性格傾向と離婚

共依存夫婦ーその心理と離婚という選択肢ー

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1010色と言われるように、人の姿形も考え方も様々です。そして、その延長線上にある人との付き合い方や夫婦の関係性も色々です。

今回は夫婦の関係性、とくに共依存の関係性について考えてみたいと思います。

「共依存夫婦」という言葉を聞いたことがある方も初めて聞いた方もこのキーワードに照らしてご自分の夫婦関係について見直してみてはいかがでしょうか。

共依存とはなにか 

共依存の定義

共依存の定義は各種ありますが、

「ある人間関係に縛られ、経済的、精神的、身体的に逃れられない状態にある関係性のことである」

という考え方が広く受け入れられています。

自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存しており、「嗜癖=あることを特に好き好んでするくせ」状態になっている場合を共依存と言います。

アメリカの医師ウィットフィールドは「共依存は自己喪失の病である」と言いました。

誤解してはいけないのは、共依存は、DSM=アメリカ精神医学会における精神障害の診断・統計マニュアルに書かれているような客観的診断名ではなく、関係性を表す言葉に過ぎません。

今回は夫婦関係がテーマですが、それ以外にも依存症者がどの立場であるかによって、「親子」「親戚」「友人」「上司」などに共依存が生じ得ます。

共依存の生い立ち

アルコール依存症というきっかけ

1970年代、アメリカでアルコール依存症の家族が注目されるようになりました。

以前より、看護現場では、アルコール依存症患者を世話する家族は患者に依存し、また患者も世話をする家族に依存しているような状態が見受けられていました。

このことをきっかけに、アルコールを飲んでいる人のみを治療すればよいという考え方やアルコール問題が原因で周りにストレスが起こるのだという理論が終わりを告げました。

アルコール依存症は単一の原因で起こるのではなく、家族内に繰り返される悪循環が問題だとするシステム理論が登場し、アルコール依存症に対するアブロ-チの仕方が変化しました。

 アダルトチルドレンと共依存

1980年代、家族内で繰り返される悪循環を指して共依存と呼ばれるようになりました。

アダルトチルドレンという概念が広がり始めたのもこの時期です。1989年、日本においてアダルトチルドレンと共依存が紹介され、1996年前後には流行語のように広まりました。

その後、共依存は、関係性それ自体が病理であるというとらえ方によって、あらゆる病的な関係の基礎にあるものとして拡大解釈が進みました。

そして、アルコール依存症だけでなく、ギャンブル依存症やDVなどにも共依存関係が見受けられると言われ、現在に至っています。

日本的家族観と共依存

このように、アメリカの看護の現場から生まれた共依存という概念ですが、実は、日本の家族観と大きく関係している点があります。

本の現行民法は、男女平等が明文化されているものの、これまで女性は社会の下支えとして、家事・出産・育児・看病・介護を担うとされ、性別役割分業の家族観が前提にありました。

つまりは、妻が夫の世話をするのは当然という支配的な夫婦観やジェンダー観です。

妻は、経済力もなく、夫を立てて生きていくしかありません。そのため、結婚をしたら夫を世話し、夫のわがままを許し、手のひらの上で転がしながら、うまく自分の言うことを聞かせていく。それが女性の上手な生き方であるという通念が出来上がったのです。

妻にしてみれば、共依存関係は、自分が生き残るために当たり前のことをやっただけなのかもしれません。

自分のことしか考えない夫、夫を傍らで耐えて支え、そこに自分の存在意義を見出し、子どもにも依存する妻、母を支え、父母の関係を調整し、目前で起こる出来事の全責任を自分にあると感じる子どもたち。

これは、これまでの日本の普通の家族構造にすぎず、決して特別ではありません。その関係性が過剰になったとき、共依存関係が生み出され、がんじがらめになって、抜けられなくなってしまうのです。

