離婚カウンセリング

夫婦(カップル)カウンセリングのいろは

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離婚テラスでは、離婚相談を主な内容とする離婚カウンセリングのほかに、夫婦(カップル)カウンセリングも行っています。配偶者から離婚を切り出された人が修復を求めて相談に来られたり、その結果、夫婦カウンセリングに至ることもあります。ただ、離婚カウンセリングに比べ、認知度も低いことから「私たち夫婦でも効果があるでしょうか。」とか、「どんな夫婦に向いているのですか。」といった質問をよく受けます。今回は、そんな質問にお応えし、ネットで「夫婦カウンセリング」と検索すれば出てくるようなことではなく、離婚テラスの夫婦カウンセリングを通して実感したことをお伝えしたいと思います。

夫婦カウンセリングとは

夫婦カウンセリングとは、夫婦が夫婦間の問題解決のためにカウンセリングを受けることを言います。そのため、必ずしも関係修復を目指しているわけでもありませんし、どちらかが離婚をしたがっていると成立しないわけでもありません。一方が離婚したい、もう一方が離婚したくないと考えているときでも、「お互いの考えていることを理解し合いたい。」という共通の目的のために夫婦カウンセリングを受けることができます。

夫婦カウンセリングの効果を上げるための約束

それぞれの夫婦によって、カウンセリングの目的や設定が異なりますが、すべての夫婦カウンセリングで私がみなさんにお願いしていることをご紹介します。

相手の話を最後まで聞く

大変単純なことですが、カウンセラーや相手が話しているとき、途中で口をはさんだり、話し終わらないうちに被せるように話し始めないことが大切です。このルールを伝えると、「子どもじゃないんだからバカにしないでほしい。」と不満げな様子を見せる人もいます。しかし、話合いの基本姿勢に関わる重要な部分なので、必ず説明するようにしています。

感情的になったり、気持ちが高ぶって冷静な判断ができなくなると、夫婦カウンセリングはうまくいきません。みなさんは、「朝まで生テレビ」という番組を知っていますか?政治的なことを中心に、政治家や評論家が議論を戦わせるのですが、必ずと言っていいほど、最後まで相手の話を聞かず、自分の話を始める人がいます。ああいう人たちの目的は、自分の主張を印象付けたり、相手を言い負かすことだったりしますので、自分の意見を相手の語尾に被せるように主張することが効果的です。また、テレビ的にも盛り上がるのでしょう。しかし、夫婦カウンセリングは相手を打ち負かすためではなく、お互いに理解を深めるためのものですので、あくまで冷静に話をすることが大切です。

みなさんも、夫婦で話し合う際に是非試してみてください。特に、カッとなりやすいと自覚がある人は、最後まで話を聞くことを頭に置いておけば、威圧的になったり、感情的にならずに話合いができます。会話の雰囲気は語調だけでなく、テンポにも左右されることを実感できると思います。

相手の気持ちを分かろうとする

もう一つの離婚カウンセリングの基本ルールは、相手の気持ちを分かろうとすることです。夫婦カウンセリングの目的は様々ですが、お互いが分かり合う、理解し合うという基本的な課題を解決できていないと、その他の課題に取り組んでも効果は上がりません。そのため、互いに理解し合うことがとても大切なのですが、その際、「自分の気持ちを分かってもらおう」とするのではなく、「相手の気持ちを理解したい。」というスタンスで臨むことが重要になってきます。

自分のことを分かってほしいと思っている人がどんな状態でカウンセリングに臨んでいるか、カウンセラーという客観的な立場に立っていると、とてもよく見えることがあります。例えば、相手が話をしている間、「次、自分は何を言おうか」とばかり考えてしまったり、相手の発言を受け止めるのではなく、自分の言い分や立場に置き換えて言い返してしまったりします。そういう人の話し方には特徴があり、「あなたはそういうけど、」とか「でも」とか、逆接の接続詞を使いがちです。

