離婚一般

離婚の切り出し方とタイミングー円満離婚のための伝え方ー

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相手に離婚したいことを伝えたいけれど、いつどんな風に切り出せばいいか分からないという方に、離婚の時期や切り出すタイミング、そして何をどう伝えるかといったことをお伝えします。

離婚時期を決めるための目安

「離婚を切り出すタイミング」は2つの意味があります。ひとつは、比較的長期間のスパンで考える離婚時期についてです。実は、最適な離婚時期は人によって異なるのですが、離婚時期を決める際に目安となる考え方をお伝えします。

子どもの年齢

子どもがまだ幼いうちに離婚するする場合、夫婦の不和を長期間見せなくて済むというメリットや、自分自身も早い段階でリスタートできるというメリットがありますが、別居親との愛着形成が困難になるというデメリットもあります。

そして、成長に伴い、親の離婚に対する理解力や乗り越える力も変わってきますし、子どもにかかる費用も大きく変化します。

子どもがどんな年齢であっても、その時期に離婚するメリットやデメリットがそれぞれにあり、一概に「いつがいい」ということは言えません。しかし、それぞれの時期のメリット・デメリットを知ることで、子どもの性格や生活状況と掛け合わせ、あなた独自の「適切な離婚時期」を導き出していただければと思います。

年齢別の詳細なメリット・デメリットについては以下のコラムをご参照ください。
子連れ離婚に適した子どもの年齢ー成人まで待つべき?-

就職活動は離婚前後のどの時期にするか

結婚や出産を機に仕事を辞めていたり、もしくは扶養内でのみ働いている人にとって、離婚後の生活の安定のため、正社員として働くようになってから離婚するかどうかが離婚時期を決める一つの基準になります。

就職してから離婚する場合

ある一定期間正社員として働き、軌道に乗ってきた時点で離婚するメリットは何と言っても離婚後の生活への安心感です。

ただ、離婚を決意した時点から離婚まで時間がかかってしまうことや、収入が上がることで別居の際の婚姻費用や養育費の金額が下がってしまったり、母子手当の収入制限にひっかかってしまったりというデメリットもあります。

手当や養育費が下がることに関しては、自分で生きていく力を身に付けるわけですので、決して悪いことではありません。ただ、DVやモラハラで苦しい毎日を送っている人にとっては、相手と同居しながら就職活動や新しい環境で働くことは簡単なことではありません。

離婚してから仕事を探す場合

親の援助や財産分与が期待できたり、子どもがいる場合は養育費や母子手当などを受給することによって、自分に収入がなくても当面の生活の目途がたつ人は、とにかく離婚を先行させるという方法もあります。

離婚先行の場合、苦痛な生活から早期に開放されるというメリットや養育費や母子手当もしっかりもらえるというメリットがあります。

一方で、離婚と同時に就職活動や就労を始めるとなると、時間的にも精神的にも余裕のない生活となり、自分や子どものケアをする時間がなくなってしまいます。

そのため、ある程度の蓄えや援助がある方は、離婚直後ではなく、少し生活が落ち着いてからの就職活動をお勧めします。

定年退職との関係

夫の定年退職を機に離婚する夫婦が一定数います。定年退職後、友達もおらず、趣味もなく、ずっと家にいる夫が嫌になったり、給料から年金に切り替わったことや既に退職金をもらったから(財産分与してもらえるから)という金銭的な理由も離婚原因として挙げられます。

確かに、退職はひとつの区切りであり、人生の再スタートを切るにはグッドタイミングのようにも思われます。

しかし、注意が必要です。夫に離婚意思がない場合、定年退職後ではなく、それより前に離婚を切り出した方がメリットが多かったりします。

例えば、婚姻費用の金額です。定年退職後だと、年金収入しかなく、婚姻費用の金額も低額になります。しかし、現役世代であれば、それなりの給料があり、婚姻費用も高額になります。そのため、別居している妻に高額な婚姻費用を支払い続けるのであればと離婚を後押しする要因になります。

また、定年後は、これまであった日常のルーティンがなくなり、不安や虚しさに襲われる人もいます。そんなときに離婚を切り出しても、ますます応じてくれるはずはありません。

そのため、夫が離婚に反対であれば、定年退職後ではなく定年退職前に離婚意思を伝え、別居を開始する必要があります。

心身の状況

別居・離婚を進めるためには自分自身の心身が健康である必要があります。そのため、心身の不調により、いつもの自分らしい判断ができないという場合、、まずは治療に専念するという選択肢もあります。

