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夫の借金を理由に離婚する場合の6つのポイント

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このコラムでは、夫の借金が理由で離婚する場合に考えておきたことを6つピックアップしてお伝えします。

まだ離婚を迷っている方はこちらをご参考ください。

借金夫との離婚を迷ったときの5つのヒント

借金を理由に離婚できるか

最初のポイントとして問題になるのが、そもそも借金が理由で離婚できるかどうかという点です。日本の法律では、代表的な離婚の方法として協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。以下ではそれぞれの方法について検討します。

また、第4の離婚の方法として、ADRによる調停を利用した離婚についてもお伝えします。

協議離婚

夫も離婚に合意すれば、その理由に関係なく離婚が成立します。つまり、夫の借金が離婚の直接的な理由であっても、双方が納得していれば問題ありません。

ただ、夫が「もう二度と借金をしない。もう一度チャンスが欲しい」などと言って離婚に合意しない場合、以下の調停離婚や裁判離婚を検討する必要があります。

調停離婚

家庭裁判所の離婚調停においても、基本的には協議離婚と同様、合意さえあれば理由の如何にかかわらず離婚が可能ですが、逆に、夫が同意しなければ強制的に離婚することはできません。

ただ、協議離婚と異なる点は、家庭裁判所が介在する点です。夫婦間の協議では合意しなかった夫が、裁判所という権威が間に入ることで、事の重大さを認識し、「事ここに至っては」ということで渋々離婚に応じてくれることもあります。

裁判離婚

裁判離婚では、法律で定められた離婚原因の存在が必要です。その中で借金があてはまり得るのは以下の2つです。

  • 悪意での遺棄
  • 婚姻を継続し難い重大な事由がある

例えば、働きもせずギャンブルに依存しているとか、生活費をいれないといった状況が考えられます。

また、借金の理由が浮気相手との遊興費である場合、借金が理由ではなく不貞行為が理由で離婚が可能です。

このように、借金がある場合に裁判離婚が可能かどうかはケースバイケースと言えますが、そもそも、裁判となれば弁護士に依頼する必要もあり、ハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。そんな場合は次にご紹介する「第4の離婚の方法」ADRをご参考ください。

ADR(民間調停・裁判外紛争解決手続き)による離婚

ADRは、民間の調停機関です。民間ではありますが、いわゆるADR法に基づき法務省が管轄していますので、安心感もあります。

先ほど、協議離婚・家裁での調停離婚・裁判離婚の3つを紹介しましたが、裁判離婚はもちろんのこと、家裁での調停離婚についても、「そこまで争いたい訳ではいんだけど」と二の足を踏まれる方が多いのではないでしょうか。

家裁を利用するとなれば、紛争性が高まり、また、長期化します。

ADRは、「夫婦では話し合いができない。でも、弁護士に依頼して裁判所で争いたい訳ではない」という方にぴったりの制度ですので、ぜひ以下のページもご参照ください。

ADRによる調停(民間調停)

夫の借金は財産分与でどう扱われるか

次に、離婚に際して財産分与が行われる際、夫の借金がどのように扱われるかについて説明します。財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を、公平に分けるものですが、この際、夫婦間で所有する資産だけでなく、負債(借金)も考慮されます。

夫の借金が婚姻前に発生したものや、遊興費のために使われたものである場合、通常、妻にはその返済義務はありません。

しかし、夫婦で共有する生活費や家のローン、教育費などに関連する借金は、財産分与の対象となります。そのため、預貯金や不動産など、何かプラスの共有財産がある場合、まずはその財産から借金を返済することになります。

そうした返済を行っても、なお借金が残る場合やそもそもプラスの財産がない場合、妻もその借金の一部を負担する可能性があります。

ただ、裁判所は財産分与において、夫婦間の経済力の差等を考慮しますので、離婚後の生活において妻が経済的に困窮することが予想される場合、負担割合が考慮されることもあります。

慰謝料の請求

夫の借金が原因で精神的苦痛を受けた場合、妻は慰謝料を請求することができる可能性があります。ただ、借金だけを理由に慰謝料請求が認められるケースは少なく、夫の借金問題が不貞行為やDV(ドメスティック・バイオレンス)といった他の重大な問題と結びついている場合が該当します。

しかし、夫が破産した場合、慰謝料の支払いは非常に難しくなります。破産手続きが進むと、夫の財産は債権者に分配されるため、妻が受け取るべき慰謝料も事実上回収が困難になることが多くなります。

養育費・婚姻費用

夫に借金がある場合でも、離婚後に養育費や婚姻費用を請求することは可能です。夫が多額の借金を抱えている場合でも、これらの費用の支払い義務は基本的に変わらないからです。

ただし、夫の経済状況が極端に悪化している場合、支払い能力が限られることが考えられます。もしくは、本来の年収であれば支払える金額であっても、借金癖がある人はすぐに浪費してしまう傾向にあります。

そのため、決められた養育費や婚姻費用が支払われなかったときの対策として、公正証書を作成しておくことや、離婚時に一括で養育費の支払いを受けることなどを検討しましょう。

特に、財産分与の対象に不動産がある場合など、その売却益の中から未来の養育費を一括して受け取ることで、子どものための大切な教育費を確保しておくことができたりします。

妻に返済義務はあるか

妻が夫の借金に対してどの程度の返済義務を負うかは、借金の性質や、妻がその借金にどのように関与しているかによって異なります。

例えば、妻が夫の借金の保証人(連帯保証人)になっている場合、夫が返済できない場合には、妻がその返済義務を負うことになります。

また、日常家事債務という概念もあります。日常家事債務とは、家庭生活を営むために必要な日用品の購入や生活費の支払いなど、夫婦が共同で負担するべき債務のことです。夫がこれに関連する借金をしている場合、妻もその返済義務を負う可能性があります(ただし、日常家事債務が夫の個人的な遊興費や浪費によるものである場合、妻にはその返済義務は生じません)。

さらに、夫の借金が子どもに引き継がれる可能性もあります。

夫が亡くなった場合、子どもは相続人として借金も相続することになりますが、相続放棄や限定承認といった手続きを行うことで、借金の相続を避けることができます。

相続放棄を行えば、子どもは夫の財産も借金もすべて放棄することができ、限定承認を行えば、相続する財産の範囲内で借金を返済することができます。

債務整理の検討

夫の借金が原因で離婚を考える前に、一度債務整理を検討することも有効な手段です。債務整理とは、借金の返済を見直し、返済計画を立て直す手続きのことを指します。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産などの方法があります。

まとめ

冒頭で、まだ離婚を迷っている方にお読みいただきたいコラムをご紹介しましたが、夫に借金があったからといって、すぐに離婚を決断できない人も多いのではないでしょうか。

そんな場合は、こうした離婚条件を検討する中で、将来の生活が見えてくることもあるのではないでしょうか。

「もう二度と借金をしない。今度した場合は〇〇の条件で離婚する」といった内容の公正証書を作った上で、夫婦関係を継続する方もいます。

お悩みの方はぜひお気軽にご相談いただければと思います。

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