家裁調停

離婚調停のメリットとデメリット

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このコラムでは、離婚調停のメリットとデメリットをご紹介します。申立てを迷っている方はぜひご参考ください。

離婚調停のメリット

調停委員が仲介してくれる

夫婦間の力関係が不均衡な場合

夫婦のどちらかにDV行為があったり、モラハラがあったりして、夫婦の力関係が極端に偏っている場合、夫婦のみでの離婚協議が難しくなります。

なぜなら、どちらか一方が強すぎると、常識や法律ではなく、強い方が言ったことがまかり通ってしまうからです。

例えば、モラハラ夫と離婚したい妻が夫に対し養育費を求めたとしても、「お前が勝手に出ていくんだから金は一銭も渡さん。」というようなことを言われたりします。このような場合であっても、実は夫は法的義務があることを認識していることが多いのですが、力関係で勝っている相手に対しては、自分の言い分を通せると思っているのです。

しかし、家裁の調停では、話す相手は家裁の調停委員です。そのため、これまでの横暴っぷりがうそのように、「算定表に従って支払います」というようなことを言ったりするのです。

そのため、中立的な立場の第三者を介して話合いができる調停がお勧めです。

中立かつ法的知識のある仲介者

夫婦だけでは話合いができない場合、双方の親や共通の知人などに間に入ってもらうことを考える人もいますが、お勧めではありません。なぜなら、法的知識がない上に、完全に中立ということはなく、どちらかの味方になってしまうことが多いからです。

例えば、夫の両親を頼りにしていた妻が自分だけでは何ともできないと夫の両親に仲裁を依頼したところ、自分の味方をしてくれていた夫の両親が次第に夫寄りになっていくのを見て絶望する、といったことが起こります。

こうなると、仲裁どころかもめる一方ですので、ある程度の法的知識があり、公平中立な立場の調停委員が間に入ってくれる家裁の調停がお勧めです。

すぐにけんか腰になる夫婦

また、夫婦の力関係は均衡しているけれど、話し合ってもすぐに口論になってしまったり、取っ組み合いのけんかに発展してしまう人たちがいます。加えて、コミュニケーションが破綻していて、話せば話すほど、話がこんがらがったり、誤解が誤解を生むような人たちもいます。特に、どちらかが発達障害傾向がある場合など、「話しても通じない」という感覚を持つことが多く、つらい気持ちになったりします。

そんな場合は、第三者が入り、直接の衝突を避けることができたり、ある意味「通訳」のような役割をしてくれるととても助かります。

法的な基準が分かる

今やウェブで検索すれば、大抵の情報を収集することができます。ただ、家庭の事情は千差万別ですので、ネット情報だけでは足りないことが多々あります。

例えば、財産分与は半分ずつだというルールはネット検索をすればすぐに得られる情報です。ただ、分与対象の財産の中に不動産が入っていて、その不動産の頭金をどちらかの親が出してくれているとか、独身時代から買い足している株式はどうやって分与するのか、といった複雑な個別事情がある場合、夫婦だけで解決するのがとても難しくなります。

また、そういった法的知識だけを利用したいのであれば、弁護士に依頼してもいいのですが、弁護士はあくまで「どちらか一方」の味方です。相手にしてみれば、いくら「相場は〇〇円くらいですよ。」とか、「裁判になれば〇〇ですよ。」と言われても、あなたの依頼した弁護士の言うことを信頼できないのです。この点、裁判所は、どちらの味方でもない公平中立な第三者ですので、双方にとって受け入れやすいのがメリットです。

費用が安い

離婚調停の申立料は1200円と格安です。その他、郵券(切手)の費用が実費でがかかりますが、大した金額にはなりません。その後は、何回話し合っても、費用は無料です。この費用の安さは家裁の離婚調停の一番のメリットかもしれません。

協議が前に進む可能性がある

離婚をしたくない側にとっては、相手からもち掛けられた離婚協議に応じるのが嫌だったりします。そのため、メールや電話で話し合おうと連絡しても、なしのつぶてだったり、そのうち電話やメールを着信拒否されたりしてしまいます。しかし、そんな人にとっても、「裁判所の調停」はちょっと違っていたりします。出席しないと何かペナルティがあるのではないかと心配になったり、「離婚したい」という気持ちの本気度が伝わり、結果として話合いに応じてくれたり、離婚協議の席についてくれたりします。

離婚調停のデメリット

長期化する

調停をするデメリットは、何と言っても長期化することです。まずは、下のグラフを見てください( 最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」)。

このグラフは、離婚調停について成立した場合と、取下げの場合にかかった期間を表しています。図によると、取下げで終わった事件は平均3.8カ月、最終的に成立した事件は5.6カ月の調停期間となっています。この数字だけ見ると、半年あれば調停が成立するかのように見えます。

しかし、ここで注意が必要なのは、この中には、子どもがいない夫婦や財産分与や慰謝料の取り決めがない夫婦も含まれています。また、親権以外の離婚条件は、離婚が成立した後も話合いをすることができますので、まずは、離婚調停だけ成立させ、財産分与や養育費については、後から調停を申し立てることもあります。さらに言うと、合意はできているけれど公正証書の費用を節約のため、1度だけ家裁の調停を利用するといった人たちもいます。

