離婚を迷っている方へ

ちょって待ってその離婚⑵

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今回は、「ちょっと待ってその離婚!⑴」の続きです。是非前回の記事を読んでからご覧ください。事例の設定は以下のとおりです。今回も読みやすいように頑張ってます!

夫:48歳 経営コンサルタント(自営)
妻:42歳 専業主婦
長男:10歳 
長女:8歳

   1 別居後の生活の変化

1-1 経済的な問題

 

妻は、何とか別居を実現したものの、へそくりや独身時代の預貯金などをほとんど使い果たしてしまいました。また、養育費の計算上、自分が「稼働能力あり」とされていたことにも衝撃を受け、何とか仕事を探して収入を得なければと考えました。しかし、結婚以来、専業主婦として家にいた妻にはまともな働き先はありません。かといって、スーパーのレジ打ちなど近所で仕事をしても、誰か知っている人に会うのではないかと思うと踏み切れません。そこで、妻は、いくらも稼げない「通信教育の添削」という仕事を自宅で始めました。

別居後に特に問題になるのが生活費の問題です。何とか別居したとしても、敷金や礼金、2か月分の家賃や引っ越し代金、家具一式を揃える必要があったりと100万円以上のお金が必要になることも少なくありません。そのため、その後の生活が急に苦しくなるのです。そのような現実に直面し、再就職を決断する人もいます。しかし、専業主婦はもちろん、勤務経験がある人でもキャリア中断期間が長くなると、再就職は容易ではありません。かといって、近所で適当なパートをするのもメンツが気になったりするものです。いきなりフルタイムで働くチャンスも少なく、再就職して一定の給料を得るのはとても難しいのです。

1-2 当てにならない婚姻費用

妻は、別居の際、夫から算定表どおりの婚姻費用を支払うと言われていたため、その振込を待っていましたが、待てど暮らせど入金がありません。既に夫と連絡を取るのが大変なストレスになっていた妻ですが、背に腹は代えられないということでメールで請求してみました。すると、夫からは次のようなメールが返ってきました。「先日、長女の学校の寄付金依頼と君が使っているクレジットカードの請求が来た。合計金額が婚姻費用を上回るため、今月は入金いたしません。」

婚姻費用も養育費と同様、算定表で基準が決められていますので、比較的決めやすいものです。しかし、実際に支払いが始まってみると、思わぬ落とし穴がたくさん出てきます。まずは、「支払う方に主導権」があることが問題です。事例のように、長女の学校の寄付金やクレジットカードの支払いが婚姻費用に含まれるかどうかは別にして、いったんはその判断が支払う側に委ねられてしまうのです。そして、既にお互いが連絡を取りたくない関係になっていますので、「遅れる」「こういった理由で支払わない」などの連絡はないことを多いものです。受け取る側は、「待つしかできない。」という不安な状況に陥るのです。

1-3 子どもにも影響が及ぶ

妻は、別居に際し子どもたちに「お父さんは他に一緒にいたい人ができたみたいだから、お母さんやあなたたちとは暮らせないの。」と説明しました。そして、転居や転校についても説明しました。長男も長女も聞き分けがよく、特に文句も言わずうなずいて聞いていました。しかし、別居後、長男の様子に少しずつ変化が出てきました。長男は、別居による転校を余儀なくされていた上、一足先に妻の旧姓を学校で名乗っていたのです。妻としては、長男が親の離婚でいじめられたりしないための配慮でした。しかし、長男は、学校にも旧姓で呼ばれることにも違和感が大きく、なかなか友人もできなかったようです。

少したつと、今度は、長女にも変化が見られるようになってきました。長女は、進んでお手伝いをするようになったり、買い物にいった際、欲しいものをむやみにねだったりしなくなりました。最初は「何だか最近いい子になってきたわ。」と嬉しく思っていたのですが、よくよく長女の話を聞いてみると、働く母の負担を減らしてあげたいという気持ちや、このままでは私立の学校を辞めなければならないのではないかという不安があったようです。妻は、長女の成長を嬉しく思う気持ちと、負担をかけて申し訳ない気持ちが複雑に混ざり合っていました。

別居は、子どもたちにも大きな変化をもたらします。特に、転校が伴う転居の場合は特にです。小学校高学年ともなれば、友人らとの結びつきが強くなり、悩みも親にではなく友達に相談していたりします。そのため、転校による友人の喪失は大きなダメージになりえます。また、苗字の変化も子どものアイデンティティに影響を及ぼします。事例のように、学校等の関係で家族の中で一人だけ先に変わったりする場合は特に注意が必要です。また、忙しくなった親の変化を敏感に感じとり、事例の長女のように「いい子」になる場合もあります。もちろん、親の手伝いをしたり、家計を心配して無駄遣いをやめることは望ましいことなのですが、過度にいい子になっていることもあり(「過熟」といいます)、喜んでばかりはいられません。

親の離婚がお子さんに与える影響についてはこちらをご参考ください。
 親の離婚、子どものは悪影響!?
 離婚が子どもに及ぼす悪影響とその軽減方法

   2 離婚協議に突入

2-1 弁護士に相談

別居により、妻は揺れていた気持ちが離婚へと傾き、本格的に夫と離婚条件を話し合う決心がつきました。そして、気持ちが落ち着くと、今抱えている問題も自然と明確化されてきました。妻は、夫が言っていたとおり、婚姻費用や養育費は算定表どおりの金額でなければならないのか、慰謝料はどのくらいとれるのかなど、金銭面の相談を弁護士にすることにしました。といっても、生活費にも困るくらいですので、妻は無料相談しか選択肢がありません。妻は、駅前に無料相談をしている弁護士事務所があったのを思い出しました。事務所に入ってみると、受付の女性がにこやかに迎え入れてくれました。担当の弁護士もとても感じがよさそうです。しかし、財産分与の話題になり、分与するほどの財産がないと分かったとたん、素気ない態度になったような気がしました。そして、相談時間30分きっかりに終了されてしまいました。妻は、弁護士ってみんなこんな感じなのかなと、半ばあきらめの気持ちで帰路に就きました。

