離婚一般

卒婚か離婚かで迷っている人のためのガイド

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数年前から「卒婚」という言葉が聞かれるようになりました。もともとは、杉山由美子さんが書いた「卒婚のススメ」という本が始まりのようです。今日は、卒婚か離婚かで迷っている人に役立つ情報をお届けしたいと思います。

卒婚とは

離婚でも夫婦不和でもない

卒婚は、離婚はしていない状態でありながら、夫婦としての生活実態がほとんどない状態をいいます。しかし、けんか別れをしたわけでもなく、お互いいがみ合っているわけでもない点が特徴的です。

自分の時間を大切にしたい

夫婦仲は悪くないけれど、配偶者のお世話に時間を奪われるのではなく、自分のために時間を使いたいという人が選ぶのが卒婚です。必ずしも別居が前提ではありませんが、自分時間を優先するためにも別居という形をとる卒婚が多いようです。

熟年夫婦に多い?

卒婚と言えば、子育てを終えた熟年世代をイメージすると思います。まだまだ若い夫婦であれば、再婚という選択肢もありますし、そもそも、婚姻期間が短い場合は、「面倒な財産分与をしなくてよい」などの卒婚を選ぶメリットが少なかったりします。

しかし、離婚カウンセリングなどで感じるのは、意外と30代後半や40代といった比較的若い世代にも卒婚状態の人、もしくは卒婚を望む人が多いということです。

最近の若い人は、「草食系」であるという話を聞いたことがありますか?例えば、高級車に乗りたいという願望はなく、自転車通勤が気持ちがいいとか、彼女を喜ばせるために高給レストランを予約するより、お弁当や水筒を持って会社に行く日常の方が落ち着くといった人たちです。そのような人たちは、結婚してもすぐに夫婦別室になったり、単なる同居人という関係に変わってしまったりします。しかし、離婚するほどのエネルギーもありません。大変な思いをして離婚するよりも、現状維持で、問題を見て見ぬふりをする方が楽なようです。その代わり、自分なりの楽しみや自分の時間を持っていたりします。休日は、独身時代からの友人たちと登山に行ったり、好きな映画をまとめて見たりと、彼ら彼女らなりの人生の楽しみがあります。あまり夫婦に幸せや結びつきを求めすぎない、新しい形なのかもしれません。

卒婚が成り立つ大前提

卒婚で問題が解消できるか

当たり前の話ですが、卒婚か離婚かで迷うというのは、現在の生活に何等かの不満があるはずです。その不満が卒婚で解消できるかどうかが、卒婚が成立する一つの大前提になります。架空の事例で考えてみましょう。

境界性パーソナリティー障害の妻に悩む夫の事例

夫 :55歳
妻 :50歳
長男:17歳

妻は、境界性パーソナリティー障害と診断されており、夫に対し暴言・暴力があった。夫は、妻は病気なのだと自分に言い聞かせていたが、妻の気性の激しさには、ほとほと参っていた。良かれと思ってやったことを曲解されたあげく攻撃されたり、見せしめに目の前でリストカットをされたり、気持ちが休まることがなかった。家に帰る足取りも重く、このままでは自分が鬱になるのではないかとの心配もあった。自分が働けなくなれば、妻子は食べていくこともままならず、長男の将来も暗いものになってしまうことが懸念された。

そんな危機感を抱いていた夫は、幸いにして妻から長男に対する攻撃はなかったことから、自分が妻から距離を置くことで問題を解決できないかと考えた。

心情的には、妻と徹底的に縁を切りたい気持ちもあり、できることなら離婚したいとも考えた。しかし、長男のことを考えると、別居で足りるなら、離婚までしなくてもよいのではという気持ちもあった。

今はやりの卒婚を選択するのか、それとも徹底的に縁を切るために離婚するのか、夫の気持ちは揺れていた。

さて、夫の一番の悩みは、妻から激しい攻撃を受けた結果、自分が鬱になってしまったり、働けなくなってしまうことでした。その悩みが卒婚によって解消できるかがポイントです。

おそらく、別居が実現すれば、妻からの影響はずいぶん減りそうです。でも、もしかしたら、今度はメールや電話での攻撃が始まるかもしれません。そのため、まずは別居をしてみて、別居だけで自分の目的が達成できそうか、心穏やかに楽な生活を送れそうかどうかを試してみることになります。

相手も同意するかどうか

事例の夫としては、妻に、妻子に対して責任を持つつもりはあるけれど、一緒に生活していると精神的にしんどいこと、離れて暮らした方が家族全体の生活がうまくいくと考えていることなどを説明することになります。しかし、妻が別居に同意してくれなかった場合、卒婚は成立しません。

 最後は具体的思考により判断

卒婚が成立しそうだとして、それでも卒婚か離婚か迷う場合、それぞれについて具体的に考えていくしかありません。

卒婚で得られるものと得られないもの 

とりあえず妻と別居できれば、帰宅の際の気の重さからは解放されそうです。また、自宅でゆっくりする時間や穏やかな時間も確保できそうです。また、完全に関係が切れるわけではないので、妻の精神状態が安定しているときは自宅に帰ったり、長男の様子を見たりすることができます。

一方、妻との婚姻関係は続いたままですので、妻から解放されることはありません。妻の生活の面倒も見なければいけませんし、メールや電話で攻撃されるかもしれません。本当の意味での心の安らぎは得られないでしょう。

離婚で得られるものと得られないもの

離婚すれば、妻とは完全に赤の他人になることができます。そのため、本当の意味での心の安らぎを得ることができます。また、妻の生活費を負担する必要がないので、経済的な余裕も得られます。

ただ、気軽に自宅に顔を出すこともできず、長男との関係が希薄になってしまうかもしれません。また、「離婚経験者」ということで、会社での立場が悪くなることも考えられます。また、このような妻と離婚条件を協議することは困難が予想され、離婚協議中は大変な思いをするかもしれません。

消去法の卒婚は失敗する?

以上、卒婚か離婚かで迷っている人が考えるべき道筋をご紹介しました。ただ、離婚カウンセリングを通じて感じるのは、離婚の大変さを回避したいがために「卒婚=円満な別居」を求める人が多いということです。卒婚は、配偶者への基本的な信頼や感謝の気持ちがあるものの、最後ぐらい自由に過ごしたい、という気持ちが形になったものです。そのため、相手との生活が嫌になった結果の「単なる別居」は、いずれ破たんしたり、関係が完全には切れないことで逆にしんどい目にあったりします。

一方で、夫婦不和や離婚に直面したとき、そのしんどさから逃げたくなったり、「このまま知らんぷりできたら楽なのに」という気持ちもとてもよく理解できます。そのため、今は無理して決めない、という選択肢があることも確かです。

どちらにしても、このようなことを一人で理路整然と考えるのはとても難しいものです。卒婚か離婚かで迷ったときは、是非離婚テラスの離婚カウンセリングをご利用ください。

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