夫(妻)がお酒の問題を抱えていたとき、簡単に離婚を決断できるものではなく、何とか治療して、元の夫婦に戻りたいと願う人も多いのではないでしょうか。ただ、アルコール依存症患者は、周囲の家族を病気にするとも言われており、そう簡単ではありません。
以下では、夫婦関係の修復を目指す上で、最低限これがないと難しいのでは、というお話をしたいと思います。
夫(妻)本人がアルコール依存症の治療に協力すること
アルコール依存症の自認
アルコール依存症は、本人が自覚していなかったり、薄々自覚していても、それを認めないことがよくあります。しかし、本人がアルコールに関して問題があると認め、飲酒行動を変えなければ、症状が改善することはありません。もちろん、飲酒を原因とする夫婦間の様々な問題も解決しません。
そのため、まずは本人と話し合い、本人の自覚を促しましょう
アルコール依存症を治療する
受診し、アルコール依存症だと診断されたとしましょう。多くの人は、診断にショックを受けるというより、ほっとするようです。
「お酒を飲んで暴れてしまう、それでもお酒をやめられないというのは、本人のせいではなく、病気なんですよ。」と聞いた時点で、胸のつっかえがとれたようになるのです。なぜなら、「病気だから仕方がない。本人が悪いわけではない」との気持ちがわいてくるからです。
しかし、本人が悪いわけじゃないからといって、日常生活における問題が解決したわけではありません。やはり、治療をしなければ、大変さに変わりはないのです。
そのため、重症度に応じて、通院・入院等の治療方針を決定し、治療を進めましょう。
継続的な治療(自助グループ等への参加等)
アルコール依存症は、治ることはないといわれています。覚せい剤などと同じで、何年経っても、「依存脳」は「依存脳」のままです。そのため、一度アルコール依存症になった人は、上手にお酒と付き合いながら飲酒するということが二度とできなくなってしまい、断酒しかないのです。
しかし、依存症から回復することは可能だと言います。とくに、断酒が2年続けば、そのまま飲まずに一生を終えられる可能性がぐっと高くなります。
そのため、一時的な通院や入院だけではなく、治療が完了した後、「飲まない期間を続けるための努力」が必要になります。
通院やデイケアなどで医療的なアドバイスを受けつつ、断酒会やAAといった自助グループに参加することで、治療的な効果があり、最終的には断酒につながるということがあります。
以上のように、①診断(受診)、②治療、③継続的断酒への努力の3つが続けられない以上、夫(妻)のアルコール依存症はいずれ再発し、あなたの悩みは消えないでしょう。
家族として求められるサポート
次に、あなた自身に求められることをお伝えしたいと思います。
治療への協力
アルコール依存症の治療は、家族の協力なしには成り立ちません。例えば、継続的に通院できていたり、飲酒をしない期間が長くなってきたりしたら、その都度、「できていること」に目を向け、頑張りを認めてあげましょう。
あなたが治療に協力するつもりがないのであれば、夫婦関係の修復は難しいでしょう。
世話をやきたい思いにブレーキをかける
アルコール依存症の夫をもつ妻は、とても面倒みがよくて、世話焼きなタイプが多かったりします。
例えば、お酒が原因で作った借金の肩代わりをしたり、勤務先に遅刻や欠席の連絡をしてあげたりします。また、人から聞かれれば、夫がアルコール依存症だということを隠す人も多いかもしれません。
そういう人のことを「イネイブラー」と言います。知らず知らずのうちに、問題行動を起こすお手伝いをしてしまう人たちのことです。
こうなってしまうと、なかなか本人が病気を認めなかったり、認めたとしても、治療効果が上がらなかったりします。
修復するという選択をしたのであれば、毅然とした態度でアルコール依存症と戦う必要があります。
お酒を飲んでしまったら別居する、お酒が抜けるまで相手にしないなど、夫婦間でルールを決め、きちんとルールを守りましょう。
家族もサポートを受ける
最初に書きましたように、アルコール依存症患者の周りには、複数の病人がでるというくらい、近くにいる人は心身ともに大変な目にあいます。
そのため、患者本人だけではなく、家族も治療が必要なのです。
しんどいな、と感じたら、早めに心療内科を受診しましょう。
アルコール依存症専門の病院の中には、家族会や家族入院といった制度をもった病院もあります。上手に利用し、心身の疲れをためないようにしましょう。
また、AAの家族版もあります。
自助会のいいところは同じ境遇の人と話せることです。ご近所さんやママ友には打ち明けられなくても、同じ境遇にある人であれば、辛い思いを吐露できるはずです。
こうしたサポートをあなた自身が受けることが夫婦関係の修復に必要になります。
まとめ
以上、夫婦関係の修復に必要な条件として、夫(妻)本人がアルコール依存症を自認して治療につながり、継続的に努力することが必要です。また、家族側に求められるのは、治療に協力することやイネイブラーにならないこと、そして家族自体もケアを受けることです。
しかし、この条件が整られることはそう多くありません。本人が自覚しない、自覚はあっても治療につながらないっといったこともあります。
そのため、ぜひ一度、専門家に相談していただければと思います。
また、当センターでは、修復を試みたいけれど、二人ではなかなか難しいという方に対し、カウンセリングを実施しております。ぜひ、おひとりで悩まず、ご相談いただければと思います。