離婚一般

財産分与の2分の1ルールの例外について

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今回のコラムでは、財産分与の2分の1ルールの例外について、代表小泉と調停者である白井弁護士の対談をお届けします。


小泉:今日は、当センターの調停人をしてくださっている弁護士の白井先生に財産分与の2分の1ルールの例外について教えていただきたいと思います。

というのもですね、ADRをやっていると、2分の1ずつが原則なのは分かるけれど、それはちょっと理不尽だ、という主張が結構あるように思います。

例えば、不貞した相手でも半分あげなきゃいけないのかとか、浪費家の妻に僕がこつこつ働いて貯めてきた財産を半分分与しなければいけないのはおかしい、とかですね。

白井:確かに、そういうご主張もありますよね。実際の裁判例にも2分の1ルールではなく、6対4などで分けたものもあったりしますので、具体的に考えていきましょう。

有責配偶者であっても財産分与は2分の1か

小泉:まず、有責配偶者の財産分与はどうでしょうか。例えば、夫が不貞をして、その不貞行為が原因となって離婚する場合であっても、通常通り2分の1ずつ分けなければいけないのでしょうか。

白井:確かに、お気持ちとしてはよくわかる気がします。相手に不貞やDVがある場合、2分の1の財産を渡すのが公平でないと感じることもあるかと思います。

ただ、残念ながら、財産分与は夫婦の財産を清算する制度ですので(慰謝料的財産分与、扶養的財産分与という考え方もありますが)、相手が有責かどうかということは関係ないということになります。そのため、財産分与は2分の1ずつにして、不貞やDVといったことについては慰謝料を求めるということになります。

家事・育児など協力の程度が大きく異なる場合

小泉:では、生活における仕事・家事・育児の分担が大きく不均衡な場合はどうでしょうか。例えば、子どもがいない夫婦で、夫は外で身を粉にして働いているのに、妻は家事もろくにせず遊んでばかりといったケースや、共働きなのに家事育児はもっぱら妻で、夫は非協力的な場合などです。

白井:夫婦は協力扶助義務というのがあるのですが、今、仰っていたようなケースというのは協力の程度が大きく異なるケースと言えるかと思います。

そして、こういったケースが2分の1ルールの例外になるかどうかですが、結論としては、「例外になり得る」ということになります。ただ、やはりかなりのレアケースだと思います。夫が外で働き、妻は家で家事もせずに浪費ばかりしているというケースであっても、普通は多少の家事はやっていることが多いと思うのですよね。

また、共働きの育児分担の話も、大抵は、多少は勤務時間の長さに差が合ったり、少しは家事・育児を手伝っていたりすると思うのです。なので、先ほど、「例外になり得る」とは言いましたが、ほとんどの場合は2分の1ルールが当てはめられると思います。

小泉:そうすると、かなり極端に就労・家事・育児の分担に偏りがあった場合のみ、例外的に2分の1ルールではなくなると理解した方がいいですね。

白井:はい、そうなります。例えば、夫が普通に外で働いていて、妻は専業主婦、子どももいないというようなケースで、妻が一切家事をせず、夫の食事も作らないし、掃除洗濯もしない。そして病気である等の家事ができない理由もないといった場合は2分の1ルールが適用されない可能性はあるかと思います。

加えて、そのような場合であっても、相手が「私は少しは家事をしていた」と主張することも十分考えられます。そうなると、家事をしていないことを証明する必要があるのですが、それがそもそも難しいですよね。散らかった部屋の写真を提出しても、瞬間を切り取っただけですし、24時間カメラを回し続けることもできないですよね。

特殊能力や努力によって財産を築いている場合

小泉:なるほどですね。確かに、「全く家事をしていない」というのを証明するのはかなり難しいですよね。お聞きすればするほど、2分の1ルールの例外ってないのではないかと思ってしまうのですが、次にお聞きしたいのが、どちらか一方の能力で大きな財産を形成している場合はどうでしょうか。例えば、医者とか弁護士とかですね。

