養育費

養育費における本当の「勝ち」とは?

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離婚した夫婦に未成年の子どもがいた場合、非監護親が監護親に子どもを養育するお金として支払うのが養育費です。養育費といえば、子どもがいる夫婦の離婚にとって、親権者問題と並ぶ2大問題(最近は面会交流もメジャーになってきたので3大問題でしょうか。)の1つです。今回は、養育費について実情を踏まえて書きたいと思います。もちろん、「子どもを育てるのにこのぐらいあれば十分かな。」という金額が父母間で一致していると問題ないのですが、やはりそうはいきません。今回は双方に争いがあるという前提です。

   1 養育費の計算方法

1-1 算定表

養育費はどのように決められるのでしょうか?「子ども一人3万円」が標準だと思っておられる方もいるかもしれませんが、標準というものはありません。現在、養育費は算定表という表を参考に協議されます。この算定表は、裁判官が中心となって作った表で、広く全国の裁判所で使用され、裁判所のホームページをはじめ、離婚関係の書籍にも掲載されています。

簡単に説明しますと、双方の収入、子どもの人数と年齢をもとに作られた表です。現在は、①この表を使って基本の金額を算出し、②そこから双方が主張する特別な事情を加味して金額を決めていくというのがオーソドックスなパターンになっています。

なお、2016年11月に弁護士会が新算定表を作成しており、これを使うと現状の算定表より養育費が高く算出されるようです。そのため、家庭裁判所の調停でも、養育費をもらう方は新算定表を、支払う方は現算定表を使用して算出した金額を主張するといったことが起こったりしています。今のところ、裁判官は現算定表をもとに判断していますが、昨今、母子家庭の貧困問題がクローズアップされたりしていますので、今後の動きに注目です。

1-2 収入の求め方

算定表を利用する前段階で、お互いの収入を確定する必要があります。基本的には、最新の源泉徴収票や確定申告書(自営業の場合や収入が二千万円以上の場合)で足ります。 しかし、収入幅の大きい職業や、収入の増減が確実に想定される場合等は、その事情を主張することもできます。 逆に、収入を減らすために転職したり、養育費を支払いたくないために辞職したとしても「稼働能力あり」として本来得られるべき収入で計算される場合もあります。この場合、出身大学等の経歴、これまでの稼働実績、現在の稼働能力等を総合的に判断して決められることになります。また、専業主婦であっても、子どもがある程度の大きさになっている場合は、「パートに出ればこのぐらいは稼げるでしょ。」ということで年間100万円程度の収入を見込まれることもあります。

1-3 主張できる特別な事情

算定表は、大きな目安にはなりますが、その金額がすべてではありません。夫婦や子どもをとりまく事情は様々ですので、算定表には含まれない特別な事情があれば、それを主張することもできます。 例えば、「子どもに持病があって高額な医療費がかかる。」「既に私立学校に通っており(もしくは、婚姻中に私立に行かせることに合意があり、)、学費が高額になる。」といった場合 などが考えられます。どちらかが住んでいる家のローンをもう一方が支払っていたり、同居当時に生活のために作った借金を返済している場合等も事情として考慮されます。

また、特別出費条項といって、予期せぬ事態が起こったときには、双方で再度協議するというような条項を加えることもできます。この条項は、通常の養育費のほかに、子どもが病気をしたり、就学時等に特別な出費があった場合に協議をすると定めるものです。

1-4 養育費は何歳まで?

原則20歳までですが、調停の段階では双方の合意によりますので、「(大学卒業を想定して)22歳まで」とするのも可能です。また、年齢によって生活費が変わってくることを想定して、「14歳までは3万円、15歳から18歳までは5万円、19歳から22歳までは6万円」などと決めておくこともできます。

   2 養育費請求の注意点

2-1 いつ請求できるか

離婚と同時に取り決めるのが一般的ですが、「とにかく早く別れたかったので、何も決めずに離婚してしまいました。」なんていう場合もあるかと思います。 養育費は、離婚した後でも請求することができますし、過去の養育費についても請求できる場合があります。また、「離婚のときに養育費は請求しないと約束してしまった。」という場合でも、請求できることがあります。その後の事情変更もあるでしょうし、子どもからの請求権までを放棄したのではないという考え方もあります。更に、一度決めた養育費を「事情の変更」により増額・減額してほしいという主張もできます。

2-2 一括払いか毎月払いか

基本的には月々いくらという決め方をします。しかし、双方の合意があれば、一括払いとすることもできます。 例えば、自営業者でかなり資産があり一括払いが可能な資力がある一方、将来の安定性はないような場合です。このような場合、一括で支払ってもらうかわりに、毎月支払う場合の総額より減額するというパターンが多いようです。 こうすれば、支払う方としても、支払総額が減るメリットがあり、受け取る側としても、将来支払いが滞る危険性を回避できるという安心感があります。 ただ、「お父さん(お母さん)は毎月子どものために養育費を支払っているんだ。」と子どもに理解してもらうためには月払いの方がいいのかもしれません。

