離婚一般

円満離婚に欠かせない自己分化とは

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円満離婚とは

「離婚するのに『円満??』」という方に、どんな離婚が円満離婚といえるのか以下にご紹介したいと思います。

不要に争そわない離婚

夫婦不和の結果、離婚に至るわけですから、「笑顔で握手して、さよなら」とか、「お互いに感謝して、さよなら」というのは現実的ではありません。

ですので、争うべきことは争わざるを得ませんし、主張すべき正当な権利は主張する必要があります。

ただ、「不要な」争いを避けるのが、円満離婚の秘訣です。

例えば、養育費です。

お子さんを育てていく親権者にとって、養育費は生活の糧であり、子どもの心身の成長に欠かせないものです。そのため、相手が「払うつもりはない」と言っていたとしても、算定表などを目安にして、請求していかざるを得ません。

しかし、「あなたは不貞して出ていくのだから、その償いとして養育費はしっかりと支払ってほしい」などと言って、相手に対する負の感情を理由に法外な金額を請求するのは「不要な争い」と言わざるを得ず、円満離婚とはいかなくなってしまいます。

10年後に後悔しない離婚

円満離婚は、離婚時のみ円満であればいいかというとそうではありません。離婚から5年、10年たったときに、「あの時、ああいう条件で離婚してよかった」と思えるのが円満離婚です。

例えば、腹の立つ相手に子どもを会わせたくないという気持ちで面会交流を拒否したとします。その結果、相手から面会交流調停を申し立てられ、子どもが裁判所に呼ばれるなど、子どもを親の離婚に巻き込むことになってしまうかもしれません。

また、別居親に会わせなかった結果、子どもが「両方の親から愛されている」と感じることができず、自己肯定感が下がったり、不登校などの問題を抱えることになるかもしれません。

「腹の立つ相手に会わせたくない」というその瞬間の気持ちにだけ左右されてしまうと、将来の幸せを見失いかねません。数年先の家族の生活をイメージし、こういう生活をしているためには、今、どんな選択をしなければいけないか、という視点で考えてみてください。

子どものことを考えられる離婚

お子さんがいる夫婦にとって、「自分のことが一番!」ではなく、お子さんのことを最優先で考えられれば、円満離婚に近くなります。

なぜなら、夫婦がお互いにそう思えれば、同じ方向を向いて話ができるからです(目指すゴールが同じとも言えます。)。

ただ、一つ注意が必要です。よくあるのは、「子どものため」という枕詞を使って、自分のための主張をしてしまう人がいます。

例えば、離婚したくない人が「子どものためには離婚しない方がいい」と主張するような場合です。確かに、子どもは「離婚しないで」というかもしれません。しかし、親の不仲が続く居心地の悪い家庭で育てることが、本当に子どものためになるでしょうか。

逆に、離婚をしたい人が「子どもに親の不和を見せないためにも早く離婚した方がいい」と主張することもあります。確かにそういう側面はありますが、離婚後、子どもをしっかりと育てていく準備はできているでしょうか。

「子どものため」という枕詞をつけて自分の主張をするのではなく、純粋に子どもの幸せを考えて協議をすることができれば、結果として円満離婚に近づくことができます。

優先順位を見失わない離婚

怒りや不満で闘争状態にある人は、相手のすることなすこと全てに反論したくなります。

そのため、本当は自分にとって大切なことでなくても、「相手のいいなりになってなるものか」と反発してしまったりします。

例えば、相手が「離婚しても、面会交流の際には自分の両親にも会わせてやってほしい」と言ったとします。子どもの祖父母なわけですから、会わせても問題はないですし、逆に、たくさんの大人にかかわってもらい、愛情を注いでもらうことは子どもにとってプラスです。

しかし、相手への負の感情が強いあまり、「面会交流の基本は父母だから、祖父母に会う権利はありません」などと争ってしまうことがあります。

そして、そんな回答によって紛争性が高まり、大切な養育費の協議で相手にへそを曲げられてしまっては意味がありません。

また、親権が取れそうにない父親が腹いせや離婚を引き延ばすために親権を争ったとします。その結果、子どもと会えない期間が長くなってしまったり、父子間の関係が悪化したとしたらどうでしょうか。