弁護士に依頼するかどうかも大きな問題です。弁護士を依頼するとなると、成功報酬(財産分与額)にもよりますが、少なくとも70万円程度はかかることが多いように思います。確かに、離婚は人生の一大事ですし、この70万円を出し惜しんだせいでもっと大きなお金を失うことにもなりかねません。しかし、70万円は決して安い金額でもありません。正式に依頼する前に、その価値があるかどうか十分に検討しましょう。

また、離婚に強い弁護士を効率的に探すのも簡単ではありません。近頃は、弁護士登録サイトがあふれていて、お金さえ出せば検索で上がってくる得意分野を増やすことができます。そのため、特に得意でもない離婚案件を「専門」として登録している弁護士に当たってしまうかもしれないということです。また、弁護士によっては、お金にならないと分かったとたんに手の平を返すような態度をとる弁護士もいますので、最終的に依頼するのであれば、人柄も大切です。

弁護士に依頼するかどうか、依頼するとすればどうやって探すのか、こちらの記事も参考にお読みください。
離婚に弁護士は必要か?!
離婚に強い弁護士の探し方と選び方

2-2 専業主婦でも親権者になれない?!

妻は、「専業主婦である自分が親権者になるのは当たり前」だと思っていました。ところが、夫は「妻の経済力のなさと家計管理の甘さが心配だ。私が親権者で妻が監護者というのはどうだ。」と言い出したのです。妻は、日常生活の世話だけ自分に押し付けて、大事な決定権は自分で握ろうとする夫の態度に嫌になりました。そもそも、これまで子どものことを一番考えてきたのは自分だという自負もあり、親権者を夫に譲るという選択肢はありませんでした。そのような強い気持ちを夫に伝えたところ、夫も相談している弁護士にあきらめろと言われたようで、親権を主張しなくなりました。ただ、代わりに面会交流を求められ、妻はしぶしぶ了解しました。

意外と多いのが、無理だと分かっていても親権を主張してくる夫です。その理由は様々で、そもそも離婚したくなかったり、面会交流を充実させたかったりと親権とは関係ない理由が潜んでいたりします。ですので、このような場合、「どうしてこの人は親権を主張しているのか。」と相手の気持ちを想像することが大切です。相手が理不尽に親権を主張していることに腹を立てていても埒があきません。相手の真意を理解することで解決の糸口が見つかるかもしれません。

2-3 面会交流

しぶしぶ了解した面会交流ですが、夫と子どもたちが会うとなれば連絡を取らざるを得ません。妻としては、離婚すれば夫と完全に縁が切れると思っていたのに、当てが外れた気持ちでした。ただ、夫の主張は「月一回程度」と受け入れられる条件でしたし、もともと子どもと夫の関係は良好でしたので、面会交流については会わせる方向で協議を進めることにしました。

離婚を過去の清算と位置付ける人は少なくありません。しかし、そう簡単にはいきません。子どもがいる場合、お互いが子どもの親としてかかわらざるを得ないからです。また、そもそも、過去の結婚や婚姻生活を「完全な失敗」としてなかったものにしてしまうと、自分の人生の大切な部分を否定してしまうことにもなります。ですので、「臭い物には蓋をしろ。」ではなく、過去は過去でけじめをつけた上で、離婚を「未来に進むためのもの」と捉えることをお勧めします。

   3 離婚条件の残し方

離婚条件がほぼ整い、後はどのような形で離婚条件を残すかという話になりました。妻は、協議離婚という言葉は聞いたことがあっても、離婚条件をどのような形で残すか、何てことは考えたことがなかったので困ってしまいました。ネットで調べたところ、離婚協議書と離婚公正証書という言葉があがってきました。その違いを説明している箇所も読みましたが、いまいちよく分かりません。ただ、公正証書を作成する場合、離婚協議書を作成するより時間やお金がややかかるということは理解できました。妻としては、とにかく早く離婚したい気持ちが強く、めんどうな手続きも避けたかったため、離婚協議書で残すことにしました。また、夫はとにかく真面目な性格だったため、一度決めた約束を破ることはないとも思えました。

協議離婚の場合、離婚条件をどのような形で残すかが問題になってきます。もしかしたら、一番多いのは「口頭での約束」かもしれません。しかし、口頭の約束は何の拘束力も証拠能力もありません。養育費などの継続的な給付がある場合は、少なくとも離婚協議書を作成しておく必要があります。また、離婚公正証書を作成しておけばさらに安心です。離婚協議書と離婚公正証書の一番大きな違いは「強制執行ができるかどうか」です。「この人はまじめな人だから。」とか「子どものためのお金だから滞納するはずはないだろう。」という予想は当てになりません。幸いにして予想が当たればいいですが、大切なのは「転ばぬ先の杖」です。

離婚協議書と公正証書の違いや相手が公正証書の作成を拒んだ場合の作戦についてはこちらをご覧ください。(別リンクです)
離婚協議書と離婚公正証書の違い
離婚公正証書の作成を拒まれたときの4つの作成方法

長くなってしまったので続きは次回にします。次は完結編をお届けしたいと思います。 

 

 

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