2-3 支払いが滞った場合

せっかく取り決めても実際に支払ってもらえなければ意味がありません。しかし、残念ながら、約束通りに支払ってもらえないこともままあります。そのような場合、家庭裁判所の履行勧告や地方裁判所の強制執行という手続きをとることができます。

こちらも参考にどうぞ
養育費が支払われない場合の完全マニュアル

   3 養育費でもめる諸要因

ここからがみなさんに一番お伝えしたいことです。

養育費は婚姻費用(離婚成立前に妻(夫)と子の生活費として支払うお金)と違って、子どものためだけのお金なので、支払う方も抵抗が少ないように思います。また、最近では算定表も広く認識されるようになり、「払わなくて済むものじゃない。」という理解も定着してきたように思います。 しかしながら、理不尽な主張をする人たちもまだまだ多いのが現状です。

例えば、「妻(夫)には浪費癖があるから、本当に子どものために使われるかどうかわかったもんじゃない。」とか、「養育費がなければ子どもを育てられないくらいなら、自分で育てる。」等と言って支払いを渋る人がいます。また、時々あるのが、別の事情で過大な金額(過小な支払)を主張する人たちがいます。例えば、妻に浮気された夫が、上辺では「浮気なんてけしからん。即刻離婚だ。養育費を支払うくらいなら親権も譲らん。」と主張しますが、内心は、「本当は離婚したくないけど、浮気されて離婚しないなんてプライドが許さない。無理難題を言って離婚を引き延ばそう。」と思っていたりすることがあります。 また、妻側にたまに見られるのが、婚姻中の不満(あんなに家事・育児を頑張ったのに分かってくれない等)が理解されないために意地をはってしまうパターンんです。以前も、養育が大変難しい発達障害の子どもを育てていたお母さんが「子どもの療育にお金がかかる。」という理由で、算定表よりもかなり高額な養育費を要求していたことがありました。このお母さん、夫が「妻は、子どもの世話を誰よりも頑張ってくれていた。」と言っていたと聞かされたとたんに涙を流し、結果として要求金額を下げました。 このように、経済的な事情とは別の理由で話合いが頓挫することがありますので、「どうしてこの人はこんな主張をするのだろう。」という視点をもつことが必要なのではないかと思います。

   4 養育費における「勝ち」とは

みなさんはどのような結果が養育費における「勝ち」だと考えますか? 支払ってもらう側としては、できるかぎりの高額を勝ち取ることでしょうか、支払う方にとっては、なるべく金額を抑えることが勝ちなのでしょうか。私は 、以下の4つが実現すれば、子どもも含めた双方の「勝ち」だと思っています。

①子どもがなるべく離婚前と変わらない生活を送れること
②同居親と子どもが「離婚はしても親として責任を果たしてくれている。」と感じられること
③別居親が養育費を通じて子どもの養育に関わっていると実感できること
④滞ることなく最後まで支払ってもらうこと

そのため、まずは、算定表を基本とした適切な金額を決めた上で、支払いが継続されるよう双方が最低限の礼儀を尽くすことが必要だと思います。 例えば、入金を確認したら「今月もありがとうございます。」等の簡単なメールを送るとか、「今月は〇〇が必要だったので養育費を使わせてもらいました。」等と具体的に伝えるのもいいかもしれません。逆に、少し支払いが遅れたからといって、嫌がらせで夫の会社に連絡したり、執拗にメール攻撃したりするのはやめましょう。夫が失業してしまえば、もらえる養育費ももらえなくなります。激しい戦いに心を病んでうつになったり、会社から理解を得られずやむなく無職状態に陥る場合もあります。

一方、支払う側としては、子どもを育てる苦労に敬意を持ち、確実に支払いを継続することが大切です。養育費は子どもの生活を維持する大切お金です。数日入金が遅れるだけでも相手は不安になります。遅れる事情やいつなら入金できるのかということを事前に伝えましょう。

そして、何より大切なのは、子どもに「お父さん(お母さん)は養育費を支払ってくれている。」ということを伝えることです。たとえ金額に不満があったとしても、決して「少ししかくれないから塾をやめなきゃいけない(〇〇が買えない)。」などと言ってはいけません。言ったところで金額は増えません。子どもに養育費が不足していることを知らしめたところで、子どに何らいい影響はありません。このような双方の気遣いによって、子どもは「親は離婚したけど、自分のことを大切に思ってくれている。」と感じることができますし、生活の質の低下も少なくて済みます。お金の話になると、「損得=金額」という考え方になってしまいますが、数年先も見据えて考えてみてください。

こちらも参考までにどうぞ
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