養育費

転ばぬ先の杖、『養育費保証』を考えよう

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子連れ離婚を考えるときの不安の1つに「養育費が支払われなくなったらどうしよう」、があります。今回は、そんな不安の解消のために大いに役立つサービス「養育費保証」についてお伝えします。

養育費保険ではなく保証

養育費保証サービスは、養育費の支払いが滞った際、保証会社が義務者に代わって養育費を支払ってくれるサービスです。養育費保証と聞くと、保険をイメージするかもしれませんが、養育費保証はあくまで「保証」であって、「保険」とは少し異なります。

その違いは、保険料の支払い後の手続きにあります。例えば、自動車保険に加入していると、事故が起きると保険金が支払われます。しかし、養育費保証は、不払いとなった養育費を立て替えた後、さらに保証会社が立替えた養育費を支払い義務者から回収するという手続きが続きます。つまり、養育費保証サービスは、あくまで一時的な立替えサービスなのです。

養育費保証を利用するメリット

権利者(養育費を受け取る人)にとってのメリット

不払いの不安から解放され、余裕を持って生活設計ができる

養育費を大切な生活の糧としている人にとって、「いつ何時養育費がストップするか分からない」という不安はとてもストレスフルです。また、養育費がなかったとしても生活が困らないような生活設計が必要となってきます。しかし、すぐに立て替えてもらえる安心感があれば、養育費を「間違いなく入ってくる収入」として加算した生活設計が可能です。

信頼関係が崩れた相手に直接請求しなくて済む

養育費が期限までに支払われない場合、自ら相手に請求をする必要があります。しかし、お互いの信頼関係がなくなったからこそ離婚した訳ですから、そんな相手にお金の請求をするというのはとてもストレスフルです。この点、養育費保証に加入していれば、保証会社が自分に代わって請求してくれますので、ストレスが軽減されます。

自分で面倒な強制執行の手続きをしなくて済む

公正証書等、債務名義のある書類を作成している場合、地方裁判所で強制執行の手続きをすることができます。そのため、「そもそも債務名義のある書類を持っているのだから、養育費保証に加入する意味はないのでは?」と考えることもできます。もちろん、そういった考え方もあるのですが、実際の強制執行の手続きは煩雑で手間がかかり、費用も発生します。そんな面倒な手続きや費用の負担をしなくても済むのが養育費保証のいいところです。

義務者(養育費を支払う人)にとってのメリット

一時的に収入が減っても安心

長期的にみて収入が減少した場合、養育費の減額請求を行う方法があります。しかし、今月は特に収入が減ったとか、逆に支出が多かったなどといった一時的な理由の場合、通常通りの養育費を支払う必要があります。この点、養育費保証に加入していれば、一時的に養育費の支払が難しくなったとしても、保証会社に立て替えてもらう形で養育費を払い続けることができます。

保証会社に養育費支払いについて相談できる(分割払い等)

義務者にとっても「今月は支払いを遅らせてくれないか」とか「たまった不払い分を分割にしてくれないか」といった連絡を権利者にするのは気が滅入るものです。しかし、養育費保証に加入していれば、こういった相談を義務者ではなく保証会社にできるのがメリットです。

養育費支払いの実績を証明することができる

現金で振り込んでいたり、支払いが遅れたりして何月分の振込みが完了しているか不明確になってしまった場合、支払いの有無について権利者と争いになることがあります。しかし、養育費保証会社が間に入っていれば、こういった争いを避けることができます。

義務者が離婚を急ぎたい場合、離婚に応じてもらいやすくなる

例えば、義務者である夫は離婚をしたいけれど、妻が離婚後の経済的不安から離婚に前向きでないとします。こういった場合、必ず養育費が支払われるという安心感があれば、権利者としても離婚に応じやすくなります。

その他にも、保証会社には個人情報を開示しなければならないが、権利者には知られなくて済む、権利者にプライバシーを知られないので突然に社会的地位を脅かされないといったメリットもあります。

 子どもにとってのメリット

一定期間、安定した生活の保証につながる

養育費は生活の大切な糧です。その養育費が間違いなく振り込まれることによって、安定した生活が約束されます。

一定期間、父母の養育費についての争いに巻き込まれない

面会交流の際に「ママに養育費遅れるって言っておいて」とか「パパに養育費まだなのって聞いておいて」といった伝言役を頼まれたり、電話で言い争う両親の声を聞いたりしなくて済むのも、子どもにとっては大きなメリットです。