父の一番の目的が子どもとの良好な関係であるとすれば、負け戦の親権争いを頑張ることは、一番の優先事項ではないはずです。

このように、自分にとっての「一番」を見失ってしまうと、円満離婚とはいきません。優先順位の低いことは相手に譲り、自分の「一番」を実現する。これが円満離婚のイメージです。

自己分化度

自己分化度とは

次に、円満離婚のために欠かせない要素として、自己分化についてお伝えしたいと思います。

自己分化という言葉は、マレーボーエンという精神科医が家族療法の技法の中で使っている言葉で、「情緒と知性が融合しているか、分化しているかの度合い」のことを言います。

自己分化度が低いと、情緒と知性がきちんと分かれておらず、知性が情緒に振り回されてしまったりします。そのため、理性や知性を働かせなければいけない場面で情緒に影響を大きく受けてしまい、正しい判断ができなくなります。

また、自己分化度の低い人の特徴として、周囲の人を巻き込むという特徴もあります。そのため、子どもの気持ちも考えず、自分の憂さ晴らしのため、相手の悪口を子どもに言ったりします。逆に、自己分化度が高いと、情緒と知性がそれぞれ独立して発展させていくことができます。

そのため、豊かな感情や表現力がありながら、その感情をコントロールし、物事を冷静に判断することができます。

マレー・ボーエンの自己分化 ~「理と情」の心理学~一般社団法人日本ファミリービジネスアドバイザー協会のHPに移動します。)

自己分化度の低い離婚

自己分化度の低い人が離婚をするとどうなるか、例をみてみましょう。

事例1

夫 :48歳 商社マン
妻 :38歳 専業主婦
長女:5歳

妻の不貞が理由で夫婦不和。夫は、自分より一回り若い妻が会社の後輩と不貞関係になったことに激怒。妻に子どもを置いて出ていけと怒鳴り散らした。

しかし、商社マンとして忙しく働く父がまだ5歳の長女の世話をできるはずもなく、結局、妻は、夫が仕事に行っている間に子どもを連れて別居。

その行為に更に激怒した父は、「不貞の挙句、子どもを連れ去った妻には、びた一文やらん!」と婚姻費用の支払いを拒否。

その結果、妻は夫に対する恐怖心や拒否感が募り、「お金はいらないので、この子にも会わないでください。」と行方をくらましてしまった。

事例2

夫 :40歳 会社員
妻 :38歳 会社員
長女:8歳
長男:3歳

夫婦は共働きであったことから、毎日のように家事・育児の分担のことでけんか。特に、母は、どうしても自分が負担過多になることに不満を募らせていた。

ある冬、長女と長男が立て続けにインフルエンザになり、妻は、看病と仕事のやりくりに四苦八苦していた。

しかし、夫は連日飲み会続きで、「接待だから仕方がない」の一点張りであった。妻は、熱で苦しそうな寝息を立てている子どものそばで、持ち帰りの仕事をしながら、「夫とは一緒にいる意味がない。」と離婚を決意した。

妻から離婚を切り出された夫は「子どもは渡さない!」と激怒。共働きで、夫もある程度は家事や育児を分担していたことから、妻は「夫に親権を取られるかもしれない」と怖くなった。

そんな妻は、夫に無断で子どもを連れて家を出た。そして、協議もせず、家裁に離婚調停を申し立てた。

怒った夫は弁護士に依頼し、「子の引渡し」と「監護者の指定」の審判及び保全処分を申立て、本格的に争うこととなった。

自己分化度の高い離婚

今度は、自己分化度の高い夫婦の離婚を同じ事例で見てみましょう。

事例1

夫 :48歳 商社マン
妻 :38歳 専業主婦
長女:5歳

妻の不貞が理由で夫婦不和。夫は、自分より一回り若い妻が会社の後輩と不貞関係になったことに激怒。どうしても許す気持ちになれず、夫から妻に離婚を切り出した。妻は、自分に非があることから、夫に従うしかなかった。

夫は、不貞をした妻に子どもを渡す気持ちになれなかった。しかし、これまで、専業主婦である妻が子どもの養育を一手に引き受けていたこと、今自分が長女を引き取っても、寂しい思いをさせるだけであることは明白であった。

