みなさん公証役場や公証人と言えば、どんな場所や人を想像するでしょうか。今回は、一般の方にとって、裁判所と同じくらい馴染みのない公証役場や公証人について、お伝えしたいと思います。
ご自身で離婚公正証書を作成される方は是非参考にしてください。
公正証書作成についてはこちらも参考にしてください。
離婚公正証書を自分で作成する人が知っておくべき「作成の全体像」
公証役場とは
公証役場はどこにある?
公証役場は全国津々浦々にあります。ある程度都会に住んでいる方であれば、ご自宅から1時間以内の場所に一か所は公証役場があるでしょう。23区内にお住まいの方であれば、30分圏内にいくつか公証役場があるかもしれません。家庭裁判所の本庁や支部を合わせた数よりも多いこと間違いなしです。
ご自宅付近の公証役場はこちらから調べられます。
公証役場は何をするところ?
公証役場は、遺言や任意後見契約、離婚などの公正証書の作成,私文書や会社等の定款の認証,確定日付の付与など,公証業務を行う公的機関(法務省・法務局所管)です。弁護士事務所と大きく違うところは、「公正・中立」の立場にあるということです。
例えば、離婚公正証書を作成するにしても、妻もしくは夫のどちらかの味方をするということはありません。
公証役場の実態
「公正・中立」な公的機関と聞くと、裁判所や市役所のようなものを想像するかもしれません。しかし、ひとつひとつの公証役場は、もうすこしこじんまりとしていて、会社の支店のようなイメージです。例えば、都会の公証役場は、大抵、ビルの一室にあります。一棟のビルを構えているわけではありません。
また、各公証役場は独立採算制を取っています。そのため、どこの公証役場で働くかによって、公証人やその他の職員の方のお給料も変わってくるようです。
公証人とは
公証人って公務員?
公証役場の管轄は法務省です。そのため、公証人の身分も公務員かと思いがちですが、そうではありません。公証人の身分は法務大臣が任命する実質的意義の公務員とされていて、厳密にいうと公務員とは違う扱いになります。
公証人ってどんな人がなるの?
公証人になるには、試験があります。また、一定の資格(司法試験を合格後、30年以上の実務経験を有する裁判官、検察官、弁護士など)を有する人は、特例措置として、試験を受けずとも公証人になることができます。
多くの公証人は、定年退職後の判事、検察官、法務省職員のようです。公証人は70歳が定年ですので、各自の職場を定年退職した後、70歳までの数年間を公証人として勤めるというパターンが多いので、大抵、公証人は年配者です。
公証役場で離婚公正証書を作成する際の注意
公証役場ごとに違うことが多い
仕事柄、何か所もの公証役場に出向いていますが、公的機関とは思えないくらいの違いがあります。
添付書類
公正証書を作成する際に義務付けられる添付資料に違いがあります。同じような内容の公正証書であっても、一方の公証人は不動産登記簿謄本を添付してくださいと言い、もう一方の公証人は必要ないと言います。
万が一のことを考えて、万全を期すために財産の名義確認を徹底するのか、利用者の利便性も考え、臨機応変に対応するのか、公証人の姿勢や方針が反映されているように思います。
公正証書の言い回し
細かい言い回しや文章の書き方も公証人によって好みがあります。行政書士というのは、大抵使いなれた公証役場があり、そこの公証人の特徴は掴んでいたりします。しかし、たまに違う公証役場に行ってみると、いつものやり方や書き方を細かく修正されることがあります。正解、不正解というより、公証人の「好み」や「考え方」によるのだと思います。
代理人を立てることの可否
一番みなさんに影響が大きいと思われる「違い」は、代理人を立てることの可否です。
一番の基本スタイルは、夫婦が揃って公証役場に出向き、公正証書を作成することです。この基本スタイルであれば、もちろん何も問題はありません。
また、既に別居していて、一方は遠方にいるという可能性もあります。また、夫婦が顔を合わせたくないということもあります。そのような場合、一方は本人が、もう一方は代理人を立てることで問題を解消することができます。ここまでは、大抵の公証役場が代理を許可してくれます。
しかし、夫婦双方が代理人を立てるとなると、少し話が変わってきます。例えば、夫は仕事で平日の日中は時間がない、妻は未就園児を2人抱えている、というような場合があります。仕事はもちろんのこと、未就園児二人を抱えたママにとっても、公証役場は結構ハードルが高かったりします。「そんな場所には連れていけないし、2人を託児所に預ければ、また余計にお金がかかるし・・。」ということになってしまいます。
そんな場合、夫婦双方が代理人を立て、代理人2人が公証役場で夫婦に変わって手続きをすることができます。しかし、公証役場の中には、「二人とも代理人っていうのはちょっと・・。」と難色を示すところがあります。
公証人は離婚が専門とは限らない
先ほど書きましたように、公証人は一定の試験を受けていたり、法曹界のOBだったりします。そのため、法律的な知識に詳しいことは間違いありません。しかし、判事でも検察官でも、得意分野があります。長年にわたって刑事事件を担当していた判事は、やはり刑事事件が専門で、離婚や慰謝料などの分野にはあまり詳しくなかったりします。
もちろん、公証人が間違った公正証書を作るということは考えられませんが、夫婦が意図したこととは違う内容の公正証書ができあがってしまうということはあり得ます。
法律以外のことはアドバイスしてくれない
例えば、養育費の支払い方について、一括払いと定めたとします。普通、養育費には所得税がかかりません。しかし、一括で支払われる場合、金額にもよりますが、贈与税の支払いが必要になる場合があります。そんなときは、財産分与の一部に組み込むといったやり方で、贈与税の支払いを避けることが考えられます。
しかし、公証人は、税金の専門家ではありません。良心的な公証人であれば、「税金上の問題がないか、調べてみられてはどうですか?」くらいのアドバイスはくれるかもしれませんが、積極的に節税に協力してくれるわけではありません。
まとめ
ご自身で離婚公正証書を作成する場合、「自宅から近い場所」にこだわらず、2,3か所の公証役場を試してみるのもいいかもしれません。一般の方にとって、そうそうお世話になることはない公証役場ですが、離婚公正証書の作成は人生の一大事です。信頼できて、親切にアドバイスをしてくれる公証人に作成してもらいものです。
弊社では、離婚公正証書の作成も行っております。専門家に依頼して間違いのない離婚公正証書を作成されたい方は、ぜひご連絡ください。