こちらもご参考ください。
 これからの家族ー大切な個人としての尊重ー

共依存夫婦の心理

では、共依存夫婦とははどんな心理状態におかれているのか、アルコール依存症の夫と、その妻を例に考えてみたいと思います。

アルコール依存症は関係性の病でもある

夫がアルコール依存症(ケアの受け手)、妻が共依存(ケアの与え手)の場合、依存症患者である夫の言動が問題視されがちです。

しかし、妻の言動にも、依存関係に陥る原因がたくさんあります。

  1. いつも夫が飲酒しないように口うるさく注意し、本人の否認を増強させる
  2. 世話を焼き過ぎることで、本人がアルコール問題に直面しないようにしする
  3. 夫の飲酒による失敗の後始末をし、世間にはアルコール問題がないかのように振る舞う
  4. 性格の問題とみなし、 アルコール問題を否認する
  5. 夫がしらふの時には互いに緊張してよそよそしく、飲酒すると互いに感情が爆発する
  6. 夫がしらふの時には妻が支配的で、飲酒すると夫が暴力で妻を支配する
  7. 夫から離れられず、いつも犠牲者としての悲劇のヒロインを演じる

共依存夫婦の心理的悪循環

アルコールによる問題行動が日常化して妻が夫の後始末をし続けている場合、夫と妻の無意識の心理は次のような悪循環に陥ります。

すなわち、ケアの与え手である妻は、「夫は私のケアがないと生きていけない」、「夫は私のケアがあってこそ生きていける」と考えます。

夫を生かしているのは、ケアの与え手であるこの私。このような万能感は、一人の人間を生かしているという所有と支配に満ちています。

一方、ケアの受け手である夫は、自分の飲酒によって影響を受けてくれる人がそばにる、自分が壊れそうになってもそこから引き戻してくれる人がいる、自分が問題を起こしても尻ぬぐいをしてくれる人がいる、そんな安心感を抱きます。

妻の過剰なケアのおかげで、夫は安心してアルコールに依存できる環境が整い、飲酒を止めることが出来なくなるのです。

共依存の本質的心理

アルコール依存症の共依存夫婦を例にすると分かりやすいのですが、共依存症者の行動は、献身的・自己犠牲的に見えますが、実際には患者を回復させる活動を拒み、結果として患者の能力を後退させ、回復を阻害しています。

共依存症者は、相手から依存されることで、無意識的に自己の存在価値を見出します。そして相手をコントロールし、自分の望む行動をとらせることで、自身の心の平穏を保とうとするのです。

他人に対する世話が行きすぎると、結果として、当人や双方の能力を奪い、無力化し、その人の生殺与奪を自分次第とする支配になっていくのです。

共依存とは愛情の名のもとに、自分以外の人を支配し、支配をしている人が満足感を得ているという人間関係のことで、それによって当事者自身に問題が起きたり、苦痛を感じていることが問題なのです。

共依存からの回復

自分が正しい愛情だと信じ切っていた行為を修正することは、そう簡単ではありません。

共依存症者は、お互いの依存を健全な愛や支援と考えている場合がほとんどで、この概念が覆るとき、両者は苦痛・疲労・無力感を背負います。

そして、共依存関係が治療されない場合、アルコール依存症・薬物依存症・摂食障害・自己破壊行動といった問題が改善されないばかりか、共依存関係が原因となって、このような問題を引き起こす可能性さえあります。

そのため、次は、依存症の治療について考えてみたいと思います。

共依存は治るのか

残念ながら、全ての専門家が同意する標準的な治療法はありませんが、認知行動療法的な心理療法や抑うつ症状に対して薬物療法があるほか、集団精神療法・自助グループなども回復に有効だとされています。

そして、そもそも、共依存という言葉は、病名を表しているのではなく、また、共依存という言葉を使って誰かにレッテルを貼ったり、誰かを非難したりするために使うものではありません。

あくまで、人間関係の悪循環に陥っている本人が、自分に気がつくための言葉です。

この「気づき」こそが、共依存からの回復の第一歩なのです。

まずは、自分の快感を得るために他者を利用し、支配している関係であることを自覚することが大切です。その上で、上述の心理療法や自助グループなどを利用し、他者と自己との分離・精神的な自立を目指していくことが回復の道のりなのではないでしょうか。

