家裁調査官時代は、お子さんの関係する案件にかかわることが多かったこともあり、あまり財産分与やそれにまつわる税金についての知識がありませんでした。
しかし、この仕事を始めてからは、離婚公正証書や離婚協議書を作成する関係上、「知らない」では済まされないことが結構あります。
難しいことや詳細は、税理士さんに聞くしかないのですが、「これだけは知っておきたい。」という離婚にまつわる税金の基礎についてお伝えしたいと思います。
もらう方にかかるお金
現金
養育費、財産分与及び慰謝料は、現金でもらう分には、基本的に課税はありません。
しかし、それぞれの名目でもらう金額が本来の相場を大きく上回る場合は、課税されることもあります。
養育費
たとえば、養育費を一括で支払ってもらう場合などは要注意です。
養育費の特徴は、毎月一定額を振り込んでもらうところです。そのため、一括で受け取る養育費には、養育費たる特徴が備わっていないということで、養育費とはみなされません。
そのため、離婚時に一括で受け取った場合、贈与税がかかる可能性があります。
ただ、一括で支払うかわりに少し総額を安くするなどした場合、払う方にもメリットがあり、養育費の一括払いを希望されるご夫婦もおられます。
そんな場合は「教育信託」の利用などが考えられます。教育信託は、養育費を銀行に預けるような形を取ります。そのため、一括で受け取ることはできませんが、途中で支払いが滞るということはありません。
また、月々の養育費が過度に高額な場合も課税の対象となることがあります。
ここで問題となるのが「過度に高額」とは一体いくらのことを指すのかということです。
実際に税務署に問い合わせてみたところ、「婚姻当時の生活を基準に判断します。そのため、一定の金額があるわけではなく、人それぞれ違ってきます。」との回答でした。
そのため、裕福な家庭で、日頃から習い事や塾、私立の学校の学費など、子どものためにたくさん支出していた場合、月額10万円、20万円といった養育費でも課税されないことになります。
一方で、そうでもない堅実な家庭では、養育費を20万円も受け取ってしまうと、課税対象となってしまうかもしれません。
「〇〇円以上は課税」とはっきりした決まりがあるわけではないので、心配な場合は税理士さんに相談した方がいいかもしれません。
現金の財産分与及び慰謝料
現金で支払ってもらう財産分与及び慰謝料は、基本的に課税されません。
しかし、財産分与も慰謝料も、過度にもらいすぎた場合は課税対象になります。
例えば、財産分与で大幅に二分の一を超えた場合や慰謝料で相場を大きく上回った場合です。
国税庁のHPに説明されていますので、参考にしてください。
不動産
養育費として不動産ということはあまりないと思いますが、財産分与で不動産を分与されることはままあることと思います。
その場合も現金と考え方は同じで、不動産の価値を現金に換算し、それが夫婦の共有財産の半分を大きく上回らなければ、課税されることはありません。
しかし、税金はかかりませんが、不動産の固定資産税と登録免許税がかかってきます。不動産の金額が大きい場合(1億円とか)、これらの費用も何百万円という金額になってきますので、注意が必要です。
特に、不動産のみの分与で現金に余裕がない人は、分与の方法を考えた方がいいかもしれません。
支払う方にかかるお金
支払う方にかかる税金として考えられるのは譲渡所得税です。現金の場合、譲渡所得税はかかりませんが、不動産や株式を分与した場合、注意が必要です。
譲渡所得税がかかる場合
不動産も株式もそうですが、購入したときより増加した価値について税金がかかってきます。
例えば、5,000万円で購入したマンションの価値が分与時には6,000万円だった場合、1,000万円について課税されます。
譲渡所得税がかからない例外
ただ、いつもいつも所得税がかかるかというとそうでもありません。例えば、居住用不動産の場合、売却益3,000万円まで課税されません。ただし、親族に売却してしまうと適用されませんので、離婚後に分与する必要があります。
また、配偶者控除といって、夫婦で20年以上居住した不動産を分与する場合、基礎控除110万円に加えて最高2000万円分まで税金がかからない制度もあります。
まとめ
不動産を財産分与する場合、ローン控除の問題や連帯保証や連帯債務の問題など、思った以上に面倒な問題があったりします。
また、財産分与の価格が高額になる場合は、思わぬ税金がかかったりと、離婚後の生活に影響を及ぼすことも考えられます。
財産の内容が複雑かつ高額な方は、一度、税理士さんに相談した方がいいかもしれません。
私もまだまだ税金については知識不足が否めません。みなさんと一緒に勉強していければと思います。
離婚テラスでは、公正証書を作成する際、必要に応じて税理士からアドバイスを受けていただくことができます。ご心配な方は一度ご相談ください。