小泉(以下、「小」):今日は、一般社団法人びじっと離婚と子ども問題支援センターの総務部長古川さんに、当事者のみなさんが面会交流支援団体を選ぶ際に参考になるような情報をお聞き出ればと思っています。古川さん、よろしくお願いいたします 。
古川(以下、「古」):よろしくお願いいたします。
一般社団法人 びじっと 総務部長 古川 玲子さん 支援スタッフの採用や育成、面会交流支援を広めるための自治体向けの活動など、幅広くご活躍されています。また、2022年8月には、非営利組織とともにリアルな社会課題解決に挑戦するソーシャルアクションアカデミーの講座にもご登壇されています。 |
小:まず、びじっとと言えば、面会交流支援の老舗ということで、実際に支援されている件数もかなり多いのではないでしょうか。
古:そうですね。2021年度は、連絡調整も含めると、年間700回以上の支援実績があります。
小:それはかなりの数ですね~。
古:びじっとの方針のひとつとして、頼ってくれる人がいるのであれば、なるべく断りたくない、というのがあります。そのため、調停調書や公正証書がなかったとしても、支援に必要な項目について父母間合意があればお受けすることがほとんどです。
小:なるほどですね。支援に必要な項目というのはどういったものでしょうか。
古:次の「4つの合意」が必要です。
- びじっとを利用すること及びルールを守ることの合意
- 面会交流の頻度と時間の合意
- 支援の種類(連絡調整型、受渡し型、付添い型)の合意
- 利用料金の負担方法の合意
この4つのうちのひとつでも合意できていない点があると、支援ができません。
小:確かにこの4つは大切なポイントですね。ちなみに、未来の利用者の方にとっては、「どんな人がびじっとを利用しているのだろう」という点も気になるかと思うのですが、利用者像といったものを教えていただけますでしょうか。まず、利用される方は、どんなところでびじっとの存在を知るのでしょうか。
古:一番多いのは、弁護士や家裁の調停内で紹介してもらったという人です。
小:なるほど、びじっとさんは裁判所にとっても頼れる存在ということなんですね。裁判所を利用して面会交流について協議する人というのは、そもそも離婚夫婦の中でも葛藤や紛争性が高いご夫婦が多いかと思うのですが、その中でもさらに面会交流支援を利用される人というのは、かなりの難しさを抱えた人たちということになりますでしょうか。
古:確かに、葛藤の高い父母が多く、少数はDV歴のあるケースもありますが、紛争がひとまず落ち着いてから利用される場合も少なくありません。先ほどご質問があった利用者像ですが、いうなれば、夫婦間の葛藤は高いけれど、紛争性はある程度落ち着いていて、法律はもちろんのことびじっとのルールを守れる人、という感じでしょうか。
小:なるほど、ありがとうございます。次に、みなさんが気になるのは、「どんな人が支援してくれるのか」という点かと思います。
古:支援スタッフについてですが、びじっとでは、無償・有償のボランティアスタッフが支援を担っています。ボランティアさんは、会社員や公務員など、面会交流支援についてはあまり知らないという方々が多いのですが、子育ての支援をしたいということで応募してくれます。ただ、実際の支援の現場に立つまでは、オンライン研修やOJTを経験し、先輩スタッフに色々と教えてもらいながらひとり立ちするというプロセスが必要になります。
小:面会交流支援は熱意や興味があるからといっていきなりできるものではなく、しっかりとした知識やノウハウに基づいて行う必要があることがよく分かりました。
古:それでもやはり大変なケースもありますので、現場でがんばり過ぎずにチームで対応することや、困ったときにはスーパーバイズを受けられるような体制作りにも力を入れています。
また、「個」ではなく、「チーム、組織」として支援を行うメリットは利用者にとっても大きいと考えています。たとえば、びじっとは、数年前から、団体の組織化やノウハウの見える化に力を入れてきました。と言いますのも、面会交流支援団体の中には、個人や小さな団体が少なくなく、代表等のキーパーソンにすべてが委ねられていたりします。しかし、その場合、そのキーパーソンが何らかの理由で動けなくなってしまうと、困るのは利用者です。そういったことがないよう、びじっとでは、だれか一人に頼るのではなく、だれでも支援が継続できる仕組みを作っています。
小:確かに、それは大切な視点ですね。しっかりと研修を受けた支援スタッフが個々の案件を担当する、そして支援全体の仕組みは組織がルール作りやノウハウ作りをしっかりとやっているというのがびじっとの大きな特徴の一つかもしれませんね。ちなみに、ほかにもびじっとの特徴が何かあれば教えていただけますでしょうか。
古:支援の年齢制限がないというのも特徴だと思います。支援団体の中には、子どもが一定の年齢以下であることを支援の条件としている団体もあります。しかし、びじっとは、支援の必要性は子どもの年齢だけでは測れない(例えば、障害や発達特徴のある子どもなど)と考えて、年齢制限を設けていません。
また、付添い型の支援を利用してから、受渡し型や連絡調整型への移行が求められる支援団体もありますが、びじっとは、受渡し型や連絡調整型から利用することも可能です。
小:それは知りませんでした!どこの団体でも最初から利用者の好きな方法で支援を受けられるものとばかり思っていました。
古:もちろん、全ての団体というわけではありませんが、やはりまずは付添い型で様子を見て、大丈夫そうなら少しずつ手を放していくという感じです。しかし、このやり方には支援団体の「大丈夫そう」という「判断」が入ります。びじっとは「父母の合意を尊重する」というのをモットーとしています。
小:そして個人的にびじっとの大きな特徴だと感じているのがADR機関「くりあ」の存在です。「くりあ」についても教えていただけますか。
古:「くりあ」は、法務大臣の認証を受けて立ち上げたADRの機関です。これまで、法的なもめごとが発生すると、家裁で調停をしてから支援再開という流れでした。しかし、家裁での解決は大変長い時間がかかりますし、その間、子どもは離れて暮らす親に会えなくなります。そのため、紛争のワンストップサービスを実現すべく、くりあを立ち上げました。くりあは、基本的にすべてオンラインで完結する手続きですし、早期解決も可能です。そのため、何か法的問題が生じたら、くりあを利用して解決していただき、早期に面会交流を再開するという流れを作れればと思っています。
小:ここまで色々と教えていただきまして、びじっとの特徴がよく分かりました。最後に、今後の活動の方向性のようなものを教えていただけますでしょうか。
古:びじっとは、令和3年度に「かながわ子ども・子育て支援大賞」を受賞したのですが、まさに、面会交流支援は子育て支援の一環だと考えています。そして、「子どもの10年先の未来のため、今の支援を行う」という理念の基、子どもがいい時間を過ごすための面会交流支援を今後も続けていきたいと考えています。また、この度、神奈川県の他の面会交流支援団体と合同で神奈川面会交流支援団体連合会を立ち上げました。今後は、横の連携や行政との協力体制にも力を入れていきたいと考えています。
小:今日は、たくさんのことを教えていただきありがとうございました。