離婚と子ども

「共働き隠れワンオペ育児」は夫婦の危機⁈

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最近、ワンオペ育児という言葉が少しはやりました。しかし、この仕事をしていて感じるのは、完全なワンオペ育児をしている夫婦より、どちらかというと「共働き隠れワンオペ育児夫婦」の方が問題が大きいのではないかということです。

今日はそんな現状について考えてみたいと思います。

ワンオペ育児の実情

専業主婦ワンオペ

世間にはたくさんのワンオペ育児が存在します。特に、専業主婦の方の大部分は、ワンオペ育児を経験したことがあるのではないでしょうか。

「ワンオペ育児」という言葉がはやったとき、「あら、私もそうだわ。いつもの日常だけど何か問題あるの?」と思った方も多いのではと推測します。

専業主婦といえども、家事と育児を一人で担うのはしんどいものです。子どもが2人以上いる場合など特にそうです。どちらかが熱を出すと、元気な子どもも一人にしておけないから一緒に病院に連れて行かざるを得なかったりします。病院の待ち時間に子どもをぐずらせないことに疲れ果て、挙句の果てには元気だった子どもも病院で病気をもらってきてしまうこともあります。

そんなとき、「ああ、夫に子どもを預けられたら・・。」とやるせなくなることと思います。 

また、自分がどんなに体調不良でも、家事・育児を代わってもらうこともできません。「体調を崩せない」、「自分が倒れたら、家が回らなくなる」というプレッシャーは想像以上に重圧感があるものです。体調を崩しても早め早めに薬を飲み、自分をだましながら動き続けるしかありません。

ある女性が私にこんなことを言ったことがあります。

「うちの夫はしんどくなるとすぐにアピールするかのように何度も熱を測りたがる。でも私は、熱があったところでやらなきゃいけないことは変わらない。気分が滅入るだけだから熱なんて測らない。」

もちろん、代わりのきかない大きな仕事を抱え、這ってでも仕事に行かなければならない男性もいることと思います。

しかし、どちらかというと会社より家庭の方が人材に乏しく危機管理もできていません。専業主婦は、「這ってでも出社しないと一億の商談に穴をあけてしまう。」といったダイナミックな悲壮感はありませんが、「体がだるくてしんどいけれど、子どもは待ったなしでお腹がすくし、抱っこをせがんでくる」という地味ながらじわじわとしんどい思いをするのです。

パートワンオペ

パートタイムで働きながら、専業主婦と同じようにワンオペ育児を頑張っている女性もいます。

この場合、パートとはいえ、仕事がある分、専業主婦よりも大変です。

子どもの病気でパートを休めば、「子持ちは無責任だから困る」と陰口を言われ、自宅では子どもが泣いて待っているということになります。

単身赴任ワンオペ

夫の単身赴任により、ワンオペ育児をせざるを得ない妻たちもいます。専業主婦、パートタイムもしくはフルタイムに限らず、夫が単身赴任をしている場合、物理的に頼ることができなくなってしまいます。

国内の近場であれば、週末はある程度頼ることができるかもしれません。

しかし、国外、それも度々帰国が難しいような遠方の国であれば、年に1,2回会えればいい方です。何も手伝ってくれなくても、「何かあったとき」のことを考えると、夫の存在は有難かったりします。しかし、単身赴任ワンオペは、それもかないません。もしかしたら、単身赴任が一番しんどいワンオペ育児かもしれません。

意外と円満なワンオペ夫婦

これまで見てきたようなワンオペ育児夫婦には、ある共通の特徴があります。

それは、意外と不満が少ないということです。

もちろん、夫が家事・育児を手伝ってくれないことに対してママ友に愚痴ったり、夫本人に文句を言うことがあるかもしれません。

しかし、結局のところ、「夫は仕事で自分は家事・育児」という役割分担を受け入れていたり、夫の方が明らかに収入が多いという事情があったりします。また、単身赴任の場合、そばにいるのに何も手伝ってくれない夫に比べ、「手伝いたくたって、できないんだからしょうがない」という諦めにもつながります。