「自分を守り、自分を幸せにするのは自分自身である」、「自分の人生は自分で切り開いていくしかない」ということに気づくことができれば、回復はもうそこまできています。

 強者が弱者の意思を問わずに介入していくコミュニケーションは、学校でも職場でもあふれていますが、特に、家庭の中では支配になってしまうことを心に留めておかなければなりません。

共依存夫婦の離婚

共依存夫婦のもう一つの回復の方法が「離婚」です。

以下では、共依存夫婦が苦痛に耐えきれず、離婚を決意し、離婚の話し合いをする時の心構えについてお伝えしたいと思います。

主語は「自分」

離婚の話し合いの際、まずは、自分がどうしたいかを考えましょう。

共依存関係が日常だった場合、相手の考えと自分の考えの境界線があいまいになり、自分で自分の気持ちや考えがわからなくなってしまいます。

離婚条件などを整理するにあたって、自分の考えを確認する方法として、「私は○○をしたい。」「私は○○がほしい。」と主語に「私は」をつけて、考えてみてください。

「あなたのため」に惑わされない

相手の「あなたのため」、「君が心配だ」といった言葉に巻き込まれないことが大切です。

相手は、今まで通り、無意識に「あなたのため」「君が心配だ」と枕詞をつけて、相手の意向に沿うようにあなたをコントロールしてくるかもしれません。

しかし、あなたが共依存関係にピリオドを打ちたいのならば、そこに巻き込まれず、「心配はいりません。自分のことは自分で決めます。」と毅然と対応しましょう。

自分の意思で離婚するか否かを決める

離婚後の生活は、前もって想像した通りにはなりません。

結婚していたときの方が良かったと思う瞬間もあるかもしれません。しかし、その想定外の出来事も自分で選択した結果なのです。辛くとも周りの人の助けを借りながら、自分でその結果を引き受けて対応し、前を向いて歩いていけば問題はいずれ解決します。

ですから、不安があっても、最後の決断は自分以外のだれかに決めてもらうのではなく、自分で決めることが大切です 。

別居のススメ

共依存関係にあると思われる方からのご相談をお受けした際、一番よくある感情が「迷い」です。

実際の生活上では、夫の飲酒やDV、モラハラや発達障害など、色々な問題が原因で困難な状況にあります。

子どもや夫だけではなく、まるで家政婦のように舅や姑の世話までさせられ、家事も含め、一人で家の中を回しています。

そんな方に家を出るという選択肢をお伝えしても、「私がいなくなると、あの家は回らなくなってしまう」という言葉が返ってきます。

もちろん、本当に家を心配する気持ちもありますが、自分の役割分担がなくなってしまうことへの不安も大きいのです。

そんな方にお勧めしたいのが、「まずはお試しで別居してみる」という選択肢です。

心身共に相手と距離を置くことによって、自分の本当のニーズが見えることがあります。

別居しても、そわそわして落ち着かなかったり、気分がうつうつとするのか、それとも、解放感を感じて晴れやかな気分になるのか。

少し、物理的な距離と時間的な距離を空けることで、本当の自分のニーズと向き合ってみるのはどうでしょうか。

最後に

今回のコラム執筆のため、信田さよ子さんの著書『共依存 苦しいけど離れられない』を拝読しました。大変読みやすく、引き付けられる著書でしたので、ご興味がある方は是非お読みいただければと思います。

とても興味深かったのは、韓国ドラマ「冬のソナタ」と映画「嫌われ松子の一生」は共依存関係を描いているというくだりです。

早速、DVDを借りて見てみました。

確かに・・・

主人公ユジンは、自分の幸せを自分で選んでいないようです。

ユジンの婚約者のサンヨクも、あのハンサムのぺ・ヨンジュンが演じるチュンサンも、ユジンが「あなたに守ってほしい」と望んでいないのに、「僕が守ってあげる」とユジンの人生を他者が勝手に決めています。

恋愛ドラマも見方を変えると色々と発見があります。面白いですね。

 本来、人と人がお互いに助け合い依存しあうことは良いことで、健全な依存は人生を豊かにします。そのため、健全な関係を保つためにも、自分が愛情だと思っている言動が相手にとって支配になっていないか、時々立ち止まって確認する必要があるのではないでしょうか。

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