離婚を迷っている方へ

ちょっと待ってその離婚!⑴

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今日は、離婚を考え始める前に読んでいただきたい記事です。

日々、相手への不満を募らせ、我慢をしながら生活していると「離婚」という結論に逃げ込みたくなってしまいます。しかし、現実的な検討をしないままに離婚協議に突入してしまうと、「こんなはずじゃなかった。」「やっぱり夫婦関係を修復した方がましだった。でも、もう遅い・・。」という結果になってしまいます。今回は、みなさんが考える「理想の離婚」と「現実の離婚」との差について書いていきたいと思います。

時折り、読者のみなさんから「内容が難しい、もっと読みやすいものを書いてほしい。」とのご意見が聞かれます。今回は事例夫婦を使って読みやすい記事に仕上げたいと思います!

   1 離婚を「超入口」での失敗

夫:48歳 経営コンサルタント(自営)
妻:42歳 専業主婦
長男:10歳 
長女:8歳

妻は、最近、夫の泊付き出張が増えていることが気になっていました。しかし、夫は、どちらかというと真面目なタイプで、子どもの面倒もあまりみれないぐらい多忙な人でしたので、「きっと浮気何てする暇もないはず。」と自分を納得させていました。

1-1 覚悟がなければ夫の浮気は暴いてはいけない

しかし、ある日、いけないと思いながらも入浴中の夫の携帯電話を確認したところ、知らない女性との男女関係を想像させるようなメールが残されていました。妻はショックのあまり、「家族を裏切って浮気をするなんてひどい!」と、後先考えずに夫に詰め寄りました。すると夫は、あっさりと浮気を認め、「悪かった。」と謝りました。

妻は大変悩みました。これまで信頼してきた夫に裏切られたと思うと、悔しさや情けなさなどが入り交じり、このまま一緒に生活するのは不可能なように思われました。しかし、一方で、専業主婦である自分に2人の子どもが育てられるのかという経済的な不安が付きまとい、妻は身動きが取れなくなってしまいました。知らない方が楽だったとも思いました。しかし、知ってしまった以上、なかったことにはできませんでした。

一緒に生活をしていると、相手の言動から「うん?怪しい・・。」と思うことってありますよね。事例の夫のように、宿泊での出張が増えたり、帰りが遅くなったり、急に携帯電話にパスワードを設定したり。でも、そこでむやみやたらに「暴き行為」に移ってはいけません。配偶者の浮気の証拠を掴んだとき、一番傷付くのは自分なのです。

一方で、既に離婚を決断している場合は、その証拠は離婚に有利な証拠として「大切な材料」になります。ですので、一番大切なことは、浮気を疑った時点で「もし浮気が本当だったら、自分はどうするか。」という決断をしておくことです。男女問題カウンセリングなどでも、配偶者の浮気を疑う声がよく聞かれます。そこでアドバイスをしているのは、「相手の浮気が事実だとしても、離婚を決断できないのであれば、証拠を掴んではいけない。」ということです。こうしておけば、お互いに逃げ場ができるので、夫婦生活を継続しやすくなります。時に「グレー」な結論の方が気が楽だったりするのです。

ただ、同じことを繰り返されては困りますので、「私はあなたの浮気を疑っている。もし本当ならやめてほしい。」ということだけは伝える必要がありますが。

1-2 離婚は一人で抱え込んではいけない

妻は、夫の浮気が発覚した後、生きる気力を奪われたような気がしました。毎日が苦しく、何をしても楽しいと感じることができませんでした。食欲もなくなり、寝付けない夜が増えました。しかし、実家の両親には心配をかけたくないので相談はできません。ママ友にも子どもたちへの影響を考えると相談できません。専業主婦ですので、気楽に愚痴をこぼせる同僚もいません。弁護士の法律相談に行こうかとも思いましたが、一体何を相談したいのかも分からず、行かずじまいでした。だんだん、子どもたちの世話もできなくなり、すがるような気持ちで心療内科で診察してもらったところ、うつ病と診断されました。

積み重ねられた夫婦不和の結果の離婚は、ある程度双方共に覚悟や予感があるものです。しかし、突然に浮気が発覚した、突然に別れを切り出された、なんていう場合は、片方に大きな衝撃が走ります。

そして、夫婦不和の問題というのは、意外と相談相手が見つかりません。一番いいのは、身近に離婚経験者などがいる場合ですが、「離婚した方がいいよ。」と偏ったアドバイスが返ってくるのも問題です。

