離婚一般

セックスレスで離婚って変ですか?いいえ、よくある話です。

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離婚の交渉

セックスレスは、離婚に直結する重大な問題ですが、誰にも相談できず思い悩む人が多いのが特徴です。

また、「セックスレスで離婚を考えるほど思い悩んでいる自分はおかしいのか」と、悩むこと自体に罪悪感を感じる人もいます。

でも、心配ありません。

あなたのほかにも、セックスレスで深く悩み、傷付いている人がたくさんいます。

今日は、セックスレスを含む夫婦間のパートナーシップに関する講師育成講座を開講されている藤原文先生と当センター代表小泉による対談形式で、セックスレスや離婚についてお伝えしたいと思います。

代表小泉による個別カウンセリングは以下のページの申込フォームよりお申込みが可能です。

離婚カウンセリング

 


小泉:藤原先生のところにご相談にこられる方の中に、セックスレの問題を抱えておられる方は多いですか?

藤原:とても多いように思います。正面からセックスレスを語る方もおられますし、じっくり話を聞いてみると、実は根本にセックスレスの問題があったということもあります。また、夫婦が十人十色であるように、セックスレスの原因も様々です。

小泉:確かに、様々なセックスレスの形がありそうですね。では、セックスレスの基本の「き」から教えていただけますか。

藤原:はい。まず、セックスレスの定義ですが、日本性科学会によりますと、病気など特別な事情がないのに、1カ月以上性交渉がない状態をいうそうです。ただ、〇カ月以上、というような数字に注目するというより、一方がセックスをしたいと思っているのに、長期間それが実現できていないことが問題だと考えていただければと思います。

そして、次に、以下の表を見てみてください。

Durex 2005 global sex survey report

Durex 2005 global sex survey report

この表は、セックスの頻度と満足度に関して、各国を比較した表です。欧米諸国に比べて、日本の値があまりにも低いことに驚かれることと思います。ただ、私がフランスの記者に取材を受けた際、面白いことを仰っていました。

つまり、欧米では、セックスの回数が少ないというのは恥ずかしいことであり、おそらく実情より多めに回答しているのでは、というのです。セックスの話題がタブーで恥ずかしいと感じる日本と真逆ですよね。

小泉:本当にそうですね。その「セックスの話題が恥ずかしい、タブーだ」というあたりに問題の根幹がありそうですね。

藤原:まさにその通りですね。では、セックスレスの中身に入っていきますね。

妻の拒否が原因のセックスレス

妻がセックスを拒否するきっかけは産後クライシス

妻が拒否する場合のセックスレスの始まりとして圧倒的に多いのが産後クライシスです。

産後クライシスとは:2012年、NHKの番組内で「出産を機に、良好な夫婦の関係が急に悪化する状態」として紹介されたのが始まりです。

そして、この産後クライシスを如実に表しているのが以下の「夫婦の愛情曲線の変遷(東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜著)」です。

図 女性の愛情曲線

出典:東京ウィメンズプラザHP

この曲線を見ていただくと、産後、夫への愛情が急激に下降していることが分かります。一体、このとき、妻の気持ちにどんな変化が起こっているのでしょうか。

生理的・物理的変化

産後すぐの時期は、とにかく体が疲れています。特に、睡眠不足が顕著になり、子どもが寝たら自分も休みたい、そんな気持ちになるのが当たり前です。また、ホルモンのバランスも変わりますし、生活環境も一変します。

妻の気持ち

育児で疲れ、少しでも睡眠時間を確保したい
母乳をあげているとそんな気にならない
子どもが横に寝ているのに無理

不満・孤独感

産後クラシスの時期、妻は、夫に対する不満や「なぜ自分だけ」という孤独感を味わっています。

妻の気持ち

なぜ子育てを自分だけに押し付けるのか
子どもの夜泣き、なぜ知らんぷり?
育児は君の仕事だから、と言われた

つまり、出産直後は身体的にも疲れていたり、夫婦だけの甘い時間を持ちにくい状況になる上に、夫の非協力的な言動に妻が孤独を感じ、愛情も冷めていく、そしてセックスにも応じなくなっていく、というのが産後クライシスをきっかけにセックスレスが始まるメカニズムです。

セックスの質の問題

また、そもそも、夫のセックスの質が問題でセックスレスになる夫婦もいます。以下、私のもとに相談に来られた方の声をご紹介します。

夫にとって私は性のはけ口?
独りよがりで愛情が感じられない
AVの見過ぎ?