そのため、もしあなたが、親権や財産分与、慰謝料などの離婚条件を調停の場で解決するつもりであれば、調停成立までにかかる時間はもっと長くなります。1年はかかると思っておいた方がいいかもしれません。

日常生活・仕事に影響が出る

子どもを預けるのが大変

家庭裁判所の調停は、平日の日中に行われます。専業主婦にとって、子どもが学校や幼稚園に行っている間だから大丈夫だと思われるかもしませんが、意外とそうではありません。未就園児のいる母親にとっては、子どもをだれかに預けなければいけないというハードルがあります。

近隣に身内がいればいいのですが、そうでない場合は託児所やベビーシッターしかいません。未就園児を不定期に預けるのは、とても大変で、事前の入会が必要だったり、保険に加入が必要だったりと、お金と手間がかかります。

子どもが幼稚園に通っている場合も案外難しかったりします。というのも、午前の調停は午前10時からです。例えば、来庁に1時間かかるとしましょう。9時には家を出る必要があります。そして、午後の調停は、午後一時半からです。通常、2時間はかかります。場合によっては、午後5時くらいまでかかる場合もあります。そうなると、幼稚園のお迎えが難しくなります。

小学校ママの事情も同じです。高学年のお子さんなら、一人でお留守番ができますが、まだ1年生や2年生のお子さんは、一人でお留守番ができなかったり、そもそも家の鍵を預けられないということもあります。

仕事に支障が出る

仕事をしている人にとっても、半日空けるのが難しいことに変わりはありません。しかも、会社の場所によっては、半日ではなく、結局一日休暇を取らなければならないという人もいます。一度ならまだしも、1,2か月に1回程度、定期的に休む必要があります。

特に、仕事を持ちながら子育てをしている人にとっては、調停のための休暇が命取りになったりします。それでなくても、子どもの病気や行事で休むことが多く、有給が足りなかったり、職場で肩身の狭い思いをしているからです。「これから離婚調停をするので、定期的に休ませてもらいます。」とはなかなか言いづらいものです。男性・女性にかかわらず、仕事を持っている人が定期的に平日の日中に予定を入れなければいけないというのは、なかなか大変なことです。

精神的ダメージが大きい

離婚調停は、直接相手と会うわけではなく、調停委員を介しての話し合いです。そのため、自分が話している途中で相手から横やりが入るとか、感情的になってどなり合うといったような状況はありません。しかし、これまでの辛かった経験を思い出しながら調停委員に説明をしたり、調停委員を介してとはいえ、相手の身勝手な考えを聞かされたりするのは、とても精神的にしんどいものです。

また、調停委員から説得されているように感じたり、相手の味方をされているように感じたりすると、話しても話しても「分かってくれていない。」という思いにさいなまれたりします。また、普通のカウンセリングや相談と異なり、「ここで失敗してはないけない。」、「下手なことを言ってはいけない。」、「調停委員を味方につけなければいけない。」などと考え始めると、緊張が高まり、気楽に話せなくなってしまいます。しかも、離婚調停は長期化する傾向にありますので、長期間にわたってストレス過多になると、メンタルに支障をきたす人も少なくありません。

調停委員の大部分は専門家ではない

どんな人が調停委員を務めているかというと、地元の名士だったり、一流企業の退職者だったり、そういった人の奥様だったり、はたまた教育や福祉関連の仕事をしている人だったり、バックグラウンドは様々です。いずれにしても、離婚や法律の専門家であるとは限りません。

また、調停を円滑に進めるためには、一定の「調停技法」が必要です。いくら法的知識が豊富でも、進め方が「イマイチ」ということもあります。例えば、当事者の話をじっくり聞くというよりは、自分の考えを優先して話してしまう人もいます。逆に、当事者の言うことを聞きすぎて、なかなか話が前に進まないということもあります。家庭裁判所では、調停委員の方の「調停力」を高めるため、いろいろな研修を実施していますが、調停委員に対する不満の声が後を絶たないのも事実です。

紛争性が高まる

家庭裁判所における調停は、あくまで「話合い」のステージで、裁判とは大きく異なるのですが、一般の方にとって、その違いはよく分からず、とにかく「裁判所」という名前に敏感に反応してしまうものです。そのため、家裁に調停を申し立てることによって、相手に「宣戦布告」と捉えられたり、紛争性が高まってしまうことがあります。むやみに争うことは、何もいいことはありません。もしかすると、これが家裁における離婚調停の一番のデメリットかもしれません。

家裁調停以外の「ADR」という選択肢

ここまで、家裁の離婚調停について、そのメリットやデメリットも含めお伝えしてきましたが、読んでくださっている方の中には、「なかなか一歩を踏み出せない」という方もおられるのではないでしょうか。

実は、裁判所で話し合うという選択肢は、あまり一般的ではありません(統計上も、協議離婚が10分の9、調停離婚が10分の1、裁判離婚に至っては100分の1です)。

夫婦のことだから、裁判所で争うまでのことはしたくないという気持ちや、そもそも、平日日中に会社を休めない、子どもを預けられないといった生活上の問題もあるかと思います。

そんな場合にお勧めなのが、ADRによる調停です。ADRは、夫婦二人では話合いができない、でも家裁で争ったりしたくもないという方にお勧めです。

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