先日も少し話題にしましたが、生活上のストレスを点数で表した実験があり(子はかすがいでなく災いの元!?)、離婚は第2位にランクインしています。それだけストレスフルなライフイベントを誰にも相談せず、育児や仕事をこなしながら乗り切ろうというのがそもそも無理なのです。相談相手がいない方は、診療内科を受診したり、カウンセリングを受けるなど、まったく関係のない第三者に心情を吐露するのも手です。

1-3 別居先がない

妻は、このまま同居しているとうつ病が悪化しそうだと思いました。また、離婚の協議を進めるにしても、同居したまま争うなんて、考えただけで気持ちがしんどくなりました。そのため、どちらかが家を出て別居する必要があります。夫は、自宅を自営のコンサルタント事務所として登記しており、妻が子どもを連れて出ていくしかありません。しかし、実家は手狭で同居できません。子どもたちが転校・転園しなくてすむようにと近隣への転居を考えましたが、高級住宅街に位置する自宅の付近は家賃が高すぎます。結局、妻は、学区をまたいだ比較的家賃が安い地域に1DKのアパートを借りることになりました。

ほとんどの場合、離婚をする前にまずは別居します。というのも、同居のまま離婚協議を進めるのがとてもしんどいからです。また、修復の可能性も含め、夫婦の関係性を見つめなおしたり、お互いが冷静になるためにも、別居が必要なのです。

しかし、意外と転居先がなくて困ることがあります。近くに実家があり、子どもの生活環境を変えずに別居できる状況であれば問題ないのですが、実家に同居のスペースがなかったり、遠く離れていたりすると実家は頼れません。夫が一人でアパートとなどを借りて出て行ってくれることもありますが、離婚や別居に同意してくれていない場合はこれも成立しません。アパートを借りるにしても、敷金や礼金、保証人の問題などがあり、専業主婦は簡単に借りられなかったりします。子連れ別居の場合はなおさらですが、まずは、生活の基盤である住まいを確保してから離婚を決断しましょう。

   2 慰謝料と養育費の落とし穴

2-1 浮気の代償は大きくない?!

うつ病の治療をしながらも離婚を決断した妻は、まずは慰謝料を取ろうと考えました。夫の浮気が発覚してからというもの、大変しんどい日々を送ってきました。また、何の落ち度もない自分にこんなつらい思いをさせる夫を許せないという気持ちもあり、このつらさの分だけ慰謝料を取れるはずだと思っていました。妻としては、夫が浮気ではなく本気になってしまったこともあり、慰謝料は1,000万円くらい取れるだろうと予想しました。予想の根拠は年収です。1年分の給料くらい、慰謝料としてもらってもよいだろうと思ったのです。

残念ながら、現実はそう甘くありません。浮気が理由の慰謝料を請求する場合、婚姻期間の長さや浮気の程度、収入等の事情を総合的に判断することになりますが、「年収と同じくらいは取れるだろう。」という基準はありません。テレビでは、ハリウッドスターが何億という慰謝料を支払っているニュースが流れていますが、日本の一般市民で何千万という慰謝料はまずないと思っていいでしょう(もちろん、相手が同意すればいくらでももらえますが。)。これまで、一番多く目にしてきたのは、200万円から300万円といったところです。

2-2 算定表通りでも低い養育費

夫は経営コンサルタントとして年収が1,000万円程度あります。妻としては、夫は高収入の部類に入ると考えており、2人の子どもの養育に困らない程度の養育費が受け取れるだろうと考えました。

現実として、長男は受験のための塾代が月に4万円かかります。長女は、私立小学校に通っており、学費を月換算すると8万円になります。そのほか、長男のスイミング、長女のバレエとピアノといった習い事で月額合計5万円がかかります。これだけで既に17万円です。そのほかにも、長男の修学旅行の積み立て、長女のバレエの発表会費用、学校への寄付金など、教育費だけでゆうに月額20万円は超えます。他にも、生活費として、2人の食費、携帯代、小遣い、遊興費、被服費、諸々の費用を考えると合計30万円はもらわないと無職の自分に2人の子どもは育てていけないと思いました。

妻も、30万円が安い金額だとは思っていません。しかし、夫の浮気が原因の離婚です。また、夫が同意していた教育方針に必要なお金でもあります。さらに言うと、夫の月額の手取りは大体60万円程度です。夫は1人世帯なのに対し、妻と子どもは3人です。もう少しほしいくらいだという気すらしました。

ところが、夫に養育費の話を持ち掛けたところ、ただ一言「算定表通りの金額は払うが、それ以上は出せない。」と言われてしまいました。慌てて夫が示した算定表を見てみたところ、何と20万円のところに赤丸が付けられていました。

残念ながら、必要な分だけもらえるのが養育費ではありません。また、手取りを人数分で案分するものでもありません。現在の養育費は算定表という「目安」にそって決められます。もちろん、双方が合意していれば、どんな金額で決めてもかまわないのですが、一番多いのは、「算定表通りで」という結論です。最近、日弁連で「新算定表」なるものが作成され、算定表より高い金額が示されていますが、今のところは、裁判所で参考にされている形跡はありません。

2-3 稼働能力って何?