ただ、相手と一緒にいることでメンタルに不調をきたすこともあります。そのため、まずは相手から離れ、別居生活を送りながらゆっくり考えるという方法もあります。

また、子どもが不登校等のSOSを出しているときもよく考える必要があります。夫婦の不和が原因でそうなっている場合、早期の別居や離婚が望ましいとも考えられます。一方で、子どもがメンタル不調に陥っているときに親の離婚で環境が変化してしまうのも困りものです。

子どもの年齢にもよりますが、しっかりと子どもの意見を聞きながら、進めることが大切です。

離婚の切り出し方

そして、今度は離婚時期が来たとして、離婚を切り出すタイミングや切り出し方はどのように考えればいいでしょうか。

衝動的ではなく計画的に

けんかの際に売り言葉に買い言葉のように離婚を切り出すのではなく、お互いが平常心で話ができる状況で切り出しましょう。できれば、大切な話があるから空けておいてほしいとあらかじめ予定を伝えておくといいでしょう。

ただ、相手が離婚に否定的であることが予想される場合、何もないときに離婚を切り出しても、「なぜ、今離婚なのか」と理解してもらえないことがあります。

そのため、何かきっかけとなる出来事や背中を押す出来事があった際、一呼吸置いたタイミングで、「これまでも〇〇だったけれど、先日の〇〇で離婚意思が固まりました」という風に伝える方法もあります。

DVなどにより身に危険が及ぶ場合を除き、離婚協議自体は対面で行うことがお勧めですが、「離婚を考えている」という第一報はLINEやメールで伝えるという方法もあります。

夜より昼間

仕事から帰ってきて、子どもが寝静まったときにようやく話合いが始まる、というケースも多いかと思います。ただ、夜間の話合いは双方ともに疲れている上に、感情的になりやすい傾向があります。また、エンドレスで話をしてしまいがちです。

そのため、休日の昼間などに、子どもを親に預けるなどして時間を作り、「何時まで」と終わりの時間を決めて話をしましょう。

家より外で

自宅で話合いをしてしまうと、他人の目がありませんので、時に怖い目にあうことがあります。また、家の中ではなく外で話合いの場を設定することで、夫婦の距離感が保たれ、離婚意思も伝わりやすくなります。

ファミレスなどは、にぎやかながらボックス席が多く、意外と周囲の目が気にならないのでお勧めです。

離婚を切り出す際に伝える内容

なぜ離婚したいか(離婚理由)

離婚を切り出す際、一番大切なのが離婚理由です。既に離婚をそれとなく合意している場合を除き、なぜ離婚したいのかを伝えないと話が前に進みません。そのため、離婚理由を丁寧に伝える必要があります。

ただ、相手が離婚に否定的な場合、いくら離婚したい気持ちを伝えても「そんなことは離婚理由として認めない」とか「理解できない」と言われることがあります。

そのため、離婚理由を伝えるステップでつまづかないよう、いくつかのポイントをお伝えします。

離婚理由についての話合いはしない

何が離婚理由になり得るのかは、人によってそれぞれであり、認める・認めないの問題ではありません。不毛な議論をしないためにも、離婚したい理由を単に伝えているのであって、それに対する議論や判断を求めているわけではないことを伝えましょう。

具体的に伝える

「思いやりがない」、「価値観が違う」といった抽象的な理由ではなく、なるべく具体的に伝えましょう。一番いいのはエピソードを話すことです。思いやりがないと思ったエピソード、価値観が違うと感じたエピソード、そういった具体的な出来事を伝えることで、相手の理解も進みます。

離婚後の生活について

特にお子さんがいる場合、離婚を切り出された相手は子どもの生活が気になります。そのため、経済的にやっていけること等、離婚後の生活プランについて伝えましょう。

ただ、離婚理由と同様、「そんな計画ではやっていけない」、「子どもがかわいそうだ」と非難され、だから離婚に応じないと結論付けられてしまうことがあります。

相手が「それではやっていけない」と主張する背景には、離婚したくない気持ちがあることも多く、いくら「〇〇だから大丈夫」と説明しても、理解を得られないことがあります。

また、そもそも、どのような状況に置かれるのが子どもにとってかわいそうなのか、という判断も人それぞれです。例えば、離婚したくない人は、子どもの生活環境が変わることがかわいそうだと言い、離婚したい人はこのまま夫婦げんかを見せ続けることがかわいそうだと言います。

そのため、離婚後の生活についても、相手の安心のために話すことは必要ですが、同意が得られない場合にどこまで議論するかは考える必要があります。

修復の可能性はないこと

例えば、妻が夫の育児不参加を理由に離婚を求めたとします。妻にしてみれば、産後の心身ともに辛いときに協力を得られず、孤独な思いをしながら子育てをしてきたことがトラウマのように残っていて、それが消えずに離婚理由になることがあります。

