離婚を迷っている方へ

離婚後の生活への不安を払拭するための別居①

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今日は、別居後の生活に対する漠然とした不安を解消するために別居が役に立つというお話です。イメージを持っていただきやすいよう、事例でご紹介したいと思います。

   1 不仲のマンネリ化

不貞や借金など、はっきりとした理由があって夫婦不和に陥る場合もありますが、性格の不一致により、慢性的に夫婦関係が悪いというご夫婦もいることと思います。

そして、喧嘩のたびにどちらかが離婚を持ち出したり、ときには冷静に「離婚した方がいいのでは?」と話し合ったりと、常に離婚と隣り合わせの生活を送っている方もいることでしょう。

お互いがお互いを尊重することができず、相手のいいところよりも悪いところに目がいってしまったり、挙句の果てには、相手の長所や相手がよかれと思ってやったことさえも、裏読みしたり、否定的に捉えてしまったりするのです。

そんな負のスパイラルに陥った夫婦が関係を改善するのは簡単ではありません。しかし、不仲に慣れてしまうと、離婚という新しい決断をするのも面倒で、だらだらと婚姻生活が続いていたりします。

そんな「不仲のマンネリ化」に悩む事例をみてみましょう。


夫 :45歳、会社員
妻 :42歳、専業主婦
長男:10歳(小学5年生)

夫は生真面目で仕事一筋な性格だった。長男が生まれてからも、仕事上の付き合いを優先し、平日の会食接待や休日のゴルフ接待が多く、家庭にいる時間が短かった。妻は、キャリアウーマンとして大手企業で働いていたが、出産を機に辞職し、育児に専念していた。妻としては、夫が家事・育児に関わろうとしないことに不満があり、事あるごとに文句を言っていた。自分だけ家庭に縛られているような不全感もあった。

一方、夫は、家族のために仕事をしているのに、それに対してとやかく言われることに納得がいかなかった。また、心の中では、専業主婦である妻が家庭のことはすべてやるべきだという気持ちも持っていた。

そんな夫婦は、小さなことで度々激しい言い争いになり、感情的になった妻が「あなたとはもうやっていけない。」、「離婚してほしい。」と言い出すこともあった。

ある日、夫が大切な海外出張を控えた前日、自室で渡航準備をしていると、妻が部屋に入ってきた。そして、今夜は妻の両親の結婚記念日だから、一緒に実家に帰って夕飯を食べてほしいと告げた。夫としては、明日の早朝便での出発であり、今夜は早く休みたいと思っていた。また、大切な商談に向けて、資料の準備も完璧に整えておきたかった。そのため、事情を説明し、一緒にはいけないことを告げたところ、妻は激怒し、長男と二人で実家の食事会に出掛けたようであった。

夫は、妻が腹いせに乱暴に閉めたドアの音を聞きながら、「これは本当に離婚しかないかもしれない。」としみじみと感じた。

一方、妻にも言い分があった。実は、今年は両親の結婚50周年のお祝いであり、一ヶ月も前から夫に知らせていたのである。夫や長男と一緒にお祝いに出席し、家族仲良くやっているところを見せ、年老いた両親を安心させてあげたいという思いもあった。それなのに、夫は、今日初めて聞いたかのような態度で、翌日の仕事を理由に断ったのである。妻として、どうしても納得がいかず、悲しさややりきれなさに襲われた。

事例の夫婦のように、家族の大切なイベントのたびに大きな争いが起こったり、もう今度こそだめだと思いながらも、どちらかが離婚を決断するに至るまで、不幸な家庭生活を継続するパターンも多いのではないでしょうか。

「慣れ」は人の感覚を麻痺させ、どんなに不満足な生活でも、未知の変化より安心感があるのかもしれません。

   2 離婚への一歩を踏み出すきっかけ

しかし、何かのきっかけで、どちらかが「もうこれ以上、我慢できない。」と離婚への一歩を踏み出すこともあります。そのきっかけは、人それぞれです。大きな喧嘩や暴力がきっかけになる人もいれば、傍から見れば「そんなことで?」という些細な言動が引き金になる人もいます。

先ほどの事例の場合を見てみましょう。

夫は、2週間の海外出張の間、家庭から離れて冷静に過ごすことできた。心穏やかに仕事に集中できる環境をありがたいと思うと同時に、数日後には自宅に戻らなければならないことが嫌で仕方がなかった。そして、ついに、帰宅後、妻に離婚を告げることを決断した。