養育費保証の実際

養育費保証を先駆的に行っている2社をご紹介したいと思います。(なお、今回ご紹介する2社はいずれも申し込みをした後、厳正な審査を経て契約となります。申し込みをすればだれでも利用できるサービスではありませんのでご注意ください。)

 株式会社Ⅽasa「養育費保証PLUS」

プランの種類

Ⅽasaの養育費保証プランは以下の2種類です。プランの詳細は以下に記載しますが、2つのプランの違いは、契約者が権利者のみか、もしくは権利者と義務者の双方かといった違いのみで、その他の条件や費用は同様です。

プランの種類
①こども未来with ②こども未来

保証内容

①②ともに「養育費」と「養育費請求にかかる法的手続き費用」が保証の対象ですし、月ごとの養育費に加えて定期的な加算額(賞与時の増額など)も保証対象となります。

保証内容(①②とも)
養育費、加算養育費
養育費請求にかかる法的手続き費用

申込み条件

①②ともに、申込みのためには以下の条件が必要となります。

申込み条件(①②とも)
養育費を取り決めた書面がある(離婚協議書(合意書)・公正証書・調停調書・審判書・和解調書・判決書)
義務者の情報がある(義務者の連絡先等)
申込み時点で養育費の不払いがない

契約者

①は権利者と義務者の双方が契約者となる必要がありますが、不払いが発生しても報告は不要で、自動的にⅭasaより振り込まれます。また、②は、権利者のみが契約者となればよいのですが、不払いがあった場合、翌月10日までに報告が必要です。

契約者
①こども未来with ②こども未来
権利者と義務者 権利者

債務名義(差押えが出来る書類)の必要性と保証期間上限

①②ともに債務名義(差押えができる書類、例えば公正証書等)がなく、離婚協議書のみしかない場合、保証上限は24か月分となります。債務名義がある場合、保証上限は36カ月分です。なお、不払いが生じ保証金が支払われても、その分を返済すれば、利用期間はリセットされます。

債務名義の有無と保証期間上限
債務名義あり 債務名義なし
保証上限36か月分 保証上限24か月分

費用

契約金として月額養育費の1か月分、月額保証料として1000円が必要です。更新料はありませんし、養育費の立て替え時に発生する送金手数料もかかりません。

費用
契約金 月額養育費の1カ月分
月額保証料 1000円
更新料 なし

Ⅽasaからのメッセージ

Ⅽasaは2020年9月から不払い養育費保証事業を開始しました。「養育費の確保とひとり親の自立を通して、こどもの未来の安心を提供したい」という想いから「養育費保証PLUS」が誕生したのです。

また、養育費保証に加え、専門相談+部屋探し+仕事探しをセットで提供できるのがⅭasaの特徴です。

Ⅽasaでは、権利者だけでなく、義務者にも寄り添い、真心のこもったサポートを心掛けています。そのため、養育費だけでなく、離婚にまつわる困りごとも気軽に話してくれるような関係性になりたいと願っています。

株式会社Ⅽasa「PLUS」の詳細については、こちら(株式会社Ⅽasa「PLUS」のwebサイトに移動します)からご確認ください。

株式会社イントラスト「サポぴよの養育費保証」

プランの種類

イントラストには、以下の3種類の養育費保証サービスがあります。

①チャイルドサポート30
②チャイルドサポート50
③チャイルドサポート50+one

サービスの違いの詳細については、以下の項目でお伝えしますが、ざっくりと違いをお伝えしますと、①は、権利者の他に義務者とも契約が必要ですが、その分、更新料がお安いプランとなっています。②及び③は権利者のみの契約で利用が可能ですが、その分更新料が①より高くなっています。また、③は、既に不払いが発生している方でも契約できる点に特徴があります。

申込み条件

チャイルドサポート30 チャイルドサポート50 チャイルドサポート50+one
申し込み条件

・申し込み時点で不払いがない
・養育費を取り決めた書面がある(離婚協議書(合意書)のみでも可能)

・申し込み時点で不払いがあっても可能
・養育費について取り決めた書面がある(公正証書・調停調書・審判書・和解調書・判決書)

契約者

チャイルドサポート30 チャイルドサポート50 チャイルドサポート50+one
契約者 権利者と義務者 権利者

保証上限

3つのプランともに養育費の12か月分を上限として立替えを受けることができます。また、不払いが生じ立替えが発生しても、義務者が返済すれば、その分の立替えを再び受けることができます。立替え額が12か月分に達するまでは保証が続くので、子どもが受取満了歳を迎えるまで利用することも可能です。なお、立替額が12か月分に到達すると保証は終了になります。

