令和6年4月1日、改正ADR法が施行されました。その中でもっとも大きな変更となったのが「特定和解」という合意の方法が新設されたことです。
今回は、法改正の中で、みなさんに一番影響が大きいと思われる「特定和解」についてご説明します。
執行力付与
従来、ADRによる合意には、執行力がありませんでした。そのため、当センターでも、養育費等の取り決めがある場合、公正証書の作成までをサポートさせていただくことがほとんでした。
しかし、今回の法改正により、ADRによる合意に執行力を付与する法制ができました。今後は、ADRで合意書を作成しておけば、万が一不払いが発生したとしても、強制執行ができるようになったのです。
ただ、注意点がいくつかありますので、以下でご説明します。
対象は養育費と婚姻費用
改正ADR法では、全ての案件について執行力を付与するのではなく、ある一定の分野を指定しています。当センターに関連する夫婦関係においては、養育費と婚姻費用が対象になります。そのため、財産分与や慰謝料については対象となりません。
通常、財産分与や慰謝料は離婚時に一括で支払われますので、不払いのリスクが少ないとも思われますが、財産分与や慰謝料の分割払いがある場合、やはり公正証書の作成が望ましいと言えます。
強制執行する前にワンステップ必要
公正証書を作成した際の強制執行との大きな違いは、不払いが発生した場合、強制執行の申立てをする前に、裁判所に対し執行決定を求める申立てが必要になります。
執行決定:特定和解に基づく民事執行を許す旨の決定のことをいいます。
執行合意を含む特定和解の合意書を適切に作っていれば、執行決定がされないということは原則的にはないと思われますが、ひと手間かかることになります。
このように、便利になる反面、注意点もありますので、ご不明な点がありましたら、お気軽にお問合せください。
また、この法改正について小泉が取材を受けた際の読売新聞の記事も併せてご参考ください。