アルコール依存症の夫(妻)と別居・離婚した方がいい3つの理由

アルコール依存症は、1人のアルコール依存症患者の周囲には、数人の酒を飲まない病人が出るともいわれており、家族共倒れという事態にもなりかねません。

もちろん、別居や離婚をするかどうかはあなた自身の判断ですが、このコラムでは「離れた方がいい理由」をお伝えしたいと思います。

 

あなた(配偶者)への影響

暴言・暴力

飲酒をすると、暴言や暴行が配偶者に向かう人も少なくありません。

いつもはおとなしい人に限って、お酒を飲むと気が大きくなったり、乱暴になったりします。また、いつ被害が及ぶかとびくびくして過ごさなければならないのも、とてもストレスフルです。

ここで、典型的な事例を使って、飲酒による暴言・暴力の特徴をお伝えしたいと思います。


夫52歳 会社経営者
妻45歳 専業主婦
子18歳 高校3年生

夫は、昔からお酒が好きだったが、ここ数年、特に酒量が増えていた。
経営する会社が傾き始めたのがきっかけだ。
夫は、生真面目な性格で、仕事至上主義者だったため、会社がうまくいっていないというのは、とても大きな精神的ダメージだった。

元々、夫は専業主婦の妻を見下す傾向にあり、「誰のおかげで生活できていると思うんだ」、「稼がないなら家事くらいしっかりやれ」とモラハラ発言があった。

そして、お酒が入ると、その傾向が強くなり、大声で怒鳴ったり、物にあたることがあった。

最近は、妻への直接的な身体的暴力が始まり、何か気に食わないと、押したり、時には殴ることもあった。

妻は、暴力の原因がお酒であることは分かっていたが、お酒を家に常備していないと、余計に暴力を振るわれそうで怖かった。飲んで帰ってくることが予想される日は、ベッドに入って寝たふりをしつつ、震えていた。家で飲む日は、とにかく怒らせないよう、子どもとビクビクして過ごした。

こんな生活はもう嫌だと思うこともあったが、子どものことを考えると、大学を卒業するまでは何とか我慢しなければと思うのであった。


アルコール依存症と酒乱は別です。そのため、アルコール依存症だからといって、必ずしも飲酒すると暴言・暴力につながるとはかぎりません。

ただ、やはり、アルコール依存症の人が飲むお酒の量は大量で、理性を失うのに十分な量です。少し上機嫌になるだけ、見た目はそんなに変わらない、という人もいますが、やはり、お酒によって、もともとあった問題傾向強くなったり、理性で抑えていた部分が出やすくなったりする人が多いようです。

 

精神的ストレス

アルコール依存症の人は、日常生活のあらゆる場面で社会的に逸脱した行為をしてしまいます。例えば、駅のホームで朝まで寝ていたということもあるでしょう。

しかし、もっと程度がひどくなってくると、飲酒運転をして、物損事故や人身事故を起こすことがあります。また、酔った勢いで他人とけんかになり、警察から電話がかかってくることもあります。

こうした行為の怖さは、アルコール依存症の夫(妻)本人のみではなく、配偶者や家族にまで影響がある点です。一度、深夜に警察からの電話で起こされ、夫の事故・事件を知らされた経験のある人は、それがトラウマとなり、また同じようなことがあるのではないかと常に心配が絶えず、精神的なストレスが大きくなります。

あなたの友人関係への影響

アルコール依存症の夫(妻)は、自分の周囲の人間関係だけではなく、配偶者の人間関係をも壊すことがあります。

例えば、家族ぐるみのお付き合いをしているご家族と一緒に食事をすることになったとします。そんなときは軽くお酒も飲みつつ、ということも多いわけですが、そこでもアルコール依存症の夫(妻)は飲みすぎてしまいます。その結果、場の空気を乱したり、友人家族に失礼なことを言ったりやったりしてしまうのです。

あなたはきっと恥ずかしいやら申し訳ないやらで、その家族との関係を続けられなくなってしまうでしょう。

こうして、あなたの大切な人間関係まで壊されてしまうことがあります。

経済的な影響

会社を辞めてしまう(辞めさせられる)

大切な接待の席で失敗したり、深酒がたたって遅刻が増えたりと様々な理由で会社に居づらくなることがあります。

また、症状が進行してくると、飲んでいないときでも集中力がなくなってしまい、その結果、仕事上のミスを連発してしまうこともあります。

こうしたことが原因で会社をクビになったり、自ら辞職すれば、計り知れない経済的影響を及ぼすことになります。

酒代がかさむ

家で飲むだけであっても、毎日相当の量のアルコール飲料を摂取するので、かなりの金額になります。ましてや、外に飲みに行く人は月額10万円以上の飲み代がかかっていることも珍しくありません。

