小泉のつぶやき

<虎に翼>梅に学ぶ死後離婚という選択肢

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朝ドラ「虎に翼」に出てくる梅子が選択したと思われるのが「死後離婚」です。このコラムでは、死後離婚とはどんなものなのか、熟年離婚や卒婚との違いは何か、そんなことをお伝えしたいと思います。

夫婦生活が長くなってきたけど、自分の人生は本当にこれでいいのか

そんな悩みが頭をよぎって仕方がないとう方に読んでいただければと思います。

死後離婚(姻族関係終了届)

死後離婚というのは造語で、正しくは「姻族関係終了届」という手続きがあります。死亡した配偶者と離婚することはできないのですが、姻族関係終了届を提出すれば、配偶者の親族(姻族)との法的関係を断つことができます。以下で詳しく見ていきましょう。

扶養義務の消滅

民法では、直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務があるとされています。

姻族は直系血族ではありませんので、法律上の扶養義務はありませんが、特別な事情がある場合には、3親等内の親族間でも扶養義務を生じさせることができるとされています。

ですので、姻族関係が続いていると、扶養義務を課せられるおそれがあります。

この点、姻族関係終了届により関係が終了していれば、扶養義務が課せられることはありません

同居による互助義務の消滅

民法では、直系血族および同居の親族は、互いに助け合わなければならないとされています。

配偶者の死亡後も配偶者の親族と同居していると、法律上の互助義務関係が発生します。

同居を解消すれば、互助義務を解消できますが、事情により同居を解消できない場合には、姻族関係終了届によって、互助義務を消滅させることができます

その他

祭祀承継者を回避することもできますので、法事を段取りしたり、お墓を管理したりという責任からも逃れることができます。また、配偶者と同じお墓に入る必要もなくなります。

熟年離婚

熟年離婚に明確な基準はありませんが、一般的には「婚姻年数20年以上の夫婦の離婚」といわれています(厚生労働省の人口動態統計特殊報告でも、婚姻年数が20年未満と20年以上で区切られています。)。

子どもの成人や卒業など、子育てに一区切りついた時点で検討されることもありますし、役職定年や定年退職など、配偶者の収入状況の変化が離婚を決断させることもあります。

熟年離婚だからといって、通常の離婚と異なるわけではないのですが、婚姻期間が長いがゆえに、財産分与が複雑になっていることがあります。また、長年の恨みつらみが募り、離婚協議が困難であったり、年齢的に再出発に不安を抱きやすく、一方が離婚に応じてくれない場合もあります。

卒婚

卒婚の最大の特徴は、婚姻を継続している点です。シニアにさしかかる年代において、お互いの生活リズムや生活スタイルをすり合わせながら同居するのではなく、別々に住みながら、それぞれの人生を楽しむという生活スタイルです。

ですので、基本的には夫婦不和ではありません。夫は定年退職後、実家のある田舎で畑いじりをしながら余生を過ごしたい。一方、妻は友人が多い都会で趣味を充実させた生活がしたい。そんなとき、それぞれの希望を尊重し、別居をベースにしながらも、週末は一緒に過ごしたり、年に1回は一緒に旅行に行くなど、心地いい距離感を保つイメージです。

一方で、夫婦不和と円満の中間のような状況で、穏便に別居したという趣旨で卒婚を選ぶ夫婦もいます。

あなたの選択肢は?

ここで朝ドラ「虎に翼」に出てくる梅子さんの話を少しご紹介したいと思います。

梅子さんの夫は、今の時代でいういわゆる「モラハラ夫」でした。お妾さんもいました。梅子さんは、自分が子どもたちの親権者になり、そんな夫と離婚するために法律を学んでいましたが、うまくいきませんでした。そして夫の死亡後、今度は相続争いが勃発しました。

当初、梅子さんは、自らも相続人として名を連ね、家裁の調停に出席していましたが、三男の裏切りとも思われる言動をきっかけにすべてを手放すのです。

相続も放棄しましたし、夫の母の面倒をみることも放棄し、家を出ました。

ドラマでは明確に「死後離婚」や「姻族関係終了」の言葉はありませんでしたが、梅子さんの気持ちとしては間違いなく姻族関係終了だったのだと思います。

梅子さんの時代は、法律的にも社会的にも今より選択肢が少なかったのですが、現代を生きるみなさんは違います。

このコラムを読んでくださっているみなさんの中には、「婚姻期間が長くなってきているけれど、このまま続けていいものか」と悩んでいる方もいるかと思います。

「まだ何とか我慢できる」という思考ではなく、「残りの人生を自分らしく楽しむためにはどの選択がいいのか」という視点で考えていただければと思います。

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