しかし、夫にしてみれば、今は手伝っているからとか、今後は手伝うから、という理由で修復を求めてくることがあります。

あなたに修復の可能性が残っているのであれば、相手の提案を聞くメリットがありますが、離婚意思が固いのであれば、いくら相手が変わってくれたとしても、過去は消せず、離婚理由も消えないこと、修復の可能性はないことをしっかりと伝えましょう。

相手を非難しすぎない

大抵の場合、離婚理由は相手の非難を含んでいます。また、なぜ離婚したいのか、これまでどんなつらいことがあったのか、そういったことを話すには、どうしても「悪口」のようになってしまいます。しかし、行き過ぎてしまうといいことはありません。

例えば、「自分ばかり悪者にされて納得できない」という気持ちになって離婚に応じてくれなかったり、非難の応酬のようになり、後に続く離婚協議に支障をきたすこともあります。

感謝の気持ちも伝える

離婚の際、感謝の気持ちを伝えることは、メリットしかありません。その後の離婚協議を穏やかな雰囲気で行うことができますし、非難されると言い返したくなりますが、感謝されると逆に何も言えません。

離婚する相手であっても、感謝するべきことは何もない人はきっといないはずです。是非、感謝の気持ちも伝え、少しでもいい雰囲気の中で離婚協議をしていただければと思います。

離婚条件の詳細よりも方向性を示す

例えば、養育費や財産分与について、詳細に調べ、金額まで目安を立てていたとします。しかし、初めて離婚を聞かされる際、詳細な金額まで示されると相手はどう感じるでしょうか。

「もうそこまで調べているのか」と離婚意思の強さを感じ取ってくれるかもしれませんが、相談もなくことを進められているような気がして面白くないかもしれません。

そのため、養育費は算定表通りでとか、財産分与は法律に沿って分与したいといった方向性を伝えておく程度でもいいでしょう。

一度文章でまとめてみる

離婚を切り出す瞬間というのは、だれしも緊張して頭が真っ白になってしまったり、辛い気持ちがこみあげてきてうまく話せなかったりします。

そのため、一度、文章にまとめておくことをお勧めします。また、先ほどお伝えしたように、離婚協議そのものは対面で行うとしても、まずはメールやLINEで離婚を切り出すという方法もあります。

以下に例文を記載します。

夫から性格の不一致を理由に離婚を切り出すパターン

突然で驚くかもしれませんが、実はあなたと離婚したいと思っています。

これまでの結婚生活の中であなたとの価値観の違いや金銭感覚の違いを感じることが多く、その都度衝突してきましたね。

子どもが大きくなるまではと仮面夫婦を演じてきましたが、そろそろ自分らしく生きたいと思い、離婚を決意しました。

あなたがこれまで一生懸命家庭を支えてくれたことにはとても感謝しています。あなたが今後生活に困らないような財産分与についても考えたいと思っています。

来月末には家を出ようと思っているので、まずは今週末、話合いができればと思っています。

妻から夫の不貞をきっかけとして離婚を切り出すパターン

これまで何度か離婚を口にしたことがありますが、今回は、先日の浮気の件もあり、本当にあなたと離婚することを決意しました。

これまで決して仲のいい夫婦ではなかったし、浮気も含め、色々と辛いこともありました。ただ、今後も子どもの親としての関係は続いていくので、お互い憎み合うのではなく、離婚という形で夫婦関係を清算したいと思います。

まずは、あなたの気持ちも聞きたいと思いますが、あなたが何と言っても私の離婚意思は変わらないことを伝えておきます。

離婚後は実家に戻る予定で、既に両親の了解も得ています。仕事についても、実家の近くの支店に転勤させてもらえることになっています。

もし、離婚に応じてくれるのであれば、養育費や面会交流、財産分与や慰謝料といった諸々の離婚条件についても話合いができればと思います。

できれば子どもが小学校入学前に結論を出したいので、まずは今週末、話合いの時間を取っていただけると嬉しいです。

離婚意思を伝えた後の対応

離婚意思を伝えた後、円滑に話が進むといいのですが、大抵の場合、「ちょっと考えたい」と言ったままうやむやにされてしまったり、途中まで話は進んだけれど、離婚条件を詰める途中で頓挫してしまったということになります。その場合、協議を前に進める方法をお伝えします。

期限を設ける

「ちょっと考えたい」とか「今、仕事が忙しいから無理」などと言われてしまい、話が前に進まないことがあります。もちろん、相手の状況を見極めることや、理解を示すことも大切です。ただ、いたずらに時間だけが過ぎているような状況であれば、「〇〇までに返事がほしい」と期限を設けましょう。