白井:医者とか弁護士であるだけでは足りないと思います。その人の特殊能力や努力によってと言えるためには、例えば、ハリウッドの俳優や有名なスポーツ選手のような特別な職業であったり、年収が数億円あるといったようなレベルになってくると、2分の1ルールの例外適用があり得ます。

裁判例では、医師というだけではなく、夫が医療法人の経営者であったケースで2分の1ではない分与を判断しています。

一方が浪費家の場合

小泉:なるほどですね。やはり2分の1ルール強しという感じですね。では、今度は、マイナスの面と言いますか、一方が浪費家の場合はどうでしょうか。例えば、共働き夫婦で、夫はギャンブル好きで蓄えなし、妻は倹約家で財産を築いているような場合です。

白井:確かにそういうケースの場合、妻の財産を夫に分与してしまうと、妻にとっては酷ですよね・・・。この場合もギャンブルによって蓄財がないことが明らかであれば、2分の1ルールの例外となり得るかと思います。

ただ、妻は夫がギャンブルで財産を消失させたと主張しても、夫は、自分の方が家計に多く入れていたので、蓄えがなくなったと主張するかもしれません。実際に、通帳を見ただけでは、どの支出がギャンブルでどの支出が家計か分からなったりしますので、必ずしも妻の言い分が認められて、妻に有利なような財産分与が実現するとは限らないと思います。

小泉:ここまでお聞きして感じるのは、やはり2分の1という原則は強いのだなということです。考え方としては、2分の1ずつ分与することがどちらか一方にとって公平でないと考えられる場合は、2分の1以外の分け方をする可能性もゼロではないけれど、かなり限定的、ということですよね。

特有財産と共有財産が混在している場合

白井:そう考えていただいていいと思います。ただ、もう一つ例外のケースがありまして、特有財産が原資となっている財産について、2分の1ルールが変更されることがあります。

小泉:特有財産は財産分与の対象にはならないとのことでしたし、その特有財産から得られた果実と言いますか、例えば、独身時代に購入した不動産を貸していたとして、その賃料収入は財産分与に対象にならないという話があったと思うのですが、財産分与の対象になることがあって、その際2分の1ルールが変更されるということでしょうか。

白井:確かに、今仰っていただいたのが原則なのですが、特有財産と夫婦の共有財産がきちんと分けられていないことがあるんですよね。例えば、結婚前から株式投資をしていたとします。結婚後も同じ証券口座で売買を繰り返し、利益をあげているような場合、どこからどこまでが特有財産で、どこからが共有財産か分からなくなりますよね。そんな場合に2分の1ではない分け方をすることがあります。

小泉:確かに、婚姻期間が長くなればなるほど、独身時代の財産と婚姻後の財産の区別が付けられなくなったりしますものね。

白井:はい、そうなんです。

小泉:今日は、財産分与の2分の1ルールの例外について、白井先生に教えていただきました。2分の1ずつという原則は本当に強いですね。

白井:はい、そうなんです。ただ、大前提として、今、お話しをしたのはあくまで法律に当てはめた場合の考え方ですので、夫婦双方が合意すれば、例えば「不貞をして申し訳ないから財産は多めに渡すよ」とか、「子どもたちのためにと思って貯めていたお金は君にあげるよ」いった風に、必ずしも2分の1にこだわらない分与も少なくないと思います。

小泉:なるほどですね。財産分与について、なかなかご夫婦二人では合意は難しい、だからといって裁判所で争いたいわけでもないという方は、ぜひ、民間調停の制度であるADRをご利用いただければと思います。

もちろん、ADRでも、ご夫婦二人の合意が難しい場合、「裁判所に行けばこうなる」ということで2分の1ルールをもとにお話し合いをしていただくことになりますが、先ほど白井先生が仰っていたように、双方が納得いけば、その他の合意もあり得ます。

2分の1ルールを適用するのか否かなに注目するというよりは、それぞれに納得のいく分け方を専門家をまじえてしっかりと話し合う、とういったプロセスを経ていただければと思います。白井先生、今日はありがとうございました。

白井:ありがとうございました。

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