つまり、セックスの内容が愛情を感じられるものではないのです。女性はもとより男性より性欲が弱いと言われていますので、夫の自分よがりなセックスに嫌になってしまうのです。

夫の拒否が原因のセックスレス

一方、夫が拒否する形のセックスレスもあります。夫の拒否の場合、以下のような要因が複合的に絡み合っています

妻への気持ちの変化

妻の容姿が変わった(太った、歳をとった等)ことや、女性としてではなく子どもの母親としてしか見れなくなったこと等が理由で、妻に対して性的欲求がわいてこない人がいます。

社会的役割の重責化

年齢が上がるにつれて、会社での役割が増え、仕事は心身ともに大変になっていきます。一方、体力は衰える一方です。そのため、セックスをする体力と気力が残っていない、という状況に陥ってしまうのです。

妻のニーズに対する誤解

夫は、女性である妻には性的欲求が(あまり)ないと勘違いしがちです。そのため、妻とセックスし、女性として愛することより、がんばって働いて給料を増やし、家族を養っていく方が妻のニーズにあうと思ってしまうのです。

過去のトラウマ

産後クライシスの時期に妻からセックスを断られたことを引きずっていたり、疲れやプレッシャーが理由でうまくできなかった過去がトラウマになることもあります。また断られたらどうしよう、またうまくできなかったらどうしよう、そういった不安が拒否の原因になるのです。


小泉:藤原先生、ありがとうございます。セックスレスの仕組みがとてもよく分かりました。男性と女性では拒否の理由が異なる、というのはとても興味深い話ですね。

そして、次にお聞きしたいのが、セックスレスが原因で離婚に至る場合についてです。きっと、世の中には、セックスレスの夫婦がたくさんいると思うのですが、全員が離婚に至るわけではありません。

セックスレスでもうまくやっていける夫婦と、離婚する夫婦の違い、みたいなものはあるのでしょうか。

藤原:それはとても本質的な質問ですね。以下でご説明しましょう。

セックスレスから離婚に至る6つの理由

産後クライシスからの愛情回復がない

妻が夫のセックスを拒否するきっかけになるのは産後クライシスだとお伝えしました。そして、その際お示しした表をもう一度見てみましょう。

図 女性の愛情曲線

青色の点線が夫への愛情曲線ですが、低迷グループと回復グループに分岐していくのが見ていただけると思います。

この研究において、回復グループの妻は「夫と二人で育児をした」と回答し、低迷グループの妻は「私ひとりで子育てした」と回答したのです。

つまり、夫も最初は何も分からず協力できなかったけれど、夫婦で話し合ったり、夫自ら気付くことによって、夫が家事育児に協力的になれば、夫婦関係が改善されることが分かります。

一方、出産直後の産後クライシスでセックスレスになり、そのまま関係も改善せず、愛情が低迷したままの夫婦は離婚に至る確率が高くなります。

拒否に対して怒る

妻がセックスを拒否したとき、大抵の男性は、ショックを受けたり、男としてのプライドを傷付けられたような気がします。しかし、その気持ちの表現を「怒り」で表してしまう男性がいます。

そんな男性は、次のような言葉で妻を非難します。

おまえは妻の役割を放棄している
浮気しても文句言うな
お前は自分勝手だ

こうして攻撃的に避難してくる夫に限って、セックスレスの原因が自分にあるとは考えません。そのため、妻がなぜ拒否をするのか思いめぐらせてみたり、自分の言動を顧みるということをしません。