そのため、しんどくて大変な反面、夫に対する不満が少なく、ワンオペ育児をある意味受け入れているように思います。

共働き夫婦の隠れワンオペ育児に潜む危険

私が相談を受ける中で、ワンオペ育児に本気で悩み、離婚を考えるほど夫に不満を抱いているのは、むしろ完璧なワンオペではなく、ちょっとは手伝うけど。。。といった隠れワンオペの共働き夫婦だったりします。

家事分担割合

以前も同じことを書いたのですが、最近感じるのは、「イクメン」という言葉がひとり歩きしているということです。確かに、家事や育児を手伝ってくれる男性も増えたと思います。しかし、イクメンの定義が曖昧です。イクメンとは、育児や家事をよく手伝う夫という意味であり、妻と半分ずつ分担しているのではないのです。

もちろん、夫だって仕事が大変です。そんな中、少しでも家事や育児を手伝ってくれるのですから、何もしない夫よりいいのは間違いありません。しかし、「共働き隠れワンオペ育児夫婦」は、妻とてフルタイムで働いているわけですから、「分担は当たり前」というところがスタートです。

そして、その上で、次のような不平等感にさいなまれます。

メインは妻、サポートが夫

イクメンといえども、家事・育児をするスタンスは「お手伝い」という人が少なくありません。あくまでメインで担当するのが妻、それをサポートするのが夫という関係です。

なぜかお礼を言うのは妻

夫が何か家事・育児をしたとき、妻は「ありがとう」と伝えます。しかし、妻が何か家事・育児をした際、「ありがとう」と口にしている男性はどのくらいいるでしょうか。なぜなら、家事・育児をするのは「基本妻」だからです。

最終的な責任は妻

夫が家事・育児を担うスタンスは「できればする」、「時間があればやる」、「なるべくやりたい」といった具合に、逃げ道があります。忙しければ、時間がなければ、できなければ、やらなくていいのです。それが省略できる家事・育児であればいいですが、必ずしなければならないことであればどうなるのでしょうか。結局のところ、最後に責任をもってやらざるを得ないのは妻なのです。

仕事に没頭できない辛さ

隠れワンオペ育児をしている働く女性から聞かれるお悩みの一つに「バリバリ働けない」という声があります。

「自分だって、夫みたいに残業したい」、「自分だって、夫みたいに宿泊付きの出張に行きたい」、「自分だって・・・」といった不満があるのです。

女性は、出産をするだけでもキャリア上は大きくハンデを負うことになります。しかし、育児は出産のように点ではなく線として続いていくものですので、そのハンデも甚大です。

夫は仕事に集中して順調に出世していくのに、自分は花形部署から外されたとなれば、やはり不満は高まります。

何といってもやっぱりしんどい

精神的なしんどさもありますが、共働き隠れワンオペはなんといっても体力的にも疲れます。ここで、1歳の子どもがいる共働き隠れワンオペ育児妻の一日をご紹介します。

5:00 起床。朝食と夕食の下ごしらえと洗濯
6:30 子どもと夫を起こし朝食
7:30 夫が先に家を出る。妻はその後すぐ子どもを連れて保育園
9:00 1時間の通勤を経て、疲れ果てて何とかギリギリセーフで出社。午後六時までノンストップで仕事。
12:00 昼休み。残業ができないのでサンドイッチをかじりながらパソコンに向かう
18:00 定時ダッシュで18時に退社
19:00 保育園にお迎えに行き、子どもをピックアップ
19:10 帰宅。ここからがまた戦争。子どもにテレビを見せつつ、夕食の仕上げをするけれど、疲れているのは子ども一緒、何かとぐずる。子どもを片手に抱いて炒め物をするなんて日常茶飯事
19:30 夕食を子どもに食べさせる。子ども優先で自分は後回し。子どもに食べさせつつ、自分も同時に食べようとすると、あまりに慌ただしく、何を食べているか味がしないという人も多数
20:00 夕食を食べ終わり、そこからお風呂。
21:00 21時を超える頃、ようやく寝る準備。そんなころ、夫が帰宅し、夫が子どもと遊んでいる間に夫の夕食の準備
22:00 子どもの寝かしつけをしながら、自分も寝てしまうこともしばしば。まだ夜中の授乳があり、必ず一度は起こされる。時には持ち帰りの仕事をすることも