そのため、お互いが「自分の気持ちを分かってほしい。」と思って夫婦カウンセリングに臨んでいる場合、結局どちらの気持ちも理解されない結果になってしまいます。それぞれが、自分の気持ちを主張しますが、相手も同じく自分の主張にばかり注目していますので、相手の話を聞き入れる隙間がないのです。

逆に、お互いが「相手の気持ちを理解しよう」というスタンスで臨んでいる場合、それぞれの言い分が相手にしっかり浸透し、結果として自分は相手の気持ちが分かるし、相手には自分の気持ちが分かってもらえるという状況になります。

夫婦カウンセリングの効果が上がらない夫婦

残念ながら、すべての夫婦が夫婦カウンセリングに向いていたり、効果をあげられるわけではありません。離婚テラスでは、次のような状況が見られるとき、夫婦カウンセリングをお断りしたり、カウンセリング効果が上がらないかもしれないと伝えたりしています。

夫婦カウンセリングに求める効果が違う

先ほど書きましたように、離婚を告げられたことがきっかけで夫婦カウンセリングに至るケースもありますので、一方は離婚したい、もう一方は関係を修復したいと考えていることがあります。そのため、往々にして、夫婦関係修復についての方向性が違っていることがあります。そのこと自体は全く問題ではなく、何か共通の目的があれば、夫婦カウンセリングは成り立ちます。

例えば、一方は、「離婚に踏み切るためにも、これまでの誤解を全部解いておきたい」と考え、もう一方は、「関係を修復するために、誤解を解きたい。」と考えているとします。夫婦関係の修復に関しては、反対の意向を持っている夫婦ですが、「誤解を解く」という共通の目的をもってカウンセリングを行うことができます。

しかし、夫婦の両方が関係修復を願っていたとしても、一方が「カウンセリングで相手をやり込めたい」と考えているのに対し、もう一方が「カウンセリングによって夫婦の会話量を増やしたい。」と考えていたとします。そうすると、夫婦カウンセリングの場でどのようなことが起こるかというと、やりこめたい一方は、ひたすら自分の主張や相手の非難を繰り返します。会話量を増やしたい一方は、一生懸命相手に問い掛けたり、語り掛けたりします。そして、最後まで平行線で進み、双方が目的を達しないまま疲労だけが残る、という結果になってしまいます。

このような問題を解決するため、離婚テラスでは、必ずカウンセリングの最初に扱いたい話題や解決したい問題について夫婦それぞれから意見を聞きます。そして、もし食い違いがあるようであれば、時間を区切ったり、一回目は夫のしたい話題を、二回目は妻の取り扱いたい問題を、といった具合に複数の話題を順番に扱うようにしています。

別の目的でカウンセリングに参加している

離婚テラスの場合、どうしても「離婚」がからんできますので、カウンセリングを離婚の材料として使う方がおられます。例えば、離婚を有利に進めるために、「夫婦関係改善のため、カウンセリングも受けたが無理だった」という事実を作りたいといった場合です。

このような場合、ただ単にカウンセリングをしたという事実だけが欲しいわけですから、もちろん効果はありません。聞かれるがままに答えたり、適当に応答して時間を過ごすだけで何かが変わる訳ではありません。

カウンセリングのルールを守れないとき

何らかの事情でカウンセリングのルールを守れないときも、効果はあまり期待できません。例えば、先ほどの「最後まで話を聞く」といったカウンセリング中のルールもそうですが、カウンセリング外で起こるルール違反もあります。例えば、カウンセリング中に話した内容を指摘して「どうしてあんなことを言ったんだ。」と相手を恫喝したりする人がいます。そういう事態になれば、カウンセリングは安全で自由な場ではなくなってしまいます。また、事前に「〇〇は絶対に言わないで」といった制限をかけることも好ましくありません。さらには、カウンセリング中に出た話題や起こった出来事を第三者に言いふらしたりすることもルール違反になります。

