アルコール依存症の夫(妻)と裁判所や弁護士を使わずに離婚する方法

アルコール依存症の夫(妻)との離婚を決意したとき、きっと皆さんの頭によぎるのは「アルコール依存症が理由で離婚できる??」という心配だと思います。

そして、検索をしてみると、お酒を飲みすぎていることだけでは法定離婚事由にはならず、それに付随する問題(暴力や暴言、家にお金を入れない等)が夫婦として婚姻を継続しがたい理由にあてはまるのであれば、離婚が可能だと書かれているコラムが目に入ってくるかと思います。

しかし、おそらくみなさんは、現時点で裁判までして離婚するということをあまり想定されていないのではないでしょうか。

アルコール依存症が離婚事由になるかどうかの話は、裁判になったときの話です。

しかし、おそらくみなさんが目指すのは、もっと手前の協議離婚だと思います。

ですので、このコラムでは、家庭裁判所や弁護士を利用せず、アルコール依存症の夫(妻)と穏便に協議離婚する方法をお伝えします。

夫婦で話し合う

離婚協議の基本は夫婦で話し合うことです。ただ、アルコール依存症の相手と話し合う際は、以下のことを気を付けましょう。

話し合いは飲酒していないときに行う

当たり前のようで意外とできていないのが、「お酒を飲んでいないときに話し合う」ということです。

アルコール依存症の人は、酒量が多いだけでなく、飲んでいる時間も長いため、なかなかしらふの状態がなかったりします。

しかし、飲酒状態で話をしてしまうと、すべて「覚えていない」と逃げられてしまいます。

必ず素面の時に話し合いましょう。

暴力があるときはとにかく逃げる

飲酒時の暴力がある場合は、話し合いなんて悠長なことは言っていられません。

まずは、実家に帰る、別居する、女性センターに保護してもらう、病院の家族入院を利用するなどして、物理的距離を取りましょう。

また、暴力はなくても、暴言がひどいときも同様です。毎日のようにひどい暴言を浴びせられていると、正常な判断力がなくなってきます。

自分が精神的に参ってしまい、うつ病やパニック障害になってしまうこともあります。

言葉だけだからと我慢せず、早めの行動が肝心です。

「今度こそお酒をやめる」の一言に負けない

話し合いの際、「今度こそお酒をやめるから」という決まり文句が出てくることが予想されます。

この言葉に対し、ラストチャンスを与えるかどうかは、あなた次第です。

ただ、きっとあなたは離婚を切り出す前に、同じやり取りを何度もしているはずです。

無理に合意しようとしない

夫婦間での離婚協議はそう簡単ではありません。そもそも離婚意思が合致しないこともありますし、離婚意思が合致したとしても、離婚条件が合致しないこともあります。

しかし、結局、話合いが決裂したとしても、実は、この過程がとても大切だったりします。

きちんと話をせずに次のステップとして第三者を仲介に入れた場合、「直接相手の気持ちが聞きたい」、「何を考えているのかよくわからない。」「まだ夫婦でもきちんと話し合っていないのに」という気持ちがいつまでも消えず、話合いが前に進まないことがあります。

そのため、夫婦での話合いは大切ですが、合意できないことも十分に考えられますので、その場合は深追いせず、以下の3つの「第三者を仲介させる方法」を検討しましょう。

ADR(民間調停・離婚協議サポート)を利用する

ADRは、裁判外紛争解決手続きとよばれる民間の機関による手続きです。

民間と言っても、法律に基づいて法務省に管轄されている点で安心感があります。

ADRを利用するメリットは、以下のようなものがあります。

・平日夜間や土日の利用が可
・オンライン調停が可
・弁護士の費用の10分の1程度
・法律の専門家による中立な立場での関与が得られる
(紛争性がそれほど高まらない)

一方、デメリットとしては、安価といえども、裁判所の調停に比べて費用がかかることが挙げられます。

例えば、当センターのADRをご利用いただいた場合、おひとり5~10万円程度の費用がかかります(お住まいの自治体によって、利用料の助成がある場合もあります。)

ADRについては、以下のコラムもご参照ください。
ADRによる調停
ADR(調停)よくあるQ&A

ふたりでは話ができない、でも弁護士に依頼して家庭裁判所で争いたいわけではない、という方はADRの利用が向いています。

まとめ

アルコールは、人間関係の潤滑油でもあり、節度を守って飲酒している分には特に問題はありません。

しかし、飲み方を間違えると、依存症に陥る怖い飲み物です。

日本は比較的お酒に優しい国です。24時間お酒が飲めるお店も少なくありません。

お酒を飲んでいれば、何でも無礼講ですし、記憶をなくすほど飲んで何か失敗をしても「武勇伝」のように語られたりします。

そのため、夫(妻)のお酒の飲み方に多少違和感があっても、あまりそれ自体を問題として話し合うことはありません。

しかし、夫婦の時間がもてない、暴言・暴力がある、経済的に困窮している、家事・育児に参加してくれないといった、様々な問題の後ろにアルコールがあるかもしれません。

アルコールの問題は、そんなに簡単には解決しません。治療に寄り添うという判断もありですが、離婚という選択肢もあります。

きっとあなたは配偶者のアルコール問題に悩んでおられる方だと思います。

大切なのは、「自分の幸せ」を大切にした解決です。判断に迷ったら、自分はどっちが幸せになれそうかを考えてみてください。そして、おひとりで悩まず、ぜひ、離婚カウンセリングにてご相談ください。