離婚と子ども

親の離婚で子どもの氏(名字)を変えるべきか否か

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今回は、離婚する夫婦に未成年の子どもがいた場合の「子どもの氏(名字)」についてです。

一番多いと思われる、「婚姻時に夫の氏に変更した妻が、子どもの親権者となり離婚するケース」についてお伝えします。

子どもの氏を変更すべきか

離婚相談の際、「子どもの名字は変えない方がいいですか?」という質問をよくいただきます。

妻にしてみれば、

  • 別れる夫と同じ名字は名乗りたくない
  • 婚姻前の氏に戻って名実ともに関係を切りたい

といった気持ちがあったりします。

一方で、子どものことを考えると、

  • 周囲に陰口を言われないように
  • 子どもが戸惑わないように
  • 変化は極力少なくしてあげたい

といった理由で、名字はそのままの方がいいのではという迷いも生じます。

子どもの名字をどうするか、この問いに決まった答えはありませんが、その答えを出すために参考になる「視点」をお伝えしていきたいと思います。

氏(名字)を変更しない方がいいパターン

再婚の可能性が高い

妻の年齢がまだまだ若い、もしくは既に相手がいるなど、再婚の可能性が十分にある場合、できれば氏(名字)の変更は控えた方がいいでしょう。

というのも、子どもにしてみれば、親の離婚とその後の再婚により名字が2度変わることになってしまうからです。

子どもの年齢が高い場合

名前はそれぞれの個人にとって大切で愛着のあるものです。もちろん、子どもにもその感覚があります。

そのため、子どもの年齢が大きい場合、長年使ってきた名字を変えることで混乱したり、喪失感を感じないよう、婚姻時の名字を継続使用する方がいいかもしれません。

学期途中の離婚の場合

お子さんがいるご夫婦の離婚といえば、年度末や夏休みなど、学校や幼稚園がお休みの時期を選ぶ方が多いと思います。

というのも、離婚による諸々の変化を周囲に悟られないようにとか、子どもが落ち着いて環境の変化に適応できるように、といった配慮をするからです。

しかし、何らかの事情で学期途中で離婚となった場合、名字を変更してしまうと、子どもはいろいろなことを周囲に説明をしなければならなくなります。また、友達から陰口を言われるかもしれません。

そのため、お子さんへの負担を少なくするためにも、学期途中での離婚の場合、名字の変更は避けた方がいいでしょう。

別居親とのつながりを求める場合

夫婦が離婚しても、子どもとそれぞれの親の関係は切れません。しかし、日本では、離婚後は単独親権になるので、親権者にならなかった方の親(別居親)との関係が希薄になりがちです。

子どもは、一方の親と一緒に暮らせなくなったことを寂しく感じたり、ときには、「見捨てられた」と考えてしまうこともあります。

名字が変わってしまうと、余計に「断絶感」が増し、別居親とつながりが感じられなくなってしまいます。そのため、子どもが別居親とのつながりを求めている場合、名字は変えない方がいいでしょう。

また、別居親の立場からしても、自分と同じ名字の方が、子どもとのつながりが感じられたりします。

そのため、養育費の継続的な支払いという観点からも、名字を変えない方がいいという考え方もあります。

氏(名字)を変更してもいいパターン

進学と同時に離婚する場合

学年の変わり目というだけでなく、幼稚園から小学校、小学校から中学校といった具合に進学と離婚の時期が重なる場合、名字を変更することによる子どもへの影響は小さくなります。

新しい環境に入るタイミングで離婚できるのであれば、名字の変更や家庭の事情を周囲に説明する負担は減少します。

子どもの年齢が低い場合

子どもがまだ小さいと、名字に対する愛着や習慣がまだないことがあります。特に、3歳未満の場合、覚えていないこともありますので、そんな場合は離婚の際に氏を変更しても、子どもへの影響は最小限に抑えることができます。

虐待などがあった場合

別居親から子どもへの虐待があったり、別居親から同居親へのDVを目撃していたなど、婚姻期間中に子どもが特につらい思いをしていた場合、気持ちの切り替えのために氏を変更するという方法もあります。

実際の手続き

次は、実際に離婚する際の手続について、「氏(名字)を変更する場合」と「氏(名字)を変更しない場合」とに分けて考えてみたいと思います。                    

氏(名字)を変更する場合

例:田中姓の両親をもつ田中千晶さんが山田五郎さんと結婚し、長男太郎くんが誕生。その後、妻である千晶さんが五郎君の親権者となって離婚。離婚後に旧姓に戻る場合

婚姻時の戸籍から出て新戸籍作成

婚姻時の戸籍から出た後、新戸籍を作るか、婚姻前の戸籍に戻るか、選択肢が2つあります。

ただ、初婚の方の場合、婚姻前の戸籍と言えば、両親の戸籍に戻ることになりますが、戸籍には、三世代は入れないことになっていますので、お子さんはその戸籍に入れないことになります。

