離婚と子ども

親の離婚と子どもの心の道のり

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親の離婚を経験する子どもは、様々な感情を抱きます。

常日頃から、親のけんかを目の当たりにしていた子どもは、「やっとパパとママのけんかを見なくて済む」とほっとします。

また、一方の親がDVやモラハラの被害者になっている場合、離婚によって悲劇が終わることを嬉しく思うかもしれません。

しかし、大抵の子どもは、大好きなパパとママがお別れするという選択をしたことに心を痛めます。大きなショックを受けたり、悲しんだりするのです。

今回は、親の離婚を経験した子どもたちがそのショックや悲しみから回復するまでにたどる「心の道のり」について書きたいと思います。

悲哀の仕事

死別だけでなく、大切な人との別れは、大きなショックとなり、そのショックから立ち直るために必要なプロセスがあるとされています。

それが、「悲哀の仕事」といわれるプロセスです。

この「悲哀のプロセス」は、有名な精神科医フロイトが提唱したもので、喪失体験を受け入れ、立ち直っていくために必要な過程だとされています。

「悲哀の仕事」と呼ばれるこのプロセスは、親の離婚だけでなく、大切な人の死、被災、病気など、誰でも体験しうる辛い試練から人が回復する際に通る道のりです。

このプロセスとしっかり向き合うことをせず逃げてしまうと、かえって回復を遅らせることもあるのです。

第一段階 情緒危機

夫婦不和とうつ病

情緒危機

突然にショックな出来事に遭遇し、自分がどうして良いかわからないパニック状態になっています。不安感、恐怖感、無力感、心細さの中でこれからどうすればよいか、必死に模索しています。

例えば、親が子どもに離婚を説明する場面を想像してみてください。

子どもは、日頃からいくら親の仲が悪かったとしても、まさか離婚するとは思っていません。そのため、「お父さんとお母さんは、一緒に暮らしていると喧嘩をしてしまうから、別々に暮らすことににしたよ。」と言われると、青天の霹靂なのです。

多くのお子さんは、その場で事情を理解したり、自分の意見や疑問を口にすることもできず、茫然と「そうなんだ・・・。」とつぶやくのみです。

一見すると、「冷静に受け止めてくれた」と思ってしまいがちですが、実は、心の中はパニック、頭は真っ白なのです。

第二段階 怒りと否認 

怒りと否認 

大切な人を失った事実を認めようとせず、強い愛着に苦しみます。そして、「もうその人は傍にはいないんだよ」と喪失を認めさせようとする人に対して、怒りを感じます。

親の離婚を事実と受け止めたくない、そんな段階です。

まだ強い愛着が続いているので、 離婚前の家庭が存在していると錯覚して探し求めたりします。中には、なんとか自分の力で親の夫婦関係を修復できないかと行動を起こす子どももいます。

強い愛着と否認の間でフラストレーションが高まり、怒りに転じることもあります。怒りの対象は同居親、別居親、学校や社会などさまざまです。

第三段階 断念と絶望

断念と絶望

愛着をもっていた対象の喪失を現実のものと受け入れ、愛着を断念します。 

これまでの家族に支えられていた心のあり方や生き方が意味をなさなくなるため、絶望や失意といった感情に支配されます。

いつも元気がなさそうに見えたり、食欲がなくなったりします。また、これまで頑張っていた習い事に興味がもてなくなってしまったり、勉強に集中できなくなったりします。

そんな子どもに対しては、これまでと形は変わっても、父母の愛情や関わり方は変わらないことを丁寧に伝えることが大切です。

第四段階 離脱と再建 

離脱と再建

失った対象に対してだんだんと穏やかで肯定的な感情(思い出)が生まれ、場合によっては新しい愛着の対象が生まれます。 

新しい人間関係や環境の中で、自らの役割を再建しようとする努力が始まります。

例えば、シングルマザーになって一生懸命働くお母さんのお手伝いをしようとしたり、親に心配をかけないよう振舞おうとしたりします。

また、これまでちょっと横に置いていた趣味や学業に励む姿も見え始めます。

再建の時期にいる子どもは、「無理して明るく振舞う」のではなく、心から前を向こうとしている状態だと言えます。

回復とサポート

段階を踏む

離婚後の子どもは、家族という安全地帯を失い、大きな喪失体験をします。

しかし人間には、悲哀を乗り越える力があり、4つの段階をひとつひとつクリアしていけば、悲哀から回復することができます。

離婚を経て、ひとり親家庭へと移行する過程で生じるストレスは、約1年後がピークだと言われています。そして、そのピークを過ぎると、家族それぞれがストレスを克服し、新たなバランスを取り戻すのです。

感情の表出

子どもが悲哀から回復するために何より必要なことは、「ネガティブな感情も吐露する」という感情の表出です。

そして、自由な感情の表出のためには、親が子どもの聞き役になってあげることが一番です。また、同じ経験をした友人や学校の先生がいい聞き役になってくれることもあります。

しかし、親だって大変な時期ですし、周囲に恵まれるとは限りません。

子どもの悲哀が病的な場合や、学校に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす場合は、心理カウンセラーなどの専門家に相談しましょう。

親の離婚を「子どものプラス」にするために親ができること

再婚家庭と面会交流

ここまで、親の離婚は子どもの心に大きな悲哀を与えるという話をしてきましたが、一番大切なことは、離婚自体が子どもに害があるのではないということです。

多くの子どもは、親の関わり方次第で、親の離婚という悲哀の体験をプラスに変えていきます。

離婚という出来事の中で親が子どもを置き去りにせず、子どもの気持ちに共感していく姿勢を見せていくように心がけましょう。

同居親のできること

例)

・親の離婚をタブー視せず、いつでも疑問を口にできるようにする
・環境に過剰適応していないかどうか、細やかに観察する
・仕事や家事などの「やらなければならないこと」を横において、子どもとの時間を多めにとってあげる
・子どもと別居親の交流を悪意により妨げない(悪口を言わない)

別居親にできること

例)

・子どもが問題行動を起こしても、同居親のしつけが悪いなどの相手の責任にしない。
・子どもがお金の心配をしなくて済むよう、養育費をきちんと支払う
・面会交流時には、子どもが頑張っていることなどをじっくり聞いてあげる

夫婦や親子の落ち着きどころは千差万別です。

「互いに必要としながら距離を置く」、そんな関係もありなのです。

まずは、子ども自身が、自分にとって最適な親との距離を見つけ出すまで、そっと見守ってあげたいですね。

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