離婚といった深刻な状況に陥らなかったとしても、「一度もけんかをしたことがない」という夫婦はいないのではないでしょうか。
そして、お子さんのいるご夫婦の「夫婦げんか」につきものなのが、「相手の悪口を子どもに言う」という行為です。
当センターでは、お子さんがおられるご夫婦が離婚される際に知っておいていただきたい情報(お子さんのメンタルケアや基本の離婚条件の取決め方等)を無料オンライン講座にてお知らせしております。該当の方は是非ご参加ください。
パパとママのための離婚講座
よくある悪口
妻の夫に対する悪口
お金をくれない
離婚業界でもっとも多いとも思われるパターンが「お金」に関する悪口です。
「お父さんはケチだから、みんなで遊びにいくお金もない。」
「お父さんのお給料が少ないから、うちは〇〇くんのほしいものを買ってあげられない。」
日々、このようなことを母親から吹き込まれた子どもは、きっと「お父さんってケチなんだ・・・。」、「お父さんって稼げないんだ・・・。」と考えるようになるでしょう。
また、別居後や離婚後によくあるのは、次のような悪口です。
「お父さんがお金をくれないから、習い事は続けられないかもしれない。」
「お父さんに見捨てられてしまったから、貧乏な生活になるよ。」
きっと、子どもは、これまでの生活を維持できなくなったのは父親一人のせいだと考え、父親のことを憎むでしょう。
関心がない
これもよくありますが、父親が仕事や付き合いに忙しい場合、家族への関わりが薄いことを指摘される場合があります。
「お父さんは、私たち家族に関心がないのよ。」
「お父さんは、〇〇ちゃんのことより仕事が大切なのよ。」
また、別居や離婚に際しては、以下のような悪口が考えられます。
「お父さんは私たちを捨てて出て行った。」
「お父さんは、私たちのことが嫌いだから、一人になりたいんだって。」
確かに、夫は妻のことが嫌いで、妻のことには関心がないかもしれません。
しかし、妻は、「わたしたち」という表現を使い、子どもも巻き込んだ言い方をしてしまいますので、子どもにしてみれば、お父さんは自分のことも嫌いだ、関心がないのだ、と感じてしまいがちです。
夫の妻に対する悪口
男を作って出て行った
妻が浮気をした場合、夫は大変許せない気持ちになります。
これまでの経験上、夫に不貞された妻より、妻に不貞された夫の方が怒りや憎しみが大きいような気がします。
そして、その怒りや憎しみを自分の中だけにはとどめておけず、それを子どもに伝えてしまったり、子どもの前で話題にしてけんかをしてしまうのです。
「おまえのお母さんは、よそに男を作って出て行ったんだ。」
「〇〇のママは、パパや〇〇より大切な人ができたから、もうおうちには帰ってこないよ。」
このように言われた子どもの気持ちはどうでしょうか。
一生、心に傷を負うのではないでしょうか。
家事ができない
家事ができないことに対する悪口もあります。
この類の悪口は、妻が家事ができるかできないかにかかわらず、夫の主観によります。
「ほんとママはいつも掃除ができないね。こんな埃だらけの家に住んでると病気になっちゃうね。」
「ママはいつも手抜き料理や買ってきた料理が多いね。子どもの健康とか気にしないのかな」
こういった悪口は、直接的ではなく、間接的に「ママは君のことを大事に思っていないよ」というメッセージになってしまいます。
子どもへの影響
嫌いになる
毎日のように、父親や母親の悪口を聞かされた子どもはどう考えるでしょうか。
既に子どもの年齢が大きく、外部からの情報や知識を使って判断できるのであれば、
「パパが言っていることはおかしい」
「パパの悪口を言うママの方がおかしい。」
と考えることができます。
しかし、多くの子どもたちは、接触時間が長い方の親の言うことに同調します。育ててもらっている親を疑うことをしないからです。その結果、「悪口」を「真実」として受け止め、悪口を言われている方の親を嫌いになるのです。
自己肯定感の低下
片方の親を嫌いになった子どもに次に起こるのが「自己肯定感」の低下です。というのも、子どもの半分は父親、もう半分は母親からできています。そのため、その半分を嫌いになったり、憎んだりすると、自ずと自分の半分を否定することになるのです。
ときに、自分も一緒になって悪口を言うことで、同居親との連帯感を強め、何だか元気を取り戻したように見える子どももいます。しかし、その元気や強がりは、長くは続きません。思春期や反抗期、いろいろな場面で子どもの成長に暗い影を落とします。
いじめ
自己肯定感の低い子どもが取りがちな思考は「どうせ私なんて」、です。そのため、友達からいじめられたり、誰かに不当に扱われたりしても、「やめて」と声を上げることができません。
どうせ私は〇〇だからいじめられても仕方がない、先生に言っても解決できない、と諦めてしまうのです。また、自己肯定感があまりに低いと、自分が不当に扱われていることにすら気が付かないことがあります。