期限までに返事がなかった場合の行動を示す

期限を設けたとしても、その後の行動を示さなければ、回答を促すことはできません。例えば、以下のように伝えてましょう。

  • 〇〇までに返事をもらえなかったとしても、〇〇までには家を出ます
  • 〇〇までに返事をもらえなかった場合、家庭裁判所の調停に申立てをします。

もちろん、期限までに回答がない場合、書いた内容を行動に移す必要があります。そのため、できないことをはったりのように書くのはやめましょう。

第三者を入れて話し合う

夫婦二人だけでは話合いがうまくいかない場合、第三者を間にいれることで話が前に進むことがあります。親族や友人等、法律の知識がない第三者ではなく、以下に挙げる専門性のある第三者を介しましょう。

第三者を入れて離婚協議をする方法

家庭裁判所の調停

家庭裁判所で離婚調停を行うことが考えられます。以下に、メリットとデメリットをお伝えします。

家裁利用のメリット

費用が安価

申立時に数千円かかりますが、その後は何回話し合っても無料です。

話合いが前に進む

これまで、あまり反応してくれなかったり、理不尽な主張ばかりしていた相手であっても、家裁の調停で調停委員が間に入ることで話合いが前に進むことがあります。

デメリット

解決まで時間がかかる

家裁の調停は、解決までの時間が長くかかるのがデメリットです。離婚まで1年かかったというケースも珍しくありません。

紛争性が高まる

家庭裁判所に申し立てられた方は「訴えられた」ような気持ちになったりします。また、裁判所というだけで、「そっちがその気なら」と戦闘モードになる人もいます。その結果、紛争性が高まる恐れがあり、穏便に解決したいという人にはあまり向いていません。

弁護士に依頼する

弁護士という法律の専門家に依頼し、代理人として相手と離婚協議をしてもらこともできます。

弁護士に依頼するメリット

専門性の高さ

弁護士の中でも特に離婚案件に特化している弁護士は法的知識のみならず、交渉の方法等についても実体験から蓄積したノウハウや専門性を有しています。

自分の味方をしてもらえる

家庭裁判所は中立の立場として間に入りますが、弁護士に依頼した場合、自分の代理として自分の利益を最大にするために動いてくれます。そのため、気持ちが疲れていて、自分では交渉できそうにないという人には安心感があります。

デメリット

料金が高い

依頼料が数十万円~100万円程度と高額になるのが大きなデメリットです。法テラスを利用することもできますが、生活保護レベルでない限り、分割払いになるのみで無料利用はできません。

紛争性が高まる

家裁利用と同様、弁護士が間に入ることによって紛争性が高まり、かえって相手の怒りを買ってしまう恐れがあります。また、あなたの弁護士から受任通知を受け取った相手は、きっと自分も弁護士に依頼するでしょう。そうなれば、弁護士対弁護士の争いになってしまいます。

民間の調停機関(ADR)を利用する

ADRは、いわゆるADR法に基づいて、法務省が管轄している制度です。管轄は法務省ですが、調停の実施機関自体は民間の機関になりますので、家裁の調停とは様々な点で異なります。

ADR調停、よくある質問
ADRによる調停・仲裁

ADRを利用するメリット

利便性が高い

民間ならではの利便性があり、土日や平日の夜間の利用が可能だったり、オンライン調停が可能な機関も増えています。

紛争性が高まりにくい

民間の機関ですので、裁判所や弁護士に比べて、相手の受け止めもソフトな側面があり、紛争性が高まりにくいというメリットもあります。

迅速性

何より大きなメリットは迅速性です。離婚協議は心身ともに疲れますので、、1日でも早く解放されたいという気持ちになります。この点、ADRは家裁の調停より解決までの時間が随分と短いのがメリットです(法務省の統計によると約3か月の審議期間となっています。)。

ADRを利用するデメリット

費用がかかる

家裁と異なり、一定の利用料がかかる点がデメリットと言えます。弁護士に依頼する費用の10分の1程度ですむ機関が多いと思いますが、それでもやはり家庭裁判所を利用するより割高ですので、その点はデメリットと言えます。

まとめ

どんな状況であれ、離婚を切り出す瞬間というのはとても緊張するものです。そして、どんな時期にどのタイミングでどのように離婚意思を伝えるか、ということが後々の離婚協議に大きく影響を及ぼします。

ただ、多くの方にとって離婚は初めての経験です。ぜひ、おひとりで悩まず、専門家に相談していただければと思います。

当センターでは、離婚カウンセリングにて離婚のタイミングや相手への伝え方についてご相談にのっています。ぜひ、以下のページより離婚カウンセリングをチェックしてみてください。

離婚カウンセリング

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