例えば、妻のセックスレスに対し、夫が以下のように伝えたとしたらどうでしょうか。

「君に拒否されると、男として失格のような気がして傷付くんだよね。何が嫌なのか、話し合ってもいい?」

きっと妻は、夫を傷付けてしまったことを悪いと思ったり、前向きな話合いができるのではないでしょうか。男のプライドが邪魔し、自分の辛さを「怒り」で表現してしまうがゆえに、セックスレスから離婚に至る夫婦が一定数います。

浮気への発展

既婚者にとって、唯一合法的にセックスができる相手が妻であり夫です。その相手に拒否されてしまうと、その状況を打開するために浮気をしてしまうこともあります。

また、もっと突き詰めて考えた結果、「このまま、(男性、女性として)終わりたくない」という理由で離婚を選ぶ人もいます。

妻の悩みが深い

夫にセックスを拒否された妻の傷付きは相当です。

もちろん、妻に拒否される夫も辛いのですが、夫に拒否される妻は、以下のような悩みを抱えます。

自分は女性として終わってしまったのか
夫はもう自分を好きではないのか
夫より性欲がある自分はおかしい?
自分からセックスを求めるなんてみじめ
求められない自分に存在価値はない

中には、セックスレスそのものより、そこまで求めてしまう自分がおかしいのではと感じたり、その結果、摂食障害やうつ病になってしまう人もいます。

夫にしてみれば、疲れているだけだったり、そもそも妻が求めていることすら知らない場合もあります。

ただ、夫に悩みを打ち明けられる妻はそう多くはありません。一人で悶々と考えているうちに、夫婦関係の根幹がこじれ、離婚に至るのです。

子どもがほしい

子どもがほしい場合、セックスレスは離婚に直結する大問題です。特に、女性は、まだ子どもがいないうちにレスになってしまうと、自分の年齢と相談しながら離婚時期を見極めるようなことになってしまいます。

コミュニケーションが破綻

ある意味、セックスは究極のコミュニケーションです。そして、セックスだけではなく、日々のコミュニケーションが破綻してしまっている夫婦もいます。

何を言っても否定的に解釈される
相談しても取り合ってくれない
会話がかみ合わない
相手の意に沿う返事をしないと議論が終わらない

こういった夫婦は、セックスレスというある意味難易度の高い問題をうまく話し合うことができません。そして、日々のディスコミュケーションと相まって、離婚へと進むことになります。


小泉:藤原先生、ありがとうございます。セックスレスが原因で離婚に至る夫婦のリアルが見えてきた気がしました。最後に、藤原先生からセックスレスで悩むみなさんにアドバイスをいただけますか。

藤原:そうですね。何より、コミュニケーションの大切さをお伝えしたいと思います。

夫婦って、何か困ったことや嫌なことがあれば話し合いますよね。でも、それが簡単にできないのがセックスレスの難しいところです。一番近しい関係である夫婦間であっても、セックスの話題はタブーだったり、恥ずかしい話だったりするのです。

でも、本来、そうではないはずです。

セックスレスが「悪」ではありません。人によって受け取り方も様々です。相手に拒否されたとしても、違うことで愛情を感じられたり、「ま、いっか」と思えればそれでいいのです。ただ、深く思い悩んだり、その結果離婚を決意するくらいなら、事前に一度は腹を割って話し合ってみていただければと思います。

小泉:確かに仰るとおりですね。今日は本当にありがとうございました。それでは、以下では、セックスレスと離婚について、法律的な観点からお伝えしていきたいと思います。

セックスレスが原因で離婚できるか

婚姻を継続しがたい重大な事由かどうか

夫婦の離婚意思が合致していて、協議離婚が可能であれば問題はないのですが、裁判になった場合、離婚事由が必要になります。

そして、民法上(民法770条1項各号)、離婚事由は以下の通り定められています。

①不貞
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復しがたい精神病
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由

セックスレスは、①~④には当てはまりませんので、⑤にあたるか否かが問題となります。ただ、セックスレスの形は様々で、離婚事由になるかどうかはケースバイケースということになります。一般的には、高齢や病気が原因のセックスレスは離婚事由にならないと言われています。