そのため、一番多いと思われるのは、婚姻前の独身の氏(名字)に戻り、その名字で新しく戸籍を作るパターンです。

子の氏の変更

離婚後、子どもは自然と親権者の戸籍に入ると思われがちですが、氏(名字)が違うままでは、子どもは母の新しい戸籍に入ることができません。

そのため、まずは、家庭裁判所にて「子の氏の変更許可」という申立てをする必要があります。

申立方法や書式については最高裁判所のHPをご覧ください。

家裁に申し立てるとなると、何だか大変な感じがしますが、離婚で親が旧姓に戻った場合の子どもの氏の変更については、特に複雑なことはありません。

大体の家庭裁判所では、当日のうちに許可が出ますし、通常、認められないということはありません。

この家裁での手続きについても、行政の窓口で説明を聞くことができますので、離婚届をもらった際や提出する際に聞いてみてください。

子どもを入籍

子どもの氏が変更された後、ようやく親権者である母親の戸籍に入れることができます。

氏(名字)を変更しない場合

例:田中姓の両親をもつ田中千晶さんが山田五郎さんと結婚し、長男太郎くんが誕生。その後、妻である千晶さんが五郎君の親権者となって離婚。離婚後も婚姻時の氏を名乗る場合

離婚の際に称していた氏を称する届

離婚しても、婚姻中の氏を継続使用することができます。その場合、役所に「婚姻の際に称していた氏を称する届」という書類を提出することになります。

提出先は家裁でなく、戸籍もしくは居所のある役所です。

手続きは特に難しくありませんが、離婚後3か月以内に行う必要があります。

新戸籍の作成

同じ氏のままとはいえ、離婚後、別れた夫と同じ戸籍にいることはできません。

そのため、婚姻時と同じ氏(名字)で自分自身が筆頭者となる新しい戸籍を作ることになります。

子の氏の変更許可

妻が婚姻時の氏(名字)を使用する場合、一見すると、子どもは氏の変更をしなくても母の新戸籍に入ることできるように思われます。

しかし、戸籍上、父の「山田」と妻の「山田」は違う「山田」とみなされます。そのため、先ほどと同じく子の氏の変更請求を家裁の手続きにて行う必要があります。

子を母の新戸籍に入籍

父の「山田」から母の「山田」に変わってはじめて、子どもは母の新戸籍に入ることができます。

親の離婚の際の子どもの氏(名字)に関するQ&A

離婚しても子どもの名字を変えないでほしい、と要求することができるか

例えば、妻が親権者となる場合、親権を諦める夫としては、せめて名字くらいはそのままでいてほしいという気持ちがあったりします。

また、田舎の離婚の場合、夫婦の両親から「本家の跡取りがいなくなるので名字は変えないでほしい」と要求されたりもします。

基本的には、子どもの氏は親権者が決めますので、そのような要求を強制的に通すことはできません。

ただ、離婚条件の話合いの際、親権を譲る変わりに名字は変えないでほしいという協議をすることは考えられるでしょう。

離婚によって氏(名字)が変わっても、学校で婚姻時の名字を使うことはできるか

例えば、親の離婚によって子どもの氏(名字)が変わったとしても、学校では以前の氏を継続して使用することができるのでしょうか。

これについては、学校によって対応が異なりますが、ほとんどの学校では、「通称使用」という形で、親の婚姻中の氏の使用が認められているようです。

本来、離婚を周囲に隠したままの学校生活は、かえって子どもにとって負担となるものです。

そのため、離婚を周囲に隠すための「通称使用」はあまりお勧めではありませんが、いろんな意味での混乱を避けたいとか、制服に名前の刺繍が入っているからといった何等かの事情があるならば、お子さんが通う学校に問い合わせてみるといいでしょう。

妻に「旧姓に戻してほしい。」と要求をすることは可能か

できません。厳密に言うと、もちろん、要求することは可能ですが、妻がそれに応じず、婚姻時の氏を継続して使用することを希望した場合、それを強制的に阻止することはできません。

子どもが成人している場合はどうなるか

未成年の場合と大きくは異なりません。まず、成人した子どもが結婚して別の戸籍に入っている場合、親の氏の変更に影響を受けることはありません。

成人しているけれども未婚で両親の戸籍に残っている場合、未成年と同じ扱いとなります。

まとめ

両親の離婚は、お子さんにとってどんな影響があるのか、心配な方も多くいらっしゃることと思います。

そして、「氏(名字)の変更」は、目に見える形で子どもに影響を与えることになりますので、両親の事情のみではなく、子どもの視点も取り入れた決定をしていただければと思います。

また、今回は、親権者である妻と子どもが同姓になることを前提にお伝えしていますが、まれに、親権者である妻は旧姓に戻っても、子どもは元の氏のまま、という母子別姓を選択するという方法が有効な場合もあります。

離婚に際して、お子さんのことが「漠然」と心配・・・、そんな方はぜひ当センターの離婚カウンセリングをご利用いただければと思います。

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