お金を渡さないと、勝手に財布から抜き取ったり、知らない間に定期や学資保険を解約していたり、最悪の場合は消費者金融で借金をしていたりと、お酒を手に入れるためには何だってするのがアルコール依存症です。

医療費がかかる

お酒の飲みすぎで体を壊し、医療費がかさむこともあります。アルコール依存症の治療は、保険もききますので驚くような高額になることはありません。ただ、繰り返し定期的に治療が必要ですので、仕事を辞めてしまって、貯蓄を切り崩して生活しているような場合は大きな出費となってしまいます。

損害賠償の危険性

飲酒の上、交通事故を起こして、損害賠償を求められるかもしれません。また、外で飲んだ後、店や路上のものを壊したり、誰かと喧嘩をしてけがをさせたりと、そんな場合も同じく損害賠償請求をされる危険性があります。

 

子どもへの影響

夫婦に子どもがいる場合、毎日飲んだくれた親の姿を目にすることになり、子どもにも大きな影響があります。以下では、親の飲酒による子どもへの影響をお伝えします。

基本的な日常生活への影響

アルコール依存症が母親の場合、日常の子育てが困難になります。様々なケースがありますが、母親の場合、日中は普通に生活できるけれど、夕方から夜間にかけて、飲酒がコントロールできないという人がいます。

夜間に飲みすぎてしまうと、朝起きることができません。そのため、朝起きて子どもの朝食を作り、子どもを起こして食べさせ、準備をして登校させるという朝のルーティンができなくなります。

中には、日中も飲んでしまう人もいて、そうなると、掃除や洗濯もできなくなってしまいます。子どもは、散らかった家の中でろくにご飯も作ってもらえず、ネグレクト状態になるのです。

虐待

飲酒による暴言や暴力が子どもに向かった場合、虐待行為となります。また、子どもが対象ではなく、配偶者への暴力や暴言が子どもの目の前で行われていたとしても、面前DVとなり、同じく虐待行為になります。

将来への不安

親がろくに仕事もしないで、自宅で飲んでいる姿を見ていると、このまま学校に通うことができるのか、習い事を続けることはできるのか、そういった将来への不安を抱えるようになります。

また、親の姿を見て、自分もこんな風になってしまうのではないかという不安を抱える子どももいます。

悩みを相談できない

親がアルコール依存症であることは、「恥ずかしい」ことだと感じます。そのため、誰にも相談できず、ひとりで悩みを抱えることになります。

体調不良や精神面への影響

そのうち、子どもはいろいろな形でSOSを出すようになります。不登校、非行、リストカット、自己肯定感の低下、パニック障害など、症状は様々です。

いわゆるAC(アダルトチルドレン)になってしまうのです。

アルコール依存症の親をもつ子どもたちに、親の病気を説明する本がこちらです。

この本は、自分の親がどういう状態にあるのか、子どもの目線で分かりやすく書かれています。特に、悪いのは自分でも親でもなく、お酒であることが説明されているので、自分を責めてしまうお子さんにとってはとてもよい本です。

加えて、この本は、アルコール依存症の配偶者を持ち、離婚するかどうか迷っている方にも読んでほしい本です。

子どもがどんな気持ちで毎日を過ごしているのか、気付きが多いと思います。

また、アルコール依存症の親の治療だけでなく、その子どものケアをしてくれる病院もあります。例えば、成増厚生病院のアルコール依存症病棟には、思春期外来というのありますので、そこで子どもの不登校などを相談することもできます。

子どもは、親より弱い立場にあります。

何よりも優先的に考えてあげて欲しいと思います。

まずは別居を

そうはいっても、「お酒の問題以外はいい人だ」とか、「いつか気付いてくれるのではないか」といった相手への気持ちが残っている場合もあります。

もしくは、相手への気持ちは残っていないけれど、現実問題として別居するお金がないとか、離婚後の生活が不安といった理由から動けずにいる方もいます。

しかし、アルコール依存症は本人と家族を不幸にする深刻な依存症です。また、あなたが気付かないうちに共依存関係に陥っていることもあります。

そのため、まずは別居を検討することがお勧めです。別居の段取りや金銭面のご心配については、ぜひ一度ご相談いただければと思います。このコラムを読んでくださったことが平穏な生活への一歩になるか、それとも現在の生活にとどまるかはあなた次第です。

ご相談は以下のページよりお申込みいただけます。
離婚カウンセリング