異性関係の問題
親の離婚を経験した子どもの離婚率が高いというようなことを聞いたことがあると思います。
色々な原因が複雑に絡み合った結果だと思いますが、適切な男女関係を学べない、ということも理由の一つではないでしょうか。
一方の親がもう一方の親の悪口を言ったり、非難したり、ということが日常的に繰り広げられているとすると、その子どもが成長したとき、同じことをするのは間違いないでしょう。
悪口を言う心理
子どもにデメリットばかりの悪口。それなのに、どうして言ってしまうのでしょうか。
次は、その理由について考えてみたいと思います。
感情の爆発
腹の立つことがあったとき、怒りの気持ちを抑えきれず、ついつい近くにいる子どもを巻き込んでしまうことがあります。特に、その腹立たしいことがメールや電話で伝えられたとき、また、伝えた本人が姿を消してしまったとき、怒りの気持ちをぶちまける相手がいないことになります。
そこで、ついつい「お父さんは、どうしていつも〇〇なの!」とか、「ママは今日もまた家族よりも友達を優先させるんだって」などと言ってしまうのです。
子どもを自分に懐かせたい
親権や監護権を争っている場合はもちろんですが、そうでなかったとしても、子どもには自分に懐いてほしいという感情があります。
そもそも、「3人」というのは、いじめやいびつな力関係が発生しやすい人数だと言われています。
「父親-母親-子ども」という3人の三角関係も同様です。
特に、夫婦仲が悪い場合、父親と母親がそれぞれ子どもを自分の方に引き寄せようとするため、その手段として悪口が使われることになります。
さらに、親権や監護権を争っている場合、子どもが「ママ嫌い」、「パパ怖い」と言ってくれれば、大きな決め手となるのですから猶更です。
感情と理性を分けられない
大抵の場合、「子どもの前で親の悪口を言ってはいけない。」ということは理解していたりします。
しかし、頭では理解していても、気持ちが抑えられないという人がいます。
以前のブログでも触れましたが、「自己分化度」の低い人は、この傾向にあります。
自己分化度にご興味のある方は以下のコラムもご参考ください。
円満離婚に欠かせないたった一つの大切なこと
現状に不満な人
夫婦不和の状態ですので、夫婦のどちらにも不満はあると思います。
ただ、より不満が強かったり、現状を打破する力のない人が、悪口という手段を使って、自分を納得させようとするのです。
「誰からも自分の頑張りを認めてもらえない」、「自分はこんなにひどい目に合っているのに、どうして子どもたちは相手に懐こうとするのか」といった心情で、悪口を重ねてしまいます。
子どもを巻き込まない方法
それでは、どうすれば、子どもへの悪口の吹き込みを止めることができるのでしょうか。
黙って聞いてくれる相手を持つ
子どもの代わりに、悪口や不満を黙って聞き続けてくれる人を探すことが大切です。
自己分化度の低い人が「憎い妻」、「嫌いな夫」への感情を子どもに隠すのはとても難しかったりします。
そのため、その隠しきれない思いを誰かに聞いてもらい、すっきりした状態が継続していれば、子どもへの悪口の吹き込みも減っていくでしょう。
自分が幸せになる
現状に満足できなかったり、不満が多い人ほど、人のことを悪くいったり、それを身近な人と共有しようとしてしまいます。そのため、その人自身が幸せになり、満足のいく人生を送れていることがとても大切です。
自分に置き換えて考えてみる
これは、とても原始的ですが、何事も、自分のこととして考えられなければ、正しい判断はできません。例えば、悪口を言われる親の立場になってみるのです。
自分の手の届かないところで、間違ったことを子どもに吹き込まれているとします。そして、いつその誤解を解く機会があるかもわからず、子どもに嫌われていくことを想像すると、居ても立っても居られない心境になるのではないでしょうか。
また、子どもの立場になってみて、自分の両親が仲が悪く、お互いの悪口を自分に言われたとするとどうかでしょうか。
「やっぱり、親は仲良くしてほしい。」「せめて、悪口くらいは聞かせないでほしい。」という気持ちになるのではないでしょうか。
まとめ
離婚に関係する仕事をしていると、この手の問題がとても多かったりします。悪口を言っている方は、その罪の重さに気付かず、自分の方が被害者であるとの主張に終始します。また、悪口を言われている方は、「子どもに悪口を言う」という行為にのみ焦点を当て、片親阻害だ、洗脳だと相手を非難します。
残念ながら、自己分化度の低い悪口親に「相手の悪口を言うのは子どものためにならない。」と気付かせるのは難しいと言わざるを得ません。
そのため、悪口を言われている方の親の工夫や理解で、「悪口を言わないくてもいい状態」を作り出すほかないのではないか、最近はそんな風に思ってしまいます。
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