円満離婚

円満離婚のための財産分与のポイント

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財産分与

あまりもめずに円満に(穏便に)離婚したいという方にとって、財産分与は難関だったりします。なぜなら、養育費や面会交流は「子どもの幸せ」という視点で、同じ方向を向いて話し合う余地がありますが、財産分与は、純粋に金額について協議しなければいけないので、対立しがちだからです。

以下では、もめないための財産分与のコツをお伝えします。

財産分与でもめないための下準備

財産分与の意味を理解する

当たり前のようで大切なのが、財産分与の法的意味合いを正しく理解した上で協議を行うことです。そうすることで、不要な遠慮や過度な要求が原因で協議が紛糾することを避けることができます。

夫婦で協力して得た財産が対象

財産分与は、夫婦が婚姻期間中に働いて得たお金やそのお金で買ったものなどが対象になるわけですが、親の相続や生前贈与、独新字体の預貯金などは対象になりません。つまりは、「夫婦で協力して得た」ことが必要です。

自分が働けたのは相手のおかげ

妻が家庭を守っていたからこそ夫が外で働けたと考えますので、夫の名義の通帳に入っている夫の給料も夫婦の共有財産ということになります。

ついつい、「自分が大変な思いをして働いたお金を半分取られるなんてとんでもない」と思ってしまいがちですが、そのメンタリティがもめるもとです。

逆に、「私が稼いだわけではないから、半分欲しいというのは強欲かしら」と遠慮をする必要もありません。

半分以上を求めるのは簡単ではない

自分の方が将来の不安もあるし、子育てという負荷もかかる。そのため、半分以上の財産分与を求めたいと主張する妻がいます。しかし、夫婦の共有財産は、お互いの頑張りによって得られたものであって、そう簡単に多くもらえるものではありません。

分与対象の財産を確定させる

どの時点での財産を対象とするのか合意する

離婚時に分与の対象となる財産は、婚姻から別居(別居せずに離婚する場合は離婚)までに夫婦で得た金銭やその金銭で購入したものです。

しかし、夫婦の不和による別居をいつにするのか、もしくは同居のまま離婚する場合はどの時点の財産を基準にするのか、二人で話し合って決めておきましょう。

財産目録表を作成する

財産分与の対象となる財産は、最初の段階で明確にしておきましょう。後から「これもあった」「あれもあるのでは」と出てきてしまっては、せっかく決めた分与が不平等になったしまったり、「後出しじゃんけんで色々と請求される」といった感覚を持たれてしまうことがあるからです。

まずは、財産目録表を作成し、抜けがないかどうか、夫婦でしっかりと確認しましょう。

疑問は解消する

財産の裏付け資料を求める

財産目録表を作成し、お互いの財産の内容を把握したところで、裏付け(証拠)となる資料を求めるかどうか、といった問題があります。婚姻生活中からお互いの財産をしっかり把握できていれば問題はないのですが、大概はそうではなく、相手が開示した財産額に「本当かな」と疑問をもつはずです。

裏付け資料とは

例えば、預貯金であれば、該当時期の残高が記載されている通帳が裏付け資料になりますし、株式であれば、証券会社が発行している取引履歴(取引明細)などが証拠となります。

また、結婚生活の中で相手の収入を知らされていなかった人は、源泉徴収票や給与明細を見せてもらうことで、相手の財産の金額が妥当かどうかや、通帳の記帳との関連性を見ることができます。

さらには、収入だけが知りたいのであれば、源泉で足りますが、給与明細を見ることで、持ち株や財形貯蓄の有無も把握することができます。

後悔するくらいなら資料を求めましょう

裁判所の調停や裁判となれば、こういった資料を提出することになりますが、裁判所外の協議であれば、「資料を求めるか、求めないか」という選択をすることになります。

「円満離婚」を目指すのであれば、「資料を求めたら信用していないと思われそうだから、やめておこう」と考えがちですが、実はそうではありません。なぜなら、本当は疑わしいと思っているのに、「相手を怒らせたくないから」という理由で資料を求めないと、もやもやが残ったり、後々まで後悔することになりかねないからです。

そのため、基本的には、財産目録表に記載されている財産については、裏付け資料を求めた上で協議を進めましょう。

財産内容に対する疑問

相手が開示した財産を見て、「もっとあるはずでは?」、「〇〇のお金はどこに入っているの?」などと疑問に思うことがあれば、しっかりと指摘しましょう。

裏付け資料と同様に、この点についても「相手の開示した内容に文句を言ったら、もめてしまうのでは」と不安になるかもしれません。

もちろん、「多少の疑問はあるけれど、あまりうるさく言っても仕方がない」と譲歩できる程度であればいいのですが、ずっともやもやするのであれば、しっかりと疑問を解消し、協議を進めることをお勧めします。

なぜなら、突き詰めて議論をすると、あったはずと思っていたお金が家族のために使用されていたことが分かり、お互いに納得できることも少なくないからです。そのためにも、「もっとあるはず」という指摘ではなく、「〇〇銀行の〇〇支店の口座に入っていた〇〇のお金はどうなったのですか」、「〇〇の際にもらったお金はどこに入っているのですか」と言った具合に具体的に尋ねるのがポイントです。