それをすることによって、カウンセリングの場が自由で安全な場でなくなる行為については、すべてルール違反であると考えてもらっていいと思います。

体調が悪いとき

体の具合や精神状態がいつもと違う場合、夫婦カウンセリングを行っても効果が上がらないことがあります。例えば、うつ症状が悪化していて、何を言われても悲観してしまうとか、そもそもしんどくて相手の言うことを聞いていられないといった場合が考えられます。また、頭痛に悩まされているとか、どこかの痒みがひどくて話に集中できない、といった場合も効果が上がりにくいことがあります。ただ、夫婦の問題を抱えていたり、慣れない夫婦カウンセリングを控えているといった状況下で、心身ともに万全の状態で臨める方もそう多くはないのも事実です。そのため、万全ではなくても、少なくともある程度集中して話合いができる体調が必要だと考えています。

夫婦カウンセリングの効果

夫婦カウンセリングにはどんな効果があるのか。これもよく聞かれる質問です。次は、少し事例を紹介したいと思います(個人が特定されないよう、変更を加えています。)。

冷静に話ができる 

夫婦カウンセリングを終えたご夫婦から聞かれる感想として一番多いのが、「冷静に話ができた」という感想です。

Aさん(妻)

Aさんは、夫の暴言に耐えかね、離婚したいと考えていました。ただ、小さい子どもが3人もいるため、経済的なことを考えると、もう少し我慢した方がいいのではないかとの迷いもありました。Aさんとしては、夫が自分の話を聞いてくれないことや、何か大切なことを話し合いたいと思っても、一方的に怒鳴られたり茶化されたりすることに、一番、夫婦としての「やっていけなさ」を感じていました。

そこで、担当から夫婦カウンセリングを提案したところ、Aさんのご主人も了解し、実施の運びとなりました。

Aさんのご主人には、「相手の話を最後まで聞く」というルールを徹底してもらいました。途中、何度かAさんが話をしている途中で自分が話そうとする場面が見られましたが、「おっと、だめでしたね。」と自分で気づくことができていました。

夫婦カウンセリングの結果、夫婦双方から聞かれたのは、「第三者が間に入るだけで、こんなにも冷静に話し合いができるとは思わなかった。」という感想でした。また、ご主人からは「いつも、どれだけ自分が妻の話を聞いていないか、蔑ろにしてきたか、気付きました。」との言葉も聞かれました。

相手の気持ちが理解できる

生活を共にする夫婦であっても、お互いの気持ちが理解できているとは限りません。関係が近すぎるからこそ、「言わなくても分かるだろう」とか「何でも理解できているはず」といった思い込みを見直す必要があります。

Bさん(妻)

Bさん夫婦は不妊治療をきっかけとして夫婦不和に発展していました。Bさんは、ついに夫から離婚を告げられてしまい、ショックを受けて相談に来られました。Bさんによると、不妊治療を始めた当初、ご主人も治療に協力的だったといいます。しかし、なかなかうまく妊娠できない中、夫婦関係が悪化し、最後には不妊治療の話題さえできなくなってしまったということでした。そのため、Bさんは、離婚の話を進める前に、不妊治療によって悪化した夫婦関係を何とかしたいと希望していました。

ご主人もカウンセリングに同意されたため、夫婦カウンセリングを実施しました。カウンセリングでは、不妊治療に対するそれぞれの気持ちが語られました。終了後、ご主人からは、「不妊治療について、こんなにも自然に照れることなく話せるとは思わなかった。夫婦だけだと、逆に気まずかったり、無視して済ませばいいという甘い考えがあった。不妊治療に対する自分の気持ちを語ることで、自分自身にも気付きがあった。また、妻の辛い立場も理解できた」という感想が聞かれました。

夫婦カウンセリングの効果は十人十色

そのほかにも、夫婦だけでは気付けなかった、夫婦のコミュニケーションの問題パターンを理解できたり、曖昧模糊としていた夫婦の問題が具体化できたりと、いろいろな気付きや効果があります。夫婦カウンセリングで取り扱う問題やその成果は、十人十色と言っていいと思います。

「夫婦だから言わなくても分かるはず」、「夫婦だから何でも腹を割って話せるはず」といった固定観念を捨て、夫婦関係が完全に悪化する前に、一度夫婦カウンセリングを受けてみられてはどうでしょうか。

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