妻は、夫に示された算定表をしげしげと見てみました。すると、おかしなことに気付きました。無職である自分の収入が100万円になっているのです。これについて夫に問い詰めたところ、「下の娘も既に小学校に通っている。パートで年間100万円くらいは稼げるんじゃないか。」と言われてしまいました。妻は、これまでずっと専業主婦で、手に職はありません。かといって、近所のスーパーのレジ打ちなんて恥ずかしくてできません。突然に突き付けられた「働く」という選択肢に、妻は戸惑うばかりでした。

稼働能力という考え方は、決して専業主婦をいじめるためのものではないのです。中には、養育費を支払いたくないがために転職したり辞職したりする人もいるので、「本来ならばこのぐらい稼げるでしょ。」という目安の金額を決めているのです。妻の場合、2人の子どもがいますが、既に就学していますので、約100万円程度の稼働能力が見込まれてしまったのです。「今更働けと言われても」という気持ちも分かりますが、離婚後避けて通れないのが「働く」という道なのです。

   3 財産分与の落とし穴

3-1 今ある財産を単純に半分ではない

妻は、当面の生活費として財産分与も頼りにしていました。夫は、不動産運用なども行っており、既に自宅のほかに2件持っています。妻は、独身時代のそれぞれの財産が分与対象にならないことは知っていました。しかし、不動産は結婚してから購入したものですし、まだ相当の価値があるはずでした。

しかし、夫からは、次のような返事が返ってきました。「不動産は、婚姻期間中に買ったものだが、購入金額の半分に当たる頭金は、僕の独身時代の蓄えから支払った。今売却すると、5,000万円程度にはなると思うが、ローンの残債3,000万円を差し引きすると2,000万円しか残らない。そのうちの半分は自分が頭金を出した部分なので、残りの1000万円が分与対象となり、君に分与されるのは500万円だ。税金等を考えると、もっと少なくなるだろう。」

ということは妻に分与されるのは500万円以下です。妻は唖然としました。数千万円は分与されると思っていたのにたったの500万円なのです。別居の際に両親から借りた100万円、今後見込まれるだろう弁護士費用100万円などを差し引くと、一年分の生活費にも足りないくらいの金額しか残らないのです。

 

財産分与の基本は半分半分です。しかし、みなさんがよく誤解しがちなのが、今ある財産を半分にするのではなく、別居当時の財産から、それぞれの特有財産(婚姻前の財産)を差し引いたものが分与の対象になるということです。さらには、婚姻当時に購入した株や不動産でも、購入資金が特有財産から出されている場合は、それも分与対象になりません。ですので、漠然と今目の前にある財産の半分がもらえると思っていると当てが外れてしまいます。

3-2 意外と知らない預貯金残高

妻は、金銭感覚に優れ、数字に強い夫に家計を任せていました。そのため、口座にいくら入っているか正確には把握していません。しかし、妻が夫から生活費として渡されていたのが20万円です。残りの40万円は口座に入っているはずです。子どもの学費等の支出やときどきクレジットカードで買い物をすることがあったけれど、妻としては無駄遣いをしたつもりはなく、相当な金額が残っていると思っていました。

しかし、夫は「君は管理していないから知らないと思うが、口座残高は50万円程度しかない。思っている以上に月々の生活費がかさんでいるし、君がクレジットカードで買った自分や子どもの洋服、ネットショッピングの費用がバカにらなないんだよ。」と言うのです。

また、家計を管理していない場合、「このくらいはあるだろう」という金額と実際の金額が大きく食い違っていることがあります。生活費というのは、思っている以上に細々とかかっていて、意外と手元には残っていないものなのです。

ですので、財産分与の落とし穴にはまらないためには、まずは、同居中に相手名義の財産も含め、財産の把握を行うことです。どの銀行にいくらくらいあるのか、それはいつ頃誰がため始めたものか、原資はどこからきているか、などを把握しておくと、分与対象となる財産を特定することができます。別居してしまうと、相手名義の財産を郵便物等から把握することが難しくなります。

少し長くなってきましたので、今日はこの辺で。次回は、その後の「落とし穴」についてお伝えします。

 

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