そこで、夫は、親権は妻に譲る代わりに、頻繁な面会交流を要求。

妻は、別れた夫に長女を頻繁に会わせるのはいい気がしなかったが、まだ幼い長女を専業主婦である自分が育てていくには、夫の経済的援助が欠かせないことも分かっていた。

そこで、夫婦は、一般的な標準よりも多い面会交流、高い養育費で合意した上、協議離婚した。

事例2

夫 :40歳 会社員
妻 :38歳 会社員
長女:8歳
長男:3歳

夫婦は共働きであったことから、毎日のように家事・育児の分担のことでけんか。特に、母は、どうしても自分が負担過多になることに不満を募らせていた。

ある冬、長女と長男が立て続けにインフルエンザになり、妻は、看病と仕事のやりくりに四苦八苦していた。しかし、夫は連日飲み会続きで、「接待だから仕方がない」の一点張りであった。妻は、熱で苦しそうな寝息を立てている子どものそばで、持ち帰りの仕事をしながら、「夫とは一緒にいる意味がない。」と離婚を決意した。

妻から離婚を切り出された夫は「離婚は同意するが、親権は渡さない。」と主張。もちろん妻も親権を譲るつもりはなく、親権で折り合いがつかなかった。

この間、妻は何度も子どもたちを連れて家を出てしまおうかと思った。しかし、そんなことをすれば、夫の怒りを買い、いつ何時同じことをされるか分からないと怯えながら生活しなければならなくなってしまう。

何より、子どもたちからパパを奪うことはできないと考え、思いとどまった。

夫婦は、辛抱強く話合いを続け、夫が近隣に家を借り、子どもが頻繁に双方のの家を行き来できる形で別居生活を開始することとした。

そんな別居生活を続ける中で、親権にこだわらなくても子どもに頻繁に会えること、また、仕事との両立には父母の協力が欠かせないことが分かってきた。

そのため、2年の別居期間を経て、妻を親権者として離婚が成立した。

しかし、夫も、子育ての担い手として大きな役割を果たしてきたわけである。そのため、習い事の送迎や平日の夕食など、日常生活の一部としての頻繁な面会交流が実現した。

自己分化度を高める方法

では、どうすれば、自己分化度の高い離婚ができるのでしょうか。

心理学的な視点でみれば、自己分化度はマインドフルネス(「今」に集中するための瞑想法など)をはじめとする、心理療法で高めることができます(心理療法や瞑想というと、なんだか胡散臭いイメージを抱く人もいるかもしれませんが、マインドフルネスは今やgoogle社も取り組んでいるストレス対処法でもあります。)

しかし、このような心理学的な知識がなくても、自己分化度の高い離婚は可能です。以下に、その方法をご紹介します。

一呼吸置く

簡単そうで難しいのが、「一呼吸置く」ということです。

相手の挑発的な主張(「親権は譲らない!」、「養育費は払わない!」など)に即反応するのではなく、まずは一呼吸です。

すぐに反応せず、少なくとも一晩おいてから自分の主張を整理しましょう。

また、相手も「そんなことはできない」と分かっていながら主張していることもあります。そんな場合は即反応するのではなく、一呼吸置いた上で、「あたなもそんなことが法律上認められないのは分かっているでしょう。それでも主張したくなるくらい、強い気持ちなのね」と相手の気持ちに理解を示すのも一つの方法です(決して、相手の主張を受け入れるということではありません。)

先を見る

今の目の前の感情に支配されると、正しい判断ができなくなります。

大切なのは、離婚そのものではなく、離婚後、どのような人生を送っているかです。

そのため、判断基準の材料を現在に限定せず、2,3年後、5年後、10年後にどんな生活をしていたいか、少し先を見て現在の判断を下すという方法も有効です。

優先順位をつける

相手の言動に振り回されてしまうと、自分にとって本当に大切なことは何かを見失ってしまいます。

交渉事ですので、相手の言動を無視することはできませんが、まずは、自分にとって大切なものの順番を決めておくことが大切です。

そうすれば、相手への腹いせや嫌がらせのため、本当に大切なことを見失なわずに済みます。

まとめ

離婚はきれいごとでは済まされません。感情のぶつかり合いであり、お金というシビアな問題もあります。

また、いかに無理な要求であっても、その人が前に進むためには必要な要求もあり、全てを理性で押さえればいいわけではありません。

しかし、理性的な円満離婚がもたらすメリットの大きさは計り知れません。争いにエネルギーを使うのではなく、新しい次の一歩のために力を使っていただければと思います。

円満離婚については以下のコラムもご参照ください。

円満離婚したい人のための協議のポイント

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