財産分与でもめないための話合いのポイント

下準備ができたら、次は実際に分与の金額を決めていく話合いに入っていきます。以下では、その際のポイントをお伝えします。

2分の1の金額を把握する

財産分与の原則は、「2分の1」ルールにのっとって、半分ずつ取得することです。実際には、2分の1にこだわる必要はなく、双方が合意すれば、様々な分与方法があり得ますが、まずは、2分の1の金額を双方が理解しておくことをお勧めします。

なぜなら、「裁判所に行けば、こうなる」という基準を知っておくことで、合意しようとしているその金額がどの程度有利(不利)なものなのか、判断がつくからです。

例えば、離婚を渋っている相手に対して「財産分与の金額を上乗せするから離婚してほしい」と交渉するとして、最初から上乗せ金額だけを提示したのでは、どの程度上乗せしているかが理解されず、「そんな金額では生活できない」と反発される危険性があります。

扶養的財産分与の要否の検討

通常の離婚であれば、清算的財産分与のみですが、扶養的財産分与についても決めることがあります。以下では、扶養的財産分与の決め方についてお伝えします。

扶養的財産分与が有効なケース

例えば、パート(もしくは無職)の妻に対して、夫が離婚を求めるような場合です。妻にしてみれば、突然離婚を切り出されても、離婚後の生活の糧がないので、離婚に踏み切ることができません。また、婚姻費用との兼ね合いから言っても、2分の1の財産分与のみで即座に離婚に応じるメリットはありません。

こういったケースでは、扶養的財産分与を協議することで、妻の離婚後の生活に対する不安を和らげることが可能です。

扶養的財産分与の期間と金額の目安

扶養的財産分与は、「〇年〇月までの間、1か月〇万円を支払う」といった期限付きの継続給付の形で決めることになりますが、どのくらいの期間、いくら支払うのが妥当なのでしょうか。

この点については、あくまでケースによるので決まったルールはありません。例えば、もらう側が「2年後には子どもが小学校に入るので、そうなれば勤務の時間も増やせる。それまでは扶養的財産分与を欲しい」と主張する場合もあるでしょうし、支払う側が、「〇年間は扶養的財産分与を支払うので、その間に仕事を探してほしい」と主張する場合もあるかと思います。

また、金額についても、現在渡している生活費を目安にすることもあれば、婚姻費用を基準にすることもあります。

いずれにしても、もめずに交渉するためには、主張の裏には根拠のあるストーリーが必要です。

慰謝料的財産分与の要否の検討

不貞やDVといった明確な不法行為があったとしても、慰謝料として取り決めるのではなく、慰謝料的財産分与として、取り決める場合があります。どのような場合に慰謝料的財産分与が有効であるか、以下でご紹介します。

相手を怒らせたくない場合

明確に不貞やDVといった不法行為があったとしても、「慰謝料」という言葉を使って請求すると、プライドの高い相手を怒らせてしまうのではないか、と心配になる方もいます。そんな場合は、表面的には不貞やDV、慰謝料といった言葉が出てこないけれど、金額的には財産分与に慰謝料が上乗せされた金額で合意することも可能です。

明確な慰謝料事由がない場合

「日々のモラハラでうつ病を発症し、仕事も辞めざるを得なかった」等、DVや不貞といった法定離婚事由にはならないけれど、何かの形で償ってほしいと思うことがあった場合、慰謝料的財産分与が適しています。

また、不貞を疑っているけれど証拠がない、相手としても心情的には認めているけれど、証拠がない以上、公には認められない、といったような場合にも慰謝料的財産分与が有効です。

慰謝料という言葉にこだわりがない

請求する側に「慰謝料」という言葉にこだわりがなく、名目はどうあれ、最終的なトータル金額に注目して協議するのであれば、財産分与の上乗せとして話を進める方が穏便に進められる場合があります。また、財産分与とは別に「解決金」という名目を使用する場合もあります。

円満な財産分与は「2分の1ルールを基本に」

ここまで、円満に財産分与するための下準備や実際の協議のポイントについてお伝えしてきましたが、キーワードは「2分の1ルール」です。

夫婦の事情により、扶養的財産分与や2分の1以上の上乗せの分与もあっていいのですが、まずは基本の2分の1の金額を把握し、その上で交渉すること、そして交渉の際は根拠のある数字で交渉することがポイントです。

また、夫婦二人では話合いができない、でも弁護士に依頼したり、裁判所で争うことはしたくないという方は、民間調停の制度であるADRのご利用が最適です。

ADRとその他の方法との比較については、以下のコラムの後半をお読みいただければと思います。

円満離婚したい人のための協議のポイント

また、財産分与等、離婚協議に関するご相談やADRのお申込みについては、以下のページをご参照ください。

離婚カウンセリング
ADRのお申込みページ

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