このコラムでは、セックスレスを理由に離婚できるか、そしてその際、慰謝料請求が可能かについて、お伝えします。
セックスレスを理由に離婚できるか
セックスレスを理由に離婚を考えているみなさんは、きっと「セックスレスは法定離婚事由にあたるか」という記事をたくさん読んだのではないでしょうか。
しかし、多くの方は、「相手が離婚に同意しなければ即裁判をする」と考えているのではなく、なるべくなら穏便に離婚したいと考えていると思います。
そのため、「セックスレスで離婚できるか」を考える上で大切なのは、「裁判になったときに離婚が認められるための法定離婚事由にあたるか」という視点ではなく、調停や裁判までせずとも、穏便に離婚できるか、という視点なのです。
そのため、このコラムでは、民間調停の制度であるADRの情報も併せてお伝えします。
ADR(民間調停)という解決策
セックスレスの話題はセンシティブで、裁判という公の場で協議するのは心理的負担が大きすぎますが、一方、センシティブな話題であるが故に、夫婦だけで話をすると、ついつい感情的になってしまい、解決の糸口が見えなくなってしまうことがあります。
そんなときに役に立つのが裁判所や弁護士に頼らない第三の離婚協議の方法、ADR(民間調停)という方法です。
ADRは、民間の調停機関ですが、いわゆるADR法という法律に基づき、法務省が管轄している事業です。裁判所の手続きより簡易に行え、利便性や専門性が高いという特徴があります。
夫婦では合意ができない、一方で、弁護士に依頼して裁判所で争いたいわけではないという方はぜひ以下のページをご覧ください。
裁判による離婚
夫婦で話し合ったり、ADRを利用したけれど、どうしても離婚できなかった場合は、裁判離婚を目指すことになりますが、その際、離婚事由が必要になります。
そして、民法上(民法770条1項各号)、離婚事由は以下の通り定められています。
①不貞
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復しがたい精神病
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
セックスレスは、①~④には当てはまりませんので、⑤にあたるか否かが問題となります。ただ、セックスレスの形は様々で、離婚事由になるかどうかはケースバイケースということになります。一般的には、高齢や病気が原因のセックスレスは離婚事由にならないと言われています。
実は主要な離婚理由の1つ
コラムをご覧のみなさんの中には、「そうは言っても、セックスが理由で離婚してもいいのかな」という思いがあるかもしれません。
この点、令和元年の司法統計によりますと、男女ともに離婚理由として性的不調和が挙げられています。

性的不調和がセックスレスとは限りませんが、不調和のまま性交渉が円滑に継続されていることはあまり考えられませんので、セックスレスとほとんど同義と考えられます。
DVや不貞に比べ、あまり大きな声で主張されることありませんが、セックスレスも立派な離婚理由の一つと言えます。
セックスレスで慰謝料請求できるか
次に、セックスレスが原因で離婚するとして、慰謝料の請求は可能なのでしょうか。以下の判例を参考に見てみましょう。(判例タイムズ1471号を参考にしています。)
セックスレスのみではなく、身体的接触や真摯な姿勢がないことも含めて判断された事例
平成29年8月18日の東京地方裁判所の判決では、夫の拒否が原因によるセックスレスに対し、夫に対し50万円の慰謝料の支払いが命じられました。
夫婦は、交際から離婚に至る約3年間の間に一度も性交渉はおろか、キスや抱擁等の身体的接触もありませんでした。加えて、判決では、以下の点にも言及されました。
①セックスレスのみではなく、それに対して妻が思い悩み、夫に相談したにも関わらず、夫に変化がなかった。
②性交渉以外の夫婦間の精神的結合を深めるような努力もなかった。
夫の性的不能を原因とするセックスレスに慰謝料を認めた事例
東京地方裁判所平成16年5月27日、妻から夫に対するセックスレスの慰謝料請求について、100万円の支払を認める判決がでました。このケースでは、婚姻後に夫が性的不能に陥ったことが原因でセックスレスとなっていますが、以下の点も併せて議論されています。
①本来、妻には夫の性的不能の改善に寄与する努力が必要、というのが一般論
②ただ、本件では、夫の性格や態度から、妻にそれを求めるには酷な事情があった(つまり、夫がひどかった)
③夫が妻を「家政婦同然」に扱っていたこと等も事情に含めた慰謝料
同居義務違反も含めた高額慰謝料が認められた判決
東京地裁平成15年7月31日、夫の拒否によるセックスレスについて、夫から妻に対し、350万円の慰謝料の支払を認めた判決。婚姻後2年間にわたって一度もセックスがなく、しかも夫は同居も拒否。妻が専業主婦、夫は中央省庁の本省勤務だったことも慰謝料の金額に影響を及ぼしたのかもしれません。
妻のセックス拒否に対して慰謝料の支払いを命じた判決
岡山地裁津山支部にて平成3年3月29日、妻のセックス拒否に対して、150万円の慰謝料の支払いを命じる判決がありました。妻は、新婚初夜から一貫してセックスを拒否。加えて、妻から夫への暴言や暴力、同居への義務違反等もあったようです。
まずは相談から
セックスレスを理由にする離婚は、不貞やDV、モラハラといった理由に比べると、友人や親族に相談がしにくい側面があります。
そんなときこそ、おひとりで悩まず、専門家にご相談ください。例えば、まずは別居をして相手から離れることで心を落ち着けることもできます。当センターでは、ベテランのカウンセラーが皆さんのお悩みをお聞きし、一緒に解決への道を伴走します。
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