一方、妻は、けんかをする相手もおらず、穏やかな2週間を過ごしていた。そのため、帰宅した夫から離婚を告げられても、現実として受けとめることができなかった。確かに、これまで喧嘩ばかりで離婚したいと言ったこともあったけれど、夫の本気が伝わってきただけに、衝撃が大きかった。

夫は、長男のことを考えると、できれば穏便な形で離婚を進めたいと考えていた。しかし、妻に離婚を切り出したものの、離婚協議に応じてもらえないという状況が続き、夫としても我慢の限界が近づいていた。妻に離婚に応じられない理由を聞いても、「心の準備ができていない。」、「将来が不安。」、「子どのことが心配」と抽象的な理由を並べるのみであった。

「離婚と隣合わせの生活」を送っているのと、実際に「離婚を切り出される」こととは大きな隔たりがあります。そして、事例の妻のように、喧嘩の度に「もう離婚するしかない!」と叫んでいたのに、離婚を切り出されたとたん、急に冷静になり、口をつぐんでしまうことになるのです。

いつも相手から「離婚だ、離婚だ」と騒がれているから、きっとすぐに応じてくれるだろうという考えでいると、思わぬ拒否にあって戸惑うことになります。

   3 別居は疑似離婚体験

できることなら、相手の同意を得た上でした方がいいのが別居です。しかし、離婚に応じてくれない配偶者の場合、別居にも応じてくれないことがしばしばあります。そんな場合、事態を打開するため、やむを得ず別居を強行しなければならない場合があります。

夫は、ついに家を出ることにした。もちろん妻は別居には反対であったが、出ていくと言っている夫を止める力もなく、なし崩し的に別居が始まった。

別居後、夫はしばらくは妻に連絡を取らなかった。一人の生活があまりにも快適で、重苦しい空気が流れる妻の家には帰りたいとは思わなかったし、電話やメールでやりとりをするのも億劫であった。

しかし、ただ一つ、長男のことが気掛かりであった。そのため、妻に対し、一度週末に帰宅すること、別居中の生活費や長男とのかかわりについて、約束事を決めたいことを連絡した。

帰宅後、妻に対し、生活費は十分に支払うつもりであること、また、長男とも頻繁に連絡を取り合い、父としての役割も果たしたいことを話した。そして、月々の婚姻費用と別居中も一ヶ月に一度は家族3人で夕食を食べることを約束した。

別居生活が1年近くになった頃、父から再度母に離婚を切り出した。長男の卒業の時期であり、離婚のタイミングとしては、最適だと思われたからである。実は、妻も、もし離婚が避けられないのであれば、小学校卒業後、中学に入る前のタイミングが子どもにとって一番負担が少ないのではないかと思っていた。

また、1年近い別居生活を通じ、妻なにり、離婚後にもらえる手当を調べたり、就職活動をするなど準備を進めていた。また、弁護士の法律相談などに出向き、夫が提示している離婚条件が決して悪くないことも分かっていた。妻としては、離婚後の生活への不安が多少払拭され、漠然とした不安が少し和らいだのだった。

別居から1年あまり、夫婦は、長男が小学校を卒業するタイミングで協議離婚が成立した。

   4 まとめ

結婚は二人の気持ちが同時に盛り上がったときに成立します。同じく、離婚についても、二人が同時に結婚生活に終止符打つことに同意した場合に成立します(裁判離婚は別ですが)。しかし、いろんな理由で、二人が同時に離婚を決意できるとは限りません。

ただ、一方が離婚を決意するとき、既に夫婦の関係はおかしくなっています。そのため、当たり前ですが、楽しい結婚生活とはいきません。しかし、楽しくはなくても、将来への漠然とした不安から、離婚を決断できないことがあります。

そんなときは、疑似離婚を体験できる別居がおすすめです。離婚に踏み切れない相手に無理に離婚を迫り、紛争が激化するのは避けたいところです。しかし、かといって、ずっと我慢して同じ屋根の下で生活するのもストレスがたまります。

別居であれば、とりあえずは冷却期間を置くことができ、お互いに離婚後の生活を疑似体験しながら、いろんなことを考えたり、準備したりすることができます。

そして、一定期間が経ったとき、より穏やかな形で離婚協議が進められるのではないでしょうか。

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