行けなくても、代理人に依頼すればいいのでは、と思われがちですが、ここで住民票がないが故の煩雑さがあります。
本人ではなく代理人が公証役場に出向く場合、本人に「印鑑証明書」を提出してもらう必要があります。
しかし、日本に住民票がない方は、印鑑登録をしていませので、印鑑証明書もないのです。
そのため、印鑑証明書の代わりに、その国の日本領事館に出向き、印鑑証明に変わる証明書を取得する必要があります。
ただ、そのひと手間をかけるだけで、海外に居ながらにして離婚公正証書を作成できるのです。将来の安定のためにも、是非作成しておくことをお勧めします。
弊社でも行政書士業務として公正証書作成をサポートしております。
離婚公正証書作成サポート
調停離婚
日本に住民票がなくてもOK
通常、夫婦二人での話合いができない場合、次のステージは家庭裁判所での調停です。
しかし、夫婦の一方もしくは双方が住民票がない場合、どうなるのでしょうか。
裁判所のHPに掲載されている「添付資料」には住民票は含まれません。また、申立書に記載する住所は、住民票上の住所というより、実際に住んでいる場所を書いてくださいという案内もあります。
そのため、実は、住民票が日本になくても、離婚調停を行うことは可能です。
代理人弁護士
しかし、問題は、本人の出席が原則だという点です。
そのため、海外に住んでいる人が日本の家裁で調停をしようとすると、代理人として弁護士に依頼する必要があります。
そのため、着手金に数十万円、成功報酬も含めると最終的に100万円近い金額を支払うことになります。
本人欠席のデメリット
また、離婚という身分関係に大きく関係してくる話合いを弁護士に任せきりというのは、心もとない感じがします。
特に、親権や面会交流といった子どもに関する事項はなおさらです。
さらに、調停が長引くというデメリットもあります。
実際に、家裁調査官時代に「本人は海外、代理人弁護士のみが出席」という調停を担当したことがあります。
本人が海外にいるため、調停中にその場で電話などで連絡することもできません。
そのため、全ての協議事項に対して「もちかえって協議します」となってしまい、成立までずいぶん時間がかかったことがありました。
小括
結論としては、住民票が日本になくても、弁護士に依頼して代理人になってもらえば、調停離婚が可能だということになります。
また、成立した場合、調停調書が作成させるため、公正証書作成のために領事館に足を運ぶ必要もありません。
ただ、先ほどから書いているようなデメリットもあるため、お金や時間がかかってもいいからとにかく全部任せたいという方向けかもしれません。
裁判離婚
調停の際とほとんど状況は同じです。ただ、裁判は、調停と違って「協議」や「調整」の場ではありません。
そのため、依頼人である本人が日本に在住していたとしても、多くは、弁護士だけが訴訟に出廷するというパターンになります。
そのため、調停が不成立となり、訴訟に進んでしまえば、本人が日本にいなくても、あまり関係がないかもしれません(代理人弁護士と対面で打ち合わせができないというデメリットはありますが)。
ADR(裁判外紛争解決手続)による調停
そして、あまり知られていませんが、海外駐在の方にとって大変便利な離婚の方法をお伝えしたいと思います。
それは、ADR(裁判外紛争解決手続)による調停です。
ADR調停についての詳細はこちらをご覧ください。
新しい離婚の方法!? ADR調停という解決
ADR調停は、家裁の調停より融通がききます。例えば、日本に一時帰国している際に集中的に調停期日を入れることもできますし、平日の夜間や休日も実施することもできます。
また、弊社では、SkyeによるADR調停も実施していますので、夫は海外、妻子は既に帰国、というような場合にでも調停が可能です。
もちろん、住民票を提出する必要はありません。
まとめ
日本に住んでいると、弁護士による無料法律相談があふれていて、選択肢の多さに困るほどです。
しかし、海外に駐在していると、「まずは弁護士に相談する。」という選択肢がなくなります。
多くの法律事務所が電話やメールでの相談業務をやっていないからです(「まずはこちらにお電話」とうたっている法律事務所はたくさんありますが、相談の予約を受け付けるのみで、具体的な法律相談はできないことがほとんどです。)。
このように、海外駐在員の方は、様々な理由で離婚率が高い割に、離婚に関する情報を得たり、サービスを利用することが難しかったりします。
また、うつ病をはじめとする精神疾患の割合が高いのも駐在員離婚の特徴です。
それだけ、海外での生活は困難なことが多いということであり、問題をこじらせないうちの早期の相談が必要になってきます。
相談先に迷っている間に夫婦の問題が複雑化し、紛争性が高まった挙句、理性を失った争いに突入する、という結果だけは避けたいところです。
弊社は海外駐在員様向けのスカイプ相談を行っております。
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