年金分割

離婚時年金分割の注意点

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今回のコラムでは、年金分割制度の背景と注意点についてお伝えします。

年金制度の詳細については以下のコラムを参照ください。

知らないと損する離婚の常識、年金分割分割

年金分割の背景

年金分割とは、離婚後に一方配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し、それをもう一方の配偶者が受け取れるという制度です。ごく簡単に言ってしまうと、夫が受け取る年金を妻に分ける制度と言えます(婚姻期間中、夫の方が妻より収入が高かった場合)。この制度は比較的新しく、平成19年に始まりましたが、その数年前から離婚率がやや減少するほど、熟年離婚を希望する妻たちには待望の制度だったといえます。

そもそもこの制度は、さかのぼれば、2000 年に厚生省が設置した「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」が、「女性自身の貢献がみのる年金制度」として検討を始めたものでした。というのも、会社勤めの夫と専業主婦の妻という夫婦が離婚した場合、年金分割の制度を利用しなければ、夫は20万円前後(例えば)の年金を手にし、妻は10万円にも満たないということが起こってしまい、熟年離婚が妻にとって大変不利なものになっていたからです。この趣旨を踏まえて、以下の全体像を見ていきましょう。

年金分割の注意点

すべての年金が分割対象ではない

分割対象となるのは厚生年金と旧共済年金です(平成27年10月に旧共済年金が厚生年金に一元化されました)。

婚姻期間中、配偶者がずっと国民年金だけに加入していて、厚生年金や共済年金に入っていない場合は、年金分割ができません。

例えば、配偶者が自営業者の場合、残念ながら分割対象となる年金はありません(自営業であっても、有限会社にしていたり、株式会社などの会社組織の常勤役員として報酬を得ている場合は別です。)。

国民年金のほかにも、国民年金基金、厚生年金基金の上乗せ給付部分(付加部分・加算部分)、確定給付企業年金、確定拠出年金(401k)は年金分割の対象とはなりません。また、私的年金(民間の生命保険会社の年金保険など)も年金分割の対象とはなりません。

いわゆる年金の3階部分については、婚姻期間が長くなればなるほど高額になり、財産分与の対象となることもありますので、年金分割ではなく財産分与の観点でしっかりと理解していただきたいと思います。

熟年離婚は必見!私的年金の財産分与

少しややこしいですが、分割対象となる年金があるかどうかが不明な方は、お近くの年金事務所で教えてもらうことができます。

離婚してすぐ受給できるわけではない

これもありがちな誤解なのですが、離婚してすぐに受給できるわけではありません。例えば55歳で離婚し、年金分割の手続を済ませたとしても、実際に受給できるのは60歳(もしくはそれ以降)からです。

年金分割で妻の受給が増えるとは限らない

年金分割というと、妻に有利な制度だと思われがちですが、一概にそうとも言えません。妻の方が収入が多い場合、妻の納付実績の一部を夫に分割することになります。

対象は婚姻期間

例えば、夫が35歳のときに婚姻し、50歳で離婚するとします。この場合、分割対象となるのは夫の35歳から50歳の納付実績です。夫が20歳から35歳の間に納付した実績は分割されません。晩婚化が進んでいる昨今、40代で婚姻なんてことも少なくありません。この場合、分割対象となる部分が意外と少なくなります。

請求に期限がある

離婚後、年金を受給する頃に分割手続きを行えばいいと思っている方がいますが、これでは手遅れになります。年金分割は離婚後2年の間にしなければならないと決められています。また、元配偶者が死亡した場合、死亡から1か月の間に請求が必要です。

婚姻期間がある程度長い方はぜひ忘れずに手続きをしていただければと思います。

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