こんな生活を毎日していれば、体力的にしんどいのはもちろん、気持ちも疲れてきます。睡眠時間はある程度取れているかもしれませんが、とにかく自分のための時間がありません。食事もゆっくりとれず、一人でゆっくりコーヒーを飲んだり、読書をする時間を作るのも困難です。毎日毎日、やることに追われ、休日さえも朝寝坊は許されません。体には疲労がたまります。

妻も稼げる

離婚を決断する際、将来の生活に経済的不安があるかないかは大きな差があります。

自分でもある程度稼げる、一人でもなんとか子どもを育てられる、となると、離婚の決断もしやすくなります。

夫との温度差

離婚の危機に陥る夫婦にはありがちですが、一方が離婚を真剣に考えるほど悩んでいるのに、もう一方がそれに気付かないことがあります。共働き隠れワンオペ育児夫婦も同じで、妻が不公平感に苦しみ、心身ともに疲弊したり、夫婦関係を解消するしかないとまで思い詰めていても、夫はけんかの多い夫婦ぐらいにしか思っていなかったりします。

そのため、夫が本気の改善を試みる前に、既に妻の離婚への気持ちが固まってしまうのです。

男性にお伝えしたいこと

そんなこんなで夫婦不和に陥りやすい共働き隠れワンオペ育児夫婦ですが、ある意味、仕方がない部分もあります。男性がいくら頑張っても、出産をすることはできませんし、おっぱいもあげられません。新生児が好むような高いトーンの声を出すのも妻の方ですし、どうしたって夫より妻の方が子どもに接する時間が長くなります。

そんな感じで始まる育児ですから、スタート地点で既に平等ではないのです。

また、今の日本社会において、ほとんどの場合、男性の方が収入が高いという現状があります。出産や育児で長期休暇をとる女性より、休日返上、残業もしてくれる男性の方が雇用する方も安心感があるのだと思います。妻より収入が高くて当たり前、というプレッシャーの中、育児も家事もと求められては、やりきれない感じがするかもしれません。

しかし、この状態を放置して最終的につらい思いをするのもまた男性です。経済的にも自立が可能で、子どもの主たる監護者である母親と親権を争うことになれば、太刀打ちできるでしょうか。

大切なのは、危機感をもち、働き方と家族へのかかわりを真剣に考える姿勢です。「俺だってしんどいんだから。」、「俺だって努力してるんだから。」といった抽象的なやり取りではなく、具体的に「自分はどんな家事・育児をどのくらいの頻度で分担しているか。」、そして、その分担の認識が妻の認識と一致しているか、とにかく「具体的に!」をテーマに話し合いを持ってもらえればと思います。

女性にお伝えしたいこと

フルタイムで仕事をしながら家事や育児までこなすのは並大抵のことではありません。手を抜くことができない真面目な女性は特にしんどい思いをされていると思います。

ただ、毎日が不満に支配されると、相手の言動を正しく評価できなくなってきます。例えば、夫がいくら家事や育児を手伝ったとしても、それを認めることができず、夫のサポートを過小評価してしまうのです。

そのため、ときには、お互いが負担している家事や育児、それぞれの勤務時間や自由時間などを具体的に書き出し、家事分担の実態を明確にするのも大切です。その上で、それぞれが担っている負担を点数化するなどして、負担が平等になるよう働きかけてみてください。

また、家事・育児の分担に注目しすぎると、相手との関係が「利害関係」に変わってしまいます。自分の分担が増えれば相手の分担が減り、自分の分担が減れば相手の分担が増えるという関係です。そうなれば、円満な夫婦関係も難しくなってきます。多少不経済であっても、育児サポートや家事代行サービスに甘えてみるという方法もあります。

離婚を考えるのは、それからでも遅くはないかもしれません。

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