実は主要な離婚理由の1つ

法律上の離婚事由になり得るかどうかの議論とは別に、実際、どんな理由で離婚調停が申し立てられているかを見てみましょう。

令和元年の司法統計によりますと、男女ともに離婚理由として性的不調和が挙げられています。

令和元年家事事件司法統計

令和元年家事事件司法統計

性的不調和がセックスレスとは限りませんが、不調和のまま性交渉が円滑に継続されていることはあまり考えられません。

DVや不貞に比べ、あまり大っぴらに主張されることはないのですが、セックスレスも立派な離婚理由の一つと言えます。

セックスレスに対する慰謝料

セックスレスが原因で離婚するとして、慰謝料の請求は可能なのでしょうか。以下の判例を参考に見てみましょう。(判例タイムズ1471号を参考にしています。)

セックスレスのみではなく、身体的接触や真摯な姿勢がないことも含めて判断された事例

平成29年8月18日の東京地方裁判所の判決では、夫の拒否が原因によるセックスレスに対し、夫に対し50万円の慰謝料の支払いが命じられました。

夫婦は、交際から離婚に至る約3年間の間に一度も性交渉はおろか、キスや抱擁等の身体的接触もありませんでした。加えて、判決では、以下の点にも言及されました。

①セックスレスのみではなく、それに対して妻が思い悩み、夫に相談したにも関わらず、夫に変化がなかった。
②性交渉以外の夫婦間の精神的結合を深めるような努力もなかった。

夫の性的不能を原因とするセックスレスに慰謝料を認めた事例

東京地方裁判所平成16年5月27日、妻から夫に対するセックスレスの慰謝料請求について、100万円の支払を認める判決がでました。このケースでは、婚姻後に夫が性的不能に陥ったことが原因でセックスレスとなっていますが、以下の点も併せて議論されています。

①本来、妻には夫の性的不能の改善に寄与する努力が必要、というのが一般論
②ただ、本件では、夫の性格や態度から、妻にそれを求めるには酷な事情があった(つまり、夫がひどかった)
③夫が妻を「家政婦同然」に扱っていたこと等も事情に含めた慰謝料

同居義務違反も含めた高額慰謝料が認められた判決

東京地裁平成15年7月31日、夫の拒否によるセックスレスについて、夫から妻に対し、350万円の慰謝料の支払を認めた判決。婚姻後2年間にわたって一度もセックスがなく、しかも夫は同居も拒否。妻が専業主婦、夫は中央省庁の本省勤務だったことも慰謝料の金額に影響を及ぼしたのかもしれません。

妻のセックス拒否に対して慰謝料の支払いを命じた判決

岡山地裁津山支部にて平成3年3月29日、妻のセックス拒否に対して、150万円の慰謝料の支払いを命じる判決がありました。妻は、新婚初夜から一貫してセックスを拒否。加えて、妻から夫への暴言や暴力、同居への義務違反等もあったようです。

セックスレスは究極の没コミュニケーション

もし、あなたがセックスレスで深く悩んでいるのであれば、先ほどの藤原先生のメッセージのように、一度、腹を割って相手に相談してみてほしいと思います。

セックスレスは簡単に解決しないかもしれません。でも、相手があなたの悩みを真摯に受け止めてくれるようであれば、気持ちが幾分楽になるはずです。

ただ、上述の判例にもあるように、セックスレスのみが原因というより、周辺の問題も相まって離婚に至っているケースがほとんどです。あなたがやっとの思いで打ち明けたとしても、相手は問題から逃げたり、なかったことにするかもしれません。

そんな場合、あまり我慢しすぎず、あなたらしさやあなたの本音を大切にできる選択肢を選んでいただければと思います。

藤原文先生のアメブロは以下のURLをクリックしてご覧いただけます。セックスレスをはじめ、たくさんの情報が詰まっていますので、まずは、一度ご覧いただければと思います。あなたと同じ悩みを抱えた方の声や、それに対する回答が見つかるかもしれません。

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