保証内容

3つのプランともに月ごとの養育費に加えて定期的な加算額(賞与時の増額など)も保証対象となります。 

費用

費用としては、初回保証料(契約時のみ)、更新保証料(2年目以降、年1回支払う)及び送金手数料(①は自動振り込み、②③は申請により振り込みが発生するため)があります。

チャイルドサポート30 チャイルドサポート50 チャイルドサポート50+one
契約金 月額養育費1か月分 月額養育費1.5か月分
更新保証料 月額養育費の0.3か月分 月額養育費の0.5か月分
月額保証料 なし
送金手数料 ①500円(税込)/ ②250円(税込)/立替時 ③250円(税込)/立替時

免責期間(契約後、立替及び支払い催促が出来ない期間)

①及び②は免責期間なし、③は3か月の免責期間があります。

イントラストからのメッセージ

現在の日本では、3組に1組が離婚をし、9世帯中1世帯が、ひとり親家庭であると言われています。ジェンダーの平等やダイバーシティの推進が世界に広まっていく中、離婚やひとり親の存在は、決して特別なことではなくなりつつあります。

しかし一方で、日本の養育費の受給率は、先進国の中でもかなり低く、世界の中でも裕福なはずのこの国のひとり親家庭に対する取り組みは、まだまだ不足しているように思えてなりません。 

そんな中、2018年、私たちは「養育費保証」というサービスを日本で初めてスタートさせました。

養育費保証サービスを通じて、ひとり親の皆さまが、お金に関する不安や、支払義務者との摩擦から生じるストレスから解放され、お子さまがすくすくと成長できる環境が得られるようにサポートします。また、養育費の受取率が25%以下という現実に問題提起をし、「養育費を取り決め、支払うということが当たり前」の価値観を作り、よりよい社会の実現を目指していきます。

株式会社イントラスト「サポぴよの養育費保証」の詳細については、こちら(株式会社イントラスト「サポぴよの養育費保証」のwebサイトに移動します)からご確認ください。

養育費保証に対する自治体の助成

養育費確保支援等事業を実施する自治体が広がっています。2021年11月時点で、全国1741自治体中109の自治体が公正証書作成費用の助成や養育費保証の契約時の保証料の助成を行っています。せっかくの助成ですので、加入を検討する際は、是非お住まいの自治体に問い合わせしてみてください。

養育費不払いへ備える3つのポイント

きちんと離婚条件を話し合い、養育費を取り決める

不払いを防ぐ上で一番大切なことは、離婚時に義務者及び権利者ともに、「離婚後も子どもの幸せを2人で守っていく」という強い責任感を確認し合うことです。そのためには嫌になった相手であってもADRを利用するなど、話し合いの方法を工夫し、養育費や面会交流を取り決めてから離婚届を提出しましょう。

取り決めた内容を公正証書にする

父母間で取り決めても、差し押さえられる書面になっていなければ、不払い発生時に預金や給与を差し押さえて養育費を確保することはできません。協議離婚の場合、金銭の支払いが離婚条件に含まれるときは、公正証書の作成が重要です。

養育費保証を利用する

養育費の不払いは突然に起きます。義務者に悪意はなくても、勤務先の倒産や義務者自身の病気で突然収入がなくなる、そして養育費が払えなくなる、そういったアクシデントは誰にでも起こり得ます。また、公正証書などの差し押さえが出来る書面があったとしても、不払い発生から差し押さえ手続きを経て、実際に養育費を手にするまで、かなりの時間がかかります。そんな時のために養育費保証の契約をしておくと安心です。

おわりに

当初、養育費保証サービスは、養育費を受け取る側である権利者のためのサービスだと思っていましたが、支払う側の義務者にとってもメリットがあるサービスであることが分かりました。また、保証期間に上限がありますが、一旦不履行になったとしても、義務者が保証会社に支払いをすれば、また保証期間が復活するような仕組みになっています。そして、上限に達する人は少ないとのことですので、この養育費保証サービスが機能している証拠だと言えるのではないでしょうか。

養育費保証は始まって間もないサービスですが、子どもの命綱として利用できる、優れたサービスだと感じました。公的なサービスだけでなく、このような民間のサービスがこれからもどんどん開発され、親の離婚を経験する子どもの心身の安定が守られる社会になればと願っています。

私たち家族のためのADRセンターも離婚をお考えのお父さんお母さんだけでなく、話合いには参加しないお子さんのためにも良い伴走者でありたいと思います。

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