モラハラ夫(妻)の発言例ー夫婦カウンセリングの現場から―

モラハラは定義が曖昧で、モラハラをしていることやされていることを明確に自覚することが難しいことがあります。

みんさんもきっと「モラハラ度チェック」のようなものを試したことがあるのではないでしょうか。確かに、そうしたチェッカーも有用ですが、箇条書きの特徴ではいかようにも取れるようなものばかりで、結局、全部あてはまる…ということがあったりします。

今回は、夫婦カウンセリングで交わされるモラハラ夫婦の会話から、あるあるを詰め込んだ架空の会話例をお伝えします。

自分はモラハラをしているかもしれない、配偶者はモラハラ夫(妻)かもしれない、という方はぜひお読みください。

 

不満が多い

夫の言い分

旅行とか外食は大体妻が決めることが多いです。何となくの役割分担として、僕は家を買うとか、子どもの進学はどうするとか、どちらかというと大きなことを決めることが多いのですが、娯楽系は妻の方が得意だし、たぶん自分で決めたいと思っていると思います。

一応、僕に「どうする?」と聞いてきますが、あまり相談するつもりはないみたいです。ただ、妻は自分の行きたいところが優先で、僕の状況はあまり考えてくれません。先日の箱根旅行もすごい人混みで。妻はミーハーなのでそういう有名な場所に行きたがりますが、僕は日ごろ仕事で疲れているので、ゆっくりできず辛かったです。

妻の言い分

旅行に行ったり、外食をしたりする際、どこに行くか、何を食べるか、そういったことは私が決めることが多いんです。

別に私が決めたいわけではないのですが、夫に「どうする?」と聞いても、「決めていいよ」と言うだけで、全然相談に乗ってくれないので。

仕方がないから色々調べて決めるのですが、いざ旅行や食事に行くと、夫は文句たらたらで・・。

先日も、家族旅行で箱根に行ったんです。そしたら、連休中でどこに行っても混んでいて。そしてら、夫は旅行中ずっと不機嫌で、「なんで旅行に来てまで疲れさせるんだ。もっとましな場所を選べ」と怒るんです。

私は、どこに行っても「待ち時間は長くないかな」と夫の機嫌ばかりが気になって、全然楽しめませんでした。

解説

夫の言い分だけを聞いたら、何だか妻の気遣いが足りないように思われるかもしれません。でも、妻の話を聞くと、モラハラの要素が散りばめられています。例えば、自分で決める責任を放棄しておいて、決めてもらったことに文句を言うということです。また、「不機嫌な様子」で相手をコントールするのもモラハラによくある行動様式です。

また、自分は家の購入や子どもの進学など、「大きなこと」を決めるという一言をとっても、妻を見下しているような要素があります。

こうした行為の特徴としては、「あなたの好きにさせてあげたのに」という態度をとることです。決して、「自分は面倒だから、『決める』ことを放棄して相手に任せた」という態度はとりません。

相手と口論になっても、正論である自分が勝つと思っている

夫の言い分

何か意見が違うことがあれば話し合いたいと思っていますが、妻はあまりその気はないようです。たぶん、僕は理論的に話すことができるけれど、妻はそうではないので、話しても負けると思っているのだと思います。

妻の言い分

夫と何か意見が食い違うことがあっても、議論する気になれません。夫は絶対に自分が正しいと思っているので、議論しても私の意見を聞くつもりはないのは分かっているので。何を言っても「だけど、」、「でも、」と説得口調で、私がうんと言うまで続きます。

解説

話の内容がなんであれ、話をする前から勝負がついているような関係性です。モラハラ夫は、自分は頭が良くて理論的、妻は頭が悪くて感情的だと思っている人が少なくありません。夫は話し合いだと言っていますが、多くは一方的に相手を追い詰めるような会話になっていることがよくあります。

 

けんかにならないよう、避けている(無視)

妻の言い分

話すとすぐ喧嘩になってしまいます。なので、なるべくかかわらないようにしています。特に、子どもたちにはけんかを見せたくないと思っています。

夫の言い分

朝、ぼくが「おはよう」といっても妻は無視をします。会話がないだけではなく、存在自体を無視されている状態です。子どもたちもその様子を見ているので真似をします。こういうことを繰り返されると、精神的に本当につらいです。妻はけんかにならないようにと言うけれど、朝の挨拶でけんかになんてならないでしょう。

解説

サイレントモラハラという言葉がありますが、まさにこういう行為のことを指します。無視は最大の攻撃です。

家庭の内外で違う顔を持っている

夫の言い分

外で働くってことは、ある程度の我慢や理性が必要ですよね。で、疲れて帰ってきたら、家の中ではリラックスしたいじゃないですか。誰だって、外と中で違う様子を見せているんじゃないですか。

妻の言い分

夫は、外では良い夫を演じているところがあります。職場でも頼られているようです。でも、家に一歩入ると、仏頂面でいつも不機嫌そうです。思いやりや親切を外で使い果たしてきたかのようです。本当に大切にすべきは外の人間ではなく、家族ですよね。

解説

この会話例においても、夫の言っていることだけ聞くと、ごもっともで全く問題がないように聞こえます。しかし、妻の主張を聞くとそうではないことが分かります。「外面がいい」のはモラハラの典型です。

同じ話を何時間も繰り返す

妻の言い分

いくら話しても夫は理解してくれないんです。「もうやらない」、「次回から気を付ける」と言ってくれるのに、結局繰り返します。なので、ついついしつこくなってしまいます。

夫の言い分

妻は、決して声を荒げたり、どなったり、ましてや暴力を振るったりはしません。とにかく、ずっと同じ調子で責め続けるんです。内容も繰り返しで…。少し反論すると倍返し、いや、10倍返しで話が長くなるので、ただひたすら黙っています。それでも、深夜3時ころまで続くこともありました。

解説

何時間も同じ話を一方的に話し続けるという行為は普通ではありません。特徴としては、話が長時間にわたるほか、仕事中に電話をかけてきたり、深夜に寝かせてもらえなかったり、相手の状況を無視して行われる点です。

 

実は「モラハラかどうか」は関係ない

「これはモラハラなのか?」と疑問に思う背景には、モラハラの定義があいまいなことがあります。

モラハラは、単的にいうと「言葉や態度による嫌がらせ」です。ただ、「嫌がらせ」といっても、様々な種類や程度があり、どこからがモラハラになるのか、明確に定義することができません。

そのため、日々の生活の中で、「夫のここが嫌」、「妻のこういう態度はやめてほしい」と不満が目に見えない形で積もり積もっていくのです。

大切なのは、モラハラかどうかではなく、お互いに気持ちのよいコミュニケーションが取れているかどうかです。

例えば、あなたがモラハラをしている方で妻(夫)から「あなたはモラハラだ」と言われ、このコラムを読んでいるとします。読んだ結果、自分はモラハラではないと判断したら、それで問題はないのでしょうか。妻(夫)との関係は改善するのでしょうか。

また、あなたがモラハラをされている方で、妻(夫)はモラハラではないかと疑っていたとします。結果として、モラハラでなければそれでいいのでしょうか。あなたの辛さはなくなるのでしょうか。

大切なことは、モラハラかどうかではなく、あなたもしくはあなたの妻(夫)の「気持ち」です。

モラハラかどうかに関係なく、このコラムを夫婦関係を見直すきっかけになれば幸いです。

ご夫婦関係にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
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